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3章 弱さと強さと冬ごもり
第105話 冬の始まり
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季節は実りの秋から沈黙の冬へと移り変わっていく。
外に出るのをためらうような寒い日もあった。家の中でも外でもやることはいっぱいあるので、退屈する暇はないけどね。
領地を楽しく発展させることを考えながら、冬ごもりの準備をする。それが当面のやるべきことだ。それらをこなしながら、いかにしてやりたいことを組み込んでいくかがポテンシャルの上げ方だ。
なーんて。わたしのは主に食べ物に特化するけどね。仕方ない。食いしん坊なんだ。
聖域で摘んできたベアベリー。そのままでももちろんおいしくて、みんなでムシャムシャ食べたけど、ジャムを作ったら、やっぱりめちゃくちゃおいしかった! わたしはこれをおいしいパンにつけて食べたい!
ピドリナさんの焼くパンは売っているものよりずっとおいしいけれど、求めているのはふわふわのパンで……。マフィンとかスコーンでのジャムもおいしいけどさ、やっぱりふわふわのパンが食べたくて、天然酵母に挑戦することにした。ダンジョンのリンゴンを使ってね。ただいま天然酵母・発酵中なので、無事にできることを祈っている。パン作りは習いに行ってたけど、天然酵母のパンは作ったことないんだよね。でも、ふわふわパンを食べるために、わたし、頑張る。
母さまの呪い解除でお世話になった〝お礼〟の鞄にやっと着手した。みんな同じ型にしたので、3つ目からは要領がわかってきたのか少しずつ作業が早くなってきた。布を三つ折りして端を縫った蓋があるタイプのものだ。共布で斜めがけするためのストラップをつけた。心をこめて丁寧にやったつもりだが、縫い目は揃っていない……。そこは目溢しして欲しい。母さまが編み物でお花を編んでくれた。女子の鞄にはストラップにお花のチャームをつけられるようにした。ウエストポーチタイプのものもいいんだよねと見本を作ったら、母さまが売り物にできそうなものを作ってくれた。三つ折り斜めがけタイプとウエストポーチタイプ。あと、リュックみたいなのを作って、ホリーさんにプレゼンしたいと思っている。
冬ごもりの準備ができたら、鞄とは別に贈り物を考えている。これは時間があればできることだから、その時でオッケー。
冬ごもり中のお肉の話になったときに、町の人たちが何人か自分たちも狩りに行きたいと言ったそうだ。そこで父さまはその行きたい人たちに、獣ではなく魔物を狩る気はあるかを聞いたそうだ。町の人は驚いたみたいだけど、顔を見合わせ頷き合って、冬ごもりに必要だから狩りたいと言ったそうだ。その中にはビリーとカール、それからヤスも含まれていた。
父さまはもふさまに相談した。魔石で話せるようにはできないが、賢い子犬として一緒に魔物狩りをしてくれるかと。もふさまは大興奮。『行ってもいいぞ』と淡白に応じながら、尻尾は左右にビンビンに振れている。隠し切れてない。もふさま、父さまと兄さまたちが安全を確保しつつ、山のちょっと上に魔物狩りに行っている。もふさまが下へと追い立てる予定だとか。獲った魔物は、家宝の袋に入れるとのことだ。
ウチでは、編み物を習いたい人に来てもらって、手袋や帽子を拵えている。
帽子もだけど、ミトンタイプの手袋も、一度一緒に母さまと作ったら、母さまは理解して、もう飾り編みとかを入れている。こうなると棒編みも毛嫌いしないでセータとか編んでおけば良かったと思う。そうしたら商品が増えたのにな。
棒編みではマフラーしか編んだことがない。完成間際で棒が外れたんだ。1つずつ目を拾っていけば良かっただけなんだけど、不器用なわたしは向きを反対に拾ったり、余計に外れていって……終わりにしたことがある。
それからもっぱらのかぎ針派だ。かぎ針はモチーフ本はあったけど、セーターなどの大物を作る本はあまりなくて。セーターとかは棒で編むのが一般的だからだろう。
かぎ針派は少数かと淋しい気持ちだったから、惜しげもなく動画で作りかたを披露してくれるのをみつけたときは嬉しかったな。動画を見て、帽子や手袋やルームシューズを編んだ。楽しかった。目数の計算とかはさすがに覚えてなかったけど、ゲージのように、鎖編みで基準となる物差しを作っておいた。それで測って目数を数えて、あとは奇数と偶数を考えながら作れば形になった。母さまなんかは、すぐに意味もわかったみたいだから、家族のサイズの分のものをあっという間に作り上げた。
そんな母さまが先生になって、習いたい人がきている。内職になるかもと吹き込んだところ、意欲が上がった。これもホリーさんにプレゼンするつもりだ。売れれば、みんなの家の冬ごもりが手厚くなる。
母さまがフォバルの毛糸で編んでくれたもので一番嬉しかったのが、毛糸のパンツだ。こっちの布団は布を何枚も重ねて綴じているだけなので、寒くなると頼りない。わたしなんかもふさま抱っこして寝ているから結構暖かいはずなのに、それでも、もう寒さが堪えている。だから毛糸のパンツはほんっとありがたい! 母さまはよくわかっていてウエスト部分を長くしてくれてあるから、お腹も冷えなくていいのだ。他の人はよく耐えられるな。なんか暖かい布団になるようなものないのかなーと思っていたら、いいものがあると知ってしまったのだが……どうにか手に入れられないものだろうか。
川には石鹸づくりをする話が、人から人に伝わって、町の女性ほとんどが集まってしまった。幸い、ミニーとミニーのお母さんが気を利かせて、石鹸をいっぱい持ってきてくれたので、数は大丈夫そうだけど。
ひとまず、わたしが今までやっていたやり方を見せた。
雑だからか危ういからか、途中から見ていられなくなったのだろうお姉さんたちに奪われ、それでどうするの?と聞かれ〝次、こっちいれる〟と、いつもの料理のように指示を出すことになった。
いつも、物理的にうまくいかないところは魔法でやってたから。属性は水と風だけのはずだし、魔力もそうないはずなので、そう使っても変かと、家族といるとき以外は魔法をなるべく使わないようにしている。魔法は補助で使っている気でいたが、実際魔法を使わずにやろうとするといちいちつまづく。風魔法で鍋をかきまわせば問題ないけれど、溶かした石鹸をかき回すためにのぞき込めば、蒸気が熱いし、お玉を持った手も熱い。お玉を動かすのに案外力はいるし。ハーブの煮出したのも持つと熱いし。……魔法メインでわたしは作っていたようだ。
作業としては、溶かして、抽出したハーブ入れて、また固めるだけだから簡単だ。わたし以外には超簡単な作業なようで、すぐに第二弾に取り掛かる。人の手も材料もいっぱいある。せっかくなのでグループに分かれ、他のハーブも試してみることにした。好きな香りのハーブごとに分かれて、みんなでもっといい案を考えながら作業していくのは楽しかった。
石鹸づくりはあとは乾いてからの作業となるので、いったん解散した。余力があったので、リンスも作ってしまうことにした。これはわたしの仕事だ。といっても材料を合わせるだけなんだけどね。
収納ポケットから材料を出す。これを合わせるだけだ。これもハーブで匂いづけをしたら、喜ばれるかな? 石鹸づくりで残ったハーブエキスを、いくつか瓶にわけ、入れてみた。こぼしそうになったら、アルノルトさんが瓶を支えてくれた。
ひとりでやっていたのに、急に手が出てきてびっくりだ。
言葉を濁していたが、護衛で川に来てくれて、わたしが石鹸を作る様子を見て、お姉さんたちと同じように、大変危なっかしいと思っていたようだ。それで家でリンス作りを始めたわたしの様子を、そっと見守っていたみたい。
わたしは仕事を増やすことを謝ってから、ハーブを入れて試してみたいので、いくつかの瓶にリンス液を入れてもらえないか頼んだ。
アルノルトさんは笑顔で引き受けてくれて、早々にリンス作りも終わった。
外に出るのをためらうような寒い日もあった。家の中でも外でもやることはいっぱいあるので、退屈する暇はないけどね。
領地を楽しく発展させることを考えながら、冬ごもりの準備をする。それが当面のやるべきことだ。それらをこなしながら、いかにしてやりたいことを組み込んでいくかがポテンシャルの上げ方だ。
なーんて。わたしのは主に食べ物に特化するけどね。仕方ない。食いしん坊なんだ。
聖域で摘んできたベアベリー。そのままでももちろんおいしくて、みんなでムシャムシャ食べたけど、ジャムを作ったら、やっぱりめちゃくちゃおいしかった! わたしはこれをおいしいパンにつけて食べたい!
ピドリナさんの焼くパンは売っているものよりずっとおいしいけれど、求めているのはふわふわのパンで……。マフィンとかスコーンでのジャムもおいしいけどさ、やっぱりふわふわのパンが食べたくて、天然酵母に挑戦することにした。ダンジョンのリンゴンを使ってね。ただいま天然酵母・発酵中なので、無事にできることを祈っている。パン作りは習いに行ってたけど、天然酵母のパンは作ったことないんだよね。でも、ふわふわパンを食べるために、わたし、頑張る。
母さまの呪い解除でお世話になった〝お礼〟の鞄にやっと着手した。みんな同じ型にしたので、3つ目からは要領がわかってきたのか少しずつ作業が早くなってきた。布を三つ折りして端を縫った蓋があるタイプのものだ。共布で斜めがけするためのストラップをつけた。心をこめて丁寧にやったつもりだが、縫い目は揃っていない……。そこは目溢しして欲しい。母さまが編み物でお花を編んでくれた。女子の鞄にはストラップにお花のチャームをつけられるようにした。ウエストポーチタイプのものもいいんだよねと見本を作ったら、母さまが売り物にできそうなものを作ってくれた。三つ折り斜めがけタイプとウエストポーチタイプ。あと、リュックみたいなのを作って、ホリーさんにプレゼンしたいと思っている。
冬ごもりの準備ができたら、鞄とは別に贈り物を考えている。これは時間があればできることだから、その時でオッケー。
冬ごもり中のお肉の話になったときに、町の人たちが何人か自分たちも狩りに行きたいと言ったそうだ。そこで父さまはその行きたい人たちに、獣ではなく魔物を狩る気はあるかを聞いたそうだ。町の人は驚いたみたいだけど、顔を見合わせ頷き合って、冬ごもりに必要だから狩りたいと言ったそうだ。その中にはビリーとカール、それからヤスも含まれていた。
父さまはもふさまに相談した。魔石で話せるようにはできないが、賢い子犬として一緒に魔物狩りをしてくれるかと。もふさまは大興奮。『行ってもいいぞ』と淡白に応じながら、尻尾は左右にビンビンに振れている。隠し切れてない。もふさま、父さまと兄さまたちが安全を確保しつつ、山のちょっと上に魔物狩りに行っている。もふさまが下へと追い立てる予定だとか。獲った魔物は、家宝の袋に入れるとのことだ。
ウチでは、編み物を習いたい人に来てもらって、手袋や帽子を拵えている。
帽子もだけど、ミトンタイプの手袋も、一度一緒に母さまと作ったら、母さまは理解して、もう飾り編みとかを入れている。こうなると棒編みも毛嫌いしないでセータとか編んでおけば良かったと思う。そうしたら商品が増えたのにな。
棒編みではマフラーしか編んだことがない。完成間際で棒が外れたんだ。1つずつ目を拾っていけば良かっただけなんだけど、不器用なわたしは向きを反対に拾ったり、余計に外れていって……終わりにしたことがある。
それからもっぱらのかぎ針派だ。かぎ針はモチーフ本はあったけど、セーターなどの大物を作る本はあまりなくて。セーターとかは棒で編むのが一般的だからだろう。
かぎ針派は少数かと淋しい気持ちだったから、惜しげもなく動画で作りかたを披露してくれるのをみつけたときは嬉しかったな。動画を見て、帽子や手袋やルームシューズを編んだ。楽しかった。目数の計算とかはさすがに覚えてなかったけど、ゲージのように、鎖編みで基準となる物差しを作っておいた。それで測って目数を数えて、あとは奇数と偶数を考えながら作れば形になった。母さまなんかは、すぐに意味もわかったみたいだから、家族のサイズの分のものをあっという間に作り上げた。
そんな母さまが先生になって、習いたい人がきている。内職になるかもと吹き込んだところ、意欲が上がった。これもホリーさんにプレゼンするつもりだ。売れれば、みんなの家の冬ごもりが手厚くなる。
母さまがフォバルの毛糸で編んでくれたもので一番嬉しかったのが、毛糸のパンツだ。こっちの布団は布を何枚も重ねて綴じているだけなので、寒くなると頼りない。わたしなんかもふさま抱っこして寝ているから結構暖かいはずなのに、それでも、もう寒さが堪えている。だから毛糸のパンツはほんっとありがたい! 母さまはよくわかっていてウエスト部分を長くしてくれてあるから、お腹も冷えなくていいのだ。他の人はよく耐えられるな。なんか暖かい布団になるようなものないのかなーと思っていたら、いいものがあると知ってしまったのだが……どうにか手に入れられないものだろうか。
川には石鹸づくりをする話が、人から人に伝わって、町の女性ほとんどが集まってしまった。幸い、ミニーとミニーのお母さんが気を利かせて、石鹸をいっぱい持ってきてくれたので、数は大丈夫そうだけど。
ひとまず、わたしが今までやっていたやり方を見せた。
雑だからか危ういからか、途中から見ていられなくなったのだろうお姉さんたちに奪われ、それでどうするの?と聞かれ〝次、こっちいれる〟と、いつもの料理のように指示を出すことになった。
いつも、物理的にうまくいかないところは魔法でやってたから。属性は水と風だけのはずだし、魔力もそうないはずなので、そう使っても変かと、家族といるとき以外は魔法をなるべく使わないようにしている。魔法は補助で使っている気でいたが、実際魔法を使わずにやろうとするといちいちつまづく。風魔法で鍋をかきまわせば問題ないけれど、溶かした石鹸をかき回すためにのぞき込めば、蒸気が熱いし、お玉を持った手も熱い。お玉を動かすのに案外力はいるし。ハーブの煮出したのも持つと熱いし。……魔法メインでわたしは作っていたようだ。
作業としては、溶かして、抽出したハーブ入れて、また固めるだけだから簡単だ。わたし以外には超簡単な作業なようで、すぐに第二弾に取り掛かる。人の手も材料もいっぱいある。せっかくなのでグループに分かれ、他のハーブも試してみることにした。好きな香りのハーブごとに分かれて、みんなでもっといい案を考えながら作業していくのは楽しかった。
石鹸づくりはあとは乾いてからの作業となるので、いったん解散した。余力があったので、リンスも作ってしまうことにした。これはわたしの仕事だ。といっても材料を合わせるだけなんだけどね。
収納ポケットから材料を出す。これを合わせるだけだ。これもハーブで匂いづけをしたら、喜ばれるかな? 石鹸づくりで残ったハーブエキスを、いくつか瓶にわけ、入れてみた。こぼしそうになったら、アルノルトさんが瓶を支えてくれた。
ひとりでやっていたのに、急に手が出てきてびっくりだ。
言葉を濁していたが、護衛で川に来てくれて、わたしが石鹸を作る様子を見て、お姉さんたちと同じように、大変危なっかしいと思っていたようだ。それで家でリンス作りを始めたわたしの様子を、そっと見守っていたみたい。
わたしは仕事を増やすことを謝ってから、ハーブを入れて試してみたいので、いくつかの瓶にリンス液を入れてもらえないか頼んだ。
アルノルトさんは笑顔で引き受けてくれて、早々にリンス作りも終わった。
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