プラス的 異世界の過ごし方

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4章 飛べない翼

第179話 ロサからの手紙

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 父さまが持ってきてくれた手紙でお茶会の日にちがやっと確定した。4月15日にイダボアで開催だ。まぁ、前回の手紙で日程と場所以外は記されていて、日にちも4月8日以降にはなるが、それまでに準備を終わらせておくよう、言われていたんだけど。やっぱり確定しないと落ち着かなくてさ。

 ホリーさんが卵や小麦粉をかなりの量用意してくれたので、それでお菓子もつくりまくり、お茶会が何回か開催できるほどには用意ができた。プリンのカップもジンベエさんの知り合いに依頼することができ陶器のカップを大量に作ってもらえたので、こちらも準備万端だ。作りすぎた感はある。収納ポケットに入れればリストアップできるから数がわかる。増えていくのが楽しくて、全て3桁まで頑張ってしまった。でも日替わりショップでも売っていけるからね。
 材料費などわたしのお小遣いから都合していたら残り少なくなってきてしまった。ダンジョンでゲットしてきた物を売りにいきたいな。

 門番や自警団ではおじいちゃんたちが大活躍しているようだ。
 わたしたちは気づかなかったがお祭りの日にすでにスリがでたようだ。物を奪った現行犯と、わざと騒ぎを起こした人たち、当たり屋みたいなことをして〝怪我したぞどうしてくれる?〟とやった輩合わせて13人がお縄になったそうだ。どの人も領地の人ではなかった。人が増えるって、本当にいろんな人が紛れ込むってことなんだね。


 次の日には町外れの家のほうに馬車2台が連なってきた。
 お茶会の時のわたしたちの服やらアクセサリーが運ばれてきた。靴まで用意されている。今回もサイズバッチリだ。
 兄さまたちの服もカッコ良かったけれど、母さまたちはわたしへの服を見て大興奮している。
 この服とこのアクセサリーにわたしの髪をどうするのが一番かわいく見えるかで盛り上がっている。なぜかそこに兄さまも入っているから不思議だ。

「でも母さま、あまりかわいくしすぎちゃダメだよ」

「あら、なぜ、アラン?」

「だって、それでリーと仲良くしたい子が増えたら大変だよ」

 アラ兄……。

「そうだよ、ウチでだけかわいくしてればいいんだ、リーは」

 ロビ兄まで……。

「そう、ウチでなら着飾ってかわいくしたリディーを見たいよね? 普通にしててもかわいいけどさ」

 にっこり笑った兄さまに双子は頷く。

「リディー、いらっしゃい。お着替えしてみましょう」

『着飾るのは楽しいものと聞いたが?』

 もふさまに尋ねられて、小さい声で答える。

「時と場合によるんだよ。これは長くなる」

 みんなの輝くような目がねー。
 わたしの予想は的中し。こうしたら、ああしたらと案がだされた。

「お嬢さま、完璧です!」

「なんてかわいいのでしょう、ウチの嬢ちゃまは!」

「リディーとってもかわいいわ」

「リー、最高だ」

「絵にして取っておきたいぐらい」

 兄さまからのコメントがない。
 アラ兄が兄さまの脇腹を腕でついた。

「兄さま、リーかわいいよね?」

「……ああ、もちろんだ。あまりにかわいくて、言葉がみつからない」

 熱っぽく見られて動揺する。身内かわいさで言ってくれてるのは100も承知だけど、あんまり言われると信じたくなっちゃうから。



 帰ってきた父さまは着飾ったわたしを見ると、抱きしめて頬擦りする。

「リディーなんてかわいいんだ」

 でもそう言った後

「ごめんな、こんなかわいいのに、いつも着飾らせてやれなくて」

「父さま、大人になったらおれたちが稼いでリーにいっぱいかわいい服買ってあげるから心配しないで」

 なんか親子寸劇が始まってしまった。

 父さまに見せるまでは着替えずに我慢していたので、お披露目したからいいよねと普段着に着替える。利点は着替えるのを手伝ってもらえることかな。生地の素材がいいから着心地もいいけれど、いつ汚すかと気が気でなかったのだ。その思いからも解放される。やっと息をつけた。


  父さまも仕事は順調なようだ。町長や村長さん班長さんたちと会合をした時に、水路のことを相談したらしい。アラ兄が描いた地図を元に考えている水路案を出したところ、班長さんのひとりが水路づくりの経験があり、意見をもらい、よりいい案となったそうだ。小さい村の後に、大きな村、町にも水路とお風呂ができて、村と町の間に堆肥場も作るというと、とても乗り気だったという。
 村では予算でさっそくコッコを飼う算段を立てている。小さい村に、子供の自立支援団体を設立する予定で、今5人の子供たちを小さい村に住まわせることになることも告げた。実のところセズが働きに行く時には4人の子供たちはお留守番になり不安でもあったのだが、それはおじいちゃんたちの提案があり、うまくいきそうになっている。

 砦からきたおじいちゃんたちだが、戦いに明け暮れていた人たちで家族との縁は薄い人が多かった。子供がいた人もいたが〝今更どの面下げて〟ほど連絡を取っていないらしい。おじいちゃんたちが寮に入ってからセズたちも寮に戻ってもらっていたので、そこで交流が生まれ、早い話、おじいちゃんたちはセズたちがかわいくて仕方なくなってしまったのだ。

 仕事をするには町の家にある寮にいるのが便利だが、ローテーションを組むので休みもしっかりとある。そこで、休みの人は護衛も兼ねて小さな村で過ごすのもいいなと思い立ったらしい。
 まあ実際やってみてどうなるかわからないけれど、みんなの無理のない形でいいようにできたらと思っている。


 アラ兄は大きな村と町の地図も書き写すという大変な作業をしている。それに比べたら、わたしの着飾るぐらい大したことなかった。
 お茶会の準備は終わったようなものなので、当面の間、素材も尽きているからダンジョンに行き、過ごすことになるだろうと思っていた。だが、ダンジョンに行く余裕も、ドロップ品を売りに行く余裕もなく、お茶会の準備に明け暮れることになる。
 会場を見てから、お茶会のビジョンもはっきりしてきて、そこではじめて、準備の〝ジュ〟にも届いてなかったことに気づいたのだ。会の進行、席作りや、お品書き。お菓子を売るときのことなど、ほぼ兄さまたち任せだったんだけど、会場がわかってから、考えていたことと現実にそこでできることをすり合わせるのに思ったより時間を使うことになった。
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