上 下
20 / 43
第二章 ガノ王国編

S級冒険者

しおりを挟む
その後も順調に迷宮探索は進んだ。
地下11階は昆虫系エリアでボスはキラービーンという大型の蜂型モンスターだ。麻痺毒を吐き、お尻の針は即死級の毒を持っているようだった。素材は調合関係の者が多かった。
地下12階は蜘蛛のエリア。ボスがイルタランチュア。ここは何度も周回して機織り用の糸を大量に得られた。
地下13回も蜘蛛のエリアで、ここからは魔法をつかう魔物が出現するようになった。ボス戦はブラックタランチュアでA級素材のブラックタランチュアの糸も大量に得ることが出来た。
地下14階になると他の冒険者パーティーはいないようだった。B級と思われるパーティーは蜘蛛のエリアまでのようだ。糸関係は需要が高いのかもしれない。
地下15階になると、迷宮の高さがそれまでの3倍ほどになり、出現する魔物も大型な物しか出なくなる。この階層で初めて俺達の経験値の入りがよくなって、レベルアップが順調に進むようになった。最後のボス戦はいろんな種類のゴーレムが出現する。ドロップアイテムは鉄塊、ミスリル塊、アダマントか塊とそれぞれのゴーレムに応じたドロップアイテムだ。ミスリルゴーレムは割と出現したけど多彩な魔法攻撃を使ってくるので最初は少してこずった。しかし、俺が順次武器を揃えていくとほとんど相手にならなかった。アイアンゴーレムは完全なはずれなので瞬殺できたけど、アダマンタイトゴーレムは出現は稀だけど、一番手こずった。物理攻撃がほとんど通らないので魔法攻撃で倒すしかないんだけど、彩達が使える属性魔法では与ダメージ量が少なかったのだ。仕方ないのでアダマンタイトゴーレムの時だけは、全員俺特製の杖に持ち替えて、威力を倍増した魔法攻撃に切り替えることにした。
地下16階からは、ここまで出現していた魔物のコンボだ。エンカウント率も高くなるし、異なるタイプの魔物相手の戦闘で、連携の重要性を再認識させられた。ボス戦は複数が出現するようになった。
現在、この迷宮の到達済みの最下層の17階は、フィールドにここまでのボスが出るようになった。なるほど、大変ではあるんだろうけどね、今の俺達の敵ではない。アリスとミミも伝説級の武器、防具と比べても遜色のない装備をしているし、アクセサリーでいろいろ強化してるのでほとんど相手にならない。特に、皆の武器には麻痺と石化効果の出る魔法付与をしているので、3人の幸運値も影響しているんだけど、ボスモンスターにさせ、麻痺や石化を与えることが出来るようになっている。

「お兄ちゃん、この階も楽勝じゃない?このままボスも討伐しようよ。」

「そうだなー。あんまり目立ちたくないんだけどなー。」

「そんなこと言ってもS級冒険者になってるんだし、目立つなって言うのが無理じゃない?」

「そうなんだよなー。まさかSにすぐ上がるとは思わなかったからな。」

「あれだけレアアイテム換金したら当然だよ、お兄ちゃん。」

「でも多分、最下層到達したらこの街だけじゃなくて、他の場所にもいろいろ情報が伝わりそうだけどな。」

「その辺りは内緒にしておけばいいんじゃない?ほら、入口の兵士に報告しなかったら誰にも解らないんだろうし。」

「それもそうだけどな。目立って王宮とかに目を付けられると厄介かなって思ってね。」

「そろそろ二週間だっけこの国に来てから。」

「そうだな、そろそろ別の国に行ってみるか?もしかしたら勇者の情報も集まってるかもしれないし、一度ジュラムの商人の家に戻ってみたらいいし。」

「どこへ行くの?」

「うん、黒竜の谷の方へ行こうかと思ってる。古代遺跡があるって伝承があるみたいだし。」

「えー竜と戦うの?」

「避けられれば避けるけど、多分戦うことになると思うよ。でも今の俺達なら問題ないと思うけどな。」

「そうだけど、古代遺跡で何をするの?」

「一番の目的は情報収集だなこの世界の。後は使えるアイテムをゲットしたいしな。ともかく、ボス部屋へ行ってみるか。この程度で躓いてたら竜とかと戦えないしな。」

17階のボス部屋は、ボス2体とその配下モンスター2体ずつの合計6体との集団戦だった。

「先に配下の方を麻痺か石化したらボスに集中しよう。ボス2体のヘイトは俺に向けておくから、配下の処理が終わったらボス戦に参加してくれ。」

ボスはゴーレム系と、昆虫系。物理攻撃系と魔法攻撃系ってことなのかもしれない。いずれにせよ問題ない。俺はボス2体に初撃を与えて、ボスの攻撃をわざと受けた。こうすることでボスの注意は俺の方にだけ向くことになる。その間に彩達3人が配下モンスターを石化ないし麻痺させていく。

「先に昆虫系の方から。魔法防御と魔法攻撃があるから注意して。その後麻痺している配下の処理、石化モンスターは最後に。」

ボス部屋に入って5分後、無事に攻略が完了して転移水晶が出現した。宝箱からは身がわりのアンクレットというアイテムが出た。これはいいものだな。早速複製しよう。

18階に転移しるとそこは、明るく広大なドーム状の空間が広がっていた。ここは妖精系の魔物エリアみたいだ。ドーム状ではあるけど、森の中みたいに迷路状に通路が繋がっている感じだ。

その日いつものように冒険者組合でアイテムの換金をして貰ってた時、

「それでは、タクヤ様。こちらが本日の代金と明細でございます。それから、タクヤ様現在お住まいの物件の契約の更新は如何なさいますか?」

「あー更新は結構です。」

「えっ、あっ、別の物件を見つけられたんですね。若干生活に不自由な場所でしたし。」

「いえ、明日この街を出ようかと考えていますので。」

「えーっ、どこか別の迷宮へ行かれる予定ですか?」

「折角なので他の国も回ってみようかと考えています。」

「所属ギルドは、どちらかに変更することがお決まりなんでしょうか?」

「どう言うことでしょうか?」

「はい。S級冒険者の方は自由に冒険者ギルドの所属の変更が可能になります。先日昇格の際に申し上げなかったのは、所属変更するには正式に王国並びに全国の冒険者ギルドへ報告しなくてはならないために、タクヤ様の御意向に反するかと思いそのままにしておりました。申し訳ありません。」

「いえ、それは俺の方の都合もいいですし、おそらく上からの指示なんでしょう?済みません気を使って頂いて。ちなみに所属を変更することで何かメリットがあるんですか?」

「それは、S級の冒険者ともなりますと大変な戦力でございますし、所属しているギルドの発言力が増します。元々各国から独立している組織ですが、国によっては冒険者ギルドの力はまちまちですので。勿論、当ギルドはタクヤ様のことは外部に知らせておりませんのでその理由は当てはまりませんが、正直タクヤ様が安定的にレア素材を卸して頂けるのでギルドといたしましても大変利益を得ていますので、タクヤ様のお力をお借りしていることになります。」

「あーギルドのメリットというより、俺達冒険者側のメリットは?」

「申し訳ございません。そのようにS級冒険者と言うのはギルドにとって大変な利益に繋がりますので、ギルドに所属して頂く際に様々な特典を提示されると思います。現在、当ギルドにはA級冒険者のパーティーが1つありますが、S級に上がった場合にそのまま当ギルドに残って貰うことを条件にして、家や家隷などの無料で提供しております。その代わり今回のようにギルドからの指定のクエストに参加して頂いておりますが。」

「なるほどね。ちなみに無所属ってことも可能なんですか?」

「はい。S級冒険者は単体で小さな都市国家の軍事力に匹敵すると考えられますし、パーティーで竜の討伐すら可能と言われる戦力ですので、無所属どころか国を興すことも可能かと思います。」

「でも、S級って言っても冒険者ギルドで認定されたに過ぎない身分ですよね?」

「冒険者ギルドは、古代遺跡のレアアイテムを利用することによってその情報を管理しておりますが、お持ちになっている冒険者カードはステイタスカードと並ぶこの世界の絶対の身分証になります。S級冒険者の身分はこの世界のどこへ行っても通用する身分証になります。」

「いろいろと正直にありがとうございました。それでは無所属ってことで行動したと思います。ただし、俺はお姉さんのことを気に入りましたから、お姉さんがここにいる限り迷宮で得たアイテムをここでも換金したいと思います。いろんな場所に行ってみるつもりなのでこれまでみたいに毎日ではないですけどね。でも俺はこのギルドと言うよりお姉さんを信用することにしますので。あっ、家はもうしばらく使います。契約終了の日に鍵を渡しに来ますので。」

ドアの後ろで聞き耳を立ててるやつがいたし、あのままならお姉さんの立場が悪くなるだろうからね。お姉さんも自分がギルドを首になる覚悟で裏事情まで話してくれたっぽいし。

その後しばらく街を離れることになるので、食材や調味料、パンなどを大量に買い込んだ。トレーラーハウスはすでに亜空間領域に準備している。勿論風呂も完備だ。馬車で移動して、夜は亜空間領域で過ごす予定だ。ちなみに馬車の中で亜空間領域においているトレーラーハウスとつないでいるのでいったり来たり自由にできる。亜空間領域は入り口を閉じなければこっちの時間の流れがそのまま適応されるようだ。寝る時には馬を別の亜空間領域に収納して馬車自体に隠蔽と光学迷彩をかけていればまず問題ない。そもそも馬車自体に俺が新しく作った位相空間バリアを施しているから見えても誰も内部に入れないんだけどね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

処理中です...