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第1章 異世界転生編
11. ご飯に行こうよ
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衝撃が走る。
だが想像していた痛みはなかった。
少女が小柄だったからだろう。
相手が大人だったら押しつぶされていた。
大人の大きな胸に押しつぶされるなら本望だ。
相手が男だったらお断りだけど。
「いっ……」
俺は少女を抱きしめる形で仰向けになっている。
少女と目があった。
くりくりとした真っ赤な目だ。
白く長い髪が俺の顔にかかっていて、ちょっと痒い。
「ご、ごめんなさい!」
ぴょんっと飛び跳ねるように少女が俺から離れる。
「いやいいよ。それより怪我はない?」
「えっと……はい」
「それは良かった。俺の腹脂肪が凄いからいいクッションになったでしょ」
「…………」
自虐ネタが通じなかったようだ。
ちょっと気まずい。
ていうか、なんで子供がここにいるの?
と思ったが、少女の服をみて彼女が学園の生徒だとわかる。
まさか飛び級で入学してきた?
この学園の制度は知らないけど、たぶんそういう制度はなかった気がする。
てことは、単純に幼い見た目ってことなのか?
まあ童顔なだけだろうな。
俺が黙って見ていると、少女が恥ずかしそうに目を伏せた。
なんかごめん。
ジロジロ見たら気持ち悪いよな。
自重しよう。
「えっと、なんであんなところに登ってたのかな?」
「……あそこが一番安全だから」
ボソボソとなんとか聞き取れるくらいの声で彼女は言った。
「安全?」
むしろかなり危険な場所だと思うけど。
「はい」
「珍しいね。あっ、でも木登りしたくなる気持ちもわかる」
「え?」
「俺も子供のころ木に登って遊んでからさ」
まあ前世?のほうの記憶だけど。
「なんでか知らんけど、高いところって気持ちがいいよな」
「そう、ですね」
「…………」
おー、まい、がっと。
会話が途切れた。
「今日は天気が良いね」
真っ青な空が見える。
うん、気持ち良い。
「はい……」
天気ネタはだめだったか。
「あの……私を見て何も思わないのですか?」
少女が恐る恐るといった感じで聞いてくる。
「え、ちっちゃい?」
小学生と見間違えそうなほど小柄だ。
あと体の線が異様なほど細い。
「そういうことじゃないです」
じゃあどういうこと?
「私、こんな見た目です」
「まあ人とは違うよな」
「そ、そうです。みんなの前に出ると嫌がられます」
なるほど。
幼い見た目のことを気にしてるわけか。
たしかに他の人と違うってのはコンプレックスになるけど、
「そんなこと気にする必要ないと思うけどな」
「え?」
「人と違う見た目がなんだよ。そんなの個性の一つだろ? むしろ人と違うことを誇ったらいいと思う」
前世での俺はよくいる普通の人間だった。
大学行って、サラリーマンになって働く。
それが嫌だと思ったことはないけど、同時に個性がある人を羨ましいとも思っていた。
「でも私は――」
「飯のときくらいは、めんどくさいこと考えないようにしない?」
少女なりに色々悩みがあるんだろうけど、今は美味しくご飯を食べたいし。
「って、あれ? 俺の飯ないじゃん」
さっき少女が落ちてきたことで飯がひっくり返っていた。
「ご、ご、ご、ごめんなさい!」
少女が頭を地面にぶつける勢いで頭を下げてきた。
そんな勢いで下げられたら、むしろこっちが申し訳なくなってくる。
「いやいいよ。ちょうどいまダイエット中だったからね。逆にありがたいかも」
「ど、どうしよう……」
「大丈夫。今日は昼飯抜きで――」
――ぐぅぅぅ。
俺と少女のお腹が同時に鳴った。
二人して顔を見合わせる。
少女が恥ずかしそうな顔をしている。
俺もきっと同じ表情をしていると思う。
腹が同時に鳴るって、これはまさかの運命?
デスティニーですか?
少女が空(木)から降ってくるなんて、まさに運命的な出会いだ。
このまま一緒にラ◯ュタ探しにいかない?
「あっ、じゃあさ。一緒に食事しない? 今から弁当買ってきて」
バルスするためにも、まずは友好を深める必要がある。
「え、でも私なんかと一緒だと……迷惑だと思います」
消え入りそうな声で少女がつぶやく。
「いやそんなことないって。むしろ大歓迎」
俺の見立てでは、この女の子はボッチだ。
俺のボッチレーダーがビンビンに反応してるからな!
この機会にボッチ同士仲良くやろうじゃないか!
これぞボッチ同盟!
ボッチが二人集めれば、それはもうボッチじゃない!
ようやく一緒にご飯を食べる友達ができるぞ!
「本当にいいのですか?」
「ああ」
「本当に? 本当に?」
「もちろんだ」
「本当に私と一緒で気にしませんか?」
めちゃめちゃ念押ししてくるな。
まあ気持ちはわかる。
ボッチを長くやってると、疑心暗鬼になりやすくなる。
友達作るハードルが高くなりすぎて、誰かと一緒に飯を食べるのが夢物語のように思えてくるからだ。
でも安心したまえ。
「むしろ君と一緒に食べたい」
ボッチ同士で食べるから意味があるんだ!
クラリスのように既にグループに属してる子だと、一緒にご飯食べにくいし。
俺がコミュ力高ければ問題ないんだろうけど。
既に出来上がってるグループにすんなりと入れる自信はない。
「……わかりました」
少女が小さく頷いた。
心なしか、彼女の顔が少し赤くなってるようにみえる。
なんかまずいこと言ったか?
まあいいや。
よし! これでランチ友達をゲットだぜ!
「じゃあさっそく弁当を買いにいこっか」
「一緒にですか?」
少女が眉を顰める。
「え、もしかして嫌だった?」
よくよく考えたら、俺と一緒にいるの見られるの嫌だと思う。
ごめん、考えなしだったわ。
「えっと……嫌ではありませんけど」
「けど?」
「私が一緒でもいいのですか?」
「大丈夫」
彼女が何を気にしてるかわからんけど、俺はまったく問題ない。
むしろ、君こそ俺と一緒で大丈夫?
だが想像していた痛みはなかった。
少女が小柄だったからだろう。
相手が大人だったら押しつぶされていた。
大人の大きな胸に押しつぶされるなら本望だ。
相手が男だったらお断りだけど。
「いっ……」
俺は少女を抱きしめる形で仰向けになっている。
少女と目があった。
くりくりとした真っ赤な目だ。
白く長い髪が俺の顔にかかっていて、ちょっと痒い。
「ご、ごめんなさい!」
ぴょんっと飛び跳ねるように少女が俺から離れる。
「いやいいよ。それより怪我はない?」
「えっと……はい」
「それは良かった。俺の腹脂肪が凄いからいいクッションになったでしょ」
「…………」
自虐ネタが通じなかったようだ。
ちょっと気まずい。
ていうか、なんで子供がここにいるの?
と思ったが、少女の服をみて彼女が学園の生徒だとわかる。
まさか飛び級で入学してきた?
この学園の制度は知らないけど、たぶんそういう制度はなかった気がする。
てことは、単純に幼い見た目ってことなのか?
まあ童顔なだけだろうな。
俺が黙って見ていると、少女が恥ずかしそうに目を伏せた。
なんかごめん。
ジロジロ見たら気持ち悪いよな。
自重しよう。
「えっと、なんであんなところに登ってたのかな?」
「……あそこが一番安全だから」
ボソボソとなんとか聞き取れるくらいの声で彼女は言った。
「安全?」
むしろかなり危険な場所だと思うけど。
「はい」
「珍しいね。あっ、でも木登りしたくなる気持ちもわかる」
「え?」
「俺も子供のころ木に登って遊んでからさ」
まあ前世?のほうの記憶だけど。
「なんでか知らんけど、高いところって気持ちがいいよな」
「そう、ですね」
「…………」
おー、まい、がっと。
会話が途切れた。
「今日は天気が良いね」
真っ青な空が見える。
うん、気持ち良い。
「はい……」
天気ネタはだめだったか。
「あの……私を見て何も思わないのですか?」
少女が恐る恐るといった感じで聞いてくる。
「え、ちっちゃい?」
小学生と見間違えそうなほど小柄だ。
あと体の線が異様なほど細い。
「そういうことじゃないです」
じゃあどういうこと?
「私、こんな見た目です」
「まあ人とは違うよな」
「そ、そうです。みんなの前に出ると嫌がられます」
なるほど。
幼い見た目のことを気にしてるわけか。
たしかに他の人と違うってのはコンプレックスになるけど、
「そんなこと気にする必要ないと思うけどな」
「え?」
「人と違う見た目がなんだよ。そんなの個性の一つだろ? むしろ人と違うことを誇ったらいいと思う」
前世での俺はよくいる普通の人間だった。
大学行って、サラリーマンになって働く。
それが嫌だと思ったことはないけど、同時に個性がある人を羨ましいとも思っていた。
「でも私は――」
「飯のときくらいは、めんどくさいこと考えないようにしない?」
少女なりに色々悩みがあるんだろうけど、今は美味しくご飯を食べたいし。
「って、あれ? 俺の飯ないじゃん」
さっき少女が落ちてきたことで飯がひっくり返っていた。
「ご、ご、ご、ごめんなさい!」
少女が頭を地面にぶつける勢いで頭を下げてきた。
そんな勢いで下げられたら、むしろこっちが申し訳なくなってくる。
「いやいいよ。ちょうどいまダイエット中だったからね。逆にありがたいかも」
「ど、どうしよう……」
「大丈夫。今日は昼飯抜きで――」
――ぐぅぅぅ。
俺と少女のお腹が同時に鳴った。
二人して顔を見合わせる。
少女が恥ずかしそうな顔をしている。
俺もきっと同じ表情をしていると思う。
腹が同時に鳴るって、これはまさかの運命?
デスティニーですか?
少女が空(木)から降ってくるなんて、まさに運命的な出会いだ。
このまま一緒にラ◯ュタ探しにいかない?
「あっ、じゃあさ。一緒に食事しない? 今から弁当買ってきて」
バルスするためにも、まずは友好を深める必要がある。
「え、でも私なんかと一緒だと……迷惑だと思います」
消え入りそうな声で少女がつぶやく。
「いやそんなことないって。むしろ大歓迎」
俺の見立てでは、この女の子はボッチだ。
俺のボッチレーダーがビンビンに反応してるからな!
この機会にボッチ同士仲良くやろうじゃないか!
これぞボッチ同盟!
ボッチが二人集めれば、それはもうボッチじゃない!
ようやく一緒にご飯を食べる友達ができるぞ!
「本当にいいのですか?」
「ああ」
「本当に? 本当に?」
「もちろんだ」
「本当に私と一緒で気にしませんか?」
めちゃめちゃ念押ししてくるな。
まあ気持ちはわかる。
ボッチを長くやってると、疑心暗鬼になりやすくなる。
友達作るハードルが高くなりすぎて、誰かと一緒に飯を食べるのが夢物語のように思えてくるからだ。
でも安心したまえ。
「むしろ君と一緒に食べたい」
ボッチ同士で食べるから意味があるんだ!
クラリスのように既にグループに属してる子だと、一緒にご飯食べにくいし。
俺がコミュ力高ければ問題ないんだろうけど。
既に出来上がってるグループにすんなりと入れる自信はない。
「……わかりました」
少女が小さく頷いた。
心なしか、彼女の顔が少し赤くなってるようにみえる。
なんかまずいこと言ったか?
まあいいや。
よし! これでランチ友達をゲットだぜ!
「じゃあさっそく弁当を買いにいこっか」
「一緒にですか?」
少女が眉を顰める。
「え、もしかして嫌だった?」
よくよく考えたら、俺と一緒にいるの見られるの嫌だと思う。
ごめん、考えなしだったわ。
「えっと……嫌ではありませんけど」
「けど?」
「私が一緒でもいいのですか?」
「大丈夫」
彼女が何を気にしてるかわからんけど、俺はまったく問題ない。
むしろ、君こそ俺と一緒で大丈夫?
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