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4章 飛べない翼
第151話 やることリスト
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目を覚ますと、もふさまのドアップだった。
『起きたか?』
「おはよう、もふさま」
『おはよう、リディア』
体を起こして体を伸ばす。
やっぱり、自分の部屋は落ち着くな。もふさまが器用に口で咥えてカーディガンをわたしの肩にかけた。
「ありがと」
真冬は去ったといっても、朝晩はまだまだ冷え込むね。
昨日のお昼過ぎに、お別れをして砦を出た。町に回って、そこから空っぽダンジョンに向かった。少し手前で幌馬車を収納ポケットに収め、〝交代〟の時間を待った。ふたりのうちひとりの門番さんが交代をするのに、小屋に入り見張りがひとりになった時に茂みに石を投げた。
なんだ?と門番さんが向かったところでわたしたちはダンジョンの中に入った。ケインもミラーダンジョンに入るのに慣れていたから躊躇なく入ってくれた。
アオを呼び出して、ミラーダンジョンに行き、サブハウスからメインハウスに移動した。町を出てからはちゃんと探索で人がいないことを確かめている。夕方過ぎには家に着いた。
家は、ご飯もおいしいし、湯船、最高! 砦にはお湯をかけられるところはあるんだけどね。それだと体はあたたまらない。おじいさまとシヴァのためにお風呂は砦にあって欲しいよ。それにしてもウチは本当に快適だな!
ハンナやウチで働いてくれることになった人たちは、引き継ぎを終えてから、こちらにきてくれる。それまでに町の家も住めるようにしておかないとだし、相談したり、決めたり、やることは山積みだ!
忘れないうちに書いておかないと!
わたしは顔を洗う前に机に紙を置き、思いついたことを書いていった。
・ビリーたちに儲ける気あるか
・子供働く法案
・砂糖、小さい村
・調理器具
・料理
・お店お金
・移動手段
・サブサブハウス
・お茶会
「リディー、起きた?」
ノックと兄さまの声がする。
「起きてる。おはよう」
椅子から飛び降りる。もふさまにカーディガンを咥えてもらってこけずにすんだ。
うーーん、いつになったら無事に飛び降りられるようになるんだろう。
ドアを開ければ、眩しいスマイルだ。
「起きていたのなら、何をしていたの?」
「やることリスト書いてた」
「見てもいい?」
わたしは頷いた。
「リディー、靴下はすぐに履かないと、風邪ひいちゃうよ」
兄さまはわたしをベッドに座らせて、用意してあった靴下を履かせてくれる。
一応、自分で履くって言ったんだけどね。
「はい、いいよ」
「ありがと」
兄さまは机に歩いて行って、紙をみる。
「ビリーたちに儲ける気があるか?」
「うん、みんなに聞くの」
「……売り出すお店を本当に子供でやろうと思っているの?」
わたしは頷いた。
「大人はもう、お仕事あるでしょ? だから、手が空いているの子供だけ」
「子供は働いちゃいけないから……」
「うん。でも領地の特別の法で、現金じゃなくて、例えばお肉とか日用品って物品だったら、お手伝いのお礼にできるんじゃないかなって思って」
「お礼?」
「うん。欲しいもの、領主が買ってそれを物品で渡す、それなら良さそうじゃない?」
お金だと報酬になってしまうけれど、物品ならお礼で逃げられるんじゃないかと思うんだよね。
「……長い時間はダメだよ」
「うん、そうだね、1時間ぐらいのバイト。店自体も営業時間短い」
「バイト?」
「ええと、お手伝い?」
みんなだって遊ばないとだから、担当は1時間から2時間でぐるぐる回していく。
「お菓子や料理を作るのは?」
「どれだけ売れるかはわからないから。最初はわたし、作りだめする」
「収納袋か」
「日替わりで売るもの変える」
「なるほど」
「領地のもの使って。燻したお肉もいいかも。わたし、備蓄の保存食辛かった」
「あれは……前はあれが普通だと思っていたけれど、今ウチの保存食を知っていると辛かったね」
やっぱり兄さまもそう思ってたんだね。
『我も、あれなら食べない方がマシだと思った』
もふさまがしみじみ言うので可笑しかった。
「領地の物を、か」
「うん」
「これ、父さまに」
「リディー、それは渡さないほうがいいんじゃないかな?」
「どうして?」
「父さまが見るってことは母さまも見ると思うんだ」
わたしはそうだろうねと頷いた。
「母さま見ると、何?」
「その、ね、字がそろってないから、毎日のやることが増えるんじゃないかと思って」
何ぃ? でも、そうかも。
また書き取らされたり、……物語は完結させたしな。
これはメモ書きで、見せるのはよそう。
「そうする」
「じゃあ、顔を洗いに行こうか」
うんと頷いて、兄さまと手をつないで外に出る。尻尾をふわりと揺らしながら、もふさまもついてきた。
顔を洗ってから、母さまたちにおはようと挨拶するとギューっと抱きしめられた。
「どうしたの?」
「久しぶりだから、ギューっとしたくなったの」
そっか。じゃあわたしもとギューっと抱きつく。
「姉さまになっても、ギューってしていい?」
ギューが強くなる。
「……もちろんよ。リディーがお姉さんになっても、大きくなっても、リディアが大切で、とても大事なのは変わらないわ」
えへへ。
久しぶりのみんな揃っての朝ごはんだ。ピドリナさんのご飯はやっぱり、おいしい! わたしたちは再確認した。昨日の夕飯は兄さまの魔物退治や、砦での魔物撃退話で終わっちゃったからね。
砦の食事やお菓子事情はあまり明るくないことを話した。
ピドリナさんが、リディアお嬢さまのアイデアのものを食べた後なら辛いでしょうねという。いえ、ピドリナさんのご飯がおいしいからだといえば、確かに自分も工夫しておいしくしたいと考える派だけれど、わたしの料理法からいっぱい手がかりを得たと言ってくれる。えへ、そうかな?
今日は午後から町に行くことになっている。町の家で必要な物を注文したりするそうだ。だからアルノルトさんも一緒でケインのひく馬車で行く。
いつものルーティーンをこなし、母さまにはお茶会の主宰者がやることを聞いた。やっぱりやること盛り沢山じゃないか。人の選抜と招待状などはロサが受け持つらしいが。それにしたって、テーマとか、そんなん決めるん? 言うなれば人が集まってお茶飲むだけなのに。貴族、仰々しい。めんどくさっ。
すぐには考えつかないだろうから、なんとなく考えていこう。
『起きたか?』
「おはよう、もふさま」
『おはよう、リディア』
体を起こして体を伸ばす。
やっぱり、自分の部屋は落ち着くな。もふさまが器用に口で咥えてカーディガンをわたしの肩にかけた。
「ありがと」
真冬は去ったといっても、朝晩はまだまだ冷え込むね。
昨日のお昼過ぎに、お別れをして砦を出た。町に回って、そこから空っぽダンジョンに向かった。少し手前で幌馬車を収納ポケットに収め、〝交代〟の時間を待った。ふたりのうちひとりの門番さんが交代をするのに、小屋に入り見張りがひとりになった時に茂みに石を投げた。
なんだ?と門番さんが向かったところでわたしたちはダンジョンの中に入った。ケインもミラーダンジョンに入るのに慣れていたから躊躇なく入ってくれた。
アオを呼び出して、ミラーダンジョンに行き、サブハウスからメインハウスに移動した。町を出てからはちゃんと探索で人がいないことを確かめている。夕方過ぎには家に着いた。
家は、ご飯もおいしいし、湯船、最高! 砦にはお湯をかけられるところはあるんだけどね。それだと体はあたたまらない。おじいさまとシヴァのためにお風呂は砦にあって欲しいよ。それにしてもウチは本当に快適だな!
ハンナやウチで働いてくれることになった人たちは、引き継ぎを終えてから、こちらにきてくれる。それまでに町の家も住めるようにしておかないとだし、相談したり、決めたり、やることは山積みだ!
忘れないうちに書いておかないと!
わたしは顔を洗う前に机に紙を置き、思いついたことを書いていった。
・ビリーたちに儲ける気あるか
・子供働く法案
・砂糖、小さい村
・調理器具
・料理
・お店お金
・移動手段
・サブサブハウス
・お茶会
「リディー、起きた?」
ノックと兄さまの声がする。
「起きてる。おはよう」
椅子から飛び降りる。もふさまにカーディガンを咥えてもらってこけずにすんだ。
うーーん、いつになったら無事に飛び降りられるようになるんだろう。
ドアを開ければ、眩しいスマイルだ。
「起きていたのなら、何をしていたの?」
「やることリスト書いてた」
「見てもいい?」
わたしは頷いた。
「リディー、靴下はすぐに履かないと、風邪ひいちゃうよ」
兄さまはわたしをベッドに座らせて、用意してあった靴下を履かせてくれる。
一応、自分で履くって言ったんだけどね。
「はい、いいよ」
「ありがと」
兄さまは机に歩いて行って、紙をみる。
「ビリーたちに儲ける気があるか?」
「うん、みんなに聞くの」
「……売り出すお店を本当に子供でやろうと思っているの?」
わたしは頷いた。
「大人はもう、お仕事あるでしょ? だから、手が空いているの子供だけ」
「子供は働いちゃいけないから……」
「うん。でも領地の特別の法で、現金じゃなくて、例えばお肉とか日用品って物品だったら、お手伝いのお礼にできるんじゃないかなって思って」
「お礼?」
「うん。欲しいもの、領主が買ってそれを物品で渡す、それなら良さそうじゃない?」
お金だと報酬になってしまうけれど、物品ならお礼で逃げられるんじゃないかと思うんだよね。
「……長い時間はダメだよ」
「うん、そうだね、1時間ぐらいのバイト。店自体も営業時間短い」
「バイト?」
「ええと、お手伝い?」
みんなだって遊ばないとだから、担当は1時間から2時間でぐるぐる回していく。
「お菓子や料理を作るのは?」
「どれだけ売れるかはわからないから。最初はわたし、作りだめする」
「収納袋か」
「日替わりで売るもの変える」
「なるほど」
「領地のもの使って。燻したお肉もいいかも。わたし、備蓄の保存食辛かった」
「あれは……前はあれが普通だと思っていたけれど、今ウチの保存食を知っていると辛かったね」
やっぱり兄さまもそう思ってたんだね。
『我も、あれなら食べない方がマシだと思った』
もふさまがしみじみ言うので可笑しかった。
「領地の物を、か」
「うん」
「これ、父さまに」
「リディー、それは渡さないほうがいいんじゃないかな?」
「どうして?」
「父さまが見るってことは母さまも見ると思うんだ」
わたしはそうだろうねと頷いた。
「母さま見ると、何?」
「その、ね、字がそろってないから、毎日のやることが増えるんじゃないかと思って」
何ぃ? でも、そうかも。
また書き取らされたり、……物語は完結させたしな。
これはメモ書きで、見せるのはよそう。
「そうする」
「じゃあ、顔を洗いに行こうか」
うんと頷いて、兄さまと手をつないで外に出る。尻尾をふわりと揺らしながら、もふさまもついてきた。
顔を洗ってから、母さまたちにおはようと挨拶するとギューっと抱きしめられた。
「どうしたの?」
「久しぶりだから、ギューっとしたくなったの」
そっか。じゃあわたしもとギューっと抱きつく。
「姉さまになっても、ギューってしていい?」
ギューが強くなる。
「……もちろんよ。リディーがお姉さんになっても、大きくなっても、リディアが大切で、とても大事なのは変わらないわ」
えへへ。
久しぶりのみんな揃っての朝ごはんだ。ピドリナさんのご飯はやっぱり、おいしい! わたしたちは再確認した。昨日の夕飯は兄さまの魔物退治や、砦での魔物撃退話で終わっちゃったからね。
砦の食事やお菓子事情はあまり明るくないことを話した。
ピドリナさんが、リディアお嬢さまのアイデアのものを食べた後なら辛いでしょうねという。いえ、ピドリナさんのご飯がおいしいからだといえば、確かに自分も工夫しておいしくしたいと考える派だけれど、わたしの料理法からいっぱい手がかりを得たと言ってくれる。えへ、そうかな?
今日は午後から町に行くことになっている。町の家で必要な物を注文したりするそうだ。だからアルノルトさんも一緒でケインのひく馬車で行く。
いつものルーティーンをこなし、母さまにはお茶会の主宰者がやることを聞いた。やっぱりやること盛り沢山じゃないか。人の選抜と招待状などはロサが受け持つらしいが。それにしたって、テーマとか、そんなん決めるん? 言うなれば人が集まってお茶飲むだけなのに。貴族、仰々しい。めんどくさっ。
すぐには考えつかないだろうから、なんとなく考えていこう。
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