プラス的 異世界の過ごし方

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1章 ここがわたしの生きる場所

第18話 保存食②

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 男の子たちは解体作業だ。女の子たちで果物を煮た。きれいに洗って火にかけるだけだ。砂糖はないから果物自体の糖度が重要だ。ま、甘くないとしても、それならそれで肉や野菜と一緒に料理することにしてソースにしたりすればいいだけだしね。生だと足が早いから、保存しておけるようにしておくのが重要になってくる。でも砂糖が入っているわけじゃないから、そう保存もきかないか。砂糖でも蜜でも、いっぱい手に入ればなー。

 サロがわたしの隣にきてしゃがみ込む。

「瓶のこと聞いてきたけど、フランツに話す? それともリディアに?」

「わたし、教えて」

「瓶は1個15ギル。50個以上買うなら10ギルまでマケるって。あ、マケるってのは」

「わかる」

「お金のことわかる? 大丈夫?」

「だいじょぶ」

 わたしは頷いてサロを安心させた。いや、なんか不安げな顔してるけど。

「瓶、50個、一度運ぶ、重たい」

「? 見たことない? 初めは〝瓶の元〟だから大丈夫だよ」

「瓶の元?」

「10ギル硬貨を3枚重ねたぐらいの大きさなんだ。水につけると瓶になるよ」

 ええっ? なんだそりゃ! 理を無視し、まかり通すとは、さすがファンタジーの世界!
 瓶の大きさはポーションを入れるような細長い瓶、大きいコップサイズの瓶、そしてもっとどでかいのがあり、とば口の広いものもコルク栓みたいなのがついているらしい。
 水につける前のサイズなら50個買っても持ち運べそうだね。瓶は大きさを混ぜていいと言うので、細長いのを20個、コップサイズを20個、大きいのを10個、買いたいと思う旨を伝えた。って、父さまたちに相談しないとなんだけど。さっき、柑橘系のみかんのようなものをみつけたんだよね。アラ兄にこれ以上は無理だと目配せされてあきらめたけど。もふさまも食べられると言ったし、鳥が啄んでいたから、あれをジャムにしたい。買ってくれる人もいると思う。砂糖が高いなら、あの甘味は500ギル以上になると思うんだ。

「リディア、肉だぞ」

 解体したノシシのお肉をビリーが持ってきてくれた。まだ作業している部分もあるし、けっこう量がありそうだね。

「これはおやつに焼こう」

 女の子たちに持ってきてくれた半分の肉を厚切りにしていってもらう。
 もう半分は手の空いた子に塩をすり込んでもらう。

 燻製、煙でいぶすのやりたいんだけど、囲うものがないんだ。でも待てよ、段ボールはないけれど、煙が逃げにくければいいんだから、石でカマクラ作って、土魔法で隙間をちょっと埋めてもらって、そしてその中に入れておけばいけるんじゃない? 木はさっきもふさまが果物の木だって言ってたのを兄さまに切ってもらって、風で乾かして乾燥まではしてもらったんだよね。
 ものは試し!

 わたしは皆が作業しているところから少し離れたところで石を積み始めた。
 皆、わたしが飽きて石遊びをしていると思ったようで、そんな会話が聞こえてくる。
 違うよ、わたし遊んでないよ。

『石を積んでどうするのだ?』

「カマクラ作る。燃やした木とお肉一緒に入れて煙で燻すの。ちょっと日保ちするし、おいしい」

『煙で? 人は面白いことを考えるのだな』

 本当だよね。食べることへの追求を前のめりでしてくれた先祖たちには感謝を捧げるよ。

『で、かまくらとはなんだ?』

「うんと、山の形で、って言うか、中に入れればいいって言うか、横に入り口をつけるの」

 説明しようとしているうちに、何が言いたいんだかよくわからなくなってきた。
 今のじゃわからなかったと思うんだけど、もふさまも石を積むのを手伝ってくれた。口で石を加えて、転げ落ちないよう上に置いていく。器用だな。けれど天井部分が困った。大きな石で塞ぐには重たくて持ち上げられないし。そんな幅のある石があるわけでもないし。って言うか、ここまで作り上げるまで、それに気づかないわたし、やばくない?
 わたしが考え込んでいると、ビリーが話しかけてきた。

「うんうん唸って、どうしたんだ? 石遊びがうまくいかないのか?」

「遊び、違う!」

 わたしは煙で肉を燻したくて、煙を逃さない囲いが欲しくて、石でその囲いを作ろうとしたんだと言った。

「それ、石じゃないとダメなのか?」

 カールくらい背の高い子が言った。

「ううん、煙をなるべく閉じ込められればいい」

 少年はあたりを見回した。

「あの段差、使えるな。あそこに木を立てて、囲えばいいんじゃねーか?」

「ヤスの親父さんは大工の棟梁だ」

 おお! 逸材が!

「詳しく、教えて」

 教えてもらったが、わたしじゃ手伝いに入ることもできなくて、ヤスを中心に手の空いた子たちに作ってもらった。ちっちゃい秘密基地みたいのができあがった。釘がなくても、紐で結んだり、ナイフで器用に削って組み込ませるようにして、ずいぶん立派なものができた。
 天井部分に横に木の枝を通したので、そこに紐をいくつもぶら下げた。
 隙間は枯れた植物を置いて密封性を高くする。

 兄さまを呼んで塩をすり込んだお肉を切り分けて軽く乾かしてもらう。塩も軽くすりこんだだけだし、漬けこんだわけでもないので塩抜きはしない。それから果物の木をチップ状に刻んでもらった。こちらも風魔法で。おがくずが作れて、片栗粉みたいなノリの代わりにできるものがあったら、スモークウッドが作れるな。それがあれば、直接火をつけられるから楽チンだろう。今日はチップタイプだ。

 お肉は天井部分の紐にぶら下げて、下に石の竈門を作り、古い取手のとれた鍋に木のチップを入れる。
 ロビ兄に火をつけてもらった。焚き火が燃えだすと、チップが鍋の上でみじろぎする。煙がでてきた。細い火加減で消えないようにするのと、チップがなくならないように気をつけ、こっちは放置。

 新しく捌いてくれたのも塩漬けにし、ベアシャケが流れてきたというか川をのぼってきたそうで兄様がとってくれていた。こちらも血抜きし内臓をとって、塩漬けにしていく。そのうち半分は開いて乾かし、そのさらに半分は燻し基地に入れ込んでみた。

 じゃあ、そろそろ、おやつを焼きますか。
 お鍋にオイルを垂らして、ノシシのお肉を塩とニンニクで一緒に焼いていく。匂いで子供たちが集まってきた。焼けたのをどんどんみんなに配ってもらう。もちろんわたしは指示だけだ。

 みんなうまいってかぶりついているけど、結構クセが強い。力強い味がする。
 さっき味見してあまり甘くなかったプラムみたいなジャムをひとスプーン掬ってかけて食べたら絶品だった! みんなも真似する。

 スッゲーうまかったとみんな大絶賛だ。全種類みんなに配るほどはないので、近い人たちどうしで何かひとつという感じに、欲しいものを分けていく。果物煮は女の子に大人気だ。お皿やお鍋は今度返してもらうことにした。容器は重たいからあまり持ってこられなかったのだ。

 両手にこんもりぐらいのチップを4回は足したから、2時間以上は燻したと思う。みんなでワクワクしながら基地の中のものを取り出す。

 見た感じ、とってもいい状態なのではないでしょうか!
 すぐ食べたいぐらいだけど、やはりこれで火を通さないのはちょっと怖いね。シャケをざく切りにしたことで数ができたので、みんなに肉か魚どちらかをお土産に。軽く火を通して食べるように注意をしておく。これで食べられるようだったら、本格的な保存食のひとつになるもんね。

 もふさまは燻製肉をそのまま食べるのが、気にいったみたいだ。もっと食べたいというので、またお肉が手に入ったら燻製を作る約束をした。庭に父さまに土でカマクラを作ってもらおう。……父さまも疲れてるからそれはダメか。3日たてば、わたしも魔法を使えるようになるし!

 あまったベアシャケはベアさんに贈ろうと思う。干物は全然生乾きだったので、兄さまに乾かしてもらった。これも少しベアさんにあげよう。
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