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2章 わたしに何ができるかな?
第55話 見抜かれた
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食事の片付けをして、居間でお茶を飲む。
やっとわたしの番になった。教えてあげたジャンケンをしてわたしが負けたので、膝に乗るのが最後になったのだ。別段座り心地がいいわけではないのだが、おじいさまの膝の上はなぜか取り合いになる。
「して、リディアに何があったのだ? ギフトを授かっただけの変わりようではないだろう?」
おじいさまは後ろからわたしの頭の上に手を置いて、父さまたちに尋ねる。
あ。
わたしは父さまを見上げる。頷いてくれる。
座ったまま振り返っておじいさまを見上げる。
「わたし、リディア。それは絶対」
おじいさまは頷いてくれた。
「表情や仕草は年月が培うもの。嬉しい時の笑い方も、悔しい時に眉を寄せるのも、困った時に不安げに見上げる顔も、爪を噛みそうになるのも。ワシが怖いのにワシの膝に座ってくるのも、ワシの知っているリディアだ。仕草や癖は真似で身にはつかんよ。確かに変わったと思うが、お前がリディアでないとは思っていない」
よかった。胸を撫で下ろす。
「おじいさま、怖くない」
訂正すると、おじいさまはニコニコと笑った。それに励まされて話し出す。
「こっちにきてから、前世、思い出した」
異世界で大人だった記憶があることを話した。
そこではライズを主食としていて、お魚も海の近くでなくとも新鮮な物をいつでも買うことができたので、生のものでもよく食べていたこと。お箸を使い、ジョウユやミソンやビンネに馴染みがあること。
魔法はなかったが、科学が発展していて、便利な暮らしをしていたことなどを。
「……そうか。それなら今の暮らしは、辛いか?」
「うーうん、楽しい。みんなといて、幸せ」
力強く答えると、頭を撫でられた。
「そうか、ならば良かった」
お膝交代の時間になったので、わたしは父さまの膝に移る。
「みんなに、相談、ある」
「相談?」
「ギフト、怪しまれてる。だから、本当とは違う、そう役立たないギフト、打ち出してきたい。わたしのギフト……」
「リディー、ギフトのことは家族にも言わなくていいんだよ。身を守る術なのだから」
後ろの父さまから止められたが、わたしは首を横に振った。
「わたしギフト、足すことできる。制約は、ある」
「支援系ってこと?」
足すことは支援でもあるよね?
兄さまに言われて、わたしは頷いた。
「そのギフトで、主人さまの言葉がわかったのか?」
「それは、違う思う」
父さまに返事をして、置いてけぼりにしてしまったおじいさまとシヴァに、もふさまのことを説明する。
小さくなってもらっているが、森の主人さま・聖獣スノーウルフで、迷子になったときに送ってもらったんだと。そしてわたしは、もふさまや高位の魔物の言葉がなぜかわかることを話した。
呪いのことを話していいのかわからなかったので、チラチラと隣の母さまを見ると、母さまは頷いて、父さまが、もふさまが来てから呪いを解いたことまでを話した。
「光を持ったのか」
少しだけおじいさまの眉が下がる。
「はい、でも幸い教会では魔力量も少なく、属性も水と風だけと言われたので、それで通すつもりです」
父さまは、それから自分が村に挨拶に行っている間に、家が物盗りに襲われたこと。夜中に近隣の森という森から羽あるものたちが飛びたったことから注目を集めたこと。ドラゴンのことを含めてレアワームにまつわることを一気に話した。
一息ついてから話を続ける。
イダボアの帰り道に物取りにあいそうになり、たまたま通りかかった冒険者を雇ったが、レアワームの裏付け調査に来た冒険者でもあり、合わせて国から依頼され、わたしが光持ちではないか確かめるためにきたと告げられたことも話した。
「この短い間に、ずいぶんいろいろなことがあったのだな」
やっぱ、そうだよね。ずいぶん盛り沢山な気がしてたんだよ。人生、こんないろいろなことが起こるのかと。異世界、大変って。でもそうじゃないなら安心した。このところハードだったもん、あとのわたしの人生は穏やかなものになるだろう。
「それにしてもレギーナと子供たちだけで大の男4人を捕らえるとは、それは誰もが驚き、興味を持つだろう」
双子が自分たちが獣避けの仕掛けを作ったんだと話すと、おじいさまは喜んだ。
「その音で気づいたのか?」
「それもあるけど、あとはリーともふさまのおかげだよね。眠らせたのは母さまだし。兄さまもロビンも魔法で戦ったよ」
敵がわかったり、居場所がわかるのを説明するのに、ステータスボードの存在は知ってもらわないとだろう。
「おじいさま、シヴァ、ステータス、言って」
「ステータス?」
お願いを聞いてくれたというより、聞き返したに違いない。
ふたりが首を傾げながら呟くと……驚いてる、驚いている。
「な、なんだこれは?」
「おじいさまもご存知ありませんでしたか? 自分の能力が数値化されたもののようです」
「オープン、つけると、他の人、見える。気をつけて」
注意しとかないとね。
「いや、冗談かと思っていたのですが……。昔、冒険者に、高位になると、自分の能力を見る術を教えてもらえると聞いたことがあったんですが、これのことですね」
シヴァが呟く。
やっぱり、冒険者は活用しているんだね。でも高レベルの人たちだけなんて、もったいない。っていうか、低レベルの人にこそ必要なものじゃない?
「リーのボードはこれを改良してあって地図があるんだ。地図には〝敵〟が赤い点で現れる。だからオレたち敵の居場所がわかって、みんなで協力してやっつけたんだ」
「リディア、それを見せてくれるか?」
わたしは頷いた。おじいさまの前に行く。
「ステータスオープン、マップモード」
「この点がワシたちか」
「緑、わたし。白、もふさま。黄色が知っている人。人は青で獣は茶色。とにかく敵は赤」
「これはすごいな」
ふふふ。こんなことで驚いてもらっちゃ困りますぜぃ。わたしはさらに、おじいさまの鑑定を狙っていて。それをこのボードにつけたいと思っている!
「みんなよく守りあった! 誇らしく思うぞ」
おじいさまに言われて、父さまもなんだか嬉しそうだ。
「リディアのギフトがどういうものと打ち出すかは、慎重に考えよう。実は、ワシらが予定より早く来たのには理由がある。それらのことが関係しているのだ」
そういって、眉を下げたまま、わたしの頭を撫でた。
やっとわたしの番になった。教えてあげたジャンケンをしてわたしが負けたので、膝に乗るのが最後になったのだ。別段座り心地がいいわけではないのだが、おじいさまの膝の上はなぜか取り合いになる。
「して、リディアに何があったのだ? ギフトを授かっただけの変わりようではないだろう?」
おじいさまは後ろからわたしの頭の上に手を置いて、父さまたちに尋ねる。
あ。
わたしは父さまを見上げる。頷いてくれる。
座ったまま振り返っておじいさまを見上げる。
「わたし、リディア。それは絶対」
おじいさまは頷いてくれた。
「表情や仕草は年月が培うもの。嬉しい時の笑い方も、悔しい時に眉を寄せるのも、困った時に不安げに見上げる顔も、爪を噛みそうになるのも。ワシが怖いのにワシの膝に座ってくるのも、ワシの知っているリディアだ。仕草や癖は真似で身にはつかんよ。確かに変わったと思うが、お前がリディアでないとは思っていない」
よかった。胸を撫で下ろす。
「おじいさま、怖くない」
訂正すると、おじいさまはニコニコと笑った。それに励まされて話し出す。
「こっちにきてから、前世、思い出した」
異世界で大人だった記憶があることを話した。
そこではライズを主食としていて、お魚も海の近くでなくとも新鮮な物をいつでも買うことができたので、生のものでもよく食べていたこと。お箸を使い、ジョウユやミソンやビンネに馴染みがあること。
魔法はなかったが、科学が発展していて、便利な暮らしをしていたことなどを。
「……そうか。それなら今の暮らしは、辛いか?」
「うーうん、楽しい。みんなといて、幸せ」
力強く答えると、頭を撫でられた。
「そうか、ならば良かった」
お膝交代の時間になったので、わたしは父さまの膝に移る。
「みんなに、相談、ある」
「相談?」
「ギフト、怪しまれてる。だから、本当とは違う、そう役立たないギフト、打ち出してきたい。わたしのギフト……」
「リディー、ギフトのことは家族にも言わなくていいんだよ。身を守る術なのだから」
後ろの父さまから止められたが、わたしは首を横に振った。
「わたしギフト、足すことできる。制約は、ある」
「支援系ってこと?」
足すことは支援でもあるよね?
兄さまに言われて、わたしは頷いた。
「そのギフトで、主人さまの言葉がわかったのか?」
「それは、違う思う」
父さまに返事をして、置いてけぼりにしてしまったおじいさまとシヴァに、もふさまのことを説明する。
小さくなってもらっているが、森の主人さま・聖獣スノーウルフで、迷子になったときに送ってもらったんだと。そしてわたしは、もふさまや高位の魔物の言葉がなぜかわかることを話した。
呪いのことを話していいのかわからなかったので、チラチラと隣の母さまを見ると、母さまは頷いて、父さまが、もふさまが来てから呪いを解いたことまでを話した。
「光を持ったのか」
少しだけおじいさまの眉が下がる。
「はい、でも幸い教会では魔力量も少なく、属性も水と風だけと言われたので、それで通すつもりです」
父さまは、それから自分が村に挨拶に行っている間に、家が物盗りに襲われたこと。夜中に近隣の森という森から羽あるものたちが飛びたったことから注目を集めたこと。ドラゴンのことを含めてレアワームにまつわることを一気に話した。
一息ついてから話を続ける。
イダボアの帰り道に物取りにあいそうになり、たまたま通りかかった冒険者を雇ったが、レアワームの裏付け調査に来た冒険者でもあり、合わせて国から依頼され、わたしが光持ちではないか確かめるためにきたと告げられたことも話した。
「この短い間に、ずいぶんいろいろなことがあったのだな」
やっぱ、そうだよね。ずいぶん盛り沢山な気がしてたんだよ。人生、こんないろいろなことが起こるのかと。異世界、大変って。でもそうじゃないなら安心した。このところハードだったもん、あとのわたしの人生は穏やかなものになるだろう。
「それにしてもレギーナと子供たちだけで大の男4人を捕らえるとは、それは誰もが驚き、興味を持つだろう」
双子が自分たちが獣避けの仕掛けを作ったんだと話すと、おじいさまは喜んだ。
「その音で気づいたのか?」
「それもあるけど、あとはリーともふさまのおかげだよね。眠らせたのは母さまだし。兄さまもロビンも魔法で戦ったよ」
敵がわかったり、居場所がわかるのを説明するのに、ステータスボードの存在は知ってもらわないとだろう。
「おじいさま、シヴァ、ステータス、言って」
「ステータス?」
お願いを聞いてくれたというより、聞き返したに違いない。
ふたりが首を傾げながら呟くと……驚いてる、驚いている。
「な、なんだこれは?」
「おじいさまもご存知ありませんでしたか? 自分の能力が数値化されたもののようです」
「オープン、つけると、他の人、見える。気をつけて」
注意しとかないとね。
「いや、冗談かと思っていたのですが……。昔、冒険者に、高位になると、自分の能力を見る術を教えてもらえると聞いたことがあったんですが、これのことですね」
シヴァが呟く。
やっぱり、冒険者は活用しているんだね。でも高レベルの人たちだけなんて、もったいない。っていうか、低レベルの人にこそ必要なものじゃない?
「リーのボードはこれを改良してあって地図があるんだ。地図には〝敵〟が赤い点で現れる。だからオレたち敵の居場所がわかって、みんなで協力してやっつけたんだ」
「リディア、それを見せてくれるか?」
わたしは頷いた。おじいさまの前に行く。
「ステータスオープン、マップモード」
「この点がワシたちか」
「緑、わたし。白、もふさま。黄色が知っている人。人は青で獣は茶色。とにかく敵は赤」
「これはすごいな」
ふふふ。こんなことで驚いてもらっちゃ困りますぜぃ。わたしはさらに、おじいさまの鑑定を狙っていて。それをこのボードにつけたいと思っている!
「みんなよく守りあった! 誇らしく思うぞ」
おじいさまに言われて、父さまもなんだか嬉しそうだ。
「リディアのギフトがどういうものと打ち出すかは、慎重に考えよう。実は、ワシらが予定より早く来たのには理由がある。それらのことが関係しているのだ」
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