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1章 ここがわたしの生きる場所
第3話 探検
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起きてみれば、1番のお寝坊さんだった。目を擦っていると母さまが身支度を手伝ってくれた。なんかちょっと顔色が悪い気がする。
「疲れた?」
両手で母さまの顔を挟み込む。熱はないみたいだけど。
「あら、心配してくれるの? 嬉しいわ。母さまは大丈夫よ。さ、兄さまたちに水を汲んでもらって顔を洗ってらっしゃい」
わたしはベッドから後ろ向きに降りて、隣の部屋へと駆け出す。
挨拶をすると、まだ顔も洗ってないのに、おはようのキスの嵐だ。
そう、わたしはこれが苦手だった。好いてくれてるのは嬉しいけれど、すまんが鬱陶しかった。
じゃあ今はというと。顔を洗ってないところは微妙だが、好きという気持ちをここまでオープンに出してもらうのは、この先どんどん減っていくことだと知っているから、ちょっと嬉しかったりする。
兄さまたちに水を汲んでもらって顔を洗う。
「今日はちゃんと洗えてるね」
ああ、昨日までは両手にペチャっと水をつけて顔に塗りつけるだけだったからね。結局父さまか母さまに手拭いで拭かれることになるんだけど。うまく桶に顔を近づけないと服が水浸しになるから嫌だったんだと思う、多分。
朝ごはんは硬いパンと塩味のスープ。貧乏説が有力になってきた! でもここらなら緑が多いから大地の恵みがあるんじゃないかな。まずは食事の向上と、お風呂だね。体を拭くだけなんて嫌だよ。2、3日なら仕方ないけどさ。それがずっとは勘弁してほしい。
バッグらしきものは見当たらなかったので、丈夫そうな布切れを借りた。
探検といって兄さまたちと外にでた。家の周りは広めの庭の先にぐるりと柵がある。その先は森のようになっている。家がちょっと小高い所にあるから上を目指すようにすれば迷わないだろう。道のようになっている所を歩いて行く。
ところどころで実がなっている。食べられる実かわかればな。
音がきこえる。
きっと川だ。
「兄さま、水の音する」
「本当だ、川かな? 行ってみるか」
私たちは水の音のする方へ歩き出した。
幅は1.5メートルぐらいで流れは緩やかだ。
靴を脱ぎ、スカートの裾を縛って短くする。
「まって、リディー、何するつもり?」
何って川を前にすることはひとつだろう。
「足、つける。気持ちいい!」
「ダメだよ。リーは女の子だから足だしちゃ」
う、面倒な縛りだな。でも川を前にして入らない選択肢はあり得ない!
「兄さまたちだけ。だいじょぶ!」
冷たーい。
足をそっとつける。気持ちいい。
ああ、全身水浴びしたいぐらいだ。
ジャブジャブはいる。
兄さまが靴を脱いで慌てて追いかけてきて手をつかまれた。
この水量と緩やかさなら流されはしないだろう。双子たちも靴を脱いで、川に入ってきた。
「なんか、今、足触った」
「サカナ、たぶん」
「サカナ?」
お、きれいな石だ!
昔、よく集めたな。嬉しくなって水の中に手を入れて拾ってしまう。
なんかに使えないかな? って前のわたしもそうやってなにかしらとっておいて、結局使えなかった。でも、これは記念。前世を思い出した、ね。
え? わたしは信じられないものを見た。
この浅瀬、この水量。足に触れた何かは魚だと言ったが、メダカを想像して言っていた。
あれ、年末に目にする新巻鮭サイズなんですけど。理ことわりを無視している気がする。
「兄さま、シャケ、風で陸にあげて!」
「え?」
「魔法、風、しゃかな、早く!」
兄さまが魚を風で浮かせて陸に打ち上げた。魚は体をピチピチと揺らして地面を叩いている。
「兄さま、すごい!」
「兄さま、すげー」
双子が目を輝かせている。
「でも打ち上げたら魚、死んじゃうよ」
「ご飯する。血抜き、できるといい」
3人がひいている。
「リーってば、どこでそんな言葉覚えたの?」
「わすれた。兄さま、またサカナ!」
兄さまがまた地面に打ち上げてくれた。
これだけ大きいから足りるだろう。持ち帰るのが大変だから、今日はこれくらいか。
兄さまにお礼を言って、布を広げて魚を布の上に。
いたっ!
ヒレに当たって手が切れた。血が滲む。
「リディー血が!」
子供、痛みに弱い。涙が滲み出る。
痛いが川に手をつけて洗い流す。
双子たちが見兼ねて布の上に乗せてくれた。手は切っていない。
「一度、帰ろう。母さまに傷を治してもらわないと」
「これくらい、へいき」
「ダメだよ、女の子が傷が残ったら大変だから」
抱きかかえられそうな勢いだ。
わかったと靴を履いて、布は風呂敷包みにして持ち手を持つ。
双子がそれを持ってくれた。
兄さまはわたしの手を持つ。
帰り道、いくつかなっている実をとっていく。大人に聞いてみないと食べられるものかわからないけれど。
家に帰り着くと、お父様と母さまに驚かれる。双子は兄さまのやったことを自分がしたことのように自慢した。ちょっとかわいい。
「これ、食べられる魚?」
「ああ、これはベアシャケだ」
「ベアシャケ?」
「ベアが好きな魚で、そう呼ばれるようになったとか。ということはこの辺りにベアがいるかもしれんな」
父さまが顔をしかめている。でも、そんなことより。
「血抜きして」
父さまの手がわたしの両頬を挟む。
「リディー、そんなことまで知っているのか? うちの子はなんて賢いんだ」
魚を井戸の近くまで持っていく。平らな石の上に魚を置いて、エラの内側から上に向かいナイフでざっくりと。
ひえーーー、知識としては知っているけれど、けっこう強烈だなー。
わたしは思わず目を逸らしたが、兄さまたちはしっかりとやり方を見ている。
「それから血抜きだ」
と、尻尾を切って、エラを切る。大きな桶に魚を入れて水を入れ洗う。
「父さま、私にやらせてください」
兄さまがもう一尾に手を伸ばし、父さまが丁寧に、気を付けることを付け加えながら指導する。初めてとは思えない。兄さま、優秀だな。
兄さまに魔力は大丈夫かと聞くと大丈夫だというので、ビワンの葉を何枚か風魔法で取ってもらった。
「まぁ、ビワンの葉をどうするの?」
「シャカナ、ないぞうとって葉っぱと野菜入れる。オーブン焼く。乾かしてお茶の葉もする。ノドにいい」
父さまと母さまが揃って口を開けている。
「疲れた?」
両手で母さまの顔を挟み込む。熱はないみたいだけど。
「あら、心配してくれるの? 嬉しいわ。母さまは大丈夫よ。さ、兄さまたちに水を汲んでもらって顔を洗ってらっしゃい」
わたしはベッドから後ろ向きに降りて、隣の部屋へと駆け出す。
挨拶をすると、まだ顔も洗ってないのに、おはようのキスの嵐だ。
そう、わたしはこれが苦手だった。好いてくれてるのは嬉しいけれど、すまんが鬱陶しかった。
じゃあ今はというと。顔を洗ってないところは微妙だが、好きという気持ちをここまでオープンに出してもらうのは、この先どんどん減っていくことだと知っているから、ちょっと嬉しかったりする。
兄さまたちに水を汲んでもらって顔を洗う。
「今日はちゃんと洗えてるね」
ああ、昨日までは両手にペチャっと水をつけて顔に塗りつけるだけだったからね。結局父さまか母さまに手拭いで拭かれることになるんだけど。うまく桶に顔を近づけないと服が水浸しになるから嫌だったんだと思う、多分。
朝ごはんは硬いパンと塩味のスープ。貧乏説が有力になってきた! でもここらなら緑が多いから大地の恵みがあるんじゃないかな。まずは食事の向上と、お風呂だね。体を拭くだけなんて嫌だよ。2、3日なら仕方ないけどさ。それがずっとは勘弁してほしい。
バッグらしきものは見当たらなかったので、丈夫そうな布切れを借りた。
探検といって兄さまたちと外にでた。家の周りは広めの庭の先にぐるりと柵がある。その先は森のようになっている。家がちょっと小高い所にあるから上を目指すようにすれば迷わないだろう。道のようになっている所を歩いて行く。
ところどころで実がなっている。食べられる実かわかればな。
音がきこえる。
きっと川だ。
「兄さま、水の音する」
「本当だ、川かな? 行ってみるか」
私たちは水の音のする方へ歩き出した。
幅は1.5メートルぐらいで流れは緩やかだ。
靴を脱ぎ、スカートの裾を縛って短くする。
「まって、リディー、何するつもり?」
何って川を前にすることはひとつだろう。
「足、つける。気持ちいい!」
「ダメだよ。リーは女の子だから足だしちゃ」
う、面倒な縛りだな。でも川を前にして入らない選択肢はあり得ない!
「兄さまたちだけ。だいじょぶ!」
冷たーい。
足をそっとつける。気持ちいい。
ああ、全身水浴びしたいぐらいだ。
ジャブジャブはいる。
兄さまが靴を脱いで慌てて追いかけてきて手をつかまれた。
この水量と緩やかさなら流されはしないだろう。双子たちも靴を脱いで、川に入ってきた。
「なんか、今、足触った」
「サカナ、たぶん」
「サカナ?」
お、きれいな石だ!
昔、よく集めたな。嬉しくなって水の中に手を入れて拾ってしまう。
なんかに使えないかな? って前のわたしもそうやってなにかしらとっておいて、結局使えなかった。でも、これは記念。前世を思い出した、ね。
え? わたしは信じられないものを見た。
この浅瀬、この水量。足に触れた何かは魚だと言ったが、メダカを想像して言っていた。
あれ、年末に目にする新巻鮭サイズなんですけど。理ことわりを無視している気がする。
「兄さま、シャケ、風で陸にあげて!」
「え?」
「魔法、風、しゃかな、早く!」
兄さまが魚を風で浮かせて陸に打ち上げた。魚は体をピチピチと揺らして地面を叩いている。
「兄さま、すごい!」
「兄さま、すげー」
双子が目を輝かせている。
「でも打ち上げたら魚、死んじゃうよ」
「ご飯する。血抜き、できるといい」
3人がひいている。
「リーってば、どこでそんな言葉覚えたの?」
「わすれた。兄さま、またサカナ!」
兄さまがまた地面に打ち上げてくれた。
これだけ大きいから足りるだろう。持ち帰るのが大変だから、今日はこれくらいか。
兄さまにお礼を言って、布を広げて魚を布の上に。
いたっ!
ヒレに当たって手が切れた。血が滲む。
「リディー血が!」
子供、痛みに弱い。涙が滲み出る。
痛いが川に手をつけて洗い流す。
双子たちが見兼ねて布の上に乗せてくれた。手は切っていない。
「一度、帰ろう。母さまに傷を治してもらわないと」
「これくらい、へいき」
「ダメだよ、女の子が傷が残ったら大変だから」
抱きかかえられそうな勢いだ。
わかったと靴を履いて、布は風呂敷包みにして持ち手を持つ。
双子がそれを持ってくれた。
兄さまはわたしの手を持つ。
帰り道、いくつかなっている実をとっていく。大人に聞いてみないと食べられるものかわからないけれど。
家に帰り着くと、お父様と母さまに驚かれる。双子は兄さまのやったことを自分がしたことのように自慢した。ちょっとかわいい。
「これ、食べられる魚?」
「ああ、これはベアシャケだ」
「ベアシャケ?」
「ベアが好きな魚で、そう呼ばれるようになったとか。ということはこの辺りにベアがいるかもしれんな」
父さまが顔をしかめている。でも、そんなことより。
「血抜きして」
父さまの手がわたしの両頬を挟む。
「リディー、そんなことまで知っているのか? うちの子はなんて賢いんだ」
魚を井戸の近くまで持っていく。平らな石の上に魚を置いて、エラの内側から上に向かいナイフでざっくりと。
ひえーーー、知識としては知っているけれど、けっこう強烈だなー。
わたしは思わず目を逸らしたが、兄さまたちはしっかりとやり方を見ている。
「それから血抜きだ」
と、尻尾を切って、エラを切る。大きな桶に魚を入れて水を入れ洗う。
「父さま、私にやらせてください」
兄さまがもう一尾に手を伸ばし、父さまが丁寧に、気を付けることを付け加えながら指導する。初めてとは思えない。兄さま、優秀だな。
兄さまに魔力は大丈夫かと聞くと大丈夫だというので、ビワンの葉を何枚か風魔法で取ってもらった。
「まぁ、ビワンの葉をどうするの?」
「シャカナ、ないぞうとって葉っぱと野菜入れる。オーブン焼く。乾かしてお茶の葉もする。ノドにいい」
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