プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
163 / 823
4章 飛べない翼

第163話 茶会のテーマ

しおりを挟む
「新しく孤児院を作るのは反対」

 そういうとアラ兄とロビ兄が泣きそうな顔になった。

「子供自立支援団体ぐらいがいいんじゃないかな。孤児院があるって、安易な考えの人が増えたら困るから」

 今まであったのならやぶさかではないが、新しく作るとなると躊躇する。そういう境遇におちいった子供に居場所ができるのは素晴らしいことだとは思うんだけどね。

「子供自立?」
「支援?」
「団体?」

 繰り返すビリーとカールとサロに頷く。

「これから自分たちの足で生きていくのを支援する、そういう機関があってもいいと思う。支援は仕事の斡旋……手配だね。手配する代わりに、報酬の何%かは手数料としてもらって、その手数料を団体の資金とする」

 アラ兄に抱きつかれる。

「リーは凄い!」

 凄いのはみんなの方だとこっそりと思う。
 わたしみたいに後から理屈をこねるのではなく、感情のままに手を差し伸べることができることの方が、何倍もスゴイことだ。

 ふと目をやると、ペルシャが揺れるもふさまの尻尾をつかもうとしていた。マレクとキール、ドゴとペルシャはもふさまが気になって仕方ないみたい。もふさまもそれをわかっていて、4人のそばで尻尾を揺らしてくれている。

「最初の資金はどうするんだ?」

 穏やかに、だけれど頭の中では死角がないか、理屈の通らないところはないかチェックしているのだろう兄さまに答える。

「チャリティーのお茶会にしようかと思って」

「チャリティー?」

「慈善事業のこと。貴族が好きそうでしょ」

 それまで多分みんなの言い出すことがわかっていながら、様式美のように聞いていた兄さまの顔が、本当に驚いているので一本取れたようで嬉しい。

「お茶会でお菓子を食べてもらって、その後に販売して高く買ってもらうの。そのお金は子供自立支援団体を設立しますとして。お菓子としては高くても、同時に寄付することにもなるなら、お財布も緩むよ」

 お茶会のテーマ、本当何にしようか全然ピンとくるものがなかったんだけど。ここに来て、焦点があった。

「よ、よくそんなこと思いつくな」

 ビリーが恐ろしげに言う。

「お金はあるところに出させる、それが基本」

「リディー、悪い顔してるよ」

 アラ兄に窘められる。

「おれの妹、かわいいけど、そういう悪い顔もカッコ良くて。うん、かわいくて、かっこいい!」

 そうロビ兄が言えば、町の子とセズは何も言わずにわたしから目を逸らした。

「で、どうする?」

「ロサにチャリティーにしていいか確認とる。承認されればモロールに何か言われても、殿下を巻き込んだ大事になってるって逃げられると思う」

 多分、父さまが恐ろしく怒ると思うけど。
 双子が父さまに問題を持ち込みたくなかったのもわかる。母さまのつわりが始まって、父さまもそれで参っているから。わたしの時はかなり早い段階からながーくあったので、今回はつわりがないかもって思ったみたいなんだよね。それがまた急に辛いのが来たもんだから、母さまは憔悴している。
 そんな時だから、余計に言いにくかったはずだ。

「わかった。じゃあ、このことはこれから私が責任を持つ。セズ、少しの間人目につかないよう暮らしてもらう。モロールに帰らなくていい算段がついたところでシュタインの領主と話してもらうことになる。それでいい?」

「う、うん」

「よし、それなら、アラン、ロビン、森の中に小屋を作れ。なんで燻小屋に住まわせたんだ」

「これでいいってセズたちがいうから」

 あっという間に目立たない小屋を双子が作り上げ、わたしはそっと魔石を結界石にして、埋め込んだ。ここらへんで獣は降りてこないとは思うけど、念のため。
 中にテーブルを作り、クロアオーンの毛皮を敷いた。そして温石といくつかも毛皮を置いておく。わたしの作業着を出していく。値下げされたのを買っておいてよかった。テーブルにはハリーさんのところで買ったおにぎりを人数分出しておく。急にいっぱい食べるとお腹がびっくりするかもしれないからね。
 外では少し離れたところに、トイレスペースを作っていた。

 川原でカマドを石で作りスープをこしらえる。ビリーたちが持ってきた食べ物を煮込んだ。
 セズのサイズがないので申し訳ないが、他の子たちが服を着替えるとそれだけで少し暖かそうに見えた。スープは見る間になくなる。あったかくておいしかったみたいだ、よかった。

 また明日来ると帰ろうとすると呼び止められて

「ありがとう」

 セズが泣き笑いの顔で言った。今までの突っぱねるような雰囲気はもうない。一番お姉さんだからみんなを守らなくちゃいけなくて気を張っていたんだね。

 みんなと別れて、家に向かっていると、父さまが後ろからケインでやってきた。
 あっぶなー。

「今日は森で遊んでたのか?」

「うん、そう」

 あははと笑っておく。
 父さまが訝しんでいるのを感じて慌てていう。

「父さま、お茶会のテーマ決めた。ロサに手紙送りたい」

「ああ、そうなのか。今日中に手紙を書きなさい。明日アルノルトに送らせよう」


 ケインの世話をした。今日はワラで最後に体を擦る。ブラッシングよりもこれの方が喜ぶ。リンゴンも好きなので、今日はリンゴンにした。
 家に入る時間をずらして、畑から野菜をいろいろ収穫する。セズはちょっとした料理ができるようだったから、野菜と肉を渡しておこう。


 お風呂を挟んで、夕飯まで魔具作りをする。

『マスター、ちょっといいですか?』

「はい、なんでしょう?」

『マスターの魔力を増やすのにいくつかのことをしてみたんですが、もうこれ以上は同期でもしないと増やせないようなのです』

 ん? ハウスさんはわたしの魔力を増やそうとしていたの?
 よくよく聞いてみると、サブハウスを作るのに、わたしの魔力がギリだそうなのだ。それでね、少しでも増やせないかとなんやかやとやっていてくれたらしい。そしてその同期をするにしても、今のわたしのレベルだとそう大して増やせないらしい。

「ステータスオープン」

 もふさまもステータスを覗き込む。ダンジョンも通っていたし、それなりにアップしたと思ったんだけどな。いつも幸運値までは見ていたんだけど、そこより下は見ていなかった。ちゃんと見たら、スキルがいくつか追加されていた。
 だけど、そのスキルが意味不明。


名前:リディア・シュタイン(5) 人族 
性別:女
レベル:1
職業:???
HP:51/58
MP:2363/5593
力:15
敏捷性:15
知力:77
精神:92
攻撃:16
防御:16
回避:90
幸運:85
スキル:生活魔法(火A・水A・土S・風A・光S・無SS)
    自動地図作成(レベル6)
    探索(レベル5)
    仮想補佐(タボ・レベル17)
    隠蔽(レベル3)
    付与(レベル5)
    鑑定(レベル3)
    翻訳(レベル2)
    仮想補佐網・創造(ハウス・レベル73)
    厨房の責任者
    村人の叡智
    言の葉師
    路地裏の歌姫
    照明の達人
    六花のマイスター
    開拓魂
ギフト:+
特記:サブハウス・サブルーム所有     

(ちょこちょこ上がっていたレベル・95話よりアップしたところ)
HP  +1
MP  +456
力  +2
知力 +2
精神 +15
攻撃 +1
防御 +1
幸運 +3
生活魔法(土)  レベルアップ
自動地図作成   レベルアップ
探索       レベルアップ
仮想補佐     レベルアップ
隠蔽       レベルアップ
付与       レベルアップ
鑑定       レベルアップ
翻訳       レベルアップ
仮想補佐網・創造 レベルアップ
スキル追加:厨房の責任者
      村人の叡智
      言の葉師
      路地裏の歌姫
      照明の達人
      六花のマイスター
      開拓魂
サブハウス・サブルーム所有

 厨房の責任者はわかる気がする。料理系だろう。村人の叡智って……叡智って言葉はいい感じだけど、村人ってところが下っ端感を醸し出している。言の葉師? 言の葉は言葉のことだろうけど……? 歌姫ってトカゲ系の方々に歌って寝かせたから? アリとクイの子守唄にもなったみたいだけど……それにしても〝路地裏〟ってところが、レベル低っ。照明の達人ってライトのこと? 六花のマイスターはさっぱり。開拓魂、なぁに、領地をよくしようってスキルになるの??
 まあ、考えてもわからないから放っておくしかない。
 どうしたらレベル2になれるんだろう? 兄さまたちはレベル12まではすぐに上がったって言ってたけど。
 わたしは同じくダンジョンに行っていたのに、レベル1のままなんですけど。
 とにかくレベル2になれるまで魔物を倒しまくろう。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...