プラス的 異世界の過ごし方

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1章 ここがわたしの生きる場所

第17話 保存食①

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 わたしは帰りがけに、このあたりの冬はどれくらいの寒さで、その間の食事などはどうしているのかを聞いた。

 雪がけっこう降るらしく、家から出られないレベルで吹雪くことも年に1、2度あるらしい。ドカ雪が降ると閉じ込められたりもするそうだ。屋根の勾配が割と強いと思っていたけど、そういう理由だったのか。

 保存食に関しては秋の終わりに塩漬け肉を町総出で作り、みんなで分けるらしい。それを大切にちょびっとずついただくが、春になる前にはなくなり毎年ひもじい思いをするそうだ。ドカ雪が降らなければ、他の領地と交流も盛んな大きな隣の領地まで買い物に行けるけれど、その頃どか雪で足止めを食うことが多いらしい。

 じゃあ、その前に練習のつもりで子供たちで日保ちする物ををこしらえないかと持ちかけると、習うと思うのか大人は仕事があると不思議顔だ。

 瓶はどれくらいの値段か、それからたくさん仕入れられないのか尋ねると、サロの家が雑貨などを扱うお店のようで値段など聞いてきてくれることになった。
 大量の瓶をどうするのか聞かれたので、ジャムとか作るんだよと言えば、なんだそりゃという顔だ。黒髪を長く伸ばしたサリーという少女だけはジャムを知っているみたいで、甘くてとてもおいしいんだとコメントしてくれて、みんな保存食作りに興味を持ったみたいだ。
 ということで、午後からは特にやることもないので、明日みんな付き合ってくれるという。

 午前中に今日はかからなかった罠を見に行き、そのお肉で塩漬けと燻製を試してみるというところかな。
 先ほど川で解体の仕方を教えてもらって肉の塊となったお肉。ビリーは獲った獲物も、負けたからといってわたしたちにくれた。
 わたしは家に帰り着くと、畑の水やりもせず、ご飯も食べずに寝てしまった。お昼寝しなかったからだね。


 目覚まし時計になったのはわたしのお腹の音だった。そしてやっぱり最後のベッドの住人。
 今日は母さまだ。抱きついて匂いを嗅いでいると

「甘えん坊ね」

と笑われた。顔色が少々悪い。そこまでではないけれど、何かに蝕まれているのを感じる。

「母さま、魔を通す、曜日、早くやっちゃいけないの?」

「ばらけるように生まれた曜日と決まっているの。生まれた曜日の守りがあるから曜日は大切よ、覚えておいてね。それにまだ体ができあがっていないから、魔を通すのはできるだけ遅いほうがいいの。本来の通り17日以降にするのはどうかしら?」

 わたしは首を横に振った。

「母さま、3日、がんばって」

 母さまは何かを言おうとして、わたしの気持ちを大切にしてくれたのか微笑んだ。

「わかったわ。さ、着替えましょうね」

 なるべくシンプルなワンピースにズボンを履く。このズボンを履くのと靴下を履くのが意外に厄介なのだ。ちなみに下着は母さまが履かせてくれる。あれは難易度が高い。何も纏ってない状態で横になるわけにもいかないから。
 下半身の服を着ようとすると、なぜかベッドの上を転げ回ることになる、ひとりでやろうとすると。だって、足を入れようとするとズボンが逃げていくんだ。追いかけて入れようとしてまた逃げられてと、ぐるぐるまわることになる。それを父さまや母さまはとても残念なものを見るように見守るのだ。着替えるのも息切れする、難しすぎて疲れるわ。だからリディアがなるべく何もしようとしなかったのだと、ものすごく納得できる。

 朝ごはんもそこそこに、わたしたちは家を飛び出した。今日はいっぱいやることがあるのだ。

 もふさまに通訳のわたしがいなくて大変だったんじゃないかと謝ると、言葉が交わせなくても気持ちはなんとなく伝わっているようで不便はなかったという。それなら良かった。

 双子に大きな鍋の中に小さな鍋をいくつか入れて運んでもらう。取手がとれてしまったよたった鍋も密かに入れておいた。家にあった瓶はわたしも頑張って持っている。塩をある程度とオイルを少しいただいた。用意をしているのを見て、父さまからあまり遠くに行くなよと言われた。

「兄さま、父さまに、言ってない?」

 尋ねると兄さまが目を逸らした。

「言ったら山は行っちゃいけないって言われると思うんだ」

「昨日のお肉、なんて言った?」

 だってあんなにお肉持って帰ったら、どうしたんだって話になるよね?

「ビリーがくれたって言った」

 それは……まぁ合ってる。正しく言うのを省いただけだ。
 わたしたち4人は顔を見合わせた。

「母さまもだけど、父さまも疲れてて、無理してる。だから心配はかけたくないし。役に立ちたい」

 アラ兄が思いつめた顔でいう。
 そっか、兄さまたちも家族のためになりたいと、いろいろ考えていたんだ。勝負のことも、そういうことだったんだな。

『色が違っても似たようなことを考えるのだな、お前たちは』

 髪の色かな?

「家族思いなの。もふさまもだよ、大切!」

 わたしは小さなもふもふを抱きしめる。日向の匂いがする。

『こら、調子にのって頬擦りするな』

「昨日、やらないで寝ちゃった分」

 すると、ジト目で睨まれた。



 荷物は川原に置いて、山に入って罠を見に行く。もふさまが一緒にいるからできることだ。
 罠は1箇所にノシシがかかっていた。かなり大きかった。覗き込むと、ひどく暴れる。穴を登ろうとするのだが届かず苛立っていた。
 魔法で風の刃を思い浮かべてみてはと言ったところ、早速それでやることになった。みんなで心を軽くするためにお祈りをする。わたしたちの大切な糧とします、感謝しますと胸の前で手を組んでから、兄さまは魔法を使った。どさっと音がして、穴の中でノシシは倒れていた。

 兄さまたち3人で苦労して血抜きをし、ノシシを穴の上に引き上げる。
 ロビ兄が土魔法で穴を埋めた。

「穴掘るのもこれでやればよかったんだ」

 双子がいいながら顔を見合わせている。
 兄さまとロビ兄が二人がかりでノシシを抱えようとしたが、丸っこい体型だから持つのがなかなか難しいみたいだ。

 兄さまに木の枝を同じ長さぐらいに2つ切ってもらって、布を三つ折りにして間に棒をいれる。もう1本の棒を間をあけて平行に置き、一方の端は二重に折り込むようにするのがポイントだ。簡易担架を作って、そこにノシシを乗せた。

 枝を見繕っている時に、ノシシが木の根元を傷つけた跡があった。もしかしてと思って土魔法でちょっと掘ってもらうと山芋があった。よく見てみると山には土の中だけではなく、食べられそうな実をそこかしこにつけていた。もふさまに尋ねると全部、人も食べられるものだという。特にキノコ類は食べられないものも多いから、摘めないと思っていただけに、ありがたい! 匂いをかげば食べられるものかわかるもふさまがいるので、いっぱい収穫できた! 果物もみつけたのでバッグに入れていく。いろんなジャムができそうだ。アラ兄にも持ってもらったが、ちょっと欲張っていろいろとりすぎたかも。川原まで荷物を持って下りていくのはとても疲れた。

 
 そうやって川原まで運ぶと、まだお昼前だったけれど、子供たちがちらほら集まってきていた。その中にはビリーもいて、ノシシの大きさにも、血抜きに関しても、運び方に関しても感心された。
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