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2章 わたしに何ができるかな?
第51話 どんぶりご飯
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ドアを開けると、ウィリアムさんがいた。その後ろに父さま、他のメンバーも。カーブルさんの戻りが遅くて探しにきたのかな?
「カーブル、人様の家で何を勝手に歩き回っている」
ウィリアムさんが強い調子で言った。
「すみません、うまそうな匂いに釣られて、つい」
「確かに、おいしそうな匂いだが」
父さまが苦虫を噛み潰したような顔だ。わたしは父さまの足元にいって、服を引っ張った。屈んでもらって耳元に内緒話をする。
「みんなの分、十分あるけど、ライズ、家畜の餌。知ったら、怒るかも」
伝えると、父さまはわたしを見て頷いた。
「お時間がありましたら、食事はいかがですか? 子供たちの作ったものですが」
「それは嬉しいですね。できたら、皆さま一緒に」
「ただし……主食はライズで、よろしければですが」
「ら、ライズですか?」
「家畜の餌の?」
「あの、硬い?」
魔法士だというエトライさんは、食べたことがあるみたい。でも硬いと言うことは、まずい調理の仕方で食べたっぽい。
父さまは答えずにニコッと笑うだけだ。
「おれ、食べたいっす」
カーブルさんが挙手して元気に名乗りをあげた。
「皆さま、いつもライズを召し上がるんですか?」
「領地に違う大陸からきたご婦人がいらして、ご馳走になったんです。それで気に入りまして」
わたしたちに向き直り
「母さまと、食事の用意をしてくれるかい? そうだな、天気がいいから、庭で食べよう」
と言った。
「はぁい」
元気よく返事をする。双子がテーブルを用意するのに庭へと駆けていく。
母さまがやってきて、早速見とがめられる。お客さまに失礼のない服に着替えるように言われてしまった。仕方ないのでもふさまと部屋に戻る。下のズボンはスカートに隠れて見えないんだし、このままでいいか。上だけワンピースにすれば。かぶるタイプは脱ぐのが大変だ。もぞもぞやっているともふさまが服を引っ張ってくれた。
「ありがと」
あとはワンピースを着る。よし。
『リディア、念のため、敵がいないか見てみろ』
へ? はぁいとステータスボードを呼び出す。
「……ステータスオープン、マップモード」
うっ。総勢11個の点のうち1つが抑えた赤い色。微妙に敵ってこと?
なんてこった。
『誰だかはわからないな』
「……うん」
『どうした?』
「父さまに、伝える。他の人、伝えない、いいよね?」
せっかくのご飯が楽しめなくなっちゃうもの。
「いいと思うぞ。ひとりということは、他の者にも秘密で、単独で請け負っているんだろう。だから表立って仕掛けてくることはない。それは色でも証明されている」
わたしは頷く。
庭に出ると土魔法で11人が座れるようなテーブルと椅子が出来上がっていた。5人の冒険者たちは双子の土魔法の操作を驚きながら見守っていた。
さて、わたしはこれからアホの子をやろうと思う。
さっき父さまに耳打ちしにいったのも、末っ子の甘ったれが人様がいるにも関わらず父親に甘えたようなそぶりをする愚かしいことをしてみたが、同じことをするのでは能がないので、今度はさらにアホさを追求する。
ウィリアムさんと父さまが話しているところに、わざと突撃する。
「父さま、もふさま、お話、あるって」
父さまは固まったが
「ちょっと、失礼」
と言って、屈んでくれる。
「どうした?」
と、もふさまを抱えるわたしごと抱き上げてくれた。
「敵、ひとり。抑えた赤。みんなには言わない」
もふさまを父さまの顔に少し近づけるようにして、まるでもふさまが父さまに話していると信じているようなふりをしながら、小さい声で父さまに告げる。
眉がピクッとした父さまは、わたしたちをそっとおろす。
「レディは着替えてきたんだね、とっても似合っているよ。さ、皆さまにちゃんとご挨拶できるかな?」
ふと見れば、母さまがにこりと笑みを浮かべながら、果てしなく怒っていた。
まずい。意味があるとは思っているだろうけど、数々のマナー違反で怒りをかっている。
わたしはスカートを摘んで、カーテシーを試みる。
「本日は、お越しくださり、ありがとう存じます。リディアです。皆さまと、またお会いできて、嬉しいです。心ばかりではありますが、食事を用意、しましたので、どうぞ、めしあがってください」
母さまをチラリと見上げれば
「どうぞ、お座りになってください」
と皆さまを促した。よし、合格点だったようだ。
「リー、上手にご挨拶できていたよ」
「うん、可愛かったぞ」
と双子が兄バカぶりを発揮する。
「兄妹で仲がいいですね」
「ははは、末のをどうしても甘やかしてしまいまして」
兄さまはテーブルのセッティングに忙しい。ランチョンマットも、カトラリーも、しっかりと並べられ、お水も各自分、そして真ん中におかわりのポットが置かれている。ウチにこんなお客様おもてなしグッズが揃っていたとは。あ、昨日とかに買ったのかな?
母さまに呼ばれて、丼の説明をする。ご飯をよそって、上にお肉と野菜を盛り付けタレをかける。肉じゃがは小皿によそっておいて、残りは大皿にスプーンと共に置いておいた。おかわりは各自でやってもらうスタイルだ。お味噌汁もよそえば、準備完了だ。
座ってもらって、ホストである父さまが促して、各自食前の言葉を述べる。
いっただっきまーす。
お箸をお味噌汁につけて、まずは一口。ああ、お味噌だ! お味噌汁だ。ワカメをズズッといただく。ツルッとしててお味噌汁の具として最適だなぁ。海藻は体の中をきれいにしてくれるイメージがある。
肉じゃが、芋がしみしみ。お肉と野菜の旨味が芋にギュギュギュと。マルネギもとろりとしてニンジも甘くておいしー。
そして、わたしの中のメイン! 甘辛丼。あむり。お肉、甘辛。肉汁と一緒にピリ辛が口の中でハーモニーを奏でる。うまっとすかさずご飯をかっこむ。ご飯とお肉のコラボは最高だ! ピーマンの苦味が味を引き締めるね。ああ、とろりとしたアカナスに味がうつっていてコッテリだ。うまうま!
はー、幸せ。やっと顔をあげて、みんなのご飯の様子を見ると、ふふふ、かっこんでいるよ。
「ライズがこんなに美味しいとは!」
「この味付けは初めてです。甘辛、なるほど、後をひきますな」
「こっちもすっごく美味しい。芋がこんなに美味しいなんて」
「このスープは初めていただきました。中の物も、薄いわけではないのに、不思議と口のなかがさっぱりする」
「永遠に食べていたい」
でしょう!!!!!!!!!!! わたしの鼻は確実に伸びていると思う。おいしいと思っているものが支持されると、本当嬉しい。
「リディアちゃんはいくつなんですか?」
「わたしは5歳です。お兄さんはいくつですか?」
ウィリアムさんは胸に手をやる。
「これは失礼しました、小さいレディ。私は23歳です」
23か。冒険者のAランクリーダー。それがどれくらいすごいことなのかは情報が少なすぎてわからないけれど、多分、かなりすごい気がする。
「ほー、23歳で 上位ランクとは凄いですね」
父さまが褒める。やっぱり凄いんだ。
「何歳の時に冒険者を目指したんですか?」
ロビ兄がウィリアムさんに尋ねた。
「私は最初は騎士になりたくてね、子供の頃から剣などは習っていたんだ。学園に入り、卒業して騎士団の研修生になり1年勤めたのだが、思っていたのとどうしても違うと感じてしまって、騎士団を辞めて冒険者になった。ギルドに加入したのは19歳の時だ」
よく知らないわたしにもわかる。
4年でかなり凄いAランクまで上り詰めたとはただもんじゃない。
「カーブル、人様の家で何を勝手に歩き回っている」
ウィリアムさんが強い調子で言った。
「すみません、うまそうな匂いに釣られて、つい」
「確かに、おいしそうな匂いだが」
父さまが苦虫を噛み潰したような顔だ。わたしは父さまの足元にいって、服を引っ張った。屈んでもらって耳元に内緒話をする。
「みんなの分、十分あるけど、ライズ、家畜の餌。知ったら、怒るかも」
伝えると、父さまはわたしを見て頷いた。
「お時間がありましたら、食事はいかがですか? 子供たちの作ったものですが」
「それは嬉しいですね。できたら、皆さま一緒に」
「ただし……主食はライズで、よろしければですが」
「ら、ライズですか?」
「家畜の餌の?」
「あの、硬い?」
魔法士だというエトライさんは、食べたことがあるみたい。でも硬いと言うことは、まずい調理の仕方で食べたっぽい。
父さまは答えずにニコッと笑うだけだ。
「おれ、食べたいっす」
カーブルさんが挙手して元気に名乗りをあげた。
「皆さま、いつもライズを召し上がるんですか?」
「領地に違う大陸からきたご婦人がいらして、ご馳走になったんです。それで気に入りまして」
わたしたちに向き直り
「母さまと、食事の用意をしてくれるかい? そうだな、天気がいいから、庭で食べよう」
と言った。
「はぁい」
元気よく返事をする。双子がテーブルを用意するのに庭へと駆けていく。
母さまがやってきて、早速見とがめられる。お客さまに失礼のない服に着替えるように言われてしまった。仕方ないのでもふさまと部屋に戻る。下のズボンはスカートに隠れて見えないんだし、このままでいいか。上だけワンピースにすれば。かぶるタイプは脱ぐのが大変だ。もぞもぞやっているともふさまが服を引っ張ってくれた。
「ありがと」
あとはワンピースを着る。よし。
『リディア、念のため、敵がいないか見てみろ』
へ? はぁいとステータスボードを呼び出す。
「……ステータスオープン、マップモード」
うっ。総勢11個の点のうち1つが抑えた赤い色。微妙に敵ってこと?
なんてこった。
『誰だかはわからないな』
「……うん」
『どうした?』
「父さまに、伝える。他の人、伝えない、いいよね?」
せっかくのご飯が楽しめなくなっちゃうもの。
「いいと思うぞ。ひとりということは、他の者にも秘密で、単独で請け負っているんだろう。だから表立って仕掛けてくることはない。それは色でも証明されている」
わたしは頷く。
庭に出ると土魔法で11人が座れるようなテーブルと椅子が出来上がっていた。5人の冒険者たちは双子の土魔法の操作を驚きながら見守っていた。
さて、わたしはこれからアホの子をやろうと思う。
さっき父さまに耳打ちしにいったのも、末っ子の甘ったれが人様がいるにも関わらず父親に甘えたようなそぶりをする愚かしいことをしてみたが、同じことをするのでは能がないので、今度はさらにアホさを追求する。
ウィリアムさんと父さまが話しているところに、わざと突撃する。
「父さま、もふさま、お話、あるって」
父さまは固まったが
「ちょっと、失礼」
と言って、屈んでくれる。
「どうした?」
と、もふさまを抱えるわたしごと抱き上げてくれた。
「敵、ひとり。抑えた赤。みんなには言わない」
もふさまを父さまの顔に少し近づけるようにして、まるでもふさまが父さまに話していると信じているようなふりをしながら、小さい声で父さまに告げる。
眉がピクッとした父さまは、わたしたちをそっとおろす。
「レディは着替えてきたんだね、とっても似合っているよ。さ、皆さまにちゃんとご挨拶できるかな?」
ふと見れば、母さまがにこりと笑みを浮かべながら、果てしなく怒っていた。
まずい。意味があるとは思っているだろうけど、数々のマナー違反で怒りをかっている。
わたしはスカートを摘んで、カーテシーを試みる。
「本日は、お越しくださり、ありがとう存じます。リディアです。皆さまと、またお会いできて、嬉しいです。心ばかりではありますが、食事を用意、しましたので、どうぞ、めしあがってください」
母さまをチラリと見上げれば
「どうぞ、お座りになってください」
と皆さまを促した。よし、合格点だったようだ。
「リー、上手にご挨拶できていたよ」
「うん、可愛かったぞ」
と双子が兄バカぶりを発揮する。
「兄妹で仲がいいですね」
「ははは、末のをどうしても甘やかしてしまいまして」
兄さまはテーブルのセッティングに忙しい。ランチョンマットも、カトラリーも、しっかりと並べられ、お水も各自分、そして真ん中におかわりのポットが置かれている。ウチにこんなお客様おもてなしグッズが揃っていたとは。あ、昨日とかに買ったのかな?
母さまに呼ばれて、丼の説明をする。ご飯をよそって、上にお肉と野菜を盛り付けタレをかける。肉じゃがは小皿によそっておいて、残りは大皿にスプーンと共に置いておいた。おかわりは各自でやってもらうスタイルだ。お味噌汁もよそえば、準備完了だ。
座ってもらって、ホストである父さまが促して、各自食前の言葉を述べる。
いっただっきまーす。
お箸をお味噌汁につけて、まずは一口。ああ、お味噌だ! お味噌汁だ。ワカメをズズッといただく。ツルッとしててお味噌汁の具として最適だなぁ。海藻は体の中をきれいにしてくれるイメージがある。
肉じゃが、芋がしみしみ。お肉と野菜の旨味が芋にギュギュギュと。マルネギもとろりとしてニンジも甘くておいしー。
そして、わたしの中のメイン! 甘辛丼。あむり。お肉、甘辛。肉汁と一緒にピリ辛が口の中でハーモニーを奏でる。うまっとすかさずご飯をかっこむ。ご飯とお肉のコラボは最高だ! ピーマンの苦味が味を引き締めるね。ああ、とろりとしたアカナスに味がうつっていてコッテリだ。うまうま!
はー、幸せ。やっと顔をあげて、みんなのご飯の様子を見ると、ふふふ、かっこんでいるよ。
「ライズがこんなに美味しいとは!」
「この味付けは初めてです。甘辛、なるほど、後をひきますな」
「こっちもすっごく美味しい。芋がこんなに美味しいなんて」
「このスープは初めていただきました。中の物も、薄いわけではないのに、不思議と口のなかがさっぱりする」
「永遠に食べていたい」
でしょう!!!!!!!!!!! わたしの鼻は確実に伸びていると思う。おいしいと思っているものが支持されると、本当嬉しい。
「リディアちゃんはいくつなんですか?」
「わたしは5歳です。お兄さんはいくつですか?」
ウィリアムさんは胸に手をやる。
「これは失礼しました、小さいレディ。私は23歳です」
23か。冒険者のAランクリーダー。それがどれくらいすごいことなのかは情報が少なすぎてわからないけれど、多分、かなりすごい気がする。
「ほー、23歳で 上位ランクとは凄いですね」
父さまが褒める。やっぱり凄いんだ。
「何歳の時に冒険者を目指したんですか?」
ロビ兄がウィリアムさんに尋ねた。
「私は最初は騎士になりたくてね、子供の頃から剣などは習っていたんだ。学園に入り、卒業して騎士団の研修生になり1年勤めたのだが、思っていたのとどうしても違うと感じてしまって、騎士団を辞めて冒険者になった。ギルドに加入したのは19歳の時だ」
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