プラス的 異世界の過ごし方

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2章 わたしに何ができるかな?

第35話 冒険者の話

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 ルーティーンを終え、荷物を持って川原へと急ぐ。
 探索を知ることができると思うとウキウキを隠せない。
 そんなわたしを兄さまは不思議そうに見る。

「冒険者っていっても、シヴァみたいに大きくてガッチリとは限らないよ?」

 ん? まぁ、そうだろうとは思うけど、なんでシヴァが出てくるんだろう?

「リディーはさ、やっぱりシヴァみたいなムキムキの強い人が好きなの?」

 シヴァって別にムキムキではないと思うけど……。

「……ムキムキが、特別、好きと違う」

 そこは誤解されたくないので、否定しておく。なんか5歳児が筋肉を愛しているみたいに聞こえたのだ。
 子供たちはまだ来ていなかったので、バッグからお鍋やお肉など、使うものを全部出しておく。カマドも石で作って、お肉を焼けるように用意をした。
 子供たちがくるまで、ほんの少しうとうとした。わたしは確信する。もふさまという抱き枕があればどこでも眠れると!


 子供たちが集まり出した。お土産にした燻製肉がおいしかったと言ってくれたので、冬用にまた作ろうと思っていることを話した。川原でやるのか聞かれて、家でも川原でもやらないと捌けない量になるだろうと思って頷くと、今あるのじゃ小さいよなと、男の子たちで秘密基地を大きくする算段を立て始めた。おお、頼りになるね!

 お兄さんがやってきた。どこか〝のんびりや〟に見えるところがカールと一緒だ。
 わたしたちは初めてましてと挨拶して、兄さまが、妹たちがわがままを言ってすみません、ここまで来てくださってありがとうございますとお礼を言った。
 お兄さんは兄さま、双子、わたしの頭をグリグリ撫でて、

「肉、ごちそうしてくれるんだろう? この前もらった肉、スッゲーうまかった、ありがとな」

 と笑った。
 お肉を焼き出し、シチューもみんなに配って、なんちゃって唐揚げもスタンバイさせる。それからサラダだ。
 食べ始めると、みんなすごい勢いで食べてくれて、あっという間になくなった。お腹も膨れたみたいだ、よかった。
 あとは飲める人だけということで、ちょっぴりだけどジャムにミルクを入れたものを配る。甘いのが苦手な子とお兄さん以外は飲んだ。気に入ったみたい。

 お兄さんにわたしたちは冒険の話をねだった。
 お兄さんは話すのが上手で、本当にすぐそこに魔物が来たような気がして、わたしたちは手を取り合ったり、びくつきながらもお兄さんの話に夢中になった。

 ひと段落して「おちびちゃん」と話しかけられる。

「君が聴きたかったのも冒険話?」

 お見通しだなと思いながら尋ねる。

「探索のこと、聞きたい、です」

「探索?」

 ニヤリと笑う。

「そうだな、普通の探索は経験値や、感知能力の一種で敵や罠を探るものだ。おれのギフトも感知系だから、探索の真似事をしている」

「お兄さんは、ギフトで探索、どんなふう、見えてる、ですか?」

 お兄さんは秘密だとでもいうように声を潜めた。

「おれは視覚的にわかるようにしたんだ。敵は赤い点というか、で引っかかるようにしている」

 〝探索〟いただきました。わたしはニンマリした。

「お嬢ちゃんも感知系か? ギフトもらったばかり?」

 きっと5歳という情報をカールから聞いて、わたしが手にしたギフトで知りたいことができて話を聞きたいと思っているとアタリをつけていたんだろう。そりゃ5歳が探索にピンポイントで興味持ったり、あまりしないよね。

「そんな感じです。ギフト、もらったばっかり」

 知ることでプラスするのだから、感知と言えないこともないだろう。
 有意義な一日だった。

 今日は後で魔力を使う予定だから、お風呂はお湯を何度も運んだ。お風呂できれいにしてから、もふさまのブラッシングタイムだ。
 お風呂に入らなくてもいつもきれいなんだけどね、もふさまの毛は。

「痛くない?」

『ああ……』

 背中をそっとブラシをあてて滑らせ、だんだん力を入れていく。
 今度はお腹だ。

「もふさま、ごろんして」

 もふさまがお腹を見せる。
 ふふふ。内側はそっとね。優しく優しく撫でるように滑らす。
 ううっ。顔を埋めたい!
 手と足の先まで毛にブラシを通していく。おお、毛の艶が良くなるね。もふさまの皮膚のピンクも少し火照っている。血色がより良くなった感じだ。最後は尻尾を丁寧に。

「気に入った?」

 もふさま、すましているけど、眠りそうになっていたのをわたしは知っている。
 尻尾が左右に揺れているしね。

「毎日、ブラシ、させてね!」

 もふさまはそっぽを向いたまま、呟く。

『どうしてもというなら、やらせてやらないこともない』

 ふふふ。やったね!


 さてさて。
 夕飯までに、わたしはギフトを使おうと思う!
 地図と探索を知った。
 これをね、できたらステータスボードにつけたいんだよね。
 ボードには無理だったら、何か考えるとして。ひとまず。

 空いている部屋に、もふさまとふたり。
 わたしはステータスを呼び出す。

「ギフト、プラス! ステータスボードに地図をプラス!」

 別に言う必要もないんだけど。……嬉しくてはしゃいでいるのかもしれない。
 目の前には何ら変わりのないステータスボードが。
 あれ? ダメか?

「マップモード」

 あ、出た。おお、イメージしていたのより高性能っぽい。

「拡大。現在地に近づいて」

 もふさまがわたしの腕をつんつんとする。

『我も見たい』

 え? そう言われても……。そうだ!

「ステータス、オープン。見える?」

『おお、なんだこれは』

「ステータスモードに。これ、わたし、ステータス。読める?」

『不思議だな。理解る』

「マップモード」

『これは!』

「この辺り、地図、見せてもらったから、付けてみた。こっちがいつもの川原。だからこの辺、聖域かな?」

『もうちょっとこっちじゃないか?』

「え? どっち? ここ?」

 透明の画面を指差したのに、指が何かに触れた感じがして、その指先を中心にマップが拡大された。

「さ……われるん……だ」

 びっくりだ。
 ちょうど、家を中心とした丘の周辺寄りに地図が映し出されている。

『もう、迷子にならないためか?』

 もふさまをジト目で見る。真顔で聞かないで。

「違う。本当にやりたいのは。見てて」

 息を吐いて、吸って、心を落ち着ける。

「ギフト、プラス、探索! 危険、敵、魔物、悪意ある人は赤、知り合いは黄色。人は青で示して」

『おお、点が出てきたぞ。動いている』

 家には6つの点がある。緑の点と白い点がすっごく近い。指示してないけど、多分これわたしともふさまだ。緑がわたしで、白がもふさま。
 キッチンに黄色が2つ。庭にひとつ。子供部屋にひとつ。

『面白いな。どこに人がいるかもわかるのか』

「森とかも赤を避ければ危なくないでしょ」

 幼児だからね、危険は避けないと。これで気兼ねなく森に行ける。食糧確保だ!
 ステータスをチェックする。魔力はマイナス300。結構大変な機能をつけた気がするのに300でいいの? 基準がわからん。
 お、スキル増えてる。探索が入ってる。すごっ。

 わたしはすっかり気を良くして、ごきげんでご飯を食べ、そしてまたみんなで眠りについた。
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