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第三章 王都編
王都へ 誘拐未遂
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いつものように翌朝すっきりしてアリアの街に戻り馬車に乗ろうとした時に、俺達が乗っている馬車の御者の男と馬車を護衛していた冒険者が俺の所にやってきた。
昨夜魔物の森から魔物が出てきて、その緊急討伐依頼が冒険者ギルドから出たそうだ。魔物のレベルが高く、この街にいる冒険者は勿論、冒険者以外でも討伐出来る腕を持つ者は出来るだけ討伐に向かって貰うことになったようだ。
俺達4人が冒険者ではないことを知っていたそうで、それでも腕に覚えがあるなら討伐に参加しないかという誘い半分、御者の方は急な話で冒険者以外の傭兵を探すこともできず、王都へ向かうのは魔物討伐が終わって、護衛の当てが出来るまで延期しないといけないという話が半分であった。
「確かに俺達は迷宮探検者だが、冒険者ではないしなるつもりはない。それに冒険者ギルドが募集している依頼に応えるつもりもない。」
冒険者は残念そうにしていたけど、俺を説得するのは無理と思ったのだろう、御者に断ってその場から立ち去った。冒険者ギルドにでも行くんだろう。
御者の方は、
「迷宮探検者の方々でしたか。かなり腕が立つだろうと思っていましたが。そこで改めてお願いしたいのですが、王都まで護衛をして頂く訳にはいかないでしょうか?勿論、既定の護衛料をお支払いします。」
「俺達は、他の人を守って戦う様な訓練もしてないし経験もない。そっちが雇っているみたいに俺達の内誰かだけ仕事をするつもりもないし、のんびり王都に向かうためにこの馬車を利用しているに過ぎない。この馬車でいけないなら他の馬車を探すし、他の馬車がなければここで降りて歩いて行くだけだ。」
「それでは護衛と言う仕事ではなく、もし襲われるようなことがあったら戦って頂くと言うのは如何でしょうか?次の街での夜間護衛や、移動中の護衛任務はなくて構いません。料金は王都までの残りの費用を半額にします。もし敵襲があった場合には、通常の護衛費用を別途お支払いしますし、その時得られる品や盗賊を捕らえた場合の盗賊にかけられている懸賞金、盗賊の奴隷売却利益を全てお支払いするということでは如何でしょうか?」
ここから王都まで残り2日。これまで盗賊どころか魔物も出てないし問題ないだろうって思って、マリア達に確認したら問題ないってことで引き受けることにした。
他にも出発を見合わせている馬車が何組かあったが、俺達の馬車が出ると言うことが分かって2組が同乗してきて、結局満席状態で出発することにした。ただ御者は通常の護衛は付かないので今夜の不寝番はないことと、俺達が護衛ではなく何かあった時に協力するだけであることを納得させた上で、乗客に乗車させていた。
まあ、こんな王都近くで何かあるとは思っている人は少なく、気にしてる人はいないみたい。俺が美少女3人をつれているから、俺だけが迷宮探検者だと思ったのかもしれない。全員、装備を外して普段服着てるし。
出発がかなり遅れたけど、取り敢えず馬車が出発した。俺達の前に馬車が一台出て行ったんであれは何だって聞いたら、代官の馬車らしい。まあ俺達には関係ないね。
途中の小休止も済んで、野宿予定の集落に向けて2時間ぐらい進んだ時に、領域覚に異変を感知した。すぐに他の3人も感知して目視できる位置まで進んだところ、先行していた馬車が襲撃されていた。ここで見逃しても俺達も襲撃されるのは確実だろうし、すぐに馬車を止めさせて俺達4人は飛びだした。
4人とも走りながら武器だけ装備した。相手は子供を一人、人質に取ったみたいでそいつだけ人質を抱えて逃げ出し、他の奴らはこっちに向かってきた。状況から考えたら盗賊の類だけど、一人だけ人質を抱えて逃げるのは普通の盗賊ではない気もする。
瞬殺することは可能だけど、出来るだけ無傷で無効化するように3人に指示し、俺は相手の全員のスキルだけ吸い出した。能力値を吸っちゃうと死んじゃうんだよね、ちょっとしたダメージで。人質を抱えて逃げて行ったやつは仕方ないから、俺が作ったウインドスワロー(風燕)という風精霊魔法で足の腱を切って逃げれないようにした。この魔法は、自動追尾装置の付いたウインドカッターみたいな魔法だ。
ともかく俺は前に立ちはだかってっていた男たちを跳躍で躱し、逃げて行った男の元に向かった。受け身もせず前に倒れて尚俺を睨みつけてくる胆力は立派だけど、俺の敵じゃないし腹に一発蹴りをいれると、ウゲって呻いて気を失った。武器を収納して、気を失っている賊を後ろ手に両手を縛りあげてそのまま転がした。
人質にとられたのは女の子のようで、賊が倒れた時に放り投げられたのか気を失っていた。擦り傷以外は外傷はないみたいだけど念のためヒールをかけて、お姫様だっこしながら馬車の方に戻った。残りの賊はすでに無効化されていて全員転がされていた。俺の周りに3人が寄って来たので、抱いている女の子をマリアに渡して馬車を確認した。馬車の周囲は悲惨だった。御者は弓で胸を2ヶ所射られて即死していた。馬車の周りには、傭兵みたいな男が2人倒れていた。一人は弓で射られて死んでいて、もう一人は何ヶ所も切られて絶命していた。馬車の中を覗くと、中にはメイドが胸を刺されて絶命していた。かわいそうだけど、死んでいた者たちの全ての能力値とスキルをもらった。
街道の後ろの方に待っている俺達が乗って来た馬車の御者に合図をして、こっちまで来てもらった。さて、どうするか。厄介事の匂いがするけど関わらない訳にはいかないかなぁ。
馬車の御者は、遠目ではっきりとは見なかったようだけど、少女3人があっと言う間に賊の男たちを無効化するのをみてびっくりしたけど、戦いは止んでいるようなので進んできたそうだ。まあ自分達だけ離れた場所にいるより、俺達の近くの方が安全だと思ったのかもしれないけどね。
御者は状況を確認して、マリアの腕に抱かれているのが代官の娘であることをみてびっくりしたようだ。朝アリアの街を出た時にこの馬車をみていたけど、代官が襲われたのだと考えていたようだ。
いずれにせよ、死体が4体に捕らえた賊が6人だとこのままでは運びようがないので、一旦次の集落まで行って馬車を都合してくるか、もしくは一度アリアの街に引き返し、街の兵を連れて戻ってくるかしかないということになった。ただアリアの街に連絡に走る場合、着く前に夜になるので途中で野宿する必要があり、戻ってくるのは早くて明日の午後になると言うことだ。夜は馬車を走らせられないらしい。
街道を先に行くなりアリアの街に連絡に行くにしろ、御者が自分だけでは行くことはできないので、俺に判断して欲しいってことになった。
俺はふと思い立って俺が領域覚を広げてみると、500メートルぐらい先に反応があった。多分賊の逃走用の馬と思われるので、それを取ってくることにした。
「おそらくこの近くに賊の逃走用の馬があるはずだからそれを探してくる。」
と言い残して、皆にはこの場で待つように言った。マリア達にも同じことを伝えて、この場の警戒と警護を任せて、反応のある場所に俺だけで向かった。
馬は4頭、木の幹に繋がれていた。見張りがいないのは、襲撃したのはあれで全員だったということだろう。賊の身なりやスキル構成からいっても訳ありな気もするけど、関わりたくないから詮索しないようにしよう。
取り敢えず馬のたずなをまとめて、黒い馬に跨って皆が待っているところに向かった。
さっき死んだ御者や賊から、馬術のスキルを受け取っていたので問題なく乗れた。後で3人にも付加してやろう。
襲撃場所に戻ると、人質になっていた女の子は目を覚ましていた。
名前 アン・フォン・ミトラス
種族 人族 LV.1(3/100)
年齢 10
性別 女
職業 ミトラスの娘(第一)
クラス H
HP 30/30
MP 30/30
筋力値 20
体力値 30
魔力値 30
精神値 100
敏捷値 30
幸運値 80
スキル 算術(LV.3(8/30))、アルスラン語(LV.3(11/30))
身内の悲惨な状況をみて、何とか平静を保てているのは、精神力100の影響かな。10歳でこの胆力は凄いと思う。それよりも、スキルLVが半端ないな。10歳でLV3って天才児なんじゃないか。俺が馬を連れて近寄ってくると、マリアに促されて、アンは俺の前にやって来た。俺は馬を降りて、アンの前に降り立つと、
「この度は、私の危機を御救い頂きありがとうございます。私は、アリア市代官ミトラスの長女、アンと言います。心からお礼申し上げます。」
「俺の名前は、リュウ・ハマダという。迷宮探検者だけど、今は自由人だな。俺達が駆け付けた時には護衛も全て衝撃された後で、連れ去られようとするお前さんを救出するのが精いっぱいだった。襲撃された身内を救えなくて申し訳ない。」
「ありがとうございます。この者たちは、メイドのルナを除き、父の部下の方々でした。ルナは私が小さいころから一緒でしたので・・・」
そう言って、下を向いて肩を震わせた。
話題を切り替えるために、
「それで、アンはどうしたい?アリア市に戻りたいか?」
「いいえ、実は父より王宮行政府に至急の伝言を託されております。今、父は魔物の森の件で対応を急いでおります。私は若輩ではありますが父の仕事の補佐をしておりますので、この度早馬で先行させた情報の補完と父の指示で各種調整の許可を受けるために王都に向かっております。このまま王都に向かいたいと思います。」
「では、亡くなった者の遺骸はどうする?」
唇を噛んで
「仕方ありません。このまま捨ておくしか・・・。責めてこの場で簡単に埋葬させて頂ければ・・・」
苦しそうにそう、口にした。
俺は自分達が乗って来た馬車の御者に
「どちらか一人、馬を三匹曳いてついてこれるか?」
と聞いてみた。長距離の場合、2人で交替で行っているようで、御者台に2人座っていた。片方は若いから、助手みたいなものかもだけど。
「はい、それは可能ですが。」
「じゃあ、こっちの馬3頭に亡骸を落ちないように括りつけて、運ぶことにしよう。盗賊たちは、こっちの馬車に押し込んで、俺が操車して運んで行く。」
そう言って、代官の馬車に賊6人をもう一度昏倒させて荷物のように詰め込んで、俺と、マリアが御者台に座って曳いていき、綾とニーナは、アンと一緒に俺達が座っていた席に座って貰うことにした。
準備が終わって俺が先行する感じで街道を進み、何とか日が暮れる前に野宿予定だった集落に着いた。亡骸はこの集落の共同墓地に埋葬した。また盗賊たちは集落にあった動物運搬用の荷馬車を借りて詰め込んだ。足の腱を全員切ってるから逃げられないけど。
集落に着くまで、最大限に領域覚を広げて警戒したけど、奪還しようとする奴らはいなかったので、おそらく襲撃犯はこの6人で全員なのだと思う。
俺達は前のように野宿するつもりだったけど、アンが是非一緒に泊って欲しいと言ってきたので、一緒の宿に宿泊することになった。アンの従者が宿泊する予定だったので、その部屋が2部屋空いているということだ、勿論無料で。アンはかなり疲れたらしく、申し訳ないけれども夕食は一緒にできないとお詫びを言って先に部屋に入った。10歳の女の子がよく頑張っていると思う。
俺達は折角なので宿で夕食を食べて、宿の部屋に入ってすぐに家に飛んだ。いろいろ疲れた。
湯船に浸かりながら、今日のことあれこれと話した。まず、マリアが俺が馬車の操車が上手いことを褒めて、
「私も馬車の操車を出来たら変わってあげられたのにごめんね。」
とか上目使いに俺に抱きつきながら言うので、
「マリアもやりたいなら教えてあげるよ。多分、明日あの馬車を王都まで運ばないといけないだろうし。」
とか言ったら、綾とニーナも私たちも教えて欲しいって言ってきた。スキルポイント的に余裕があるし、今夜、付加してあげよう。
アンはやっぱり聡明な子みたいだ。綾がこの国のことをいろいろ教えて貰ったみたい。情報ゲットだね。ちなみに、この国には学校と言うのはないそうだ。基本的に家庭教師なり、誰かに師事するなりして、自分の能力を高めるらしい。アンも家庭教師についていろいろ学んでいて、将来は王宮の行政府で働くのが夢だそうだ。
夜は、今日お疲れ様の意味を込めてたっぷりじっくり頂いた。馬術だけでなく、今日手に入ったいろんなスキルポイントを付加したから、それが一番の御褒美だね。
翌日、ちょっと早めに起き朝の御挨拶と日課を行って、朝風呂ですっきりしてから宿の部屋に戻った。ちょっとぐらい使ってないと変だねってことで、それぞれのベッドを使って一人ずつちょっとだけ深い交わりをこなした後朝食に降りた。勿論浄化魔法でクリーン済みね。しばらくするとアンが降りてきた。一緒に朝食を食べながら今日の予定を話し合った。昨夜大体のことを話していたけど、取り敢えず俺達と一緒に王都に向かうことになった。アン一人ではどうしようのないし、選択の余地がなかったんだと思う。
代官の馬車を聖魔法で浄化したら新品みたいに綺麗になったので、アンも嫌な顔をせず乗り込んで綾とニーナも一緒に乗り込んだ。賊の方は昨日鹵獲した馬を使って、賊を入れた荷馬車を運ぶことにした。村から借りた荷馬車は後で返しにくるんだろうきっと。で、俺達が乗っていた席は空いてしまったけど、すでに料金はタダになっているのでどうでもいい。3人は上等な馬車に乗れてご機嫌だ。
昨夜魔物の森から魔物が出てきて、その緊急討伐依頼が冒険者ギルドから出たそうだ。魔物のレベルが高く、この街にいる冒険者は勿論、冒険者以外でも討伐出来る腕を持つ者は出来るだけ討伐に向かって貰うことになったようだ。
俺達4人が冒険者ではないことを知っていたそうで、それでも腕に覚えがあるなら討伐に参加しないかという誘い半分、御者の方は急な話で冒険者以外の傭兵を探すこともできず、王都へ向かうのは魔物討伐が終わって、護衛の当てが出来るまで延期しないといけないという話が半分であった。
「確かに俺達は迷宮探検者だが、冒険者ではないしなるつもりはない。それに冒険者ギルドが募集している依頼に応えるつもりもない。」
冒険者は残念そうにしていたけど、俺を説得するのは無理と思ったのだろう、御者に断ってその場から立ち去った。冒険者ギルドにでも行くんだろう。
御者の方は、
「迷宮探検者の方々でしたか。かなり腕が立つだろうと思っていましたが。そこで改めてお願いしたいのですが、王都まで護衛をして頂く訳にはいかないでしょうか?勿論、既定の護衛料をお支払いします。」
「俺達は、他の人を守って戦う様な訓練もしてないし経験もない。そっちが雇っているみたいに俺達の内誰かだけ仕事をするつもりもないし、のんびり王都に向かうためにこの馬車を利用しているに過ぎない。この馬車でいけないなら他の馬車を探すし、他の馬車がなければここで降りて歩いて行くだけだ。」
「それでは護衛と言う仕事ではなく、もし襲われるようなことがあったら戦って頂くと言うのは如何でしょうか?次の街での夜間護衛や、移動中の護衛任務はなくて構いません。料金は王都までの残りの費用を半額にします。もし敵襲があった場合には、通常の護衛費用を別途お支払いしますし、その時得られる品や盗賊を捕らえた場合の盗賊にかけられている懸賞金、盗賊の奴隷売却利益を全てお支払いするということでは如何でしょうか?」
ここから王都まで残り2日。これまで盗賊どころか魔物も出てないし問題ないだろうって思って、マリア達に確認したら問題ないってことで引き受けることにした。
他にも出発を見合わせている馬車が何組かあったが、俺達の馬車が出ると言うことが分かって2組が同乗してきて、結局満席状態で出発することにした。ただ御者は通常の護衛は付かないので今夜の不寝番はないことと、俺達が護衛ではなく何かあった時に協力するだけであることを納得させた上で、乗客に乗車させていた。
まあ、こんな王都近くで何かあるとは思っている人は少なく、気にしてる人はいないみたい。俺が美少女3人をつれているから、俺だけが迷宮探検者だと思ったのかもしれない。全員、装備を外して普段服着てるし。
出発がかなり遅れたけど、取り敢えず馬車が出発した。俺達の前に馬車が一台出て行ったんであれは何だって聞いたら、代官の馬車らしい。まあ俺達には関係ないね。
途中の小休止も済んで、野宿予定の集落に向けて2時間ぐらい進んだ時に、領域覚に異変を感知した。すぐに他の3人も感知して目視できる位置まで進んだところ、先行していた馬車が襲撃されていた。ここで見逃しても俺達も襲撃されるのは確実だろうし、すぐに馬車を止めさせて俺達4人は飛びだした。
4人とも走りながら武器だけ装備した。相手は子供を一人、人質に取ったみたいでそいつだけ人質を抱えて逃げ出し、他の奴らはこっちに向かってきた。状況から考えたら盗賊の類だけど、一人だけ人質を抱えて逃げるのは普通の盗賊ではない気もする。
瞬殺することは可能だけど、出来るだけ無傷で無効化するように3人に指示し、俺は相手の全員のスキルだけ吸い出した。能力値を吸っちゃうと死んじゃうんだよね、ちょっとしたダメージで。人質を抱えて逃げて行ったやつは仕方ないから、俺が作ったウインドスワロー(風燕)という風精霊魔法で足の腱を切って逃げれないようにした。この魔法は、自動追尾装置の付いたウインドカッターみたいな魔法だ。
ともかく俺は前に立ちはだかってっていた男たちを跳躍で躱し、逃げて行った男の元に向かった。受け身もせず前に倒れて尚俺を睨みつけてくる胆力は立派だけど、俺の敵じゃないし腹に一発蹴りをいれると、ウゲって呻いて気を失った。武器を収納して、気を失っている賊を後ろ手に両手を縛りあげてそのまま転がした。
人質にとられたのは女の子のようで、賊が倒れた時に放り投げられたのか気を失っていた。擦り傷以外は外傷はないみたいだけど念のためヒールをかけて、お姫様だっこしながら馬車の方に戻った。残りの賊はすでに無効化されていて全員転がされていた。俺の周りに3人が寄って来たので、抱いている女の子をマリアに渡して馬車を確認した。馬車の周囲は悲惨だった。御者は弓で胸を2ヶ所射られて即死していた。馬車の周りには、傭兵みたいな男が2人倒れていた。一人は弓で射られて死んでいて、もう一人は何ヶ所も切られて絶命していた。馬車の中を覗くと、中にはメイドが胸を刺されて絶命していた。かわいそうだけど、死んでいた者たちの全ての能力値とスキルをもらった。
街道の後ろの方に待っている俺達が乗って来た馬車の御者に合図をして、こっちまで来てもらった。さて、どうするか。厄介事の匂いがするけど関わらない訳にはいかないかなぁ。
馬車の御者は、遠目ではっきりとは見なかったようだけど、少女3人があっと言う間に賊の男たちを無効化するのをみてびっくりしたけど、戦いは止んでいるようなので進んできたそうだ。まあ自分達だけ離れた場所にいるより、俺達の近くの方が安全だと思ったのかもしれないけどね。
御者は状況を確認して、マリアの腕に抱かれているのが代官の娘であることをみてびっくりしたようだ。朝アリアの街を出た時にこの馬車をみていたけど、代官が襲われたのだと考えていたようだ。
いずれにせよ、死体が4体に捕らえた賊が6人だとこのままでは運びようがないので、一旦次の集落まで行って馬車を都合してくるか、もしくは一度アリアの街に引き返し、街の兵を連れて戻ってくるかしかないということになった。ただアリアの街に連絡に走る場合、着く前に夜になるので途中で野宿する必要があり、戻ってくるのは早くて明日の午後になると言うことだ。夜は馬車を走らせられないらしい。
街道を先に行くなりアリアの街に連絡に行くにしろ、御者が自分だけでは行くことはできないので、俺に判断して欲しいってことになった。
俺はふと思い立って俺が領域覚を広げてみると、500メートルぐらい先に反応があった。多分賊の逃走用の馬と思われるので、それを取ってくることにした。
「おそらくこの近くに賊の逃走用の馬があるはずだからそれを探してくる。」
と言い残して、皆にはこの場で待つように言った。マリア達にも同じことを伝えて、この場の警戒と警護を任せて、反応のある場所に俺だけで向かった。
馬は4頭、木の幹に繋がれていた。見張りがいないのは、襲撃したのはあれで全員だったということだろう。賊の身なりやスキル構成からいっても訳ありな気もするけど、関わりたくないから詮索しないようにしよう。
取り敢えず馬のたずなをまとめて、黒い馬に跨って皆が待っているところに向かった。
さっき死んだ御者や賊から、馬術のスキルを受け取っていたので問題なく乗れた。後で3人にも付加してやろう。
襲撃場所に戻ると、人質になっていた女の子は目を覚ましていた。
名前 アン・フォン・ミトラス
種族 人族 LV.1(3/100)
年齢 10
性別 女
職業 ミトラスの娘(第一)
クラス H
HP 30/30
MP 30/30
筋力値 20
体力値 30
魔力値 30
精神値 100
敏捷値 30
幸運値 80
スキル 算術(LV.3(8/30))、アルスラン語(LV.3(11/30))
身内の悲惨な状況をみて、何とか平静を保てているのは、精神力100の影響かな。10歳でこの胆力は凄いと思う。それよりも、スキルLVが半端ないな。10歳でLV3って天才児なんじゃないか。俺が馬を連れて近寄ってくると、マリアに促されて、アンは俺の前にやって来た。俺は馬を降りて、アンの前に降り立つと、
「この度は、私の危機を御救い頂きありがとうございます。私は、アリア市代官ミトラスの長女、アンと言います。心からお礼申し上げます。」
「俺の名前は、リュウ・ハマダという。迷宮探検者だけど、今は自由人だな。俺達が駆け付けた時には護衛も全て衝撃された後で、連れ去られようとするお前さんを救出するのが精いっぱいだった。襲撃された身内を救えなくて申し訳ない。」
「ありがとうございます。この者たちは、メイドのルナを除き、父の部下の方々でした。ルナは私が小さいころから一緒でしたので・・・」
そう言って、下を向いて肩を震わせた。
話題を切り替えるために、
「それで、アンはどうしたい?アリア市に戻りたいか?」
「いいえ、実は父より王宮行政府に至急の伝言を託されております。今、父は魔物の森の件で対応を急いでおります。私は若輩ではありますが父の仕事の補佐をしておりますので、この度早馬で先行させた情報の補完と父の指示で各種調整の許可を受けるために王都に向かっております。このまま王都に向かいたいと思います。」
「では、亡くなった者の遺骸はどうする?」
唇を噛んで
「仕方ありません。このまま捨ておくしか・・・。責めてこの場で簡単に埋葬させて頂ければ・・・」
苦しそうにそう、口にした。
俺は自分達が乗って来た馬車の御者に
「どちらか一人、馬を三匹曳いてついてこれるか?」
と聞いてみた。長距離の場合、2人で交替で行っているようで、御者台に2人座っていた。片方は若いから、助手みたいなものかもだけど。
「はい、それは可能ですが。」
「じゃあ、こっちの馬3頭に亡骸を落ちないように括りつけて、運ぶことにしよう。盗賊たちは、こっちの馬車に押し込んで、俺が操車して運んで行く。」
そう言って、代官の馬車に賊6人をもう一度昏倒させて荷物のように詰め込んで、俺と、マリアが御者台に座って曳いていき、綾とニーナは、アンと一緒に俺達が座っていた席に座って貰うことにした。
準備が終わって俺が先行する感じで街道を進み、何とか日が暮れる前に野宿予定だった集落に着いた。亡骸はこの集落の共同墓地に埋葬した。また盗賊たちは集落にあった動物運搬用の荷馬車を借りて詰め込んだ。足の腱を全員切ってるから逃げられないけど。
集落に着くまで、最大限に領域覚を広げて警戒したけど、奪還しようとする奴らはいなかったので、おそらく襲撃犯はこの6人で全員なのだと思う。
俺達は前のように野宿するつもりだったけど、アンが是非一緒に泊って欲しいと言ってきたので、一緒の宿に宿泊することになった。アンの従者が宿泊する予定だったので、その部屋が2部屋空いているということだ、勿論無料で。アンはかなり疲れたらしく、申し訳ないけれども夕食は一緒にできないとお詫びを言って先に部屋に入った。10歳の女の子がよく頑張っていると思う。
俺達は折角なので宿で夕食を食べて、宿の部屋に入ってすぐに家に飛んだ。いろいろ疲れた。
湯船に浸かりながら、今日のことあれこれと話した。まず、マリアが俺が馬車の操車が上手いことを褒めて、
「私も馬車の操車を出来たら変わってあげられたのにごめんね。」
とか上目使いに俺に抱きつきながら言うので、
「マリアもやりたいなら教えてあげるよ。多分、明日あの馬車を王都まで運ばないといけないだろうし。」
とか言ったら、綾とニーナも私たちも教えて欲しいって言ってきた。スキルポイント的に余裕があるし、今夜、付加してあげよう。
アンはやっぱり聡明な子みたいだ。綾がこの国のことをいろいろ教えて貰ったみたい。情報ゲットだね。ちなみに、この国には学校と言うのはないそうだ。基本的に家庭教師なり、誰かに師事するなりして、自分の能力を高めるらしい。アンも家庭教師についていろいろ学んでいて、将来は王宮の行政府で働くのが夢だそうだ。
夜は、今日お疲れ様の意味を込めてたっぷりじっくり頂いた。馬術だけでなく、今日手に入ったいろんなスキルポイントを付加したから、それが一番の御褒美だね。
翌日、ちょっと早めに起き朝の御挨拶と日課を行って、朝風呂ですっきりしてから宿の部屋に戻った。ちょっとぐらい使ってないと変だねってことで、それぞれのベッドを使って一人ずつちょっとだけ深い交わりをこなした後朝食に降りた。勿論浄化魔法でクリーン済みね。しばらくするとアンが降りてきた。一緒に朝食を食べながら今日の予定を話し合った。昨夜大体のことを話していたけど、取り敢えず俺達と一緒に王都に向かうことになった。アン一人ではどうしようのないし、選択の余地がなかったんだと思う。
代官の馬車を聖魔法で浄化したら新品みたいに綺麗になったので、アンも嫌な顔をせず乗り込んで綾とニーナも一緒に乗り込んだ。賊の方は昨日鹵獲した馬を使って、賊を入れた荷馬車を運ぶことにした。村から借りた荷馬車は後で返しにくるんだろうきっと。で、俺達が乗っていた席は空いてしまったけど、すでに料金はタダになっているのでどうでもいい。3人は上等な馬車に乗れてご機嫌だ。
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勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。
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