プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
73 / 930
3章 弱さと強さと冬ごもり

第73話 海辺の町

しおりを挟む
 起きたときも魔物オンリーだったよ。
 倒した魔物は全部家宝の袋に入れてきたそうだ。

 結局、兄さまたちメインで15匹も狩った。
 今日1日だけで、兄さまたちは頼もしくなってしまっている。なんかね、レベルが一気に2上がったそうですよ。頭に音が響いて困惑したみたい。ボードが喋りだしたそうだ。仮想補佐がスキルについたようなので、それぞれに隠蔽をプラスしておいた。プラスしただけで、魔力に動きがあったので、使ってみるのは夜寝る前にするそうだ。隠蔽は魔力を食うのではと思っているみたいだ。

 みんなで戦うときは声を掛け合い、危なくなるとおじいさま、シヴァ、もふさまが助けを入れた。マダラ模様の大蛇はヤバかった。大人3人合わせたぐらいの太さで、その巨大さに比例して体長も長かった。おじいさまの剣も弾かれ、一瞬にして血の気が引いたが、子犬もふさまが飛び蹴りすると、大蛇は息絶えた。もふさま、本当に強かった。姿は可愛らしいのに!

 おじいさまとシヴァは久しぶりに疼いてしまったとかなんとかいって、わたしをもふさまと兄さまたちに守らせて、ふたりで魔物を狩った。それが10匹。
 対抗意識を燃やしたのか、もふさまがわたしたちに座っているようにいって、軽やかに走っていき、咥えてきたり、飛ばしてきたりして、中には目の前で仕留めて……20匹。
 わたしたちは拍手した。もふさまは満足したようだ。

 なんせ、もふさまが魔物を追い立ててくれるので、探したり待ち時間なく、魔物が後から後からやってくる。それをバッサバッサと倒していったのだ。疲れてきたこともあり、お昼過ぎには終了にすることした。

 魔物を大量にゲットしたので、売りに行くことにした。捌いてもらわないとだしね。前回の教訓を生かして、遠くのギルドに行くことにする。
 もふさまが連れて行ってくれたのは、海辺の町・ゲルン。大きな町だけれど、港があるのは隣のフィブリズという町なので、賑わっているがわたしが押しつぶされそうなほど混んではいないという。他大陸から多数の人種、種族が訪れることもあり、海辺に近い町は初めましてさんが多いので、訪れてもあまり興味を持たれないだろうという配慮だった。

 マップで確認すると、シュタイン領のはるか西だった。双子がマップを羨ましがるので、付けようと思ったがプラスできなかった。なんとなく、マップがあれば探索をプラスすることはできると思えるのだが、何もないところにマップは付け足せないようだ。隠蔽の場合は、情報があるから秘匿する隠蔽が可能となり、だからプラスできたのかもしれない。

 ゲルンの町へはシヴァの身分証でチェックを受けみんなで入る。町は潮の匂いがした。後から海を見ることにして、まずギルドに入る。
 おじいさまは町のカフェみたいなところに居てもらっている。顔が知られていたら、遠くまできたのに台無しだからだ。

 ギルドはドアが開けっぱなしになっていて、いろんな装備をした冒険者がわらわらといた。思い描いていたのよりこじんまりとしていたけれど、武器や防具を身につけている人とすれ違うと現実感が強くなる。アーマーのかち合う音や鎖の音にさえ迫力を感じる。
 子供と子犬を連れてギルドに入ると胡散臭そうな目を向けられるが、シヴァが強そうなのでスルーされる。いくつかの窓口があり、人々が列をなしている。壁には張り紙がいっぱいあって、あれが依頼なのかなと想像を膨らませたりした。

「魔物を売りたい」

 シヴァの番になって告げると、受付の男性は愛想よく笑った。

「こちらに出していただけますか?」

 シヴァが家宝の袋から魔物を出すと、1匹目で止められた。

「すみません、大きいので裏の窓口でお願いできますでしょうか?」

 受付の人の顔が引きつっている。

「わかった」

 シヴァは出しかけた魔物をしまい、裏口に回る。

「でっかい、魔物だって?」

 連絡はもう来ているようだ。シヴァはうなずき

「ここに出せばいいのか?」

 と確認をとった。

「ああ、ここに」

 と指示されたテーブルに無造作に積んでいく。

「ちょっと待った、全部で何匹だい?」

「45匹」

 ロビ兄が嬉しそうに伝える。

「よ、よんじゅう……ご。す、すみません。お時間いただくことになると思うのですが」

「構いません」

 持っててもわたしたちじゃ何にもできないからね。
 職員さんたちが集まってきた。

「じーさん、これ、なんだかわかるか?」

 担当してくれていた人が振り返る。

「ほー、どこの山奥にいたんだか、10年は見とらんな。ほれ、みんな見とけ。これがコブラベスファインダーだ。傷がどこにもない、見事だ。首の骨を一撃だな」

 もふさまのキック力すげー。
 どこかもふさまは得意そうだ。

「この皮はコレクターに高値がつくぞ。この牙が武器に使われる。それから、その収納箱は時間停止ですね?」

 シヴァが頷けば、おおーと声が上がった。

「すぐ血抜きしろ。この血は薬になる」

 おじいさんが言った途端、職員たちが機敏に動き出した。
 職員さんが45匹をリストアップし、全部売るのかどうかを尋ねた。

『魔石と肉を半分もらえ、あとはどのようにしてもいい』

「魔石と食べられるところの肉を半分欲しい。あとは売る」

「コブラベスファインダーの血も売るのか?」

 職員さんに尋ねられ、もふさまが頷くと

「ああ」

 とシヴァが伝える。

 3日後の受け渡しになると言われ、シヴァがどれでもいいから1匹分だけ金に換えたいというと、職員さんは快く引き受けてくれた。
 待つこと10分。大急ぎでやってくれたんだろう。残り44匹分の引き換えの証書と、先に捌いてくれたノランドクという魔物のお肉半分、オレンジ色の魔石、ノランドクの討伐料と残りのお肉を換算し、査定料を引いた45000ギルを受け取った。
 魔物1匹で45000ギルですか!


 おじいさまと合流して海を見にいく。
 絶えず波が寄せては返すのをなんとも不思議な気持ちで見ていた。シヴァにおろしてもらって、兄さまたちの後をもふさまと一緒に走り出す。

 すごい、海だ! 海は同じだ!
 ザザザザという音とともに、寄せては返して、波打ち際を洗っている。
 貝のかけらや海藻なんかを残したり、海に引き込んだり。

「海だ!」

 ロビ兄が万歳をして叫んだ。
 アラ兄は波打ち際に手を入れて、その手を舐めている。

「塩からい。しょっぱい」

 なんか嬉しそう。

 波が引けばそれについて行き、波が押し寄せれば後ろに下がって、兄さまは静かに波と遊んでいる。クールにはしゃぐ、美少年、絵になる。

 そしてわたしは波を触ろうと前屈して、前に倒れて顔から突っ込んだ。
 いたーい! それにびしょ濡れだ。
 うっ。もふさまに服を引っ張られてひっくり返る。

「お嬢!」
「リー」
「リー」
「リディー」
「リディア!」

 うわーーーーん。
 痛いし、冷たいし。

「お嬢、すみません。まさか顔から突っ込むとは」

「リーは波に頬擦りしようとしたの?」

『そうなのか?』

 誰がそんなばかなこと!
 ただ波に触りたかっただけ。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

弟子に”賢者の石”発明の手柄を奪われ追放された錬金術師、田舎で工房を開きスローライフする~今更石の使い方が分からないと言われても知らない~

今川幸乃
ファンタジー
オルメイア魔法王国の宮廷錬金術師アルスは国内への魔物の侵入を阻む”賢者の石”という世紀の発明を完成させるが、弟子のクルトにその手柄を奪われてしまう。 さらにクルトは第一王女のエレナと結託し、アルスに濡れ衣を着せて国外へ追放する。 アルスは田舎の山中で工房を開きひっそりとスローライフを始めようとするが、攻めてきた魔物の軍勢を撃退したことで彼の噂を聞きつけた第三王女や魔王の娘などが次々とやってくるのだった。 一方、クルトは”賢者の石”を奪ったものの正しく扱うことが出来ず次第に石は暴走し、王国には次々と異変が起こる。エレナやクルトはアルスを追放したことを後悔するが、その時にはすでに事態は取り返しのつかないことになりつつあった。 ※他サイト転載

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...