プラス的 異世界の過ごし方

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3章 弱さと強さと冬ごもり

第109話 シュタイン領の一歩目(下)

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 翌日、父さまはホリーさんたちと一緒に町に行った。
 ホリーさんたちとは春までお別れだ。
 本当はわたしたちも町に行くつもりだったのだが……。
 もふさまをひよこちゃんに取られ、わたしは風邪をひいた。母さまが光魔法をかけてくれたのだが、あまりよくならなかった。

 喉が痛い。なんかイラッとくる。いつもよりもっと上手くいかなくて、気づいたのは放り出した後だった。物にあたるんじゃありませんと怒られてしまった。わたしもそう思う。

 でもこれは早急になんとかしなくては。ひよこちゃんはもふさまから離れる気はない。わたしも引き離す気はない。でも着込むと寝づらいし、上掛けだけじゃ風邪ひくし。やっぱりデュカートの毛皮がいる!

 温風機やヒーターみたいのを魔具で作りたいと思ったんだけど、2属性をミックスした付与、わたしはできちゃうと思うのだが、世間一般様に怪しまれない納得できるものをと思うと、難しい。メインルームにあった魔道具についての本を読んでいるところだ。絶対道はあると思う、だけどみつけるまでに時間がかかりそうだ。この冬は間に合わない。

 魔具こと魔道具というのは、設計図通りに魔石のエネルギーを通すものを指す。設計図はスキル〝設計〟を持つ設計士が作る。設計図は〝魔法陣〟とも呼ばれる。その魔法陣を魔石に転写、付与するようだ。

 現代の魔具の作り方の本に載っているのは、火をつける、水を出すなどの一番シンプルな魔法陣のみ。図柄をどんなに真似てもそこに宿すのは魔が織りなす設計図でないといけないので、素人が描いても発現しないらしい。これは一番初歩の設計図だけれど、スキルで魔の回路を描き、それをスキル〝付与〟で核となる魔石に転写して、ほぉら魔具ができるんですよーということが書かれている。つまり概要で、それを読んでも作れるものではなかった。専門用語だけはバカみたいに使っているのにね。

 それに引き換え、300年より前の魔道具の作り方の本には、設計図に対する考え方が載っている。スキルがなければどうせできないから、ここまで載せているのかもしれないけど。
 やはりこの300年前後に魔法に関することをひと段階落とすとか、規制があったんじゃないかな? 300年前は無属性も属性のひとつで認知されていたようだもの。
 でも、規制があったってことは、魔法を上手く使ったりすると目をつけられるってことだ。どこが上限ラインか見極める必要がある。目をつけられないために! 学校に行ったりすれば少しはわかるんだろうけど、それじゃあ遅い。その前に凍死したらどうしてくれよう。

 わたしはもふさまの魔石を魔具にしちゃう、〝設計図を作る〟と〝付与する〟を合わせた付与を〝付与〟だと認知したので、思い浮かべればできる気がするんだよね。ドライヤーとヒーター、作ってしまいたい。ああ、でもまずいよな。家で使うだけでも、誰かに見られたら……。見られたら? 見られなかったらいい?
 メインルームにドライヤー置くのは許されるかな? 父さまに相談だ。
 そんなことを考えていたら、父さまが馬に乗って帰ってきた。

「リディー、体調はどうだ?」

「喉痛いけど、平気」

「じゃあ、町まで一緒に来てくれるか?」

 わたしは首を傾げる。

「鍛冶屋で作った包丁や泡立て器や鉄板、あれを売り出させてくれないかと相談されてな」

 わたしは父さまにほぼホールドされた状態で馬に乗って町に行き、ホリーさんの商団と合流した。
 雑貨はサロの家に、干し肉は肉屋になど、それぞれのお店とどんどん話をつけて、ウチの町にもホリーさんの商団がこまめに商品を運んできてくれることになった。

 鍛冶屋さんとも話して、レシピのように、調理器具を登録し、不労所得案件になった。ウチにはアイデア料、鍛冶屋さんは技術でそれを作り上げたところで、お互い納得する形で割合を決めた。こちらも春にお料理のレシピと一緒に登録をしに行くことになった。

 そんなこんなでホリーさんとハリーさんとは町で別れた。馬は返したので、父さまに抱っこしてもらったまま帰った。いつの間にか眠っていた。父さまの温かさでぐっすり眠れた。



 家に着いた時にちょうど目が覚めた。みんなに出迎えてもらう。アルノルトさんが真剣にダンジョン攻略ノートを読んでいたので、微笑ましくなってしまった。

「やはり、どこのダンジョンかは書いてありませんね」

 兄さまたちが、自分たちも読んでみたがわからなくて「ここに書いてあることだけだと、どこのダンジョンかわからないよね?」とアルノルトさんを巻き込んだみたいだ。

 父さまの抱っこは暖かくてよく眠れた。やっぱりあったかいの大事!
 と思ったら呟いていた。

「デュカートの毛皮、すっごく欲しい」

「デュカートという魔物は聞いたことがない」

 父さまが言えば、

「私も聞いたことがありません」

 とアルノルトさんが言った。

「ラッキーマウスは?」

 ロビ兄が元気に尋ねる。

「物語では聞いたことがあった。だから、想像上の魔物かと思っていた。幸運値が底上げされるなんて夢のような話だから」

「それに人の目に触れることもないはずです。なぜなら、幸運値が高いので、ラッキーマウスが困ることには決してならないのですよ」

 なるほどね。幸運値が高いとはそういうことか。それは最強だね。

「メインルームに、他のノートはないの?」

「続き、あった。あと、何冊かあった。まだ、見てない」

「皆様はダンジョンがわかったら、どうされるのですか?」

「「「「わかったの?」」」」

 子供たちで声を揃えたので、アルノルトさんが苦笑気味。

「いえ、わかりませんが、糸口はみつけられるかもしれません」

「わたし、デュカート毛皮、欲しい」

「おれ、ラッキーマウス、見たい」

 わたしが願いをいうと、ロビ兄もアルノルトさんに訴えかける。
 アルノルトさんは父さまをチラリと見る。

「興味深い。できるなら行ってみたいな」

 父さまが子供のような笑顔で言った。
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