179 / 823
4章 飛べない翼
第179話 ロサからの手紙
しおりを挟む
父さまが持ってきてくれた手紙でお茶会の日にちがやっと確定した。4月15日にイダボアで開催だ。まぁ、前回の手紙で日程と場所以外は記されていて、日にちも4月8日以降にはなるが、それまでに準備を終わらせておくよう、言われていたんだけど。やっぱり確定しないと落ち着かなくてさ。
ホリーさんが卵や小麦粉をかなりの量用意してくれたので、それでお菓子もつくりまくり、お茶会が何回か開催できるほどには用意ができた。プリンのカップもジンベエさんの知り合いに依頼することができ陶器のカップを大量に作ってもらえたので、こちらも準備万端だ。作りすぎた感はある。収納ポケットに入れればリストアップできるから数がわかる。増えていくのが楽しくて、全て3桁まで頑張ってしまった。でも日替わりショップでも売っていけるからね。
材料費などわたしのお小遣いから都合していたら残り少なくなってきてしまった。ダンジョンでゲットしてきた物を売りにいきたいな。
門番や自警団ではおじいちゃんたちが大活躍しているようだ。
わたしたちは気づかなかったがお祭りの日にすでにスリがでたようだ。物を奪った現行犯と、わざと騒ぎを起こした人たち、当たり屋みたいなことをして〝怪我したぞどうしてくれる?〟とやった輩合わせて13人がお縄になったそうだ。どの人も領地の人ではなかった。人が増えるって、本当にいろんな人が紛れ込むってことなんだね。
次の日には町外れの家のほうに馬車2台が連なってきた。
お茶会の時のわたしたちの服やらアクセサリーが運ばれてきた。靴まで用意されている。今回もサイズバッチリだ。
兄さまたちの服もカッコ良かったけれど、母さまたちはわたしへの服を見て大興奮している。
この服とこのアクセサリーにわたしの髪をどうするのが一番かわいく見えるかで盛り上がっている。なぜかそこに兄さまも入っているから不思議だ。
「でも母さま、あまりかわいくしすぎちゃダメだよ」
「あら、なぜ、アラン?」
「だって、それでリーと仲良くしたい子が増えたら大変だよ」
アラ兄……。
「そうだよ、ウチでだけかわいくしてればいいんだ、リーは」
ロビ兄まで……。
「そう、ウチでなら着飾ってかわいくしたリディーを見たいよね? 普通にしててもかわいいけどさ」
にっこり笑った兄さまに双子は頷く。
「リディー、いらっしゃい。お着替えしてみましょう」
『着飾るのは楽しいものと聞いたが?』
もふさまに尋ねられて、小さい声で答える。
「時と場合によるんだよ。これは長くなる」
みんなの輝くような目がねー。
わたしの予想は的中し。こうしたら、ああしたらと案がだされた。
「お嬢さま、完璧です!」
「なんてかわいいのでしょう、ウチの嬢ちゃまは!」
「リディーとってもかわいいわ」
「リー、最高だ」
「絵にして取っておきたいぐらい」
兄さまからのコメントがない。
アラ兄が兄さまの脇腹を腕でついた。
「兄さま、リーかわいいよね?」
「……ああ、もちろんだ。あまりにかわいくて、言葉がみつからない」
熱っぽく見られて動揺する。身内かわいさで言ってくれてるのは100も承知だけど、あんまり言われると信じたくなっちゃうから。
帰ってきた父さまは着飾ったわたしを見ると、抱きしめて頬擦りする。
「リディーなんてかわいいんだ」
でもそう言った後
「ごめんな、こんなかわいいのに、いつも着飾らせてやれなくて」
「父さま、大人になったらおれたちが稼いでリーにいっぱいかわいい服買ってあげるから心配しないで」
なんか親子寸劇が始まってしまった。
父さまに見せるまでは着替えずに我慢していたので、お披露目したからいいよねと普段着に着替える。利点は着替えるのを手伝ってもらえることかな。生地の素材がいいから着心地もいいけれど、いつ汚すかと気が気でなかったのだ。その思いからも解放される。やっと息をつけた。
父さまも仕事は順調なようだ。町長や村長さん班長さんたちと会合をした時に、水路のことを相談したらしい。アラ兄が描いた地図を元に考えている水路案を出したところ、班長さんのひとりが水路づくりの経験があり、意見をもらい、よりいい案となったそうだ。小さい村の後に、大きな村、町にも水路とお風呂ができて、村と町の間に堆肥場も作るというと、とても乗り気だったという。
村では予算でさっそくコッコを飼う算段を立てている。小さい村に、子供の自立支援団体を設立する予定で、今5人の子供たちを小さい村に住まわせることになることも告げた。実のところセズが働きに行く時には4人の子供たちはお留守番になり不安でもあったのだが、それはおじいちゃんたちの提案があり、うまくいきそうになっている。
砦からきたおじいちゃんたちだが、戦いに明け暮れていた人たちで家族との縁は薄い人が多かった。子供がいた人もいたが〝今更どの面下げて〟ほど連絡を取っていないらしい。おじいちゃんたちが寮に入ってからセズたちも寮に戻ってもらっていたので、そこで交流が生まれ、早い話、おじいちゃんたちはセズたちがかわいくて仕方なくなってしまったのだ。
仕事をするには町の家にある寮にいるのが便利だが、ローテーションを組むので休みもしっかりとある。そこで、休みの人は護衛も兼ねて小さな村で過ごすのもいいなと思い立ったらしい。
まあ実際やってみてどうなるかわからないけれど、みんなの無理のない形でいいようにできたらと思っている。
アラ兄は大きな村と町の地図も書き写すという大変な作業をしている。それに比べたら、わたしの着飾るぐらい大したことなかった。
お茶会の準備は終わったようなものなので、当面の間、素材も尽きているからダンジョンに行き、過ごすことになるだろうと思っていた。だが、ダンジョンに行く余裕も、ドロップ品を売りに行く余裕もなく、お茶会の準備に明け暮れることになる。
会場を見てから、お茶会のビジョンもはっきりしてきて、そこではじめて、準備の〝ジュ〟にも届いてなかったことに気づいたのだ。会の進行、席作りや、お品書き。お菓子を売るときのことなど、ほぼ兄さまたち任せだったんだけど、会場がわかってから、考えていたことと現実にそこでできることをすり合わせるのに思ったより時間を使うことになった。
ホリーさんが卵や小麦粉をかなりの量用意してくれたので、それでお菓子もつくりまくり、お茶会が何回か開催できるほどには用意ができた。プリンのカップもジンベエさんの知り合いに依頼することができ陶器のカップを大量に作ってもらえたので、こちらも準備万端だ。作りすぎた感はある。収納ポケットに入れればリストアップできるから数がわかる。増えていくのが楽しくて、全て3桁まで頑張ってしまった。でも日替わりショップでも売っていけるからね。
材料費などわたしのお小遣いから都合していたら残り少なくなってきてしまった。ダンジョンでゲットしてきた物を売りにいきたいな。
門番や自警団ではおじいちゃんたちが大活躍しているようだ。
わたしたちは気づかなかったがお祭りの日にすでにスリがでたようだ。物を奪った現行犯と、わざと騒ぎを起こした人たち、当たり屋みたいなことをして〝怪我したぞどうしてくれる?〟とやった輩合わせて13人がお縄になったそうだ。どの人も領地の人ではなかった。人が増えるって、本当にいろんな人が紛れ込むってことなんだね。
次の日には町外れの家のほうに馬車2台が連なってきた。
お茶会の時のわたしたちの服やらアクセサリーが運ばれてきた。靴まで用意されている。今回もサイズバッチリだ。
兄さまたちの服もカッコ良かったけれど、母さまたちはわたしへの服を見て大興奮している。
この服とこのアクセサリーにわたしの髪をどうするのが一番かわいく見えるかで盛り上がっている。なぜかそこに兄さまも入っているから不思議だ。
「でも母さま、あまりかわいくしすぎちゃダメだよ」
「あら、なぜ、アラン?」
「だって、それでリーと仲良くしたい子が増えたら大変だよ」
アラ兄……。
「そうだよ、ウチでだけかわいくしてればいいんだ、リーは」
ロビ兄まで……。
「そう、ウチでなら着飾ってかわいくしたリディーを見たいよね? 普通にしててもかわいいけどさ」
にっこり笑った兄さまに双子は頷く。
「リディー、いらっしゃい。お着替えしてみましょう」
『着飾るのは楽しいものと聞いたが?』
もふさまに尋ねられて、小さい声で答える。
「時と場合によるんだよ。これは長くなる」
みんなの輝くような目がねー。
わたしの予想は的中し。こうしたら、ああしたらと案がだされた。
「お嬢さま、完璧です!」
「なんてかわいいのでしょう、ウチの嬢ちゃまは!」
「リディーとってもかわいいわ」
「リー、最高だ」
「絵にして取っておきたいぐらい」
兄さまからのコメントがない。
アラ兄が兄さまの脇腹を腕でついた。
「兄さま、リーかわいいよね?」
「……ああ、もちろんだ。あまりにかわいくて、言葉がみつからない」
熱っぽく見られて動揺する。身内かわいさで言ってくれてるのは100も承知だけど、あんまり言われると信じたくなっちゃうから。
帰ってきた父さまは着飾ったわたしを見ると、抱きしめて頬擦りする。
「リディーなんてかわいいんだ」
でもそう言った後
「ごめんな、こんなかわいいのに、いつも着飾らせてやれなくて」
「父さま、大人になったらおれたちが稼いでリーにいっぱいかわいい服買ってあげるから心配しないで」
なんか親子寸劇が始まってしまった。
父さまに見せるまでは着替えずに我慢していたので、お披露目したからいいよねと普段着に着替える。利点は着替えるのを手伝ってもらえることかな。生地の素材がいいから着心地もいいけれど、いつ汚すかと気が気でなかったのだ。その思いからも解放される。やっと息をつけた。
父さまも仕事は順調なようだ。町長や村長さん班長さんたちと会合をした時に、水路のことを相談したらしい。アラ兄が描いた地図を元に考えている水路案を出したところ、班長さんのひとりが水路づくりの経験があり、意見をもらい、よりいい案となったそうだ。小さい村の後に、大きな村、町にも水路とお風呂ができて、村と町の間に堆肥場も作るというと、とても乗り気だったという。
村では予算でさっそくコッコを飼う算段を立てている。小さい村に、子供の自立支援団体を設立する予定で、今5人の子供たちを小さい村に住まわせることになることも告げた。実のところセズが働きに行く時には4人の子供たちはお留守番になり不安でもあったのだが、それはおじいちゃんたちの提案があり、うまくいきそうになっている。
砦からきたおじいちゃんたちだが、戦いに明け暮れていた人たちで家族との縁は薄い人が多かった。子供がいた人もいたが〝今更どの面下げて〟ほど連絡を取っていないらしい。おじいちゃんたちが寮に入ってからセズたちも寮に戻ってもらっていたので、そこで交流が生まれ、早い話、おじいちゃんたちはセズたちがかわいくて仕方なくなってしまったのだ。
仕事をするには町の家にある寮にいるのが便利だが、ローテーションを組むので休みもしっかりとある。そこで、休みの人は護衛も兼ねて小さな村で過ごすのもいいなと思い立ったらしい。
まあ実際やってみてどうなるかわからないけれど、みんなの無理のない形でいいようにできたらと思っている。
アラ兄は大きな村と町の地図も書き写すという大変な作業をしている。それに比べたら、わたしの着飾るぐらい大したことなかった。
お茶会の準備は終わったようなものなので、当面の間、素材も尽きているからダンジョンに行き、過ごすことになるだろうと思っていた。だが、ダンジョンに行く余裕も、ドロップ品を売りに行く余裕もなく、お茶会の準備に明け暮れることになる。
会場を見てから、お茶会のビジョンもはっきりしてきて、そこではじめて、準備の〝ジュ〟にも届いてなかったことに気づいたのだ。会の進行、席作りや、お品書き。お菓子を売るときのことなど、ほぼ兄さまたち任せだったんだけど、会場がわかってから、考えていたことと現実にそこでできることをすり合わせるのに思ったより時間を使うことになった。
135
お気に入りに追加
1,239
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる