175 / 823
4章 飛べない翼
第175話 海の護り手
しおりを挟む
翌日、野菜とお肉の料理を持って、海へと赴いた。
海辺で呼び出せば宝石龍さまの背に乗るよう言われ、わたしたちは顔を見合わせた。もふさまに子犬サイズになってもらって抱えて、宝石龍さまに乗り込む。そのまま海に入った時は思わず息を止めたけど、宝石龍さまの周りがシールドされていて、濡れもせず息もできた。
着いたところは宝石龍さまの住まいのひとつという聖域だった。海の中だけど、透明のドームのようになっていて、海の様子が見えた。双子が駆け回り、兄さまも目を輝かせて空を仰ぐ。水中から海の様子が見られるってすごい。
空の主人さまと同じく、わたしたちと話せないのかを尋ね、魔具で兄さまたちとも話せるようにした。宝石龍さまはシュシュシュシュと小型化した。子供の背丈の何とも上品な龍さまになった。
テーブルについてからわたしたちは改めてお礼を言った。
宝石龍さまはニヤッと笑ってから、馳走を持ってきてくれたんだろう、それで貸し借りなしじゃと言った。
袋からどんどんお皿を出して、兄さまたちがそれを龍さまの前に並べていく。
目を輝かせながら、これは何だと尋ねられるので、聞かれるままに料理を答えて言った。
フォークを使って上品に召し上がる。
『森のの言ったことに偽りなしじゃな。どれも本当においしい』
よかったとわたしたちは顔を見合わせた。
みんなでお茶を飲みながら、ケーキ仕立てにしたカップケーキを食べていると
『そういえば、何をしに海に来たのじゃ?』
と尋ねられた。
『前に海のが言っていただろう? 白くてほわっとして温かいのがあると』
宝石龍さまは頷いた。
『リディアが欲しいというので、それが何だったか、獲れるものか、海の者に聞いていたのだ。そのうちにあやつが現れて』
『そうだったか。何に使うのじゃ?』
わたしはぬいぐるみと上掛けの話をした。
『人というのは、いつも面白いことを考えつくものだのぉ』
そこで言葉を切る。
『リディアと言ったか? おぬしは守ることができるか? その白い物が何か聞かれても海の物だと答えずにいられるか?』
「言っていけないのなら、それは守ります」
『そうか、それなら、いいだろう』
宝石龍さまは眷属たちに何かを伝え、眷属たちはあっという間に空を泳ぎ、透明な壁を突き抜け海の中を泳いで行った。そこから水が漏れてくることもない。
それも不思議だ。
お茶を飲み終える頃、眷属たちが何かを咥えて帰ってきた。
籠の中に次々と入れていく。
ひとつは白いフニフニのもの。気持ち良くてずっと触っていたくなる。
もうひとつは球状のたんぽぽの綿毛みたいなやつ。ふわふわだ。手で握るとキューッと小さくなるのに力を緩めるとまあるい綿毛に戻る。そしてほわっとどことなく暖かく感じる。
宝石龍さまは白いフニフニの籠を指さす。
『こちらは雪くらげの住処の一部じゃ。住処と言ってもあいつは漂うことが好きでな。ただ寝ているうちに知らないところに流されないように、岩や草にこの白いのを作ってだな、巻きつけて流されないようにするんだ』
なるほど、考えられているっていうか、神秘というか。
次に隣の綿毛を見た。
『こちらはシロホウシ。海きのこのホウシじゃ。海からあげればただのホワホワとしたものになる。お前が取る分ぐらいなら構わないが、多くの人間に乱獲されれば、生き物の生態系が崩れるやも知れん。だから、これが何なのかは、人には伝えないようにして欲しい』
わたしは兄さまたちと顔を合わせて頷いた。
この雪くらげの住処はぬいぐるみの中に入れるのにピッタリの素材だ。
そしてシロホウシは上掛けの中に入れたら気持ち良さそうな気がする。
「ありがとうございます」
雪くらげの住処とシロホウシ、急いで集めさせたから量があまりない。後で持って行かせるというので、十分ですと辞退した。宝石龍さまの元の大きさだったら少なく感じるのかもしれないけれど、これだけあればぬいぐるみも上掛けも相当な量ができるよ。うん、ぬいぐるみ作りに足りないのは圧倒的にファーミーの毛皮だ。
最後に宝石龍さま、もとい海の主人さまと握手する。
『お、お前は……』
海の主人さまは驚いたようにわたしを見た。
?
『海の護り手よ、何だ?』
『手を通じて魔力を感じた。そなた、少し前にこの地に祝印をしたであろう?』
祝印?
口移しで魔力を注ぐ……、そんなことした覚えは……。
頭の中に海で転んだ時の映像が浮かんだ。
あ。
『そういえば、転んだな』
「転んだね」
『実はこのあたりの妾の結界が緩んでいたようなのじゃ。それで変なのが迷い込み、ますますこの辺り一体が弱っていた。それがある日を境に魔力が吹き込まれ、眷属たちが元気になった。それで妾に結界のことを知らせにきて、直すことができた。あのままだったら、地に近いところに魔物が溢れ、あのギャング1匹どころではなく森の地に多大なる迷惑をかけた事だろう。そうならずに済んだのはそなたが魔を吹き込んでくれたから。感謝する。海の欲しい物があるときは眷属に言うがよろしい。すぐに整えよう』
こうしてわたしはぬいぐるみの中に入れる素材をゲットしたのだった。
転んだだけなのに、いいのだろうか?
と思いつつ、顔がにやけてしまう。
海辺で呼び出せば宝石龍さまの背に乗るよう言われ、わたしたちは顔を見合わせた。もふさまに子犬サイズになってもらって抱えて、宝石龍さまに乗り込む。そのまま海に入った時は思わず息を止めたけど、宝石龍さまの周りがシールドされていて、濡れもせず息もできた。
着いたところは宝石龍さまの住まいのひとつという聖域だった。海の中だけど、透明のドームのようになっていて、海の様子が見えた。双子が駆け回り、兄さまも目を輝かせて空を仰ぐ。水中から海の様子が見られるってすごい。
空の主人さまと同じく、わたしたちと話せないのかを尋ね、魔具で兄さまたちとも話せるようにした。宝石龍さまはシュシュシュシュと小型化した。子供の背丈の何とも上品な龍さまになった。
テーブルについてからわたしたちは改めてお礼を言った。
宝石龍さまはニヤッと笑ってから、馳走を持ってきてくれたんだろう、それで貸し借りなしじゃと言った。
袋からどんどんお皿を出して、兄さまたちがそれを龍さまの前に並べていく。
目を輝かせながら、これは何だと尋ねられるので、聞かれるままに料理を答えて言った。
フォークを使って上品に召し上がる。
『森のの言ったことに偽りなしじゃな。どれも本当においしい』
よかったとわたしたちは顔を見合わせた。
みんなでお茶を飲みながら、ケーキ仕立てにしたカップケーキを食べていると
『そういえば、何をしに海に来たのじゃ?』
と尋ねられた。
『前に海のが言っていただろう? 白くてほわっとして温かいのがあると』
宝石龍さまは頷いた。
『リディアが欲しいというので、それが何だったか、獲れるものか、海の者に聞いていたのだ。そのうちにあやつが現れて』
『そうだったか。何に使うのじゃ?』
わたしはぬいぐるみと上掛けの話をした。
『人というのは、いつも面白いことを考えつくものだのぉ』
そこで言葉を切る。
『リディアと言ったか? おぬしは守ることができるか? その白い物が何か聞かれても海の物だと答えずにいられるか?』
「言っていけないのなら、それは守ります」
『そうか、それなら、いいだろう』
宝石龍さまは眷属たちに何かを伝え、眷属たちはあっという間に空を泳ぎ、透明な壁を突き抜け海の中を泳いで行った。そこから水が漏れてくることもない。
それも不思議だ。
お茶を飲み終える頃、眷属たちが何かを咥えて帰ってきた。
籠の中に次々と入れていく。
ひとつは白いフニフニのもの。気持ち良くてずっと触っていたくなる。
もうひとつは球状のたんぽぽの綿毛みたいなやつ。ふわふわだ。手で握るとキューッと小さくなるのに力を緩めるとまあるい綿毛に戻る。そしてほわっとどことなく暖かく感じる。
宝石龍さまは白いフニフニの籠を指さす。
『こちらは雪くらげの住処の一部じゃ。住処と言ってもあいつは漂うことが好きでな。ただ寝ているうちに知らないところに流されないように、岩や草にこの白いのを作ってだな、巻きつけて流されないようにするんだ』
なるほど、考えられているっていうか、神秘というか。
次に隣の綿毛を見た。
『こちらはシロホウシ。海きのこのホウシじゃ。海からあげればただのホワホワとしたものになる。お前が取る分ぐらいなら構わないが、多くの人間に乱獲されれば、生き物の生態系が崩れるやも知れん。だから、これが何なのかは、人には伝えないようにして欲しい』
わたしは兄さまたちと顔を合わせて頷いた。
この雪くらげの住処はぬいぐるみの中に入れるのにピッタリの素材だ。
そしてシロホウシは上掛けの中に入れたら気持ち良さそうな気がする。
「ありがとうございます」
雪くらげの住処とシロホウシ、急いで集めさせたから量があまりない。後で持って行かせるというので、十分ですと辞退した。宝石龍さまの元の大きさだったら少なく感じるのかもしれないけれど、これだけあればぬいぐるみも上掛けも相当な量ができるよ。うん、ぬいぐるみ作りに足りないのは圧倒的にファーミーの毛皮だ。
最後に宝石龍さま、もとい海の主人さまと握手する。
『お、お前は……』
海の主人さまは驚いたようにわたしを見た。
?
『海の護り手よ、何だ?』
『手を通じて魔力を感じた。そなた、少し前にこの地に祝印をしたであろう?』
祝印?
口移しで魔力を注ぐ……、そんなことした覚えは……。
頭の中に海で転んだ時の映像が浮かんだ。
あ。
『そういえば、転んだな』
「転んだね」
『実はこのあたりの妾の結界が緩んでいたようなのじゃ。それで変なのが迷い込み、ますますこの辺り一体が弱っていた。それがある日を境に魔力が吹き込まれ、眷属たちが元気になった。それで妾に結界のことを知らせにきて、直すことができた。あのままだったら、地に近いところに魔物が溢れ、あのギャング1匹どころではなく森の地に多大なる迷惑をかけた事だろう。そうならずに済んだのはそなたが魔を吹き込んでくれたから。感謝する。海の欲しい物があるときは眷属に言うがよろしい。すぐに整えよう』
こうしてわたしはぬいぐるみの中に入れる素材をゲットしたのだった。
転んだだけなのに、いいのだろうか?
と思いつつ、顔がにやけてしまう。
126
お気に入りに追加
1,239
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
最強九尾は異世界を満喫する。
ラキレスト
ファンタジー
光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。
その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。
だけど、スカウトされたその理由は……。
「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」
……そんな相性とか占いかよ!!
結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。
※別名義でカクヨム様にも投稿しております。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる