プラス的 異世界の過ごし方

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3章 弱さと強さと冬ごもり

第124話 ダンジョン再び②地下4階 洞窟エリア

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「あ!」

 地下4階に降りてすぐに、わたしは叫び声をあげた。

「どうした?」

「水色の点、また出た! 消えた」

「どっちだ?」

「あっち」

 指をさしても岩があるだけ。父さまも眉根を寄せる。

「まあ、いずれ出会うだろう。気を抜かずに行こう。気配を探れ」

 みんな頷く。
 地下4階は洞窟フィールドだ。
 地下一階の石の通路とはまた違う鍾乳洞の中にいるような感じだ。氷柱のように上から垂れ下がった部分から水滴が落ちる。至るところに水溜りがあった。

「リディアは濡れると風邪ひくな」

 父さまが困ったように顎を触る。移動するのに水溜りを全部避けるのは難しそうだ。足が絶対に濡れる。

『我が運ぼう』

 もふさまがライオンサイズに大きくなった。父さまに抱きあげて乗せてもらって、アオもわたしの前に乗る。

「もふさま、ありがと」

「ありがとうでち」

 もふさまはそっぽを向いたけど、すかさず後ろを向いてチェックすると尻尾が揺れていた。
 というわけで、隊列を変更した。最初にアルノルトさん、次がもふさまとわたしとアオ。次が兄さま、双子、父さまと続いた。

「明るくなってきましたね」

 笑いを含んだ声でアルノルトさんが言った。

「あ、明るくなってくると」
「その先にヒカゴンがいて」
「倒すと、きれいな湖になるんだよね?」

 双子や兄さまは攻略ノートを熟読してきたみたいだ。
 明るくなってきてからが長かった。わたしはもふさまに乗っかっていて正解だったかも。結構な距離があったもん。

「ヒカゴンが出てこないと、5階に行けないんだよね?」

 ロビ兄が疲れた声を出す。

「その通りです。確かに遠いですね。少し休憩しましょうか」

 水溜りを避けてわたしたちはひとところに集まった。おやつのジャムを挟んだパンとお茶を配った。

「このお茶、何?」

 アラ兄が目を大きくしている。

「ハーブ茶」

 いろんなハーブを入れてみた。疲労回復になるといいなと思って。

「キラキラしてるでち」

 キラキラ?

『スーッとする。リディア、このパンはいっぱい食べないと腹が膨れんな。もう少しくれ』

「はい。もう少しでお昼。お腹、空けておく、いいよ」

 もふさまの口の前に差し出すと、器用にパンを口に入れた。

「ノートを鵜呑みにはしていませんが、思ったより距離がありますね」

「おいらも思ったでち。ハイドラがデュカートの居住スペースにいたのはおかしいんでち。デュカートがサイレントリーフの中から出てきたのをハイドラにみつかるのがパターンなんでちけど。300年の間にダンジョンも変わっているかもしれないでち」

 父さまが顎を触りながら頷いた。

「それはそうかもしれないな。300年も経てば変わっていて当然だ」

 そっか。

「そういえば、ダンジョンで人と会ったことないって言ってたよね?」

 兄さまが問いかければアオは頷いた。

「このダンジョンには300年の間誰も入らなかったことになる。魔物の氾濫は起きなかったのかな?」

「元のダンジョンで人が入ってなかったら、元側で氾濫が起こったかもしれないでち」

「元のダンジョン?」

 アオは頷く。

「こっちはミラーダンジョンでち」

 そういえば、そんなことを言ってた。

「ミラーダンジョンって何?」

 ロビ兄が好奇心丸出しで尋ねた。

「えっとぉ。ダンジョン、あるでち。マスターのミラーのスキルで、鏡で映したみたいにそっくり同じダンジョンを人が来ないところに作ったでち。マスターは27階まではクリアしたから、27階まではこっちのダンジョンがメインになってるでち。あっちのダンジョンは27階まで空洞みたいなもんでち。でもどうせ、地下2階への扉を探せるものは少なかったから、いいと思うでち。28階からはあっちのダンジョンがメインになるでち。だから27階までクリアして、もっと下の階に行きたかったら。向こうの28階に行ってクリアしないとなんでち」
 
 っていうことは、27階まではこちらがメインであちらがサブ。28階からは向こうがメインでこちらがサブ。ってこと?

「ということは、そのあっちのダンジョンで魔物の氾濫は起こっているかもってこと?」

「そうでち!」

 伝わったことが嬉しかったのかアオが嬉しそうに言った。
 うわ、旨味はこちらでいただき、魔物の氾濫はあちらで、みたいな感じだったのか。

「あっちのダンジョンがどこにあるか知ってる?」

 アオは首を横に振った。

「マスターの魔法でハウスに直接行ったからわからないでち」

「27階までクリアする前に、あっちのダンジョンってのがどこにあるか調べないとだな」

 ロビ兄、気が早い。

「ちょうどいい休憩になったな、そろそろ行こう」

 父さまに促されて、わたしたちは腰をあげた。
 そしてわたしたちは肩透かしをくらった。休憩を終えて歩き出してすぐに、下への階段をみつけたのだ。ただ1匹の魔物にも遭わずに。



「魔物が移動したのかな?」

「そうかもしれないでち」

 考えてもわからないから、警戒しながら階段を降りる。きれいな湖を見たかったとちょっと思う。




 そして、やって来ました地下5階。
 見渡す限りの砂漠だ。風に舞う砂で風景が絶えず違って見える。
 砂の山があっという間にえぐられ、また違うところに山を作る。
 ノートにも方角がわからなくなると書いてあった。
 そして4階と違い、赤い点に埋め尽くされるほど。

『気をつけろ、その赤いのはサソリンだ。尻尾に猛毒の針を持っている。刺されたら死ぬぞ』

 もふさまはみんなに注意を促して、わたしのお腹に頭を寄せ、体勢を崩したわたしを背中に乗せる。アオもぴょんと乗り込んできた。
 アルノルトさんが短剣を投げてサソリンが真っ二つだ。
 小さな煙が出て、毒々しい赤い液体の入った小瓶が出た。
 アルノルトさんは手拭いごしに投げた短剣を回収する。

「ああ、見張りだったのかな。気をつけてください」

 アルノルトさんが鋭く言った。
 風でえぐられ低くなった砂地が赤い甲羅に埋め尽くされている。マップに出ている赤い点と同じ分布だ。
 川のように、サソリン大行進で、小高いこちらに向かってきている!
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