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第三章 古代遺跡編

黒竜の谷へ

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翌朝、周囲に確認させるために城門から出て黒竜の谷方面に向けて出発した。

「お兄ちゃん、今日はどこまで行くの?」

朝起きて迷宮でのトレーニングを行って出発したので、すっきりした顔をしている。最近アリスが過激になって、一日一度は戦わないと身体がうずくとか物騒なことを言いだしてるので、一日のスケジュールに迷宮探索を組み入れている。

「そうだな、取り敢えず、まずはコネの麓の街テンバを目指すからゴーヤぐらいまでは飛ばそうかと思ってるぞ。」

見掛け上この馬車は4人しか乗ってない普通の小さな馬車にしか見えないけど、いろいろ魔法付与して乗り心地を改良している。馬にしてみればほとんど重さを感じていないはずだ。通常よりも速く走っても疲れないと思う。車輪は回っているように見えて実は宙に浮いている。重力魔法の応用だ。さらに振動を吸収するようにスプリングも改良している。
御者台のイスはウォーターベッドの応用でゆったり座れるようにしている。こうしてアリスが寄ってきても二人で十分に座れる広さだ。

「旦那様、おやつをお持ちしましたー。ってアリスがなんでここにいるの?調合部屋にいるんじゃなかったの?」

「えー気分転換だよー。って言うか、おやつの時間は早いんじゃない?さっき朝ごはん食べたばっかりだよ。」

「これは、旦那様専用のおやつです。ミミの新作ですのであーんして食べさせて貰うんです。ほらどいて下さい。」

「ミミ俺が食べるんじゃないのか?」

「勿論旦那様に差し上げますよ。もう当たり前じゃないですか。」

こうなることを予想して、二人が来ても同時に座れるようにしてるんだよ。俺の作戦勝ちだな。

「って、彩はどうしたんだ?機織りしてるの?」

「えっ、後ろにいるよ、お兄ちゃん。」

ん、4人座れるようにはしてなかった。

「えっと、じゃあ、この辺りでちょっと休憩にしようか。小川があるしね。」

結局、馬車を止めて小休止することにした。

「ところで、トレーラーハウスの使い心地はどうだ?」

「んー?快適だよー。寒くもなく、暑くもないし。作業するのに集中しやすいかな。」

「そうだよね。アリスも調合部屋好きだよ。今ね新しい薬を考案中だよ。」

「新しいのはいいけど、いきなり他人で実験するのは禁止な。それより回復薬の効能を上げる工夫をした方がよくないか?」

「彩もいろいろやってるんだけどね。何か材料が不足しているのかもしれないなぁ。」

「まあ、それでも通常売っている回復薬よりは遥かに効能が大きいからな。あれはあれで凄いとは思うけど、鑑定だと中等度ってなっているからな。さらに上がある筈なんだよなー。」

「ミミのキッチンも問題ないですぞ。家のキッチンより使いやすくてここ以外で料理をしたくないぐらいですぞ。」

「まああの家の魔道具よりいろいろ進化してるからな。冷凍庫も便利だろう?」

「はい。素晴らしい魔道具です。こうして新しいデザートのレシピが次々と浮かんできます。」

「拓哉、そう言えばガノの家はどうするの?何も荷物置いてないからどうするのってこともないんだろうけど」

「光学迷彩で隠れたまま転移出来るようになったからね。特段拠点とか必要ないかなぁーって思ってる。寧ろ迷宮の下層でセーフティーゾーンを作って生活した方が安全な気もするしね。この世界で一番の脅威は人間だしなぁ。」

「確かにそうね。その内、拓哉の情報とかも漏れることになるだろうし。」

「まあ最初の数ヶ月の時点で他の勇者のやつとどれくらいの差がついたか解れば今後の対策もたて易いんだけどな。まずは古代遺跡だな。出来ればそこを占拠して隠蔽したいと思ってる。」

「でも竜の住処の中なんでしょう?」

「その竜自体が、俺達を守ってくれる盾になってくれると思うんだけどな、うまく占拠できれば。」

「そっか、中には行って遺跡自体を光学迷彩なりで隠蔽しちゃうのね。」

「空間位相、結界、あらゆる手段を持ってね。一度中には入れれば後は出入り自由だし。」

「でもお兄ちゃん、その遺跡って本当にあるのかなぁ?」

「まあ、なくても構わないかな。どのみちこの世界で生きていく上で、同じ時空間に竜という強大な生物がいるなら、いつかは戦うことになるんだろうし、どの程度なのか知っておくことも大切だしな。」

しばらく休んだ後、また馬車を走らせて一路南へ向かう。だんだん潮風を感じるようになってきた。この世界にも海があるんだなー

「ゴーヤ国の先に迷宮があるみたいだけどちょっとだけ入ってみるか?」

「「「うん。」」」

その日は日が沈むまで走り続けて、ゴーヤ国のママツ迷宮の近くで野宿することにした。野宿と言っても亜空間領域のトレーラーハウスだけど。

「今日はハンバーグか。ソースが違うけど、なんだこれ?」

「はい、奥様に教えて頂いたハンバーグを少し進化させてみました。と言ってもハンバーグ自体がそれだけで美味ですので、その味を壊さないように少し辛みを加えられるようなソースにしています。」

いつものように俺の膝の上で得々と解説するミミ。

「おいしそうだな。これでカレーが出来たら完璧だけどな。」

「スパイスがね。上手く調合したらできるかなー。今度大きな街に行ったらスパイス探してみるね拓哉。」

「明日は近くの迷宮に入るの?」

「そのつもりだぞ。ガノの迷宮の方がいいか?」

「朝だけならどっちでもいいかな。身体を動かせれば。」

「ミミはこっちの迷宮をみてみたいです。新しい素材があるかもしれませんし。」

「そうだな。海の近くだし水生魔族が出てきたりしてな。」

「魚ですか?魚は滅多に手に入らないレア素材ですからね。手に入ったら料理はミミにお任せ下され。」

その後、風呂に入って、ウォーターベッドを十分に堪能してぐっすり眠った。
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