92 / 107
第六章 魔物の森の街建設編
竜人族の移住
しおりを挟む
翌日、俺はアリアの街に行ってまずアンに会うことにした。まず代官公邸に行くと、アン一家は全員王都に行って不在とのことだった。いつ戻るかは不明だと言う。
少し不安。まあ、大きな人的損害を出しての停戦だから、浮かれてはいないだろうけど、アンパパは停戦に向けて大きな功績があったはずなので、多少はお祝いムードがあるのかと思ったけど。もしかして、出世したとか?
考えても仕方ないので、そのまま、王都のアンの私邸に飛んだ。
「これは、リュウ様、ご無沙汰しております。」
「急に訪ねてきて申し訳ない。ミトラス殿は御在宅だろうか?」
「はい、在宅しております。呼んで参りますので、こちらでお待ち下さい。」
そう言って、セバスがいつもの応接間に案内してくれた。
どうも、活気がない。違和感バリバリだなぁ。
しばらくすると、アンパパ一家が全員応接間にやってきた。
アンパパは俺の姿を見ると、抱きつかんばかりに寄ってきて握手をしながら、
「リュウ殿。よく来て下さいました。この度の戦では私の命ばかりか、王国を救って頂きました。心からお礼申し上げます。」
アンママもアンも、涙を流さんばかりに頭を何度も下げている。
「えっと、俺のことはアン達には、話したんですか?」
俺は小声でアンパパに聞いてみた。
「申し訳ない、リュウ殿。妻とアンだけには本当のことを話している。とは言っても、私自身、本当はリュウ殿が何をなされたのかわかっておらぬ。他の者に話しても夢物語だと笑われるだけでしょう。勿論、2人とここにいるセバス以外には、国王にも話をしていない。」
「わかりました。取り敢えず、ミトラス殿がご無事でよかったです。それで、なぜ、この時期に私邸におられるのですか?」
「いや、それはですな・・・」
少し言い淀むアンパパの代わりに、アンが話し始めた。
「リュウ様、この度は父の命を助けて頂きありがとうございました。また停戦協定を結べたのもリュウ様のご活躍があってのことだとお聞きしています。この度の無意味な戦争を数日で停戦に導いて頂き、本当にありがとうございました。
この度の戦争は、貴族派が主導して戦争を起こしました。父を初め国王派の忠臣達は最初から戦争には反対しておりました。戦争が始まり父も参戦せざる得ない状況になり参謀として参戦しました。」
「アン、もう良い。その後は自分の口からリュウ殿にお話ししよう。」
そう言って、アンパパが語りだした。
「全ては私の力の無さが原因ですが、この度の初戦では貴族派の二世たちに手柄を立てさせるための無謀な作戦。いや作戦とも言えない力押しで、開戦してしまいました。初戦で主だった士官が多く討ち取られ、さらに功を焦った第二陣に控えていた軍の第二戦。最後は帝国の勇者の急襲により将軍をはじめ力のある将兵が数多く討ち取られてしまいました。本来は、初戦での大敗の時点で時間を置き軍備を建て直し作戦を変更すべきでした。
私は、自分の配下の者に停戦に持ち込めなくても最低でも一週間は時間を稼ぐから、その間に王宮の参謀部に連絡を取り、遠征軍の軍の立て直しと作戦の建て直しを至急やって貰うよう進言するようにと指示しておきました。
帝国軍の停戦協定の会議の場に馬を進めている時の私は、二度と生きて王国には戻れないだろうと思っていました。突然リュウ殿の声が聞こえた時には本当にびっくりしましたぞ。周りを見ても姿が見えませんでしたからな。
ともかくリュウ殿の助言で停戦は、王国にとっても十分に納得のいく形で結ぶことが出来ました。しかしながら王国は大きな犠牲を払っておりました。誰かが責任を取らねばなりません。停戦の際に私は遠征軍の全権を委任されていましたからな。その責任も負わされてしまいました。
国王と王府内務長の取りなしで、戦争で大きな犠牲を払った責任と有利な条件で停戦を結んだ功績で、私が何らかの責任を取らされることはなくなりました。」
「父上、責任を取らされなかったとは言えないでしょう。実際、アリア市の代官職を事実上罷免されて、次の職に就くことは叶わなくなったではないですか。」
「アンよ、そう言うな。あの意味のない戦いで十万近い王国の兵の命が失われたのだ。私も軍を率いていた者としての責任はある。しかもあまりにも早期に戦争が終わってしまって、物資が余ってしまって市場の物価が低下して、商人にも恨まれておる。私は生きてこうしてお前達と暮らせるだけでありがたいと思っている。」
「事情は解りました。それで、ミトラス殿は、この後どうされる予定ですか?」
「地方に行けば、いずれかの貴族の領地で仕官可能かもしれません。今は、風当たりが強くなるので、どなたにもお願いしておりませんが。」
「父上。そのようなこと出来ぬことなどわかっておいででしょう。王府での仕官が出来ねば、父上に仕官できる場所などありません国王陛下にお願いすべきです。」
「それはできんと何度も話しただろう。最早、王国は貴族派によって新しい体制に移ることだろう。時代の流れだ。貴族の領地での仕官は第一には考えておらん。王国を出て自由都市連邦のいずれかの都市国家へ行こうと考えておる。皆には苦労をかけることになるが。」
「ミトラス殿、状況は理解できました。もし王国を出る決心をされたなら私にいくつか伝手がありますよ。王制を廃止いたエルフ共和国とか、他にも新しく建設されている都市とか。遠慮なく言って下さいね。あーこちらのメイドの皆さんや直接の配下の方々も一緒に移れると思いますよ、多分。」
「リュウ殿がそのようにおっしゃるなら、いいお話なのでしょう。もう一度、妻たちとも話し合って御返事させて頂きたいと思います。」
その後いろいろと話をして、お土産にソーセージをはじめいろいろ渡してアンの家を出た。そのまま、南門の商店街区に飛んだ。
戦時物資として確保されていた物品が溢れるように売りに出されていた。特に生鮮食料品や肉類は投げ売り状態だった。俺は、投げ売りされている食料品を片っ端から購入していった。確認するのも嫌になるぐらい膨大な量の食材が貯まった。中古服なども投げ売り状態だ。こっちもかなりの数を購入した。
俺はそのまま帝都に飛んで、同じように投げ売り状態だった食料品などを大量に購入した。化身魔法で姿を変えて購入してたんで、俺の身元がばれることはないだろう。
その後、雷精霊神殿に飛んで、教皇に会いに行った。
「準備は進んでる?」
「はい、御使い様。御使い様に従って移住を希望している者は、すでに準備を終えております。各家庭に一人は、アイテムボックスを所持しておりますので、必要なものは各自家から持ち出しております。」
「全部で何人ぐらいになったの?」
「はい、一部、帝国に残ることを選択した者たちもいますので、全部で1万人ほどになります。よろしいでしょうか?」
「問題ないよ。取り敢えず、場所の整地は終わってるし、俺の街までの水路と簡単な陸路は作っているよ。一旦、魔力貯まりの近くに全員移住させようと思うけど。」
「ありがとうございます。神殿の建設は、徐々に作り上げようと思っております。神殿はなくとも、我らの雷精霊様への祈りは欠かしません。」
その後、教皇の指示で、神殿前の大広場に、移住希望の竜人族が集まってきた。皆が片膝をつけて、頭を下げてる。
「この神殿はもう使わない?あっちの宿舎とか建物なんかも使わないかな?」
「えっ、はい。この場所に残る者はいない予定です。建物はそのまま残していく予定でしたが、拙かったでしょうか?」
「いや、使わないなら、俺が貰っとくね。」
そう言って、神殿をはじめ、主だった建物を全部アイテムボックスに収納した。移住先の宿舎もすぐに必要だろうしね。
「よし、じゃあ、順番にこのゲートを潜って移動してくれ。ただし、このゲートには結界をかけているから、俺に忠誠を尽くしてない奴は潜れないようになっている。もし心にやましい気持ちや俺に対して不信感を持っているなら、潜らないように。」
俺は、全員にそう宣言して、最初にゲートを潜った。
潜った後、教皇をはじめ主だった人が揃ったところで、一番魔力貯まりが強い場所の上に、雷精霊神殿をアイテムボックスから取り出して設置した。すると、神殿自体が淡い黄色い光に包まれた。教皇をはじめ神殿の巫女や司祭達は、呆けたような様に神殿を見つめている。後から出てくるやつらも、神殿の様子を見てその場にひれ伏す者や、茫然としている者など様々だ。その間に、俺はどんどんアイテムボックスに入れてきた神殿の他の建物を設置して、下水道とつないでそのまま生活できるようにしていった。
小一時間ほどで、移住移転は完了した。
俺は念のためゲートを戻ってみた。そこには、50人ほどの竜人族が残っていた。
「御使い様、我々はどうしてゲートを潜れないのでしょうか?」
「それは、俺に聞くより自分達の心に聞くしかないよ。少なくともお前達が移住を希望しているのは、教皇に忠誠を尽くしてのことじゃないんだろう?帝国に残ることになった奴らの連絡員か何かか?」
「とんでもありません。我々は、そこの竜人族を裏切って、人族と婚姻をしたような裏切り者とは違います。竜人族の繁栄を心から願っております。」
「うーん、勘違いしているみたいだけど、俺は別に竜人族の繁栄を願っている訳でも、竜人族だけを守っている訳じゃないぞ。俺にとっては種族がどうとか全く興味がないし。お前達がそのような考えなら、俺の場所に来ることはできない。取り敢えず、この場所は、しばらくこのままにしておくから、今後の身の振り方をよく考えなおすことだ。」
そう言って、司祭服を着た、少し偉そうな奴らの間を通って、平服して頭を下げている一人の竜人族の女性の前に進んだ。
「えっと、あなたの名前は?」
「わ、私は、カミロン・シュペルツと言います。」
「あなたが、人族と結婚した人?」
「はい、申し訳ございません。人族である夫を愛して結婚していました。」
「御主人は?子供はいないの?」
「主人は、先の戦争で死亡しました。子供は娘が一人おりましたが、主人が出兵に当たり作った借金を返済するために娘を奴隷商に売ってしまいました。こちらに来て親切な方にお金を貸して頂いてすぐに買い戻しに行ったのですが、すでに娘は売られた後でした。娘は、人族の姿をしておりますので竜人族として追われることもないでしょうが、私は家にあった全ての物を売却してお金をお借りした方にお金を返すためにここへ来ておりました。この後は、何としても、娘を探し出そうと思っております。」
「娘さんの名前は、カミラ?」
「えっ、御使い様、どうして娘の名前をご存知なのでしょう?」
「カミラは、今俺と一緒にいるよ。カミロンも会いに来る?」
「おー。精霊様の御加護ありがとうございます。」
そのまま、泣き崩れてしまった。
俺は、周囲で俺達の話を聞いて若干侮蔑の表情を浮かべている奴らを無視して、カミロンを連れてゲートを潜り、そのままゲートを閉じた。念のため、さっきの奴らの所には俺の意識を移している鳥ゴーレムを放っている。こいつらの行動如何によっては、処分しなくてはならないしね。
俺がゲートを閉じて再び戻ってみると、教皇以下移住者全員が、片膝をついて待っていた。一緒にいたカミロンについては何も言わず、カミロンがお金を借りていたという人物を呼んだ、ラルリアさんだった。相変わらず秘書みたいな美人さんだ。お金を返した後カミロンは俺が連れて行くからって話をして森の家に転移した。
少し不安。まあ、大きな人的損害を出しての停戦だから、浮かれてはいないだろうけど、アンパパは停戦に向けて大きな功績があったはずなので、多少はお祝いムードがあるのかと思ったけど。もしかして、出世したとか?
考えても仕方ないので、そのまま、王都のアンの私邸に飛んだ。
「これは、リュウ様、ご無沙汰しております。」
「急に訪ねてきて申し訳ない。ミトラス殿は御在宅だろうか?」
「はい、在宅しております。呼んで参りますので、こちらでお待ち下さい。」
そう言って、セバスがいつもの応接間に案内してくれた。
どうも、活気がない。違和感バリバリだなぁ。
しばらくすると、アンパパ一家が全員応接間にやってきた。
アンパパは俺の姿を見ると、抱きつかんばかりに寄ってきて握手をしながら、
「リュウ殿。よく来て下さいました。この度の戦では私の命ばかりか、王国を救って頂きました。心からお礼申し上げます。」
アンママもアンも、涙を流さんばかりに頭を何度も下げている。
「えっと、俺のことはアン達には、話したんですか?」
俺は小声でアンパパに聞いてみた。
「申し訳ない、リュウ殿。妻とアンだけには本当のことを話している。とは言っても、私自身、本当はリュウ殿が何をなされたのかわかっておらぬ。他の者に話しても夢物語だと笑われるだけでしょう。勿論、2人とここにいるセバス以外には、国王にも話をしていない。」
「わかりました。取り敢えず、ミトラス殿がご無事でよかったです。それで、なぜ、この時期に私邸におられるのですか?」
「いや、それはですな・・・」
少し言い淀むアンパパの代わりに、アンが話し始めた。
「リュウ様、この度は父の命を助けて頂きありがとうございました。また停戦協定を結べたのもリュウ様のご活躍があってのことだとお聞きしています。この度の無意味な戦争を数日で停戦に導いて頂き、本当にありがとうございました。
この度の戦争は、貴族派が主導して戦争を起こしました。父を初め国王派の忠臣達は最初から戦争には反対しておりました。戦争が始まり父も参戦せざる得ない状況になり参謀として参戦しました。」
「アン、もう良い。その後は自分の口からリュウ殿にお話ししよう。」
そう言って、アンパパが語りだした。
「全ては私の力の無さが原因ですが、この度の初戦では貴族派の二世たちに手柄を立てさせるための無謀な作戦。いや作戦とも言えない力押しで、開戦してしまいました。初戦で主だった士官が多く討ち取られ、さらに功を焦った第二陣に控えていた軍の第二戦。最後は帝国の勇者の急襲により将軍をはじめ力のある将兵が数多く討ち取られてしまいました。本来は、初戦での大敗の時点で時間を置き軍備を建て直し作戦を変更すべきでした。
私は、自分の配下の者に停戦に持ち込めなくても最低でも一週間は時間を稼ぐから、その間に王宮の参謀部に連絡を取り、遠征軍の軍の立て直しと作戦の建て直しを至急やって貰うよう進言するようにと指示しておきました。
帝国軍の停戦協定の会議の場に馬を進めている時の私は、二度と生きて王国には戻れないだろうと思っていました。突然リュウ殿の声が聞こえた時には本当にびっくりしましたぞ。周りを見ても姿が見えませんでしたからな。
ともかくリュウ殿の助言で停戦は、王国にとっても十分に納得のいく形で結ぶことが出来ました。しかしながら王国は大きな犠牲を払っておりました。誰かが責任を取らねばなりません。停戦の際に私は遠征軍の全権を委任されていましたからな。その責任も負わされてしまいました。
国王と王府内務長の取りなしで、戦争で大きな犠牲を払った責任と有利な条件で停戦を結んだ功績で、私が何らかの責任を取らされることはなくなりました。」
「父上、責任を取らされなかったとは言えないでしょう。実際、アリア市の代官職を事実上罷免されて、次の職に就くことは叶わなくなったではないですか。」
「アンよ、そう言うな。あの意味のない戦いで十万近い王国の兵の命が失われたのだ。私も軍を率いていた者としての責任はある。しかもあまりにも早期に戦争が終わってしまって、物資が余ってしまって市場の物価が低下して、商人にも恨まれておる。私は生きてこうしてお前達と暮らせるだけでありがたいと思っている。」
「事情は解りました。それで、ミトラス殿は、この後どうされる予定ですか?」
「地方に行けば、いずれかの貴族の領地で仕官可能かもしれません。今は、風当たりが強くなるので、どなたにもお願いしておりませんが。」
「父上。そのようなこと出来ぬことなどわかっておいででしょう。王府での仕官が出来ねば、父上に仕官できる場所などありません国王陛下にお願いすべきです。」
「それはできんと何度も話しただろう。最早、王国は貴族派によって新しい体制に移ることだろう。時代の流れだ。貴族の領地での仕官は第一には考えておらん。王国を出て自由都市連邦のいずれかの都市国家へ行こうと考えておる。皆には苦労をかけることになるが。」
「ミトラス殿、状況は理解できました。もし王国を出る決心をされたなら私にいくつか伝手がありますよ。王制を廃止いたエルフ共和国とか、他にも新しく建設されている都市とか。遠慮なく言って下さいね。あーこちらのメイドの皆さんや直接の配下の方々も一緒に移れると思いますよ、多分。」
「リュウ殿がそのようにおっしゃるなら、いいお話なのでしょう。もう一度、妻たちとも話し合って御返事させて頂きたいと思います。」
その後いろいろと話をして、お土産にソーセージをはじめいろいろ渡してアンの家を出た。そのまま、南門の商店街区に飛んだ。
戦時物資として確保されていた物品が溢れるように売りに出されていた。特に生鮮食料品や肉類は投げ売り状態だった。俺は、投げ売りされている食料品を片っ端から購入していった。確認するのも嫌になるぐらい膨大な量の食材が貯まった。中古服なども投げ売り状態だ。こっちもかなりの数を購入した。
俺はそのまま帝都に飛んで、同じように投げ売り状態だった食料品などを大量に購入した。化身魔法で姿を変えて購入してたんで、俺の身元がばれることはないだろう。
その後、雷精霊神殿に飛んで、教皇に会いに行った。
「準備は進んでる?」
「はい、御使い様。御使い様に従って移住を希望している者は、すでに準備を終えております。各家庭に一人は、アイテムボックスを所持しておりますので、必要なものは各自家から持ち出しております。」
「全部で何人ぐらいになったの?」
「はい、一部、帝国に残ることを選択した者たちもいますので、全部で1万人ほどになります。よろしいでしょうか?」
「問題ないよ。取り敢えず、場所の整地は終わってるし、俺の街までの水路と簡単な陸路は作っているよ。一旦、魔力貯まりの近くに全員移住させようと思うけど。」
「ありがとうございます。神殿の建設は、徐々に作り上げようと思っております。神殿はなくとも、我らの雷精霊様への祈りは欠かしません。」
その後、教皇の指示で、神殿前の大広場に、移住希望の竜人族が集まってきた。皆が片膝をつけて、頭を下げてる。
「この神殿はもう使わない?あっちの宿舎とか建物なんかも使わないかな?」
「えっ、はい。この場所に残る者はいない予定です。建物はそのまま残していく予定でしたが、拙かったでしょうか?」
「いや、使わないなら、俺が貰っとくね。」
そう言って、神殿をはじめ、主だった建物を全部アイテムボックスに収納した。移住先の宿舎もすぐに必要だろうしね。
「よし、じゃあ、順番にこのゲートを潜って移動してくれ。ただし、このゲートには結界をかけているから、俺に忠誠を尽くしてない奴は潜れないようになっている。もし心にやましい気持ちや俺に対して不信感を持っているなら、潜らないように。」
俺は、全員にそう宣言して、最初にゲートを潜った。
潜った後、教皇をはじめ主だった人が揃ったところで、一番魔力貯まりが強い場所の上に、雷精霊神殿をアイテムボックスから取り出して設置した。すると、神殿自体が淡い黄色い光に包まれた。教皇をはじめ神殿の巫女や司祭達は、呆けたような様に神殿を見つめている。後から出てくるやつらも、神殿の様子を見てその場にひれ伏す者や、茫然としている者など様々だ。その間に、俺はどんどんアイテムボックスに入れてきた神殿の他の建物を設置して、下水道とつないでそのまま生活できるようにしていった。
小一時間ほどで、移住移転は完了した。
俺は念のためゲートを戻ってみた。そこには、50人ほどの竜人族が残っていた。
「御使い様、我々はどうしてゲートを潜れないのでしょうか?」
「それは、俺に聞くより自分達の心に聞くしかないよ。少なくともお前達が移住を希望しているのは、教皇に忠誠を尽くしてのことじゃないんだろう?帝国に残ることになった奴らの連絡員か何かか?」
「とんでもありません。我々は、そこの竜人族を裏切って、人族と婚姻をしたような裏切り者とは違います。竜人族の繁栄を心から願っております。」
「うーん、勘違いしているみたいだけど、俺は別に竜人族の繁栄を願っている訳でも、竜人族だけを守っている訳じゃないぞ。俺にとっては種族がどうとか全く興味がないし。お前達がそのような考えなら、俺の場所に来ることはできない。取り敢えず、この場所は、しばらくこのままにしておくから、今後の身の振り方をよく考えなおすことだ。」
そう言って、司祭服を着た、少し偉そうな奴らの間を通って、平服して頭を下げている一人の竜人族の女性の前に進んだ。
「えっと、あなたの名前は?」
「わ、私は、カミロン・シュペルツと言います。」
「あなたが、人族と結婚した人?」
「はい、申し訳ございません。人族である夫を愛して結婚していました。」
「御主人は?子供はいないの?」
「主人は、先の戦争で死亡しました。子供は娘が一人おりましたが、主人が出兵に当たり作った借金を返済するために娘を奴隷商に売ってしまいました。こちらに来て親切な方にお金を貸して頂いてすぐに買い戻しに行ったのですが、すでに娘は売られた後でした。娘は、人族の姿をしておりますので竜人族として追われることもないでしょうが、私は家にあった全ての物を売却してお金をお借りした方にお金を返すためにここへ来ておりました。この後は、何としても、娘を探し出そうと思っております。」
「娘さんの名前は、カミラ?」
「えっ、御使い様、どうして娘の名前をご存知なのでしょう?」
「カミラは、今俺と一緒にいるよ。カミロンも会いに来る?」
「おー。精霊様の御加護ありがとうございます。」
そのまま、泣き崩れてしまった。
俺は、周囲で俺達の話を聞いて若干侮蔑の表情を浮かべている奴らを無視して、カミロンを連れてゲートを潜り、そのままゲートを閉じた。念のため、さっきの奴らの所には俺の意識を移している鳥ゴーレムを放っている。こいつらの行動如何によっては、処分しなくてはならないしね。
俺がゲートを閉じて再び戻ってみると、教皇以下移住者全員が、片膝をついて待っていた。一緒にいたカミロンについては何も言わず、カミロンがお金を借りていたという人物を呼んだ、ラルリアさんだった。相変わらず秘書みたいな美人さんだ。お金を返した後カミロンは俺が連れて行くからって話をして森の家に転移した。
1
お気に入りに追加
2,295
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
俺の旅の連れは美人奴隷~俺だって異世界に来たのならハーレムを作ってみたい~
藤
ファンタジー
「やめてください」「積極的に行こうよ」「ご主人様ってそういう人だったんだ」様々な女の子とイチャイチャしながら異世界を旅して人生を楽しんでいこう。
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる