上 下
35 / 43
第四章 魔大陸編

事情説明

しおりを挟む
帝国軍の動きにつられる形で、後の2国も地形変化に気づいたようだ。結局3国の全員が揃ったのは3時間も後だった。王国軍の到着が遅かったのはその分先行していたのだろう。もしくは森に入ったすぐの場所で一旦駐屯基地を作ろうとしたのか。

俺と彩は3時間も待つのは暇だったので二人で魔族相手に戦ってきた。このまま襲われたら流石の勇者達100人近くいると言っても拙いだろうしね。森の中と森の近くにいた魔物や魔族を全部殲滅しておいた。

敵対しているとはいえ流石各国の精鋭たちだ、事態の収拾に向けて協力することにしたようだ。俺と彩はその話し合いの場に姿を現した。ずっと隠密と光学迷彩で隠れてたんだけど誰にも気づかれなかった。話し合いがひと段落ついて、各国の意見が出そろった所で俺達は姿を現すことにした。

「えっと、皆さん、こんにちは。俺はアルンガルト王国の召喚儀式で呼び出された者の一人です。こっちの世界ではSS級冒険者のタクヤと言えば皆さんにも認識してもらえると思います。」

「私は、彼と同じくアルンガルトで召喚され、彼の妻になりS級冒険者になったアヤといいます。」

「まず、皆さんの話しはいろいろ聞かせて貰いました。状況を説明しますがいいですか?」

「あなた、何者?どこから入ってきた?」

鑑定すると教皇国の騎士団長になってるけど、割と綺麗な大人の女性がいきなりの俺と彩の登場のショックから立ち直って口を開いた。

「俺の身分は先ほど言ったとおりですが。冒険者カード見ますか?あっ、そこのアルンガルトの召喚者が俺と彩の知り合いですので保証してくれます。そしてどこから入ってきたかと言う質問は、俺達は3時間も前からあなた方がここに集結するのを待っていましたけどね。ついでに周囲の魔物と魔族を処理してきましたが、証拠をみますか?と言うか、これからこの大陸での食料として必要ですので、あとでお渡しします。」

「確かに、彼らは僕達と一緒に召喚された元クラスメートです。しかし召喚された当日に城を出て死んだと聞かされていたのですが。」

「よろしいですか?俺の詮索より、俺の話を聞いて情報を得た方がいいと思いますけど。あっ、そこの帝国の団長さん、大陸が分断されたので念話は利用できませんよ。皇帝の指示もこちらの状況報告もできませんから、念話を飛ばしても無駄です。」

「えっと、まず3国の騎士の人は俺にとっては関係なので先に無理やりこの世界に召喚された人たちに話しをさせて下さいね。まず、アルンガルトは日本のマトタ学園の2-Aクラスを召喚しましたが、帝国で召喚されたあなた方と、教皇国で召喚されたあなた達は、召喚されたことについてどのように思っているんですか?」

「俺は、帝国で召喚された山崎五郎というものだ。西筑紫体育大付属学園の3-B組全員が召喚された。俺達はスポーツ優待生のクラスだ。この世界に召喚された当初はいろいろ不満もあったけど、実際いろいろ指導して貰って概ね満足している。」

「私たちは、中華人民共和国の桜花女子大学の芸術過程のクラスです。私たちも召喚当初は精神的に落ち込みましたが教皇猊下やテンプル騎士団の皆さんのお陰で魔術を習得することが出来ました。魔王を倒さなければ私たちも戻れないし、この世界も暗黒に染まると聞いています。私達が頑張らなければいけないのでしょう?」

「王国でも同じですわ。先ほどそこの者が言ったようにクラス全員で召喚されましたが、そこの者たちのように不適格な者が混じるのは集団としていた仕方ないこと。後の2国のように専門的な学校の集団でない普通の高校のクラスですからなおさらですわ。」

「なるほど、自分達の意思で勇者をやってるならいいけど、じゃあなんで全員わざわざ隷属の首輪を付けてるんでしょうか?召喚者以外にそんな物つけてないと思うんですけど。それとも各国の騎士団の兵士も全員そんなものを付けてきてるんですか?」

「貴様、勝手なことを言うな、お前は逃げ出したのだろう。」

「おい吠えるな。たかがS級ランクの冒険者が。お前には聞いていない。黙ってろ、殺すぞ。」

同じように横やり入れてこようとしていた奴らを牽制するために高圧的に言ってみた。尚剣を抜こうとするので、

「それを抜いたらマジで殺すからな。よく考えて抜けよ。」

って忠告も聞かずに剣を抜いたので、仕方ないなーって思ったけど潰してあげた。重力魔法で。視覚的に解りやすくしてやらないとこいつら馬鹿過ぎるし。

「まだ何か言いたいことあるやついるか?」

全員無言だ。教皇国の女性3人は少しお漏らししてるみたいだけど見なかったことにして上げた、心優しいから。

「さてもう一度聞く。なんで召喚者だけ隷属の首輪をつけている?それを付けていると契約主の命令に絶対服従を強いられる本来、奴隷に使用される物だよな。しかもその契約魔法はどれも最強度で縛られてるぞ。なぜそんなものつけている?」




「答えられないのか?隷属の首輪は本人の承諾がなければ発動しない。お前達の首輪は契約者を複数指定されているぞ。誰と誰の命令に絶対服従するように設定されているんだ。通常の奴隷でもそんな多重の契約はしないぞ。」



「お前達全員、3国の軍事バランスを崩すために戦力として召喚されレベルを上げさせれてるに過ぎないんぞ。そんなことにも気付かないからいいように使われるんだ。そして現在この世界からこの魔大陸に閉じ込められた。永遠にだ。魔王を倒しても元の世界に戻ることはない。この大陸で死ぬまで生きていくしかないぞ。しかも奴隷の首輪付きでだ。」

「な、最下層の分際で何を偉そうなことを言っているの。」

「おい的田。もう少し現実を見ろ。ここにはお前が頼りにしているマトタって会社はないし、大好きな爺さんもいない。最下層とかいつの時代だよ。ランクが好きなら俺はSS級冒険者で一国の国王だ。お前はその首輪を付けている限り奴隷だ。自分でステイタス見て気付いてるだろうが、最初お前と直也は勇者となっていたはずだ。それがいまじゃ、勇者(奴隷)になってるだろうが。直也には城を出る時に忠告したはずだぞ。大方あの性悪王女に騙されたんだろうが、お前の判断で全員を奴隷にしたこと責任をちゃんと自覚しろ。」

「あ、あの、タクヤさんとおっしゃいましたよね、あなたはなんでそんなに詳しいんですか?」

「情報はその辺りにたくさんあるだろう。それを自分の目で見て、自分で考えて、自分で判断してないからこうなるんだろうが。大体召喚直後から。怪しさプンプンだったろうに。外に出て、冷静に3国の動きをみてれば誰でもわかることだ。」

「私達これからどうなるんでしょうか?」

「だから、この大陸に永遠に閉じ込められたの。生き残りたいなら自分の能力を活かして生き残るしかないだろう。あんたも大学生なら自分で考えろよ。」

教皇国の美人の騎士団長さんが、

「しかし、猊下は、聖戦だと。」

「あなた達が聖精霊信仰に染まってるから、仕方ないのかもしれないけど、今回のは聖戦でも何でもないぞ。俺はその場にいたし。一人だけは教皇の意見に反対してたけど、すぐに教皇に丸め込まれてたしね。あっ、そん時あなたもその場にいたじゃん。精霊の加護だとかなんだとか言ってたけど、要するに古代遺跡級のレアアイテムを自分達が持ってないからこのチャンスで欲しいって言うことだろう。そうじゃなきゃ、あんな強行軍でこの場所まで遠征させないだろう。わざわざ馬車の中で寝せて野営地についたら訓練してレベルを上げるとか異常だろう。」

的田直也が、

「確かに、城を出る時に龍崎君に首輪に気を付けるように言われてたけど、このようなものだとは思ってなかったんだ。」

「だからなんだ?自分が付けて変だと思ったら他のやつが付けるのを阻止したらいいだろう。大かた自分もつけたから他の者も付けるのは当然とか思ってたんだろう。」

帝国の騎士団長さんが、

「それで、本当にこの大陸からは出れないのだな。」

「それは間違いない。この世界のシステムが動いたらからな。そもそも魔族もいない西大陸に魔族と同じポテンシャルを持ってるやつを110人も召喚したら、この世界のバランスが崩れるだろう?お前達この先どうなってたか解ってるの?西大陸なら自分達は最強で搾取する側だからラッキーだけど、東大陸に来たら精いっぱい頑張らないと搾取される側、殺される側になるからアンラッキーとか甘いって言うの。西大陸で暮らしている人からすればお前達召喚者が一番迷惑だって話だよ。」

「ともかく、この東大陸で生きている魔族以外の人間はここにいるやつで全部ってことだ。後は自分達でどうするか決めたらいい。この期に及んで元の国の援助とか支援は絶対にないから頭を切り替えた方がいい。」

「俺達は、この先も奴隷のままなのか?」

「契約主がいないならそうなるな。この場所に契約主であるものはいるのか?」



「あーもう、俺が解除してやる。俺が助けるのはここまでだ、後は自分達で何とかしろよ。召喚者を一ヶ所に集めろ。サッサとやらなきゃ日が暮れるぞ。あの山の向こう側の森林地帯までの魔物と魔族は処分してるけど、十分に警戒しないとやばいからな。ちなみに海は魔物が生息してて、潮の流れが強くて外へは出れないからな。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:477

浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

BL / 連載中 24h.ポイント:27,426pt お気に入り:1,984

最後の再会

BL / 完結 24h.ポイント:326pt お気に入り:1

今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:23,651pt お気に入り:3,396

 だから奥方様は巣から出ない 〜出なくて良い〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:48,268pt お気に入り:2,567

ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 2

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,549pt お気に入り:264

愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,698pt お気に入り:380

ラヴィニアは逃げられない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:64,984pt お気に入り:2,263

明日の夜、婚約者に捨てられるから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:3,351

処理中です...