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3章 弱さと強さと冬ごもり
第77話 ケリーナダンジョン②カンルーの袋
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「土人形!」
襲われる前になんとか目の前に土人形を作れたので、カンガルーは土人形と相撲をとっている。その背中にシヴァが剣を立てた。
2本の足でぴょんぴょん飛びながら距離をつめてきたカンガルーは、音を立て煙となって消えた。
と、薄いオレンジ色の魔石の他に毛皮の袋みたいのが落ちていた。
これは、ひょっとして、ドロップ!?
ふふふ、すっかり忘れていたけれど、わたしは今日は〝鑑定〟をするために来たのだった。
鑑定ができるようになったら、すぐに何でもいいから鑑定しようと思っていた。ところが、ベッドの上でやったのがよくなかった。気がつくと朝だった。もふさまに頬擦りし放題だったのに、それもいつもと同じぐらいしかしなかった。
鑑定をすぐに試すという機会を逃してしまったので、それだったら、最初はこれぞというときに鑑定を使おうと決めていたのだ。
今、まさに、これぞ、という時だよね。
ダンジョンで初めて(シヴァがだけど)倒した魔物。初めてのドロップ。
心の中で念じる。
毛皮の袋を鑑定。
ステータスボードとはまた違うけど、これも目の前に但し書きが現れた。毛皮の袋から罫線が伸びていて、ちゃんとこれのことだと示している。
カンルーの袋:カンルーの最上級の毛皮で作られた袋。丈夫で、撥水効果もある。
おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!
ちょっと、この袋、いいんじゃありません? 人が作ったとは思えないし! これぞ、ダンジョンでドロップする収納箱の袋に!
「お嬢、すみません、大丈夫ですか?」
「リディー、大丈夫か? もう平気だぞ、お前が倒したようなものだ」
みんながわたしの周りに集まっていた。
ぼうっとして見えたからだろう、心配をさせたみたいだ。
「だいじょぶ。父さま、カンルー、メジャー?」
「カンルーとよく知っていたな。メジャーとは何だ?」
「ええと、有名? よく聞く? いっぱいいる?」
『弱い魔物だが、まあ、よくいるな』
「主人さまのおっしゃる通り、わりとどこででも出くわすぞ」
「父さま、この袋、しよう」
「この袋? ん、これはどうしたんだ?」
「魔石と一緒に出てきました」
シヴァが答える。
「ドロップした」
「ドロップ?」
おじいさまが首を傾げる。
「そうか、こういうことを、リディーはドロップと呼ぶのだな」
父さまが頷き、袋を手に取る。
「試練の部屋でもないのに、魔石以外の物が出ることもあるのだな」
わたしの前にバラバラと魔石が落とされる。
『我はこんなに狩ったのに、ドロップとやらはしないぞ』
「リー、土人形作って」
ロビ兄に言われて、土人形を出す。
「あいつに触れて。戦わなくていい」
? ロビ兄があいつといった指差した先には、牛サイズの赤毛のキツネみたいな魔物がいた。
サラマンフォックス:火を吐く。尻尾の毛が高価
「土人形、サラマンフォックスにタッチ」
土人形は、スススとサラマンフォックスに近づいて、高速でキツネの体にタッチするとそのまま飛び退いた。
ロビ兄が走り出したので慌てて言う。
「火、吐くって」
ロビ兄がステップを踏んで止まると、ロビ兄が着地しようとしたところに火を噴かれた。
「リー、ありがと」
そう言って、噴いている火に風魔法をぶつけ渦を作り、キツネへと火を巻きつける。
「キャキャキャキャン」
真っ黒の煙がのぼり、ポンと弾けるような音がして、赤い魔石と長い毛が束ねられたものが現れた。尻尾の毛と同じ色だ。
「アラン?」
ロビ兄がアラ兄を呼ぶ。
「オレの土人形で倒しても、魔石だけだ」
そう言ってわたしをじっと見る。
ロビ兄が、一歩、二歩と近づいてきた。
そしてわたしの両肩に手を置く。
「リー、土人形で魔物を触りまくれ」
え?
おじいさまも、父さまもやってくる魔物をビシバシ狩っている。
『そういうことか』
「どういう、こと?」
『恐らくリディアの魔が触れると〝ドロップ〟しやすくなるんじゃないか?』
なんですと?
それは、検証しないと!
自分が戦うのは嫌だが、土人形ちゃんに魔物をタッチさせるくらいならなんでもない。大きな土人形も複雑な動きをさせなければ、魔力もせいぜいマイナス3だ。
わたしのお守りをいいつかっていたものの、みんなが魔物をバッサバッサ倒しているのを見て、シヴァも疼いていたみたいなんだよね。
というわけで、わたしは父さま、おじいさま、もふさま、時には兄さまと双子に預けられ、土人形を動かした。いちいち言うのがめんどくさくなったので、家族の周りに現れた魔物にはすかさずタッチをして逃げるよう言い含めた。
倒すと魔石だけでなく、何かドロップするのは余計に楽しいらしく、盛り上がりまくりだ。最初は兄さまや双子がはしゃいでいたが、途中からは大人の方が楽しくなってしまったようで、どっちが子供なのかわからなくなっていた。
土人形だけなのか、他の魔法も有効なのかは確かめた。
わたしたちの前に現れたカンルー3匹に、突風をお見舞いした。
一瞬目を瞑られただけだったけど。
兄さまと双子が剣で戦い、もふさまが足を噛んでまわり、3匹は煙となった。2つ袋が落ちて、ひとつはカンルーのお肉がドロップ。高価らしい。
もふさまがまだ生きている魔物を口に咥えて持ってきて、ナイフの先でいいから触るよう言われた。言われた通りナイフの先でつんつんした。もふさまがとどめをさせばそれもドロップした。
魔を通したり、わたしが触ったりしたものは、ドロップしやすくなるみたいだ。どうしてなのかは謎だ。それに絶対ではない。何割かは魔石だけという結果だった。
カンルーは積極的に狩ってもらったので、袋は23個もゲットすることができた!
おじいさまに守ってもらっているときに尋ねられた。
「リディアは鑑定ができるようになったのか?」
「おじいさま、教えてもらったから〝知って〟できた」
そう言うと、心配そうに頭を撫でられた。
検証も終えたことだし、みつけた階段を上がる。
空気が違った。蒸し暑い。そして、いうならば。ジャングル、アマゾン。行ったことないけどっ!
ジャングルといえば、嫌な予感しかしないんですけど。
なんか、危険なのいるよねー。凶悪なの、いるよねー。そんなのを模したフィールドにいる魔物なんて、もっと凶悪なんじゃないのー?
襲われる前になんとか目の前に土人形を作れたので、カンガルーは土人形と相撲をとっている。その背中にシヴァが剣を立てた。
2本の足でぴょんぴょん飛びながら距離をつめてきたカンガルーは、音を立て煙となって消えた。
と、薄いオレンジ色の魔石の他に毛皮の袋みたいのが落ちていた。
これは、ひょっとして、ドロップ!?
ふふふ、すっかり忘れていたけれど、わたしは今日は〝鑑定〟をするために来たのだった。
鑑定ができるようになったら、すぐに何でもいいから鑑定しようと思っていた。ところが、ベッドの上でやったのがよくなかった。気がつくと朝だった。もふさまに頬擦りし放題だったのに、それもいつもと同じぐらいしかしなかった。
鑑定をすぐに試すという機会を逃してしまったので、それだったら、最初はこれぞというときに鑑定を使おうと決めていたのだ。
今、まさに、これぞ、という時だよね。
ダンジョンで初めて(シヴァがだけど)倒した魔物。初めてのドロップ。
心の中で念じる。
毛皮の袋を鑑定。
ステータスボードとはまた違うけど、これも目の前に但し書きが現れた。毛皮の袋から罫線が伸びていて、ちゃんとこれのことだと示している。
カンルーの袋:カンルーの最上級の毛皮で作られた袋。丈夫で、撥水効果もある。
おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!
ちょっと、この袋、いいんじゃありません? 人が作ったとは思えないし! これぞ、ダンジョンでドロップする収納箱の袋に!
「お嬢、すみません、大丈夫ですか?」
「リディー、大丈夫か? もう平気だぞ、お前が倒したようなものだ」
みんながわたしの周りに集まっていた。
ぼうっとして見えたからだろう、心配をさせたみたいだ。
「だいじょぶ。父さま、カンルー、メジャー?」
「カンルーとよく知っていたな。メジャーとは何だ?」
「ええと、有名? よく聞く? いっぱいいる?」
『弱い魔物だが、まあ、よくいるな』
「主人さまのおっしゃる通り、わりとどこででも出くわすぞ」
「父さま、この袋、しよう」
「この袋? ん、これはどうしたんだ?」
「魔石と一緒に出てきました」
シヴァが答える。
「ドロップした」
「ドロップ?」
おじいさまが首を傾げる。
「そうか、こういうことを、リディーはドロップと呼ぶのだな」
父さまが頷き、袋を手に取る。
「試練の部屋でもないのに、魔石以外の物が出ることもあるのだな」
わたしの前にバラバラと魔石が落とされる。
『我はこんなに狩ったのに、ドロップとやらはしないぞ』
「リー、土人形作って」
ロビ兄に言われて、土人形を出す。
「あいつに触れて。戦わなくていい」
? ロビ兄があいつといった指差した先には、牛サイズの赤毛のキツネみたいな魔物がいた。
サラマンフォックス:火を吐く。尻尾の毛が高価
「土人形、サラマンフォックスにタッチ」
土人形は、スススとサラマンフォックスに近づいて、高速でキツネの体にタッチするとそのまま飛び退いた。
ロビ兄が走り出したので慌てて言う。
「火、吐くって」
ロビ兄がステップを踏んで止まると、ロビ兄が着地しようとしたところに火を噴かれた。
「リー、ありがと」
そう言って、噴いている火に風魔法をぶつけ渦を作り、キツネへと火を巻きつける。
「キャキャキャキャン」
真っ黒の煙がのぼり、ポンと弾けるような音がして、赤い魔石と長い毛が束ねられたものが現れた。尻尾の毛と同じ色だ。
「アラン?」
ロビ兄がアラ兄を呼ぶ。
「オレの土人形で倒しても、魔石だけだ」
そう言ってわたしをじっと見る。
ロビ兄が、一歩、二歩と近づいてきた。
そしてわたしの両肩に手を置く。
「リー、土人形で魔物を触りまくれ」
え?
おじいさまも、父さまもやってくる魔物をビシバシ狩っている。
『そういうことか』
「どういう、こと?」
『恐らくリディアの魔が触れると〝ドロップ〟しやすくなるんじゃないか?』
なんですと?
それは、検証しないと!
自分が戦うのは嫌だが、土人形ちゃんに魔物をタッチさせるくらいならなんでもない。大きな土人形も複雑な動きをさせなければ、魔力もせいぜいマイナス3だ。
わたしのお守りをいいつかっていたものの、みんなが魔物をバッサバッサ倒しているのを見て、シヴァも疼いていたみたいなんだよね。
というわけで、わたしは父さま、おじいさま、もふさま、時には兄さまと双子に預けられ、土人形を動かした。いちいち言うのがめんどくさくなったので、家族の周りに現れた魔物にはすかさずタッチをして逃げるよう言い含めた。
倒すと魔石だけでなく、何かドロップするのは余計に楽しいらしく、盛り上がりまくりだ。最初は兄さまや双子がはしゃいでいたが、途中からは大人の方が楽しくなってしまったようで、どっちが子供なのかわからなくなっていた。
土人形だけなのか、他の魔法も有効なのかは確かめた。
わたしたちの前に現れたカンルー3匹に、突風をお見舞いした。
一瞬目を瞑られただけだったけど。
兄さまと双子が剣で戦い、もふさまが足を噛んでまわり、3匹は煙となった。2つ袋が落ちて、ひとつはカンルーのお肉がドロップ。高価らしい。
もふさまがまだ生きている魔物を口に咥えて持ってきて、ナイフの先でいいから触るよう言われた。言われた通りナイフの先でつんつんした。もふさまがとどめをさせばそれもドロップした。
魔を通したり、わたしが触ったりしたものは、ドロップしやすくなるみたいだ。どうしてなのかは謎だ。それに絶対ではない。何割かは魔石だけという結果だった。
カンルーは積極的に狩ってもらったので、袋は23個もゲットすることができた!
おじいさまに守ってもらっているときに尋ねられた。
「リディアは鑑定ができるようになったのか?」
「おじいさま、教えてもらったから〝知って〟できた」
そう言うと、心配そうに頭を撫でられた。
検証も終えたことだし、みつけた階段を上がる。
空気が違った。蒸し暑い。そして、いうならば。ジャングル、アマゾン。行ったことないけどっ!
ジャングルといえば、嫌な予感しかしないんですけど。
なんか、危険なのいるよねー。凶悪なの、いるよねー。そんなのを模したフィールドにいる魔物なんて、もっと凶悪なんじゃないのー?
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