プラス的 異世界の過ごし方

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3章 弱さと強さと冬ごもり

第82話 兄妹喧嘩と女子会②気まずい

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 そしてお昼ご飯だ。
 ピドリナさんのご飯はおいしかった。
 スープの中にマッシュしたお芋があって、崩しながらスープといただく。硬いパンもこのスープにつけながらだとおいしく食べられた。サラダは生野菜だ! ドレッシングをもうマスターしている。シャキシャキの生野菜がさらにおいしく感じられる。

 父さまはいないので、味方を作るなら今だ。

「母さま、今日、ミニーの家で女の子、お泊まり会ある」

「……それで、今日は嫌がらずにお勉強したのね?」

 お見通しだ。
 おじいさまが静かに笑っている。

「お泊まり会って何するの?」

  ロビ兄に尋ねられた。

「寝るまで、いっぱい話す」

「おれの部屋で、お泊まり会しよう」

 なんでそうなる。

「女の子、の会」

「なんで行きたいの?」

「ロビ兄も、お泊まり、行きたい、言った」

 あれと同じだよとわたしは言いたかった。

「あれは手伝いをしたかったんだ」

 とロビ兄が口を尖らせる。

「わたしも、学んでくる」

「学ぶ? 何を?」

「ミニーから、5歳を」

「5歳を?」

「もうすぐ、王族来る。目立たないよう、5歳、普通、マネする!」

 わたしは真剣に言ったのに、ロビ兄が吹き出した。

「マネなくても、どっからどう見ても、リーは5歳だから大丈夫だよ。あんな転び方をするのは、リーが5歳だからだ」

 気にしていることを。

「それに泣き出すと止まらないのも」

「ロビン」

 アラ兄がロビ兄の袖を引っ張っている。

「何?」

 兄さまにも肘で突かれ、ロビ兄はふたりしてなんだと、ふたりが目線をやるわたしの方を見た。
 泣きたくなっているが、泣き出すと止まらないと言われたばかりなので、一生懸命我慢する。

「う、嘘は言ってない。リーはまだ5歳だから、泊まりは早いと思う」

「ひとり、眠れる。おねしょもしない。だから、お泊まり、平気」

 わたしは椅子からなんとか降りて、母さまの膝にすがる。

「母さま、お願い。いい子にするから」

「……父さまがいいと言ったらね」

 よし。

「ごちそうさまでした」

 わたしは父さまの書斎に行こうとした。

「リー」

 ロビ兄に呼ばれて振り返る。

「おれたちと一緒に遊ぼうよ。お泊まりなんか行かないで」

「絶対、行く」

 わたしは小走りに書斎へと急いだ。



 ノックをして書斎へと入る。
 書類仕事をしていた父さまは手を止めた。

「頬を膨らませて、どうしたんだ?」

 え? わたし膨れてるの?

「父さま、お願い。今日、ミニーの家、女の子集まって、お泊まり会ある。いい子にする。行きたい」

「どうして行きたいんだ?」

「楽しそう。興味ある。もっと仲良くなれる。ロビ兄、笑われたけど、5歳、時々どうなのか迷う。だからミニー、いっぱい見たい」

 父さまは口元を隠すように手で触っている。唇が震えているように見えるのは気のせいか?

「母さまには言ったのか?」

「父さまがいいっていったらいい、言った」

 父さまが席を立つ。そして机を回り込み、わたしの前に来て、抱え上げる。

「迷惑をかけたり、うるさく騒がないこと。挨拶もちゃんとできるか?」

 父さまの目を見て、頷く。

「主人さまと一緒なら許すが、主人さまと一緒でいいかミニーの家に確かめないとな」

「ミニー、もふさま一緒いい言った」

 声が弾む。

「そうか。なら、許そう。送り迎えはシヴァに行ってもらう。リディーはひとりで決して外には出ないこと。約束だ」

「約束」

「ミニーが主人さまが一緒でもいいと言ったのはミニーの考えでおうちの人の許可は取っていないかもしれない。だからシヴァが一緒に行って、家の人にそのことを尋ねてもらう。もし家の人がいい顔をしなかったら、主人さまと一緒に帰ってくるんだぞ。約束できるか?」

「約束する。ありがと、父さま」

 思わず父さまのほっぺにちゅっとして、おろしてもらう。

「準備する!」

 わたしは駆け出した。
 母さまに持っていく夜着はお気に入りの白いのでいいか尋ねる。お世話になるのにお菓子を作ってもらってもいいかも尋ねた。
 いいとのことなので、ピドリナさんにパウンドケーキを焼いてもらう。
 型はまだないので、陶器の器で焼いた。

 時間があったので、パウンドケーキ以外にもクッキーを作ることにした。配分はすっごい適当なので不安はあるが、まとまった生地になったからそうはずれていなかったんだろう。
 ピドリナさんに迷惑をかけることになったが、彼女はパウンドケーキもクッキーも作ったことがなく、新しいレシピを知ることができたと喜んでくれた。
 生地を麺棒でのしてもらって、ナイフで三角にカットしてもらう。それをオーブンで焼いた。熱いのを味見してみたけど、素朴でなかなかいい味だ。いつもなら兄さま、アラ兄、ロビ兄に味見をしてもらうところだが、3人とも炊事場にも来ない。

 もふさまとシヴァが帰ってきた。例の袋はいくつかのダンジョンで落としてきたとのことだ。詳しくは後で聞くことにして、もふさまにミニーの家にお泊まりに一緒に行ってと頼み許諾してもらい、シヴァにも夕方町に連れてってほしいと頼んだ。シヴァは頷いて、父さまと話してくると言った。

 そのうち行く前にお風呂に入るように言われ、母さまに入れられて。髪を乾かしてもらい、服を着て。夜着とお土産をもち、もふさまと一緒にシヴァの馬に乗せてもらった。
 父さまがもふさまとシヴァにわたしのことをお願いする。
 みんなに行ってきますをして、行ってらっしゃいと言ってもらったが、それ以上言葉は交わさなかった。

 もふさまから兄さまたちと喧嘩したのか聞かれて、喧嘩してないと即答したが、気まずいのは確かだった。
 わたしは帰ってきたら、お土産話をいっぱいしようと心に決めた。
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