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第二章 ガノ王国編

裁縫と彫金

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膝の上でジタバタしているミミをあやしながらいろんな店を回った。
この国は歴史と、人種が豊富なのかいろんなスキルを持ってる人がいた。裁縫スキルや彫金スキルというものもあった。裁縫スキルを持っていたのはセミオーダーの服を作って売っていた店長だ。売り子の子は持ってない。

「このメイド服いいね。ミミこれがいいんじゃないか?」

「はい。とってもかわいいです。ミミにピッタリです。」

「可愛いと言うか、メイド専用の服だからな。」

「おーメイドの正装ですか。旦那さまーミミに買って下さいー。」

「俺とミミの会話を聞いて若干ポカンとしていたけど、そこは流石にプロ、

「お客様、こちらの可愛いメイドに似合うのは、こちらかと思います。如何でしょうか。」

おー、白いエプロン付きの正にメイド仕様の一品だ。

「こちらは、試作品ですが、少し手直しすればすぐにお持ち帰り出来ますが。」

目がキランと光った感じもするけど、

「じゃあ、サイズ直しとかお願いします。えっと、作業とか見させて頂いてよろしいですか?知りたがりなものでして、どのように服が出来るのか興味がありますので。」

「狭い場所ですが、どうぞこちらに。」

ミミの採寸を手早くやって、作業場に案内された。

「彩達は買いたい物とか選んでいてね。あれとか彩に似合いそう。」

そう言って促したのはベビードールみたいな薄手の寝巻だ。彩も気になってたみたい。俺が作業を見ている間にいろいろ選んで貰おう。

店長の腕前は大したものだった。流石、裁縫LV4だけのことはある。ミシンで縫ってるのかと思うぐらい手早く縫いあげて行く。エプロンに前ポケットを縫いつけているんだけど、このエプロンの素材が変わっていた。イルタランチュアの糸と言うらしい。

「そのエプロンの素材変わってますね。」

「お客様よくおわかりですね。こちらはA級素材のイルタランチュアの糸で織った白布です。この素材ですと滅多なことでは汚れがつきません。エプロンの本来の機能からすればマイナスなんですが、お客様ならきっとこの価値が解って下さると思っていました。」

なるほど、さっきこれを見せた時に俺がこのエプロンの意味に気付いたと思ったのか。

「イルタランチュアの糸を布にするのには手間がかかるんですか?」

「いえ、糸があれば普通の機織りで加工できます。うちでは自前で生地を作っております。」

「凄い技能ですね。これだけの腕があればもっと大きなお店を構えられるでしょうに。」

「いえいえ。私の場合、自分の趣味で作っている物が多いですから、理解して下さるお客様が少ないんですよ。でも自分の好きな物を自由に作れる今の暮らしが一番気に入っています。」

「いろいろ勉強になりました。じゃあ、店の方に戻ってますね。」

そう言って作業場を後にした。と言うのもその時俺が見たものを店の他の商品でも確かめたかったからだ。先ほどのエプロンに空欄がついていたのだ。つまりあれって付加魔法を付けられる素材ってことだよね。もしかしたらここにある商品にも同じように空欄がついている物があるかもしれない。

「彩、アリス何かいいものあった?」

「拓哉、この店の商品、すっごく肌触りとかいいよ。縫製とかもかなりいいし。」

「お兄ちゃん、これ似合う?」

アリスは赤いベビードールを身体に当てて俺に聞いてきた。

「ああ、いいんじゃない。アリスの銀髪がよく映えるよ。」

そう言いながら、彩が選んだ商品を確認しながら同じデザインを全部チェックした。下着やスリップ、キャミソール、ベビードールなどにも空欄付きのものがあった。あとワンピースや帽子にも空欄があるものが混ざっている。素材がイルタランチュアの糸だけでなく、グレゴリーウルフの皮とか、聞いたこともない素材が使われている。
俺は小声で、

「彩、この店の商品には防具みたいに魔法付与できる可能性のある物がいくつかあるんだ。俺が選び出すから、それを彩が選んだようにして買ってくれ。」

彩はそれで全てを察してくれたようだ。気に入ったデザインは一旦諦めて、俺が選んでいく商品を手にしていく。ワンピースはそのままアリスが着ても似合いそうだ。ベレー帽子みたいな頭にちょこんと乗せるタイプの帽子はそのままミミに被せてもメイド服を着ても違和感なさそう。キャスケットみたいな緋色の帽子はアリスの髪に似合うと思う。彩はボーラーっぽい帽子を気に入ったようだ。
予想以上にいろいろ買い込んで、会計をして貰ったら金貨10枚とちょっとかかってしまった。店長はホクホク顔だ。また買いに来ますって言ったら最敬礼で送り出された。

「お兄ちゃん、こんなに一杯買ってよかったの?」

「問題ないよ。って言うかこれだけしか買えなかったのがちょっと残念。」

「拓哉、本当に出来るかなぁ?」

「問題ないと思うよ。何を付加するかは後で決めよう。」

そんな会話をしながら馬車をゆっくり進ませていると、バッグの専門店が目に入った。しかもそのバックの中に、空欄付きの商品があったのだ。

「彩、あそこのバッグやの商品も魔法付加出来るかもしれない。」

そう言って、彩達を連れて店の中に入った。店の主人はドワーフ族の女性だった、見た目は幼く見えるけど年は60を越えてた。

「いらっしゃい。今日はどのようなものをお探しですか?」

「はい、迷宮に入るのでバッグとかリュックなどを見てみようかと。」

この女主人、スキルに「彫金」と練金スキルを持っている。

「金具とかが凝ってますね。これは御主人がなさっているんですか?」

「そうだよ。元々はパーティーのマークを入れたり、持ち主の名前を入れたりしてたんだけどね。いろんなデザインを彫ってくれって注文が多くてね。人気のある彫金を先に入れてるのさ。自分のデザインを入れたいならサービスで入れてやるよ。」

俺は、大きなカバンと彩達が使えそうなウエストポーチタイプの小さなバッグとポシェットタイプのバッグから、空欄がついている4つのバッグを選び出した。他にはなさそうだ。
彩達にこの中から気に入った物を選ばせて、それぞれのバッグに名前を彫金して貰った。

「すみません、彫金とか見たことがなくて見せて貰っていいですか?」

「別に構わないですが、面白いものではないですよ。」

そう言って、店の奥の作業場に連れて行って貰って彫金の様子を見せて貰った。鑿みたいなやつでトントントンと金づちみたいなもので叩くと、あっという間に綺麗な筆体で名前が出来て、かばんについていた彫金と入れ替わった。
自分専用のかばんを貰ってアリスとミミは大満足みたいだ。このバッグを買った真の意味を理解するのは今夜にしよう。街中でやったら収集つかなくなりそう。

その後、寝具や魔道具を買い揃えて、地図を頼りに賃貸した家に辿りついたのはもう夕方に近かった。お昼は途中でいろいろ食べたからミミからは不満は出ていない。今もリンゴ飴みたいなものを途中で見つけて買ってあげたのでおやつ時間もクリアーだ。
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