210 / 823
5章 王都へ
第210話 フォンタナ一族
しおりを挟む
男爵さまは、ご無沙汰なのはお互いさまだと苦笑いした。
ただ、ジョシュアが逝ったのは早すぎたとお悔やみの言葉があった。ジョシュアとは父さまの父さまの名前だ。
「こんなかわいい孫たちの成長を見られずに逝くとは」
と悲しそうな顔をした。
おじいさまのお兄さんの元男爵さまとも挨拶をする。おじいさまはどちらかという細身だがお兄さんたちは見ただけで圧倒されるムキムキの筋肉をお持ちだ。でも顔はすっごく小さい。どこと言われると答えられないが、おじいさまと似ていると思う。
父さまはシヴァがおじいさまの養子になったことを伝える。もちろんおじいさまからとっくの昔に連絡はきているだろうし、手紙でも伝えてあったようだから簡単な紹介だ。
シヴァと兄さまはおじいさまの息子だから、甥っ子になるなと目尻を下げた。
じろじろ見られるなーとは思っていたのだけれど、どうもフォンタナ一族は女の子が生まれにくい家系らしい。おじいさまの兄弟も男だけだし、その子供たちもそれぞれ3人の子供がいるが全て男の子。さらにその子供たちも全員男。その末の子がどうしても女の子が欲しくて願いをかけ続けて生まれた5人目も男の子だったそうだ。
そんなことから、わたしという女の子が生まれたことは、でかしたと話に挙がっていたらしい。羨ましいと思われていたみたいだし、わたしを一族の〝姫〟と呼んでいた。もふさまがにやにやしてわたしを見ている。いたたまれないと思っているのが伝わっているからだろう。
みんなに紹介すると言われた。
お屋敷も大きくて広いけれど、庭がものすごく広い。王都にこんな土地を持っているってかなりすごいことだと思う。
応接間にいたそれぞれの夫人たちが両手にフライパンのような物を持っていたので、どうして?と思っていたのだが、その理由が判明する。
夫人たちがそのフライパンを打ちつけだす。
その凄い音にびびりまくっていると、男爵さまに掬い上げられた。
「ごめんな、驚くよな。ウチは男ばっかりだからどうしてもな」
土埃?
『来るぞ』
え?
ドドドドドドドドっと砂埃と音を立て、走ってきたのは人、人、人だった。
大きかったり、小さかったりしたが、みんな骨太で筋肉ムキムキで、いかつい。シヴァよりも。
「お、女の子だ」
「ちっちぇぇ」
「なんだありゃ、姫か?」
なんかすっごく注目されているんですけど。
「すげぇ、犬抱きしめて、ふわふわした人形ぶら下げてるぞ」
「あれがぬいぐるみとかいうやつじゃないか?」
男爵さまが足をダンと鳴らすと、静かになってみんなが〝気をつけ〟のポーズで直立した。
「皆に紹介する。イオン・シュタイン・ランディラカ辺境伯の息子だ。明日。登城し、次期辺境伯の許しを得る」
目で合図を受け、シヴァが礼をとる。
「シヴァ・シュタイン・ランディラカ、だ」
「もう一人の息子だ」
「フランツ・シュタイン・ランディラカです」
「オヤジ、そのちびっちゃいのはなんだ?」
「順番に紹介してやるから待て。ランディラカ伯の孫だ」
「ジュレミー・シュタインです。大所帯ですみませんが、お世話になります。よろしくお願いします」
と礼をとった。
「ランディラカ伯のひ孫だ」
「アラン・シュタインです」
「ロビン・シュタインです」
「お嬢ちゃん、お名前を言えるかな?」
抱っこされたままで覗き込まれ、眦を下げて尋ねられる。
「リディア・シュタインです。もふさまとアオです」
と告げれば頭を撫でられる。
「いいか、テメェら、ちっちゃい女の子に汚い手で触ろうとするんじゃねーぞ、わかったな?」
それまでとうって変わった言葉遣いと迫力にびくりとする。
「ずるいぜ、オヤジ。何ちゃっかり抱っこしてやがるんだ」
なぜかその言い争いは、列をなしている筋肉マンたちの間で論争を呼び、ヒートアップし殴り合いの喧嘩となった。男爵は特別慌てるでもなく、わたしを抱っこしたまま眺めているだけだ。喧嘩に参加していない人は、座り込んだり、暴れている人から距離をとっていた。この状況にとても慣れている感じがする。ある程度時が経つと、女性陣がまたフライパンを鳴らした。
「そこまでにしな」
啖呵を切ったのは男爵夫人だ。
ドスのきいた、迫力の声。
「これ以上続けるなら、メシ抜きだよ」
今の今まで殴り合っていたのに、ピタリと動きを止め殴り合うのを止めすっと整列をする。
メシ抜きは最強呪文のようだ。
「ごめんね、びっくりしただろう? この通り、血の気の多い男ばっかりなんだ」
男爵夫人に頭を撫でられる。ロビ兄は暴れん坊と思っていたが、全然たいしたことなかった。
父さまとシヴァは朝一番に城に行かなくてはいけないため、お城のそばの宿に泊まるそうだ。わたしたちのことをくれぐれもお願いしますと言って、行ってしまった。
トイレに行って戻ってくると、なぜかシュタインVSフォンタナで試合をすることになっている。わたしも組み込まれている。
「リー、おれたちがいないときも、ちゃんともふさまと修行してたよね?」
ロビ兄がにっこり微笑んでくる。
「え、う、うん」
何で人さまのお家に泊まらせてもらうのに、試合することになってるの!?
と思ったけれど、もしかしたら、誘拐されそうになっていたかもしれないわたしが怖い思いを思い出さないようにとの配慮だったのかもしれない。
ただ、ジョシュアが逝ったのは早すぎたとお悔やみの言葉があった。ジョシュアとは父さまの父さまの名前だ。
「こんなかわいい孫たちの成長を見られずに逝くとは」
と悲しそうな顔をした。
おじいさまのお兄さんの元男爵さまとも挨拶をする。おじいさまはどちらかという細身だがお兄さんたちは見ただけで圧倒されるムキムキの筋肉をお持ちだ。でも顔はすっごく小さい。どこと言われると答えられないが、おじいさまと似ていると思う。
父さまはシヴァがおじいさまの養子になったことを伝える。もちろんおじいさまからとっくの昔に連絡はきているだろうし、手紙でも伝えてあったようだから簡単な紹介だ。
シヴァと兄さまはおじいさまの息子だから、甥っ子になるなと目尻を下げた。
じろじろ見られるなーとは思っていたのだけれど、どうもフォンタナ一族は女の子が生まれにくい家系らしい。おじいさまの兄弟も男だけだし、その子供たちもそれぞれ3人の子供がいるが全て男の子。さらにその子供たちも全員男。その末の子がどうしても女の子が欲しくて願いをかけ続けて生まれた5人目も男の子だったそうだ。
そんなことから、わたしという女の子が生まれたことは、でかしたと話に挙がっていたらしい。羨ましいと思われていたみたいだし、わたしを一族の〝姫〟と呼んでいた。もふさまがにやにやしてわたしを見ている。いたたまれないと思っているのが伝わっているからだろう。
みんなに紹介すると言われた。
お屋敷も大きくて広いけれど、庭がものすごく広い。王都にこんな土地を持っているってかなりすごいことだと思う。
応接間にいたそれぞれの夫人たちが両手にフライパンのような物を持っていたので、どうして?と思っていたのだが、その理由が判明する。
夫人たちがそのフライパンを打ちつけだす。
その凄い音にびびりまくっていると、男爵さまに掬い上げられた。
「ごめんな、驚くよな。ウチは男ばっかりだからどうしてもな」
土埃?
『来るぞ』
え?
ドドドドドドドドっと砂埃と音を立て、走ってきたのは人、人、人だった。
大きかったり、小さかったりしたが、みんな骨太で筋肉ムキムキで、いかつい。シヴァよりも。
「お、女の子だ」
「ちっちぇぇ」
「なんだありゃ、姫か?」
なんかすっごく注目されているんですけど。
「すげぇ、犬抱きしめて、ふわふわした人形ぶら下げてるぞ」
「あれがぬいぐるみとかいうやつじゃないか?」
男爵さまが足をダンと鳴らすと、静かになってみんなが〝気をつけ〟のポーズで直立した。
「皆に紹介する。イオン・シュタイン・ランディラカ辺境伯の息子だ。明日。登城し、次期辺境伯の許しを得る」
目で合図を受け、シヴァが礼をとる。
「シヴァ・シュタイン・ランディラカ、だ」
「もう一人の息子だ」
「フランツ・シュタイン・ランディラカです」
「オヤジ、そのちびっちゃいのはなんだ?」
「順番に紹介してやるから待て。ランディラカ伯の孫だ」
「ジュレミー・シュタインです。大所帯ですみませんが、お世話になります。よろしくお願いします」
と礼をとった。
「ランディラカ伯のひ孫だ」
「アラン・シュタインです」
「ロビン・シュタインです」
「お嬢ちゃん、お名前を言えるかな?」
抱っこされたままで覗き込まれ、眦を下げて尋ねられる。
「リディア・シュタインです。もふさまとアオです」
と告げれば頭を撫でられる。
「いいか、テメェら、ちっちゃい女の子に汚い手で触ろうとするんじゃねーぞ、わかったな?」
それまでとうって変わった言葉遣いと迫力にびくりとする。
「ずるいぜ、オヤジ。何ちゃっかり抱っこしてやがるんだ」
なぜかその言い争いは、列をなしている筋肉マンたちの間で論争を呼び、ヒートアップし殴り合いの喧嘩となった。男爵は特別慌てるでもなく、わたしを抱っこしたまま眺めているだけだ。喧嘩に参加していない人は、座り込んだり、暴れている人から距離をとっていた。この状況にとても慣れている感じがする。ある程度時が経つと、女性陣がまたフライパンを鳴らした。
「そこまでにしな」
啖呵を切ったのは男爵夫人だ。
ドスのきいた、迫力の声。
「これ以上続けるなら、メシ抜きだよ」
今の今まで殴り合っていたのに、ピタリと動きを止め殴り合うのを止めすっと整列をする。
メシ抜きは最強呪文のようだ。
「ごめんね、びっくりしただろう? この通り、血の気の多い男ばっかりなんだ」
男爵夫人に頭を撫でられる。ロビ兄は暴れん坊と思っていたが、全然たいしたことなかった。
父さまとシヴァは朝一番に城に行かなくてはいけないため、お城のそばの宿に泊まるそうだ。わたしたちのことをくれぐれもお願いしますと言って、行ってしまった。
トイレに行って戻ってくると、なぜかシュタインVSフォンタナで試合をすることになっている。わたしも組み込まれている。
「リー、おれたちがいないときも、ちゃんともふさまと修行してたよね?」
ロビ兄がにっこり微笑んでくる。
「え、う、うん」
何で人さまのお家に泊まらせてもらうのに、試合することになってるの!?
と思ったけれど、もしかしたら、誘拐されそうになっていたかもしれないわたしが怖い思いを思い出さないようにとの配慮だったのかもしれない。
105
お気に入りに追加
1,239
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
モブなので思いっきり場外で暴れてみました
雪那 由多
恋愛
やっと卒業だと言うのに婚約破棄だとかそう言うのはもっと人の目のないところでお三方だけでやってくださいませ。
そしてよろしければ私を巻き来ないようにご注意くださいませ。
一応自衛はさせていただきますが悪しからず?
そんなささやかな防衛をして何か問題ありましょうか?
※衝動的に書いたのであげてみました四話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる