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3章 弱さと強さと冬ごもり
第98話 ファーストコンタクト⑨言い忘れ
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お風呂でわたしは寝落ちしたそうだ。父さまやもふさまと一緒でよかった。じゃなきゃ、溺れたよね。ま、ひとりで入ることなんかないんだけどね。
新しくしたお風呂では湯船は絶対誰かの膝の上だ。じゃないと、起きてても溺れるから。
それにしても、いくらなんでも風呂で寝るかとセルフ突っ込みだ。昼寝してなかったからか。サロのことで緊張していて、お風呂で一気に気がゆるんだのだろう。子供、怖い。
父さまは王子たちに挨拶をしに行ったそうだ。王子たちは、雨の中わたしたちの家に向かって、一生懸命走っている子供たちを目撃し、王子がそれが気にかかると、戻って来たという。
父さまが事情を説明した。すると、なんと自らサロをお見舞いしたがった。そしてサロを見舞い、ミニー、ビリー、カールと話をしたそうだ。ビリーたちには高貴な方とだけ伝えたらしい。
サロのお家の人が心配していて、アンダーさんのところのお兄ちゃん、エドガーが馬車で迎えにきた。作り置きをしていた唐揚げもどきと、今日は海の魚料理にする予定だったそうで先に作っていた煮魚を、少量ずつになっちゃったけどみんなに。かりんの蜂蜜漬けはなかったけど、大根を小さなサイコロ状に切って蜂蜜に漬けたもの、それをミニーに渡した。これも喉にはいいからね。長くつけておくとエキスが出てよりいいけれど、小さい塊ぐらいなら30分でわたし的には浸かると思っている。お母さんに少しずつ食べてもらうよう伝えた。
ミニーたちは馬車で帰って行った。
ピドリナさんを働かせすぎだ。負担が大きすぎる。護衛の騎士さんたちは野営して自炊するからいいけど、王子のお付きの人たちまで、そういうわけにはいかない。また人数が多いのでお料理を手伝ったよ、兄さまたちが。わたしも野菜を切るのは手伝った。マイ包丁で。双子や兄さまたちだけでなく、ピドリナさんにも羨ましがられた。わたしの手にジャストフィットする大きさだからみんなには小さいのだが、それでもナイフより断然使いやすいって! ふふふ、ピドリナさんに包丁をプレゼントしてもいいかもしれない!
生魚はやめておいた。牡蠣と野菜の味噌焼き。茹でイカのマリネ。魚介類のスープに、パエリアだ。ライズが嫌な人にはパンを出すつもりだったけれど、ピドリナさんの腕前はわかっていたからか、みんなパエリアを選んだ。そして大満足していた。王子さまが大興奮だ。牡蠣も初めて食べたがとてもおいしかったらしい。それからスープの奥の深い味に、なんだか知らないけどショックを受けていた。
そうして食後のお茶になり、紅茶の茶葉をいただいたので、紅茶を入れて、みんなでクッキーをいただいた。クッキーもお気に召したようで、珍しく子供っぽくリスかと言いたくなるぐらい口の中いっぱいにクッキーを詰め込んで食べていたよ。
「言い忘れたことがあったんだ」
軽い調子で王子がそう切り出したとき、嫌な予感がした。
「春になったら正式に使いを出すが、私はリディア嬢と婚約する。これは決定したことだ」
何言っちゃってるんだ。
「いいか、調子に乗るのではないぞ、まだ婚約者候補のひとりだ。候補はいっぱいいるのだ」
「トロットマン伯」
王子がトロットマン伯をひと睨み。
「殿下、大変光栄なお話ではありますが……」
「シュタイン伯、これは決定事項だ」
母さまの顔色が青くなる。わたしは手を伸ばして、隣の母さまの手を握った。
「リディア嬢、君はこの国で最も高貴なレディとなるんだ。学ぶことはいっぱいあるから、王宮で暮らすことになるだろう。ああ、5歳で家を出るのは酷だからね、陛下が温情をくださる。シュタイン夫人を私の乳母として王宮で仕えていいと」
! 気持ちわるっ!
思わず、母さまの手を強く握ってしまった。
なんなの、その母さまへの執着は。わたしというより、母さまを王宮に呼びたくてわたしを婚約者にしたいんじゃないの?
母さまもわたしの手を強く握っている。
「殿下……。リディアは殿下と婚約を結べません」
「なんと生意気な!」
お前、どっちだよ。声を荒げたトロットマン伯に物申したい。候補とするのも嫌なのに、断ると生意気とかどっち側だ。
「リディア嬢、君が貴族である限り、貴族の務めを果たすべきだと思わないか? それから、小さくてもこれだけは理解しないとね。君に拒否権はない。なぜなら、私の方が身分が上で、王族だから」
ははは。それはそうだけど、人の話は最後まで聞くものだ。
「殿下に申し上げます。リディアはすでに婚約が決まっておりまして」
第二王子は目を細めた。
「みんな一族揃って誉だということなのに、光の使い手がいる家は責務から逃れようとするんだね。そうか……辺境伯が来ていたようだが、手を回したのかな?
もう一度確かめた方がいいと思うよ。おじいさまたちが君と婚約しそうな貴族たちみんな調べていたからね。君にふさわしい人物かどうか」
どういうこと?
「慌ただしくて今、それどころじゃないと思うよ。特にフォイスター伯は一族の末端の者に不正がみつかったんじゃなかったかな?」
それ、何かしたってこと?
「何か手を加えたりは決してしていないよ。品行方正に見えても、何かしら悪いことはしているものだね、人は」
母さまに加え、父さまの顔色も青くなっている。そうだよね、わたしと婚約しそうかもという推測の段階で、何人かの貴族に素行調査が入ったってことだ。婚約してくれそうな親しい方々に。
なるほどね、そんなことされたら、婚約話なんてぶっ飛ぶね。
わたしの思い描いていた嫌がらせは平和すぎた。夜会とか行った際に〝ほら、あの方たちが王室の考えに背いて婚約を貫いている方よ〟みたいに後ろ指さされたりするのかと思っていた。
陰湿な嫌がらせだ、確かに。徹底的に調べるのだろう。不正と呼べるものがみつかるまで。
「正式にもう婚約しているんです、殿下」
「まさか! 嘘だろ?」
父さまを見て、事実だとわかったのか、テーブルを拳で叩く。
「相手は誰だ?」
「知って、どうされるおつもりですか?」
王子の表情が引き締まった。
「確認するだけだ。その婚約が正式なものか」
「正式です。教会に認められています」
バッとわたしを見る。その目は厳しい。決して未来の婚約者へ向ける眼差しではない。
兄さまがそんなわたしと殿下の間に身を投じる。
「殿下、リディアの婚約者は私です」
「? フランツ、何を言っているんだ。フランツたちは兄妹だろう?」
「私は辺境伯の養子です」
「……エディスン伯」
王子は乾いた声で宰相さんを呼んだ。
「シュタイン伯、フランツさまのお名前を鑑定させて頂いても?」
「フランツ、思うとおりに答えなさい」
父さまは鑑定を受けるか受けないか自分で決めていいと兄さまに指示する。
「いいですよ、名前を鑑定してください」
「! フランツさまのお名前は、フランツ・シュタイン・ランディラカさまです」
「本当に養子……。辺境伯の後継者にひ孫を……」
母さまの言った通りだ。養子をとって、身内と継がせるパターンはありなんだね。
「お分かりいただけましたでしょうか? リディアとフランツはすでに婚約を済ませております」
「リディア嬢はまだ5つ。なぜ、こんな早くに!」
お前が言うかとツッコミたい。
「これは他言無用に願いますが、リディアはさる貴族から命を狙われました」
宰相さんとトロットマン伯の目が鋭くなる。
「レアワームの件で調査に来ていた冒険者のひとりがその命をおっていました。その者は何を思ったのかはわかりませんが、亡き者にするのではなく、リディアを人売りに売りました。運ばれている途中に商人と諍いとなり馬車を改められ、リディアは私たちの下に帰ってくることができたのです。すぐにその貴族を調査いたしましたが、手がかりは掴めませんでした。ですので、リディアが危険な目にあったことに箝口令を敷いております」
「何かあったと知る者は関係者だと炙り出すためか」
「その通りでございます」
宰相さまに父さまが答える。
「何を目的としてなのかはわかりませんが、外からの接触を極力抑える必要があると思いました。その前にも物盗りに遭いました。幸い逃れていますし、捕まえておりますが、口を割りません。ただそれも私はただの物盗りではないと考えています。噂が先回りをして、危害を加えられるような世の中ですから、いずれ考えていたフランツとの婚約を早めたのです。婚約していれば、茶会なども参加の声はかかりにくくなり、外出先での危険を抑えられますから」
なるほどね。お茶会や夜会は伴侶選びの場でもある。それらに参加しないですむよう婚約したというわけだ。物盗りに遭ったのは本当だから真実味が増すね。実際は、貴族に命を狙われたのは兄さまと婚約の後だけど、今の話し方だったら、物盗りにあい勘ぐっていて、対策立てたら(婚約したら)、貴族にまで命狙われた、対策立てといて正解って思っていたつもりで話していた、ということにもできるだろう。突っ込まれたら、動揺していたので、伝わりにくかったことがあったかもしれませんだのなんだの言っておけばいい。
「認めない」
父さまに強い調子で言って睨みつける。
認めないって、子供じゃないんだから……子供か。
王子は立ち上がって、部屋から出て行った。その後をトロットマン伯が追いかける。
「また、明日話しましょう。シュタイン伯は武力が勝ると聞きましたが、戦略も得意なようですね。それでは失礼いたします」
宰相さんがそう言って出て行った。
わたしたちは顔を見合わせた。寝るにはずいぶんと早い時間だけど、部屋にそれぞれ戻ることにした。5分後、メインルームに転移するからとこっそり伝えて。
新しくしたお風呂では湯船は絶対誰かの膝の上だ。じゃないと、起きてても溺れるから。
それにしても、いくらなんでも風呂で寝るかとセルフ突っ込みだ。昼寝してなかったからか。サロのことで緊張していて、お風呂で一気に気がゆるんだのだろう。子供、怖い。
父さまは王子たちに挨拶をしに行ったそうだ。王子たちは、雨の中わたしたちの家に向かって、一生懸命走っている子供たちを目撃し、王子がそれが気にかかると、戻って来たという。
父さまが事情を説明した。すると、なんと自らサロをお見舞いしたがった。そしてサロを見舞い、ミニー、ビリー、カールと話をしたそうだ。ビリーたちには高貴な方とだけ伝えたらしい。
サロのお家の人が心配していて、アンダーさんのところのお兄ちゃん、エドガーが馬車で迎えにきた。作り置きをしていた唐揚げもどきと、今日は海の魚料理にする予定だったそうで先に作っていた煮魚を、少量ずつになっちゃったけどみんなに。かりんの蜂蜜漬けはなかったけど、大根を小さなサイコロ状に切って蜂蜜に漬けたもの、それをミニーに渡した。これも喉にはいいからね。長くつけておくとエキスが出てよりいいけれど、小さい塊ぐらいなら30分でわたし的には浸かると思っている。お母さんに少しずつ食べてもらうよう伝えた。
ミニーたちは馬車で帰って行った。
ピドリナさんを働かせすぎだ。負担が大きすぎる。護衛の騎士さんたちは野営して自炊するからいいけど、王子のお付きの人たちまで、そういうわけにはいかない。また人数が多いのでお料理を手伝ったよ、兄さまたちが。わたしも野菜を切るのは手伝った。マイ包丁で。双子や兄さまたちだけでなく、ピドリナさんにも羨ましがられた。わたしの手にジャストフィットする大きさだからみんなには小さいのだが、それでもナイフより断然使いやすいって! ふふふ、ピドリナさんに包丁をプレゼントしてもいいかもしれない!
生魚はやめておいた。牡蠣と野菜の味噌焼き。茹でイカのマリネ。魚介類のスープに、パエリアだ。ライズが嫌な人にはパンを出すつもりだったけれど、ピドリナさんの腕前はわかっていたからか、みんなパエリアを選んだ。そして大満足していた。王子さまが大興奮だ。牡蠣も初めて食べたがとてもおいしかったらしい。それからスープの奥の深い味に、なんだか知らないけどショックを受けていた。
そうして食後のお茶になり、紅茶の茶葉をいただいたので、紅茶を入れて、みんなでクッキーをいただいた。クッキーもお気に召したようで、珍しく子供っぽくリスかと言いたくなるぐらい口の中いっぱいにクッキーを詰め込んで食べていたよ。
「言い忘れたことがあったんだ」
軽い調子で王子がそう切り出したとき、嫌な予感がした。
「春になったら正式に使いを出すが、私はリディア嬢と婚約する。これは決定したことだ」
何言っちゃってるんだ。
「いいか、調子に乗るのではないぞ、まだ婚約者候補のひとりだ。候補はいっぱいいるのだ」
「トロットマン伯」
王子がトロットマン伯をひと睨み。
「殿下、大変光栄なお話ではありますが……」
「シュタイン伯、これは決定事項だ」
母さまの顔色が青くなる。わたしは手を伸ばして、隣の母さまの手を握った。
「リディア嬢、君はこの国で最も高貴なレディとなるんだ。学ぶことはいっぱいあるから、王宮で暮らすことになるだろう。ああ、5歳で家を出るのは酷だからね、陛下が温情をくださる。シュタイン夫人を私の乳母として王宮で仕えていいと」
! 気持ちわるっ!
思わず、母さまの手を強く握ってしまった。
なんなの、その母さまへの執着は。わたしというより、母さまを王宮に呼びたくてわたしを婚約者にしたいんじゃないの?
母さまもわたしの手を強く握っている。
「殿下……。リディアは殿下と婚約を結べません」
「なんと生意気な!」
お前、どっちだよ。声を荒げたトロットマン伯に物申したい。候補とするのも嫌なのに、断ると生意気とかどっち側だ。
「リディア嬢、君が貴族である限り、貴族の務めを果たすべきだと思わないか? それから、小さくてもこれだけは理解しないとね。君に拒否権はない。なぜなら、私の方が身分が上で、王族だから」
ははは。それはそうだけど、人の話は最後まで聞くものだ。
「殿下に申し上げます。リディアはすでに婚約が決まっておりまして」
第二王子は目を細めた。
「みんな一族揃って誉だということなのに、光の使い手がいる家は責務から逃れようとするんだね。そうか……辺境伯が来ていたようだが、手を回したのかな?
もう一度確かめた方がいいと思うよ。おじいさまたちが君と婚約しそうな貴族たちみんな調べていたからね。君にふさわしい人物かどうか」
どういうこと?
「慌ただしくて今、それどころじゃないと思うよ。特にフォイスター伯は一族の末端の者に不正がみつかったんじゃなかったかな?」
それ、何かしたってこと?
「何か手を加えたりは決してしていないよ。品行方正に見えても、何かしら悪いことはしているものだね、人は」
母さまに加え、父さまの顔色も青くなっている。そうだよね、わたしと婚約しそうかもという推測の段階で、何人かの貴族に素行調査が入ったってことだ。婚約してくれそうな親しい方々に。
なるほどね、そんなことされたら、婚約話なんてぶっ飛ぶね。
わたしの思い描いていた嫌がらせは平和すぎた。夜会とか行った際に〝ほら、あの方たちが王室の考えに背いて婚約を貫いている方よ〟みたいに後ろ指さされたりするのかと思っていた。
陰湿な嫌がらせだ、確かに。徹底的に調べるのだろう。不正と呼べるものがみつかるまで。
「正式にもう婚約しているんです、殿下」
「まさか! 嘘だろ?」
父さまを見て、事実だとわかったのか、テーブルを拳で叩く。
「相手は誰だ?」
「知って、どうされるおつもりですか?」
王子の表情が引き締まった。
「確認するだけだ。その婚約が正式なものか」
「正式です。教会に認められています」
バッとわたしを見る。その目は厳しい。決して未来の婚約者へ向ける眼差しではない。
兄さまがそんなわたしと殿下の間に身を投じる。
「殿下、リディアの婚約者は私です」
「? フランツ、何を言っているんだ。フランツたちは兄妹だろう?」
「私は辺境伯の養子です」
「……エディスン伯」
王子は乾いた声で宰相さんを呼んだ。
「シュタイン伯、フランツさまのお名前を鑑定させて頂いても?」
「フランツ、思うとおりに答えなさい」
父さまは鑑定を受けるか受けないか自分で決めていいと兄さまに指示する。
「いいですよ、名前を鑑定してください」
「! フランツさまのお名前は、フランツ・シュタイン・ランディラカさまです」
「本当に養子……。辺境伯の後継者にひ孫を……」
母さまの言った通りだ。養子をとって、身内と継がせるパターンはありなんだね。
「お分かりいただけましたでしょうか? リディアとフランツはすでに婚約を済ませております」
「リディア嬢はまだ5つ。なぜ、こんな早くに!」
お前が言うかとツッコミたい。
「これは他言無用に願いますが、リディアはさる貴族から命を狙われました」
宰相さんとトロットマン伯の目が鋭くなる。
「レアワームの件で調査に来ていた冒険者のひとりがその命をおっていました。その者は何を思ったのかはわかりませんが、亡き者にするのではなく、リディアを人売りに売りました。運ばれている途中に商人と諍いとなり馬車を改められ、リディアは私たちの下に帰ってくることができたのです。すぐにその貴族を調査いたしましたが、手がかりは掴めませんでした。ですので、リディアが危険な目にあったことに箝口令を敷いております」
「何かあったと知る者は関係者だと炙り出すためか」
「その通りでございます」
宰相さまに父さまが答える。
「何を目的としてなのかはわかりませんが、外からの接触を極力抑える必要があると思いました。その前にも物盗りに遭いました。幸い逃れていますし、捕まえておりますが、口を割りません。ただそれも私はただの物盗りではないと考えています。噂が先回りをして、危害を加えられるような世の中ですから、いずれ考えていたフランツとの婚約を早めたのです。婚約していれば、茶会なども参加の声はかかりにくくなり、外出先での危険を抑えられますから」
なるほどね。お茶会や夜会は伴侶選びの場でもある。それらに参加しないですむよう婚約したというわけだ。物盗りに遭ったのは本当だから真実味が増すね。実際は、貴族に命を狙われたのは兄さまと婚約の後だけど、今の話し方だったら、物盗りにあい勘ぐっていて、対策立てたら(婚約したら)、貴族にまで命狙われた、対策立てといて正解って思っていたつもりで話していた、ということにもできるだろう。突っ込まれたら、動揺していたので、伝わりにくかったことがあったかもしれませんだのなんだの言っておけばいい。
「認めない」
父さまに強い調子で言って睨みつける。
認めないって、子供じゃないんだから……子供か。
王子は立ち上がって、部屋から出て行った。その後をトロットマン伯が追いかける。
「また、明日話しましょう。シュタイン伯は武力が勝ると聞きましたが、戦略も得意なようですね。それでは失礼いたします」
宰相さんがそう言って出て行った。
わたしたちは顔を見合わせた。寝るにはずいぶんと早い時間だけど、部屋にそれぞれ戻ることにした。5分後、メインルームに転移するからとこっそり伝えて。
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