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第四章 魔大陸編

3国トップの嘘

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俺は、服従契約している奴らの拘束を解いてやった。
すると、王国に雇われていたS級冒険者のリーダーと思われる男が、

「すまない。我々は王国とは関係のない、S級冒険者だ。同じ冒険者ギルドに所属している者として、我々を貴君のパーティーに入れてくれないだろうか?」

「あんた達もS級まで上がった冒険者だろう?冒険者が冒険に出てたとえ命を落としても自己責任だろうが。大方、古代遺跡につられて来たんだろうけど、しっかり探索したらいいじゃねえか。なんで俺があんた達を助ける義務がある。」

「ダカン殿、それでは約束が違うではないか。あなた方は王宮からの依頼でこの召喚勇者達の護衛を任された筈だ。それを今さら関係がないなどと。」

「何言ってる。状況が変わったんだから契約は無効だ。違約金が必要なら払ってやる。」

「そっちの契約は知らないが、当事者を呼んで欲しければクズ王とクズ王女をここに連れて来るぞ。あっ、他の2国も、皇帝と、教皇を連れてきて欲しければここに連れてくるけどどうする?直接問いただした方がいいんじゃないか?それに忠誠を尽くす相手がいた方がいいんじゃないかお前らみたいなカースト信者達は。」

「「「「「・・・・・・」」」」」

「お願いできますか。私は教皇にきちんと聞いてみたい。この場で私達に言ったことが本当なのかどうか確かめたいです。」

「俺達も、皇帝に聞いてみたい。タクヤさんの話しを疑っている訳ではないけど、真実を知りたい。」

「龍崎君。今さらこんなことを頼めた義理じゃないけど、僕達も確かめてみたい。お願いできるだろうか。」

「トップ会談になるのかもしれないけど、ここで揉めるなよ。おっさんと、そっちの騎士団の人たちも構わないな?」

あんまりこの状況の改善には役立たないと思ったけど、俺は彩を連れて一旦ハウスに戻って、俺だけで3国を回ってトップをそれぞれの亜空間領域に閉じ込めて東大陸に戻った。

「少しは話し合いは済んだか?じゃあ、ここに4人を呼び出すから後はお前達で処理してくれ。」

そう言って、閉じ込めていた亜空間領域を開いて、クズ王とクズ王女、皇帝と、教皇を皆の前に連れ出した。

「ここはどこじゃ、貴様、余たちに何をした。」

「まあ、マトタ様。古代遺跡は攻略されましたの?何か遺跡級レアアイテムは手にされましたか?」

「エリスよ、これは一体どうしたことです。ここはどこなのですか?あの者は何者です。神聖な聖神殿に入り込み聖精霊の使いであるわらわを連れ去るとは許しがたいことです。」

「ダルグよ。一体どうしたことだ。余は失望したぞ。何のために念話の腕輪を持たせておると思っているのだ。なぜ王国と教皇国の召喚者ども共にいるのだ。余の命を忘れたか。」

「そうじゃ、お主はあの最初にいなくなった召喚者じゃな。わざわざ情けをかけてやって金まで持たせて城を出してやったと言うのに、死んだふりなどして余の目を欺くとはなんと恥知らずな下賤な者よ。」

「騎士団長、何をしているのです、父の言うことが解らないのですか?すぐにあやつを捕縛しなさい。」

「何をしておる、おお、S級冒険者の・・・名は忘れたがお主たちでもよい。あやつを捕まえるのじゃ。報酬は望みの額だけ出そう。」


「アルンガルトの国王よ。余はドボルグ帝国皇帝のミシュランだ。よもやこのような場所で直接会おうとは思わなんだったが、よく周りを見ることじゃ、我らを瞬時にこの場所へ連れてきたこやつの能力がどれほどのものか解らぬ訳でもあるまい。少し黙っておるのじゃな。そしてそちらは、聖精霊教皇国のベネジクト教皇と推察したが相違ないか?」

「いかにも、聖精霊教会第63代教皇のベネジクトである。してなぜ朕がここにつれてこられたのか説明してくりゃれ。」

「あー俺が話すのか?まあいか。ここは東大陸の端だ。そしてこの海の先約3000㎞先に西大陸がある。つまり西大陸と東大陸は完全に分断された訳だ。この大陸にいる魔族以外の人間はここにいる奴だけだ。で、俺はそこのクズ王にこの世界に召喚された中の一人だけど、すぐに国を出て難を逃れたって訳だ。あんた達が付けようとした隷属の首輪を付けられるという難をな。で、俺はこの大陸が分断されたから同じ召喚者のよしみでこの場所に来ていろいろ話をしたら、こいつらが直接トップと話しを聞きたいってことになって連れてきた。」

「何?大陸が分断したと申したか、そのような戯言。」

「陛下、真でございます。我らが東大陸に進みあの山に駐屯していた時にそれは起こりました。気がついた時には、この地より先に続いていた西大陸の地が消え海になっておりました。その時よりこの念話の腕輪で陛下との念話が出来なくなっておりましたが、今は可能でございましょう。」

まあ身についた身分制度っているのはすぐには変えられないか。後はこいつらに任せるかな。俺がいても仕方ないしな。

「猊下、いや教皇さん。私たちを騙し、魔王と戦うなどと嘘をつき、魔族が使う闇精霊魔法にかからないためにあの首輪を付けなければならないと言ったのは本当ですか?」

「何を無礼なもの言い。お黙りなさい。・・・・あなた方、隷属の首輪はどうしたのです?どうやって外したのですか?エリスこれはどうしたのです。」

「猊下。正直にお答えください。この度の出陣は本当に聖精霊の御心に適う聖戦なのですか?召喚者の方々に施した首輪は闇精霊魔法を打ち消すために必要な処置だったのですか?」

「あなたまで。邪悪な魔力に冒されたのですね。聖精霊の御使いたる教皇の言葉を疑うなど最大の罪ですよ。あなたには聖精霊の御加護を受ける資格はありませんね。」

「タクヤさん、教皇に真実を話すようにすることはできますか?」

「まあ出来はするけど、あんまり好きな魔法じゃないんだけどな。ついでにそっちの3人にも掛けとくから、これで嘘は付けなくなってるから、聞きたいことは聞いていいよ。」
連れてきた4人にサクッと服従魔法をかけてやった。

「教皇、質問に答えて下さい。私たちを召喚したのはあなたの私欲のためですか?そして今回の遠征は魔王討伐の聖戦ではなく古代遺跡のアイテムを回収するためですか?」

「あ、あっ。当たり前です。聖精霊教皇になってこの世の富と名声を得ずして何の意味があるのです。目障りなアルンガルト王国と、ドボルグ帝国が勇者と言う便利な道具を手に入れたのですから、わらわも持つのは当然です。手ごまにするのに少々手こずりましたが高い金を払って最高の隷属魔法で縛ったと言うのに使えない奴らです。帰ったら火炙りの刑にしましょう。こたびの遠征は遺跡級レアアイテムを手に入れるためですよ。そのようなチャンスをみすみす見逃すおバカはいませんでしょう。遺跡級レアアイテムを手に入れたらわらわは歴代教皇の中で最も名誉ある教皇として後世に語りつくされるでしょう。聖人への生前昇格も可能でしょう。あなた達は、わらわのために働けばいいのです。・・・・なな、口が勝手に。これは違いますぞ。わらわはあやつの邪悪な闇魔法に操られて無理やり言わされただけじゃ。エリスそなたであれば解ろう。聖精霊の御使いたるわらわが私欲で動くなどありえぬ。」

「猊下、聖精霊の御使いたるあなたが、闇精霊にかかり操られたとおっしゃるのか。聖精霊の御加護を一番受けているというあなたがそれをおっしゃるのか。」

「カミュー王女、あなたがおっしゃっていた、魔王を倒せば元の世界に戻れるといっていたのは本当ですか?この首輪は勇者の能力をコントロールするために必要なアイテムだとおっしゃったのは本当ですか?」

「ば、馬鹿じゃないの。そのようなことあるわけないでしょう。これだから平和ボケした異世界人というのは市井の者よりも御しやすいのです。魔王と戦うですって?なぜそんなことのために王国が動かねばならぬのです。魔族はこちらから刺激しなければわざわざ西大陸に出てきませんのよ。あなた達を手間をかけて召喚したのは上手くいけばあなた達を使って、西大陸の覇者になれると思ったからですわ。他の2国も同じように召喚儀式を行って異世界人を召喚したのは計算外でしたが。全く、身分制度がしっかりしている集団を願って呼びだしてみれば、使えるのは数人だけであとはカスばかり。挙句の果ては折角召喚してあげたというのに勇者でもないカスが混ざっているなんて、全く外れもいいところですわ。首輪は普通の隷属の首輪ですわ。ただちょっと強力にしてますけど。あなた方だけ外れなかったようね。いい仕事をしたのね。帰ってから褒美を取らせましょう、ねえお父様。」

「余に質問するでない。何も聞くな。」

「いえ、皇帝、聞かせて頂きます。魔王を倒すために俺達を召喚したと言ってましたが本当ですか?首輪は勇者の呪いを受けないために必要なアイテムだとおっしゃったのは本当ですか?首輪がないと能力が暴走し魔族化するかもしれないと言ってたのは本当ですか?そして今回の古代遺跡で皇帝の腕輪と同じようなレアアイテムを手に入れたら首輪が必要になくなり、勇者の能力に覚醒すると言っていたのは本当ですか?」

「我ら西大陸の人間にとって魔族とは数百年に一度経験するかもしれない天災みたいなものだ。そのようなことのために様々なことを犠牲にして何が出るか解らぬ召喚儀式を行う筈もない。この儀式は数千年に一度行えるかどうかの貴重な召喚儀式だ。西大陸の覇者となるために行うのは当然だ。隷属の首輪は飼い犬に手をかまれないように保険をかけるのは当然だ。それが猛獣となる可能性のあるペットならなおさらだ。半分は解除されたか。まあよい。半分残っておれば何とか建て直しもできよう。それにしてもS級冒険者のやつらはどうしたのだ。なぜ一人しか残っておらぬのだ。まあよい。第二騎士団長、兵をまとめるのだ。ここから脱出する道を探さねばならん。そうだ、お主、帝国に雇われぬか?SS級冒険者だと聞いたぞ。爵位と領地を与えよう。必要なら騎士団を与えてもよいぞ。・・・・・心に思ったことが全部口に出るのか。何と言う魔法だ。」

「まあ、なんだ、この後のことはあんた達で決めてくれ。さっきも言ったけど、取り敢えずこの場所に長くとどまるのは危険だと思うぞ。俺達の狩り場は随分と奥地の方だからこっちの方の魔族はそのまま、あんた達の敵になるからな。」

「勇者よ、こやつを捕らえるのじゃ。いや切り捨てるのだ。・・・・なぜ隷属の首輪が働かぬのだ。命令に従わない場合には苦痛が出る筈じゃ。」

「マトタ様、お助け下さい。勇者の力であの無礼なものを倒して下さい。」

「陛下、すでに勇者の方々の所有権は、あの者に移っております。しかも我らが施した上位の魔法で縛られております。陛下が先ほど嘘を付けなくなったように相手の意思とは関係なく相手を御せる魔法の様でございます。そして陛下と王女殿下、皇帝陛下と、教皇猊下は、すでにあの者の服従魔法をかけられあの者の奴隷になっております。ステイタスをご確認なさっては。」
「な、余の職業が奴隷だと。余はアルンガルト王国国王だぞ。」

「お父様。私も職業が奴隷になっています。」

「あー。それは仕方ないな。隷属魔法と違って強制するからな。奴隷以外にはなれないんだな。俺も今回初めて人相手に使ったから詳しく知らなかったけどな。まあ、東大陸では職業は関係ないからな。魔族は職業とかないぞ。気にしなくていいんじゃねえか?」

「な、あな・・・、苦、しい、助けて。」

「俺に直接敵意を向けない方がいいぞ。さっきみたいに間接的なら効果は弱いようだな。いいサンプルになった。少し改良してみるよ。それじゃあ、俺は行くからな。」

「待ってくりゃれ。わらわは無力な子羊じゃ。魔族のいる中でなど生きては行けぬ。わらわだけ元の場所に戻してたもれ。そうじゃ、そなたを聖精霊教会の枢機卿に任じよう。わらわの後の教皇にも推薦しよう。哀れなわらわに情けをかけてくりゃれ。」

「うーん、あんたを呼んだのはそこの召喚者達の希望だからな。そっちに聞いてくれ。」

「エリスや、そちからもお願いしてたもれ。そちたちみたいに戦いの術を持たぬわらわなどここにいても役に立たぬであろう?わらわは神殿でそなたたちに聖精霊様の御加護があるように祈っていよう。そうじゃ特別祈祷を行おう。」

「教皇だけが悪いんじゃないんだろうけど、私は教皇を許せない。皆はどう?教皇を元に帰したい?」

「この人にどれだけの力があるのか解らないけど、聖精霊様に祈ってくれるっているなら近くで祈って貰った方がいいんじゃない。近くで祈って貰った方が御利益ありそうだし。」

「勇者殿、そなたが本当の勇者だったのじゃな。これまでの非礼を詫びよう。余たちが戻ったら勇者殿は王女と結婚してはいかがかな。のう王女。そちも勇者殿と結婚したいじゃろう?」

「えっ、私は、い、嫌。下賤な者などと結婚などしたくありません。・・・う、うぅ。お父様。私に聞かないで下さい。」

「茶番はいいか?お前達二人は元に帰すつもりはないよ。お前達は俺の意思でここに連れて来たんだからな。頑張ってこの大陸で生きる術を身につけることだ。相手は下賤な魔族と魔物だけだし、高貴なお前達なら問題ないだろう?元帝国諸君はここから離れるんだったか?まあ頑張ってくれ。」

いつまでたっても埒が明かないので、そのままハウスに戻った。後は自分達で考えるだろう。
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