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1章 ここがわたしの生きる場所
第31話 ギフト
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文字ではない?
でも目の前に現れたあれはどこをどう見ても……。
?
……プラス?
縦の棒が長いように見えたから10って思ったけど、プラスだったら?
「記号で似たのある」
『それはどんな意味だ?』
「プラス。加えること」
わたしの中で風が起こった。
プラスだ。わたしのギフト〝プラス〟だ。足し算の記号で使うアレだ。
「もふさま、わかった」
『そのようだな』
わたし、足すことができるんだ。付け加えることが。
小説で読んだ付与みたいなことができるってことかな。
何を足せるんだろう?
目の前の人参。これに玉ねぎを足す。
カレーか!?って、はい、できませんね。
わたしはお風呂に走った。湯船に半分ぐらい水が張ってある。
「お湯をプラス」
シュッとわたしの中の何かが動いた。
がくんと座り込む。
『どうした、リディア!!』
「魔力持ってかれた、多分」
水位が上がっている。手を入れるとほんのり温かい。
よっしゃ! これでお風呂いちいちお湯を沸かして運ばなくても入りたい放題だ。
「ステータス」
魔力残量1250。たった一回のギフト使用で3757も持っていかれた。お風呂に入るのに一苦労は代わりなさそうだ。
「もふさま、魔力ってどうやったら増えるかな?」
『その年で5000あれば多いだろう』
「お湯足すだけ、この有り様、なのに?」
『使い方でなんとでもなろう』
そっか。これからいろいろ研究していこう!
ギフトは1日1回ってとこだね。
他の魔法はそうたいして魔力を使わない。
最初は水を部屋から畑に、訓練の時はお風呂に水を移動させたあれはギフトは関係していなかったと思っていたけど。水魔法で、水出しました。プラス〝移動〟だったのかな?
移動は付け足しできるものなのかな? 〝無〟の属性って可能性もある。〝無〟ってなんだろう? そういえば。
「もふさま、付け加えじゃ、もふさまの言葉わからないよね?」
もふさまやベアさんの言葉がわかるのはギフトと関係ない気がする。
『プラスとは言葉がわかるようにはならんか?』
「あの時、何も思う間もなく、言葉聞こえた」
もふさまは少し考える。
『言葉だけじゃない。我が許さない限り、人族は聖域に入れないはずなのだが……聖域はお前を受け入れた』
「人族、間違いない。ステータス、出てる」
『だから、不思議なのだ。聖域も許され、我の言葉も理解する』
「ギフト、関係ない、思う。わからないけど……もふさまと話せて嬉しい」
『我もまた人と話ができると思わなかった』
もふさまはずっと昔に人と話したことがあるんだなと思った。そして、今わたしたちと接する態度からみても、それはとてもいい思い出で、人と居て楽しかったことが窺える。
「もふさま、大好き」
もふさまを抱きあげてギュッとする。
『暑苦しい』
とはいうけれど、嫌がってはない。
えへへ。
「リー、どうしたの? そんなところに座りこんで」
アラ兄だ。
よいしょっと立ちあがる。
「ギフト、練習」
「わかったの?」
うん、と頷く。
「よかったね!」
「うん、ありがと」
「アラ兄、文字、全部でいくつある?」
「全部で?」
「全部で」
「数えたことない」
「そーなんだ」
ガッカリすると、アラ兄は小枝を拾って、地面に文字を書き出した。
「リンゴンの〝り〟、神様の〝か〟。空の〝そ〟、パンの〝ぱ〟」
その単語書き出しは永遠に続いた。
聞いたのはわたしだが、アラ兄、我慢強い。
そして思い起こす単語を全部並べたのだろう。きっちりした性格が出ていて列も行も揃っているし、数えやすいように10個ずつで改行している。
「基本は71文字だ」
「アラ兄、ありがと。消さないで。紙と書くもの、借りる」
父さまの仕事部屋に行き、わけを話して、紙とペンを借りた。下にあてる板も。
庭に戻って、アラ兄の書いた文字を書き写していく。
「覚える歌とかない?」
「覚える歌?」
わたしはアルファベットの歌を歌った。
「違う国の文字覚えるのに、歌で覚えた。母国語も、50音の表があって覚えた」
「ひょう?」
わたしはアラ兄が書き出してくれた〝表〟を横に羅列で読む。
「りかぱほせくあみんだ。呪文みたい」
そういうとアラ兄が笑う。
「こうやって1行ずつで覚えて。縦でも覚える」
「それはいい考えだね」
「けぺるいなまろうじめ」
「一文字ずつ覚えるより、意味がないのに覚えられそうだね」
うん、なんかわからないけどインパクトあるね。けぺるいなまろうじめって。
この表のおかげで、わたしはすぐに文字を暗記することができた。
生活魔法に俄然やる気を見せたのが兄さまたちだった。みんなそれぞれにいろいろ試したみたいで、ポロポロと情報が出てくる。
その1つが、生活魔法にレベルがあるというものだった。兄さまもアラ兄もロビ兄も教会で言われた属性以外のものが、ステータスに現れていたらしい。
今まで使っていた魔法を何度か繰り返すと、ステータスに変化があった。生活魔法の属性の後に記号が出るようになった。
兄さまは火と風持ちだったが、ステータスには水もある。そして風を何回か使った後に見ると、風の後にEという記号がつくようになった。火と水の後には何もない。
アラ兄は、水と土持ちだった。さらにあったのが風だった。やはり土を何度か使ったところ、土の後にEという記号がついた。
ロビ兄は、火と土持ちだった。さらにあったのが風だ。火と土と風をがむしゃらに使ってみたところ、全ての属性の後にEという記号がついた。
さらにロビ兄は突っ走っていた。昨日、珍しく疲れているなーとは思っていたんだけど、なんとロビ兄は魔力が空っぽになるまで魔力の無駄遣いをしたようだ。それでもなかなかなくならないので、ギフトまで使って、すっからかんにしたそうだ。そして今日の朝ステータスを見てみたら、魔力の総量が増えていて、魔力は満杯になっていた。
父さまは驚き、そして怒ったが、ロビ兄はわたしから聞いたと話す。
確かにわたしは小説で読んだ話をした。魔力を極限まで使って空っぽにすると、容量自体が増えていくことがある、と。でもそれは物語だし、この世界では魔力枯れによって命が危険だったり、命を削るタイプの魔法の使い手もいるみたいだから、通じることではないって言ったよね?
ぽろっと言っちゃった不確かな魔力増幅方を聞き留めて、ロビ兄はしっかり実践してしまい、結果を出してしまった。
「それで、体が辛かったり変化はないか?」
ロビ兄は却って調子がいいくらいだという。
父さまは大きなため息をついた。
ただ、なんともないように見えても、もしかしたらダメージを受けているかもしれない。だから少しでも悪い変化があったら、絶対にやらないこと、と、わたしはまだ体ができあがっていないから絶対にやってはいけないと言われた。
魔力が枯れたときに、気絶したりなんだりで魔力を使おうとしなければいいそうなんだけど、ないのに気づかなかったり暴走でまだ使おうをすると生命力を燃やすことがあるそうだ、それが危険だそうだ。
みんなにも、魔力量が今でも多いんだから、増やす必要もないよねといい笑顔で言われた。
父さまは持っている本で調べてくれて、そのレベルの記号とは恐らく冒険者がよく口にしているもので、それと同じだろうと推測する。レベルは上から、SS、S、A、B、C、D、Eとあり、Eが一番下だ。使ううちにレベルは上にあげることができるのかもしれなかった。
ロビ兄はそれから冒険者とはと父さまを質問攻めにした。
ロビ兄がこんなに熱意を持って聞きたがるなんて驚きだ。父さまは冒険者に関する本を数冊渡した。それを見たアラ兄は魔法に関する本を読みたいといい、兄さまは特にねだらなかった。
わたしは魔道具に関する本を読みたいと言ってみた。父さまは眉根を寄せる。
字は読めるようになったのか聞かれたので、多分、もう読めるはずだと答えた。
難しい本だぞと言われたが、それならそれでいいから読んでみたいといって、本を貸してもらった。
本はなんとか読むことができたが、専門的な言葉が多くて難しかった。ただ、夜に読もうとしたのは失敗だった。夜は睡魔の誘惑に勝てない。
でも目の前に現れたあれはどこをどう見ても……。
?
……プラス?
縦の棒が長いように見えたから10って思ったけど、プラスだったら?
「記号で似たのある」
『それはどんな意味だ?』
「プラス。加えること」
わたしの中で風が起こった。
プラスだ。わたしのギフト〝プラス〟だ。足し算の記号で使うアレだ。
「もふさま、わかった」
『そのようだな』
わたし、足すことができるんだ。付け加えることが。
小説で読んだ付与みたいなことができるってことかな。
何を足せるんだろう?
目の前の人参。これに玉ねぎを足す。
カレーか!?って、はい、できませんね。
わたしはお風呂に走った。湯船に半分ぐらい水が張ってある。
「お湯をプラス」
シュッとわたしの中の何かが動いた。
がくんと座り込む。
『どうした、リディア!!』
「魔力持ってかれた、多分」
水位が上がっている。手を入れるとほんのり温かい。
よっしゃ! これでお風呂いちいちお湯を沸かして運ばなくても入りたい放題だ。
「ステータス」
魔力残量1250。たった一回のギフト使用で3757も持っていかれた。お風呂に入るのに一苦労は代わりなさそうだ。
「もふさま、魔力ってどうやったら増えるかな?」
『その年で5000あれば多いだろう』
「お湯足すだけ、この有り様、なのに?」
『使い方でなんとでもなろう』
そっか。これからいろいろ研究していこう!
ギフトは1日1回ってとこだね。
他の魔法はそうたいして魔力を使わない。
最初は水を部屋から畑に、訓練の時はお風呂に水を移動させたあれはギフトは関係していなかったと思っていたけど。水魔法で、水出しました。プラス〝移動〟だったのかな?
移動は付け足しできるものなのかな? 〝無〟の属性って可能性もある。〝無〟ってなんだろう? そういえば。
「もふさま、付け加えじゃ、もふさまの言葉わからないよね?」
もふさまやベアさんの言葉がわかるのはギフトと関係ない気がする。
『プラスとは言葉がわかるようにはならんか?』
「あの時、何も思う間もなく、言葉聞こえた」
もふさまは少し考える。
『言葉だけじゃない。我が許さない限り、人族は聖域に入れないはずなのだが……聖域はお前を受け入れた』
「人族、間違いない。ステータス、出てる」
『だから、不思議なのだ。聖域も許され、我の言葉も理解する』
「ギフト、関係ない、思う。わからないけど……もふさまと話せて嬉しい」
『我もまた人と話ができると思わなかった』
もふさまはずっと昔に人と話したことがあるんだなと思った。そして、今わたしたちと接する態度からみても、それはとてもいい思い出で、人と居て楽しかったことが窺える。
「もふさま、大好き」
もふさまを抱きあげてギュッとする。
『暑苦しい』
とはいうけれど、嫌がってはない。
えへへ。
「リー、どうしたの? そんなところに座りこんで」
アラ兄だ。
よいしょっと立ちあがる。
「ギフト、練習」
「わかったの?」
うん、と頷く。
「よかったね!」
「うん、ありがと」
「アラ兄、文字、全部でいくつある?」
「全部で?」
「全部で」
「数えたことない」
「そーなんだ」
ガッカリすると、アラ兄は小枝を拾って、地面に文字を書き出した。
「リンゴンの〝り〟、神様の〝か〟。空の〝そ〟、パンの〝ぱ〟」
その単語書き出しは永遠に続いた。
聞いたのはわたしだが、アラ兄、我慢強い。
そして思い起こす単語を全部並べたのだろう。きっちりした性格が出ていて列も行も揃っているし、数えやすいように10個ずつで改行している。
「基本は71文字だ」
「アラ兄、ありがと。消さないで。紙と書くもの、借りる」
父さまの仕事部屋に行き、わけを話して、紙とペンを借りた。下にあてる板も。
庭に戻って、アラ兄の書いた文字を書き写していく。
「覚える歌とかない?」
「覚える歌?」
わたしはアルファベットの歌を歌った。
「違う国の文字覚えるのに、歌で覚えた。母国語も、50音の表があって覚えた」
「ひょう?」
わたしはアラ兄が書き出してくれた〝表〟を横に羅列で読む。
「りかぱほせくあみんだ。呪文みたい」
そういうとアラ兄が笑う。
「こうやって1行ずつで覚えて。縦でも覚える」
「それはいい考えだね」
「けぺるいなまろうじめ」
「一文字ずつ覚えるより、意味がないのに覚えられそうだね」
うん、なんかわからないけどインパクトあるね。けぺるいなまろうじめって。
この表のおかげで、わたしはすぐに文字を暗記することができた。
生活魔法に俄然やる気を見せたのが兄さまたちだった。みんなそれぞれにいろいろ試したみたいで、ポロポロと情報が出てくる。
その1つが、生活魔法にレベルがあるというものだった。兄さまもアラ兄もロビ兄も教会で言われた属性以外のものが、ステータスに現れていたらしい。
今まで使っていた魔法を何度か繰り返すと、ステータスに変化があった。生活魔法の属性の後に記号が出るようになった。
兄さまは火と風持ちだったが、ステータスには水もある。そして風を何回か使った後に見ると、風の後にEという記号がつくようになった。火と水の後には何もない。
アラ兄は、水と土持ちだった。さらにあったのが風だった。やはり土を何度か使ったところ、土の後にEという記号がついた。
ロビ兄は、火と土持ちだった。さらにあったのが風だ。火と土と風をがむしゃらに使ってみたところ、全ての属性の後にEという記号がついた。
さらにロビ兄は突っ走っていた。昨日、珍しく疲れているなーとは思っていたんだけど、なんとロビ兄は魔力が空っぽになるまで魔力の無駄遣いをしたようだ。それでもなかなかなくならないので、ギフトまで使って、すっからかんにしたそうだ。そして今日の朝ステータスを見てみたら、魔力の総量が増えていて、魔力は満杯になっていた。
父さまは驚き、そして怒ったが、ロビ兄はわたしから聞いたと話す。
確かにわたしは小説で読んだ話をした。魔力を極限まで使って空っぽにすると、容量自体が増えていくことがある、と。でもそれは物語だし、この世界では魔力枯れによって命が危険だったり、命を削るタイプの魔法の使い手もいるみたいだから、通じることではないって言ったよね?
ぽろっと言っちゃった不確かな魔力増幅方を聞き留めて、ロビ兄はしっかり実践してしまい、結果を出してしまった。
「それで、体が辛かったり変化はないか?」
ロビ兄は却って調子がいいくらいだという。
父さまは大きなため息をついた。
ただ、なんともないように見えても、もしかしたらダメージを受けているかもしれない。だから少しでも悪い変化があったら、絶対にやらないこと、と、わたしはまだ体ができあがっていないから絶対にやってはいけないと言われた。
魔力が枯れたときに、気絶したりなんだりで魔力を使おうとしなければいいそうなんだけど、ないのに気づかなかったり暴走でまだ使おうをすると生命力を燃やすことがあるそうだ、それが危険だそうだ。
みんなにも、魔力量が今でも多いんだから、増やす必要もないよねといい笑顔で言われた。
父さまは持っている本で調べてくれて、そのレベルの記号とは恐らく冒険者がよく口にしているもので、それと同じだろうと推測する。レベルは上から、SS、S、A、B、C、D、Eとあり、Eが一番下だ。使ううちにレベルは上にあげることができるのかもしれなかった。
ロビ兄はそれから冒険者とはと父さまを質問攻めにした。
ロビ兄がこんなに熱意を持って聞きたがるなんて驚きだ。父さまは冒険者に関する本を数冊渡した。それを見たアラ兄は魔法に関する本を読みたいといい、兄さまは特にねだらなかった。
わたしは魔道具に関する本を読みたいと言ってみた。父さまは眉根を寄せる。
字は読めるようになったのか聞かれたので、多分、もう読めるはずだと答えた。
難しい本だぞと言われたが、それならそれでいいから読んでみたいといって、本を貸してもらった。
本はなんとか読むことができたが、専門的な言葉が多くて難しかった。ただ、夜に読もうとしたのは失敗だった。夜は睡魔の誘惑に勝てない。
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