プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
110 / 930
3章 弱さと強さと冬ごもり

第110話 名も無いダンジョン①たったひとりの冒険者

しおりを挟む
 アルノルトさんはニコッと笑って、それから言った。

「このダンジョンは一般的ではありません。それはどこかわかりますか?」

 一般的でない? わたしは兄さまと双子と顔を見合わせた。

「あっ。この人、ひとりだ」

「腕に自信があるんじゃない?」

 アラ兄が意見するとロビ兄は首を横に振った。

「いや、〝人〟が全然出てこない。書いてないだけかもしれないけど。メモ書きにあった? 誰かと会ったとか、戦っているのを見たとか」

 そう尋ねられてやっとわかる。
 ノートはダンジョンに入った時のことが書かれていた。日記みたいな感じに。そこに考察したこととか、後から思ったことをメモ書きで足されていた。
 強ければ単独でダンジョンに入ることもあるだろうけれど、他の〝人〟の気配が全くしない攻略ノートだった。ロビ兄のいうとおり、書いてないだけかもしれないけどね。
 ダンジョンは1か所しか行ったことないけど、人とすれ違うし、戦っているのを見かけたりした。時には情報交換をしたりもする。でもそういった記述は全くなかった。

「メモ書き、思いついたこと。〝人〟のこと、全くなかった」

 思い出しながら力強く伝える。

「そうです。記述を読む限り、このダンジョンは彼しかいない、そのように感じました。書いてないだけかもしれませんが。ダンジョンにはレベルがあり、それを超えていないとダンジョンには入れません。門番がいるはずですし。けれどそれを匂わすような記述もどこにもない。ダンジョンは単独で入ったとしても、規制があるので絶対に人とどこかしらで会うはずなんです。ですからこのダンジョンは一般的に知られているものではなく、彼がみつけ、公けにしなかったのではないかと思うのです」

「300年前はダンジョンをみつけても報告しなくてよかったのかな?」

 兄さまが首を傾げる。

「いや、ダンジョンの規制は今より昔の方が厳しかったはずだ」

 父さまが言った。
 ダンジョンってある日唐突に現れるものらしい。洞窟みたいだったり、穴だったり、塔だったり。それで近づかないように人は規制をひかれ、強さを誇るものが、それは何なのだと探りに入る。中には大体魔物がいっぱい。その強い人たちや鑑定の力のおかげで、ダンジョンというものがわかってきた。
 中に入らなければ早々危険はない。適度に入って魔物を狩ることが望ましい。ダンジョン内で魔物が倒れると、それは魔石を残して亡骸は消える。魔石も一定時間を持ってダンジョンに還るそうだ。つまり、それらを糧にしてダンジョンは〝在る〟らしい。糧がなくなると一時的に魔物を増やし、自ら糧を得る。時にはそれがダンジョンから溢れ飛び出すなんてことになるらしい。恐ろしい! だから、命を大事にとしながらも、ダンジョンに入り魔物を狩ることを推奨している。人知れずとも魔物が急に溢れ出すので人の目にとまりやすく、野良ダンジョンがみつからない可能性は低いはずなのだが。

「300年前、野良ダンジョンだとしても、今は知られているだろうね」

「でも、ラッキーマウスのいるダンジョンなんて評判になってそうだけど。あ、ラッキーだからみつかってないのか」

「そこです。私はラッキーマウスがウヨウヨいるダンジョンだけに、今も静かに生き延びて、ひっそりと在るのではないかと思います」

「アルノルトは、どこにダンジョンがあるか見当がついているの?」

 兄さまが瞳をキラキラさせてアルノルトさんに尋ねた。

「私はわかりませんが、前マスターのことに詳しい方がいらっしゃるでしょう?」

「「「「ハウスさん!」」」」

 わたしたちは声を揃え、そしてそこにいたメンバーでメインルームへと転移した。



「ハウスさん!」

 呼びかけると七色のヒレ耳素敵女性が現れる。

『はい、いかがしました? マスターに皆さま』

「ハウスさんは、このダンジョン、どこだかわかる?」

 わたしは攻略ノートを見開いて、ハウスさんに見せるようにする。

 ハウスさんは目を細めた。

『申し訳ありません。家の中のことならともかく、外のことになると私には難しいのです』

 ……そっか。わたしはうなだれたが、アルノルトさんは質問をする。

「では、〝ここ〟からよく出かける場所はありませんでしたか?」

 バッとわたしたちはハウスさんを見た。
 ハウスさんはにっこりと笑った。

『よく、ご存知ですね。前マスターは、よく同じところに出向かれてました』

「それ、教えてもらう、できますか?」

『はい、マスター、ご案内させていただきます』

 ご案内?
 わたしは首を傾げた。



 次の瞬間、青みがかった石造りの部屋にいた。
 ベッドがひとつと机がひとつ。本棚とタンス? ドアがひとつ、見える。キッチンらしきものがある。わたしたちは部屋の中央に身を寄せ合うようにしていたが、机の上にモニターが現れた。50インチはありそうな大きなやつ。ガガガっと音がして、そのでかいモニターいっぱいにハウスさんの顔のアップ。

 そのモニターとの間の空間に急に黄色い毛玉をつけた真っ白いものが降り立った。

『リディア!』

「もふさま!」

 急にひよこつきのもふさまが現れて驚く。

『なんだ、ここは?』

「わからない。急に、ここ来た」

『さすが、もふさまですね、私を通さずにサブルームに行かれるとは』

 モニターのハウスさんが目を見開いている。こちらのことが見えているようだ。

「サブルーム?」

 父さまが聞きとがめた。

『ハウスよ、説明しろ。リディアたちをどうしてここに転移させた?』

 強い調子で言ったが、ひよひよひよひよ、ひよこちゃんたちがもふさまの上に乗っかろうとしていて、緊迫感はない。
 ハウスさんはハッとしたような顔をする。

『失礼しました。前マスターは説明はいいから行動に移せとおっしゃられていたので、つい転移を先にしてしまいました』

 丁寧に頭を下げる。

『そちらは前マスターがよく行かれたところに通じる、サブルームです』

 わたしは攻略ノートを読み、そこに書かれていたダンジョンを知りたくて、ハウスさんに尋ねたんだと、もふさまに話した。ハウスさんはダンジョンのことは知らなかったが、前マスターである魔使いさんがよく行く場所に心当たりがあった。それがこの〝サブルーム〟だったみたいで、わたしたちを転移させたのだと。

 もふさまは、わたしが帰ってきた気配がしたけれど、ひよこちゃんたちに暖をとられているため立ち上がることができず、部屋で待っていたようだ。気配が動き、メインルームに行ったのだと思った次の瞬間、わたしの気配が消えた。もふさまはわたしを追いかけて、このサブルームにきてくれたようだ、ひよこつきで。メインハウスが驚くような魔力の使い方をしたみたい。

『アオ、いるのでしょう? ご挨拶しなさい。現・マスター、リディアに』
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...