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1章 ここがわたしの生きる場所
第6話 お風呂
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庭に畑スペースを決めて四方に枝をさした。
双子に土魔法で耕してもらった。わたしも〝耕す〟ことをしたことがないし、説明もうまくできない。よくわからないけれど、芽が出やすいように柔らかい土壌にしたいから空気を入れたいんだというようなことを言ってみたが、双子は首を傾げる。下の方の土と上の方の土を入れ替えるぐらいにかき混ぜたいのだというと、やっとピンときたみたいだ。
最初は土魔法の使い方がよく分からないみたいだったが、コツを掴むとうまい具合にほこほこの土壌になった。畝を作ってもらって苗を植える。
思いついて、土を硬くすることができるかやってもらったが、これはできないみたいだ。
お風呂を作れたらと思ったのに、残念。
あ、双子には難しいけど、父さまなら?
「父さま!」
「どうした、リディー」
父さまの足にすがりつく。
「あのねー、土、かたくできる? 魔法で小屋とか作ったことある?」
「小屋? 土魔法で小屋を作るなんて考えたことはないが。なんだ、小屋が欲しいのか?」
わたしは首を横にふった。
「湯船。人がごろんてできる大きさの、上蓋のない箱。下からお湯を抜くの」
「それは何に使うの?」
一緒についてきた兄さまに尋ねられる。
「お湯を入れて中に入るの」
「湯船と言ったのか。ああ、風呂が欲しいんだな?」
父さまはお風呂を知っているみたいだ。
「父さま、風呂って?」
「ああ、身体を洗う場所のことだ。貴族によってはお湯を溜めた中に入るんだ」
わたしはうんうん頷いた。
「リディーが身綺麗にしたいなんて……顔もいつもちゃんと洗わないのに」
「あれは、服が濡れる、嫌なの!」
父さまたちが笑っている。
「そうか、言わないだけで、ちゃんと理由があったんだな」
頭を撫でられる。
「なんで服が濡れるのが嫌って言わなかったの?」
「いっぱい話すと疲れる」
父さまと兄さまが顔を見合わす。
「そういう理由だったのか」
「リディーの行動の意味がわかった気がする」
よくわからないけど理解してもらえたようだ。
父さまがお風呂を作ってくれることになった。ゆくゆくはちゃんと魔具を買って川の水をひき広めのお風呂を作ってくれるという。今は魔具を整えたりできないので、湯船を作ってもらって、そこにお湯を運ぶことになった。それでもいい。運ぶの頑張る。木の近くに湯船を置いて、周りを布でカーテンのように囲った。
みんなでお湯を運び、一番は母さまとわたしで入った。お湯を用意しておいて、まずそれで身体を洗った。タオルをお湯に浸してゴシゴシ擦る。石鹸はうちにはないとのことだ。髪も洗った。お湯で濯いだだけだけど、気持ちいい。
母さまとお湯に浸かる。母さま、プロポーション抜群。わたしの未来は明るいね!
ゆっくり浸かると結構冷めてしまった。父さまや兄さまのお風呂のためにお湯を何度も沸かす。次に入ったのはロビ兄と父さまだ。最後が兄さまとアラ兄。ちょっと大変だけど、さっぱりとしてみな気持ちよかったみたいだ。
もっと広い湯船にして、熱した石をお湯に入れておく手もあるといったら、明日はそれを試そうという話になった。
夕方になり、畑に水をやる。苗は少し大きくなった気がする。そういうと兄さまたちはクスクス笑っている。気分でそう思ったんじゃなくて本当なんだけどな。
今日の夕食は買ってきた塩漬けのお肉と野菜のスープと硬いパンだ。
母さまは疲れたみたいで、ご飯も食べずに眠ってしまった。
塩漬け肉は味がいいね。くず野菜がいっぱい入ったスープでお腹がいっぱいになる。
あと片付けが終わると、父さまから集合がかかった。
父さまの座った椅子の周りにみんなで集まる。
「リディーは本物のお姫様になりたいか?」
父さまに尋ねられた。少し心配そうな顔をしている。
「本物のお姫様?」
意味が分からなくて首を傾げた。
「王子様のお嫁さんになりたいか?」
兄さまたちがバッとわたしを見た。
「めんどくさいの、イヤ」
「そうか。だとしたら、前世を覚えていることは、家族だけの秘密にしよう」
「リーはすごいのに、なんで?」
「どうして秘密にするの?」
アラ兄とロビ兄が反応する。
「第二王子様がフランと同い年なんだ。あと1、2年のうちにお妃候補を選抜するお茶会が開かれるだろう。貴族の年の近い令嬢は審査対象になる。評判がたったりすると目をつけられる。それじゃなくても、母さまの娘だからなー」
ん?
第二王子様なのにお妃様なの?
「第一王子様は?」
質問すると父さまは意図に気づいたみたいだ。顎を触って、少しだけ困った顔をした。
「リディーは第一王子様が好きなの?」
「……会ったことない」
ほとんどの人がそうだろうけれど、兄さまに答えておく。
「第一王子様も、第二王子様にも王位継承権……王様になれる権利を持っていらっしゃる」
それでも順位はあるだろうに。第二王子様にお妃様ということはそちらに軍配があがっているってことだろうか。まあ、どちらにしても面倒そうだから近づきたくない。
「お妃候補になると、その勉強もしなくちゃだし、幼いうちから城に招かれて住むことになるだろう。お妃さまになりたいなら父さまも協力するが、リディーがなりたくないなら、変わっていることは見せない方がいい」
「リディーが城に行っちゃうの? イヤだよそんなの」
兄さまにぎゅーっとされる。
「オレもイヤ」
「おれだって!」
左右からもぎゅーっとされる。
「みんなといる」
「それなら、家族の秘密だ、いいな」
双子に土魔法で耕してもらった。わたしも〝耕す〟ことをしたことがないし、説明もうまくできない。よくわからないけれど、芽が出やすいように柔らかい土壌にしたいから空気を入れたいんだというようなことを言ってみたが、双子は首を傾げる。下の方の土と上の方の土を入れ替えるぐらいにかき混ぜたいのだというと、やっとピンときたみたいだ。
最初は土魔法の使い方がよく分からないみたいだったが、コツを掴むとうまい具合にほこほこの土壌になった。畝を作ってもらって苗を植える。
思いついて、土を硬くすることができるかやってもらったが、これはできないみたいだ。
お風呂を作れたらと思ったのに、残念。
あ、双子には難しいけど、父さまなら?
「父さま!」
「どうした、リディー」
父さまの足にすがりつく。
「あのねー、土、かたくできる? 魔法で小屋とか作ったことある?」
「小屋? 土魔法で小屋を作るなんて考えたことはないが。なんだ、小屋が欲しいのか?」
わたしは首を横にふった。
「湯船。人がごろんてできる大きさの、上蓋のない箱。下からお湯を抜くの」
「それは何に使うの?」
一緒についてきた兄さまに尋ねられる。
「お湯を入れて中に入るの」
「湯船と言ったのか。ああ、風呂が欲しいんだな?」
父さまはお風呂を知っているみたいだ。
「父さま、風呂って?」
「ああ、身体を洗う場所のことだ。貴族によってはお湯を溜めた中に入るんだ」
わたしはうんうん頷いた。
「リディーが身綺麗にしたいなんて……顔もいつもちゃんと洗わないのに」
「あれは、服が濡れる、嫌なの!」
父さまたちが笑っている。
「そうか、言わないだけで、ちゃんと理由があったんだな」
頭を撫でられる。
「なんで服が濡れるのが嫌って言わなかったの?」
「いっぱい話すと疲れる」
父さまと兄さまが顔を見合わす。
「そういう理由だったのか」
「リディーの行動の意味がわかった気がする」
よくわからないけど理解してもらえたようだ。
父さまがお風呂を作ってくれることになった。ゆくゆくはちゃんと魔具を買って川の水をひき広めのお風呂を作ってくれるという。今は魔具を整えたりできないので、湯船を作ってもらって、そこにお湯を運ぶことになった。それでもいい。運ぶの頑張る。木の近くに湯船を置いて、周りを布でカーテンのように囲った。
みんなでお湯を運び、一番は母さまとわたしで入った。お湯を用意しておいて、まずそれで身体を洗った。タオルをお湯に浸してゴシゴシ擦る。石鹸はうちにはないとのことだ。髪も洗った。お湯で濯いだだけだけど、気持ちいい。
母さまとお湯に浸かる。母さま、プロポーション抜群。わたしの未来は明るいね!
ゆっくり浸かると結構冷めてしまった。父さまや兄さまのお風呂のためにお湯を何度も沸かす。次に入ったのはロビ兄と父さまだ。最後が兄さまとアラ兄。ちょっと大変だけど、さっぱりとしてみな気持ちよかったみたいだ。
もっと広い湯船にして、熱した石をお湯に入れておく手もあるといったら、明日はそれを試そうという話になった。
夕方になり、畑に水をやる。苗は少し大きくなった気がする。そういうと兄さまたちはクスクス笑っている。気分でそう思ったんじゃなくて本当なんだけどな。
今日の夕食は買ってきた塩漬けのお肉と野菜のスープと硬いパンだ。
母さまは疲れたみたいで、ご飯も食べずに眠ってしまった。
塩漬け肉は味がいいね。くず野菜がいっぱい入ったスープでお腹がいっぱいになる。
あと片付けが終わると、父さまから集合がかかった。
父さまの座った椅子の周りにみんなで集まる。
「リディーは本物のお姫様になりたいか?」
父さまに尋ねられた。少し心配そうな顔をしている。
「本物のお姫様?」
意味が分からなくて首を傾げた。
「王子様のお嫁さんになりたいか?」
兄さまたちがバッとわたしを見た。
「めんどくさいの、イヤ」
「そうか。だとしたら、前世を覚えていることは、家族だけの秘密にしよう」
「リーはすごいのに、なんで?」
「どうして秘密にするの?」
アラ兄とロビ兄が反応する。
「第二王子様がフランと同い年なんだ。あと1、2年のうちにお妃候補を選抜するお茶会が開かれるだろう。貴族の年の近い令嬢は審査対象になる。評判がたったりすると目をつけられる。それじゃなくても、母さまの娘だからなー」
ん?
第二王子様なのにお妃様なの?
「第一王子様は?」
質問すると父さまは意図に気づいたみたいだ。顎を触って、少しだけ困った顔をした。
「リディーは第一王子様が好きなの?」
「……会ったことない」
ほとんどの人がそうだろうけれど、兄さまに答えておく。
「第一王子様も、第二王子様にも王位継承権……王様になれる権利を持っていらっしゃる」
それでも順位はあるだろうに。第二王子様にお妃様ということはそちらに軍配があがっているってことだろうか。まあ、どちらにしても面倒そうだから近づきたくない。
「お妃候補になると、その勉強もしなくちゃだし、幼いうちから城に招かれて住むことになるだろう。お妃さまになりたいなら父さまも協力するが、リディーがなりたくないなら、変わっていることは見せない方がいい」
「リディーが城に行っちゃうの? イヤだよそんなの」
兄さまにぎゅーっとされる。
「オレもイヤ」
「おれだって!」
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