プラス的 異世界の過ごし方

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4章 飛べない翼

第175話 海の護り手

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 翌日、野菜とお肉の料理を持って、海へと赴いた。
 海辺で呼び出せば宝石龍さまの背に乗るよう言われ、わたしたちは顔を見合わせた。もふさまに子犬サイズになってもらって抱えて、宝石龍さまに乗り込む。そのまま海に入った時は思わず息を止めたけど、宝石龍さまの周りがシールドされていて、濡れもせず息もできた。
 着いたところは宝石龍さまの住まいのひとつという聖域だった。海の中だけど、透明のドームのようになっていて、海の様子が見えた。双子が駆け回り、兄さまも目を輝かせて空を仰ぐ。水中から海の様子が見られるってすごい。

 空の主人さまと同じく、わたしたちと話せないのかを尋ね、魔具で兄さまたちとも話せるようにした。宝石龍さまはシュシュシュシュと小型化した。子供の背丈の何とも上品な龍さまになった。
 テーブルについてからわたしたちは改めてお礼を言った。
 宝石龍さまはニヤッと笑ってから、馳走を持ってきてくれたんだろう、それで貸し借りなしじゃと言った。
 袋からどんどんお皿を出して、兄さまたちがそれを龍さまの前に並べていく。
 目を輝かせながら、これは何だと尋ねられるので、聞かれるままに料理を答えて言った。
 フォークを使って上品に召し上がる。

『森のの言ったことに偽りなしじゃな。どれも本当においしい』
 よかったとわたしたちは顔を見合わせた。
 
 みんなでお茶を飲みながら、ケーキ仕立てにしたカップケーキを食べていると

『そういえば、何をしに海に来たのじゃ?』

 と尋ねられた。

『前に海のが言っていただろう? 白くてほわっとして温かいのがあると』

 宝石龍さまは頷いた。

『リディアが欲しいというので、それが何だったか、獲れるものか、海の者に聞いていたのだ。そのうちにあやつが現れて』

『そうだったか。何に使うのじゃ?』

 わたしはぬいぐるみと上掛けの話をした。

『人というのは、いつも面白いことを考えつくものだのぉ』

 そこで言葉を切る。

『リディアと言ったか? おぬしは守ることができるか? その白い物が何か聞かれても海の物だと答えずにいられるか?』

「言っていけないのなら、それは守ります」

『そうか、それなら、いいだろう』

 宝石龍さまは眷属たちに何かを伝え、眷属たちはあっという間に空を泳ぎ、透明な壁を突き抜け海の中を泳いで行った。そこから水が漏れてくることもない。
 それも不思議だ。
 お茶を飲み終える頃、眷属たちが何かを咥えて帰ってきた。
 籠の中に次々と入れていく。
 ひとつは白いフニフニのもの。気持ち良くてずっと触っていたくなる。
 もうひとつは球状のたんぽぽの綿毛みたいなやつ。ふわふわだ。手で握るとキューッと小さくなるのに力を緩めるとまあるい綿毛に戻る。そしてほわっとどことなく暖かく感じる。

 宝石龍さまは白いフニフニの籠を指さす。

『こちらは雪くらげの住処の一部じゃ。住処と言ってもあいつは漂うことが好きでな。ただ寝ているうちに知らないところに流されないように、岩や草にこの白いのを作ってだな、巻きつけて流されないようにするんだ』

 なるほど、考えられているっていうか、神秘というか。
 次に隣の綿毛を見た。

『こちらはシロホウシ。海きのこのホウシじゃ。海からあげればただのホワホワとしたものになる。お前が取る分ぐらいなら構わないが、多くの人間に乱獲されれば、生き物の生態系が崩れるやも知れん。だから、これが何なのかは、人には伝えないようにして欲しい』

 わたしは兄さまたちと顔を合わせて頷いた。
 この雪くらげの住処はぬいぐるみの中に入れるのにピッタリの素材だ。
 そしてシロホウシは上掛けの中に入れたら気持ち良さそうな気がする。

「ありがとうございます」

 雪くらげの住処とシロホウシ、急いで集めさせたから量があまりない。後で持って行かせるというので、十分ですと辞退した。宝石龍さまの元の大きさだったら少なく感じるのかもしれないけれど、これだけあればぬいぐるみも上掛けも相当な量ができるよ。うん、ぬいぐるみ作りに足りないのは圧倒的にファーミーの毛皮だ。
 最後に宝石龍さま、もとい海の主人さまと握手する。

『お、お前は……』

 海の主人さまは驚いたようにわたしを見た。
 ? 

『海の護り手よ、何だ?』

『手を通じて魔力を感じた。そなた、少し前にこの地に祝印をしたであろう?』

 祝印?
 口移しで魔力を注ぐ……、そんなことした覚えは……。

 頭の中に海で転んだ時の映像が浮かんだ。
 あ。

『そういえば、転んだな』

「転んだね」

『実はこのあたりの妾の結界が緩んでいたようなのじゃ。それで変なのが迷い込み、ますますこの辺り一体が弱っていた。それがある日を境に魔力が吹き込まれ、眷属たちが元気になった。それで妾に結界のことを知らせにきて、直すことができた。あのままだったら、地に近いところに魔物が溢れ、あのギャング1匹どころではなく森の地に多大なる迷惑をかけた事だろう。そうならずに済んだのはそなたが魔を吹き込んでくれたから。感謝する。海の欲しい物があるときは眷属に言うがよろしい。すぐに整えよう』

 こうしてわたしはぬいぐるみの中に入れる素材をゲットしたのだった。
 転んだだけなのに、いいのだろうか?
 と思いつつ、顔がにやけてしまう。
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