プラス的 異世界の過ごし方

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2章 わたしに何ができるかな?

第39話 小さい村②果実

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 起きると、双子に覗き込まれていた。

「起きたか?」

「どしたの?」

 先に遊びに行ってるかと思ったのに。
 わたしは上半身を起こして大きく伸びをし、あくびをした。

「リー、外行こう」

「行こう」

 完全に待ってたな。

「兄さまと、もふさまは?」

「兄さまは父さまと。もふさまも一緒に行った」

 部屋を出ると、母さまが土間っていうんだっけ? 床板がない土のままの、カマドがある炊事スペースを掃除していた。

「起きたのね?」

「手伝う?」

 尋ねると、首を横に振る。
 残念ながらわたしは戦力になれないことが多い。いや、それどころではなく足を引っ張ることになりかねないので尋ねることにしている。

「さっきまでアランとロビンが手伝ってくれていたのよ。こっちは大丈夫だから、遊んでいらっしゃい。大人の邪魔をしてはダメよ?」

「はーい」

 出遅れて、わたしが起きるのを待ってたんだな。
 双子は臆することを知らないまま一生を終える人種だと思っていたので、そんな人見知りなところがあるのかと驚いた。
 でも、仮家から出て納得した。足がすくむね。
 わたしは村に入ったときは半分眠っていたようなものだから気づかなかったけど、地面がひび割れていて、干からびている。村はシーンとしていた。人が見えるところにいない。怖気づくね。わたしは両手を双子に差し出して、ふたりと手を繋いだ。

 小さい村を拠点に畑を整えていったというより、農地がずっと続いていて、世話しに出てくるのも大変だから真ん中に住めるとこ作っちゃえという感じで立てられたっぽく、周りは畑だ。その先に森っぽくなっているところもある。そちらは木々が生い茂っているから土壌は大丈夫なのだろう。

 わたしたちが借りているのは、逃げ出した村民の家だ。まず家の周りをまわって、どんな感じかを見ていく。双子の握りしめる手が強くなる。

「乾いてる」

「……そうだね」

 仮家に近い畑、土が黒っぽく見えた。土魔法を使おうとすると、なかなか動かない。抵抗を感じる。〝土〟じゃないものになりつつあるってところかな。なるほどね。

 歩いていくと、父さまがお辞儀をして、誰かが帰っていくところだった。
 わたしたちに気づいた兄さまが微笑み、もふさまはこちらにトコトコと歩いてきた。
 父さまの表情が暗い。

「鑑定の人?」

 尋ねたアラ兄に父さまが頷く。
 え? 鑑定? 見たかった! なんでお昼寝したんだ、わたし。
 村に来る今日に合わせて鑑定できる人を呼んでいたんだ、父さま、仕事早いね。

「わかったの?」

「……ああ」

「レアワームがいるようだ」

「レアワーム?」

「れあわーむ?」

 わたしとロビ兄は首を傾げる。
 父さまは頷いた。

「普通のワームは虫の死骸などを食べ、排泄物やそのワームの死骸が土にいい影響を及ぼす。レアワームというのは、ワームの変種で、より悪食でなんでも食べ、生き物が生きられない強い殺菌効果がある物を排泄するんだ。レアワームがいると土の中の菌は食べ尽くされ、排出されたもので菌が死んでしまう。食べ物を求めてレアワームは生きている限り土地を渡る」

「レアワーム、どうしたら、退治できる?」

「レアワームは臆病だから気配に敏感で地上にはなかなか出てこない。生息してる土地を割り出して、それ以上渡って行かないよう、囲うように熱湯を撒く。熱いのは苦手らしいから熱い方には寄って行かない……が、それくらいでは死にはしないみたいだ。範囲を決めて3年ぐらい熱湯を撒いていれば、土地を渡ることもできず食べ物を食べ尽くして死滅するだろうとのことだ」

 鑑定の人も驚いていたようだが、レアワームがかなりの数いるらしい。鑑定できたのはレアワームの排泄物で、その容量からいっぱいいると推測しているみたいだ。普通にしていればここまでレアが増えることはないそうだ……。薬を撒いたら作物が育たなくなったということは、それが関係しているのかもしれない。
 レアワームは農家の人の困りごとのひとつなようだ。先人たちが熱に弱いのかと土を焼くこともしてみたみたいだけど、もっと地下に潜るのか、それでは死ななかったらしい。撒く時は熱湯でも時間が過ぎれば冷める。でもどういうわけか、熱湯を撒いたところには近づかなくなるみたいだし、土地を渡って行く時は、比較的浅いところを渡って行くことはわかっていて、今のところ、土地を渡って行けないように熱湯で囲うようにして、食べられるものを失くすというのが、ベストな対処のようだ。

 父さまの暗い顔の理由がわかる。3年その土地はレアワームの住処となり、畑としてなりたたない。3年畑が使えなかったら、ううん、そのお湯をかけ続け、強い殺菌効果のある土となってしまった土壌がいつ生命を育める日がくるか……。

「父さまは、村長と話してくる。フラン、みんなを頼んだぞ」

「はい」

 4人で父さまの背中を見送る。
 視線を感じた。

「本当だ、チビだ」

「ちっちぇえ」

 ん? と思って振り向くと、目のぎょろっとした男の子5人がいた。10歳前後ってところかな。5人は走り寄ってきた。

「おい、チビ、いくつだ?」

 力強く頭を撫でられる。にかっと笑う顔はビリーを彷彿させる。

「5歳」

「ちっちぇえー」

 なんか、代わる代わる頭を撫でてくるんですけど。
 その間に兄さまが入ってくる。

「私はフランツ。名前教えてよ」

 小さい村の村長の息子のフッタ、10歳。イタンとシートが9歳、ビダが8歳で、ビーが7歳だ。
 わたしたちも名乗ると、兄さまたちは大きいのに、わたしはチビすぎると言われた。
 兄さまがビーと同い年には思えないと。確かに、10歳のフッタと同じぐらいだ。アラ兄とロビ兄は9歳組と同じぐらいの背丈だ。ただ村の子は痩せ細ってはいるけれど。……そしてわたしは確かにチビだ。

 毎日何をしているのか尋ねた。前は畑仕事を手伝っていたけれど、今は畑自体を縮小しているのからできることは少ないそうだ。
 わたしたちは仮家と真逆な方向に連れていかれた。そこは立派な木があり、青い果実を鈴なりにつけていた。
 りんごだ!

 シートがスルスルと木に登り、果実をひとつもいだ。それをフッタにほうり投げる。フッタはそれを自分の服でゴシっと擦って兄さまに差し出した。
 食えって感じで。兄さまはためらいを見せずに一口かじる。

「シャリっとしてて、甘酸っぱい!」

 アラ兄に渡り、ロビ兄も食べて感嘆の声があがる。
 ロビ兄がわたしの口の前にりんごを差し出してくれた。
 大きく口を開けてかじりついたのだが、ん? 口の中には何も入ってこない……。
 ロビ兄がりんごの角度を変えてくれる。
 どういうこと? 口を開けるのだが、唇は当たっているのにりんごに歯が届かない。そんなことってあるの? 口の角度を変えてみても、いっこうにりんごに届かないんですけどっ。

「すぐそこ、オレん宅だから、リンゴンをナイフで切ってやるよ」

 見兼ねてイタンがそう申し出てくれた。なんかみんな笑いを堪えているけど。

「ありがと」
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