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第二章 迷宮都市編
奴隷商会
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と、そんな俺たちの前の道を鉄格子で囲われた荷馬車が通り過ぎた。
中には数人の亜人と思われる男女がうつろな目をして座っていた。
その中に黒目黒髪の少女がいた。神眼を使う前に他の奴隷にさえぎられて見えなかったけど、一瞬日本人のアイドルかと思えるよな容姿だった。
間違いじゃなければセーラー服みたいな感じだったし。
俺がその荷馬車を目で追ったのをマリアが見て、俺の腕をギュッと掴んだ。
マリアも自分が似たような荷馬車に乗せられてた記憶が蘇ったのかもしれない。
俺はマリアに、
「今の馬車の中に、俺と同郷の娘がいたかもしれない。」
と告げた。
本当はマリアは奴隷商の所に行くのは怖いのかも知れない。少し震えていた。
マリアのことを思えば、このまま家に帰ってのんびりした方がいいはず。
マリアは何かを決心したように俺の正面に回って、
「リュウ、馬車の後を追ってみよう。」
俺の目をしっかりみて、そう言った。
「マリア、大丈夫か?」
「リュウ、ありがとう。でも私を助けてくれたように、もしリュウが気になって助けたいって思う人がいたら助けて欲しい。」
「マリア、ありがとう。」
そう言って、俺たちは馬車が消えた方に向かって走り出した。
通りを一本入った場所にそこはあった。
入り口の前に屈強な男が立っていて、丁度馬車から奴隷たちを店の中に引き入れたところのようで、店の前には奴隷商と思われる商人が護衛の男たちに何か言っていた。
店の構えからすると、割と大きな奴隷商のようだ。
俺はマリアの手を引きながら、店の前で立ち話をしていた商人の方に近づいて行った。
俺が近付くのに気がついた何人かが、俺の方に警戒を向けたようだが、
「奴隷を買いに来たんだが。」
と一声かけると、奴隷商人が初めて俺に気がついてにこやかな顔を向けながら、
「これはこれは、冒険者さまでしょうか。
はじめまして、私はこの店の主、モラノと言います。
どうぞよろしく。さっさ、店の方にどうぞ。」
そう言いながら先に中に入り、店の者に指示をして俺を応接室のような場所に案内した。俺の装備をみてそれなりの冒険者だと思ったのか、そのままモラノが俺の相手をすることにしたようだ。
通されてた場所は20畳ほどの広さの部屋に、ソファーとテーブルだけが置かれていた。
モラノは俺たちの向かいに腰をかけ、
「改めまして、当店の主モラノでございます。
今日は、どのような奴隷をお探しでしょうか?
当店では、迷宮探索用の武力のある奴隷も揃えてございます。
人族の奴隷もおります。元帝国の剣士ですので武力の方も保証できます。」
「はじめまして。俺は、リュウ・ハマダという。よろしく頼む。
今日は迷宮探索用の奴隷ではなく、家事などのできる女の奴隷を探しに来た。」
「承知しました、準備してきますので少々お待ち下さい。」
そう言って、モラノは席を外した。
ここで俺がさっき連れてこれらたばかりの奴隷の内、黒髪の女の子だけをターゲットにしていることを知られると、変に交渉がこじれるか、価格を吹っかけられる場合もある。
まず一般的な奴隷の値段とかも知らないから先にいろいろ見せて貰って、ターゲットに接近する方策を考えるのがいいだろう。
マリアの方をみるとずっと俺の手を握っている。内心では恐怖心もあるのかもしれないけど、表情に変化はない。俺はマリアをそっと抱き寄せて軽くキスをした。
間もなくしてモラノが5人の奴隷をつれて戻ってきた。
皆それなりに整った顔立ちをしているし、栄養状態も悪くないようだ。
こちらを見る瞳の力もしっかりしている。
俺はそれぞれ神眼で状態を確認しているが、一人ひとりの説明を質問を交えながら聞いた。
この中では4番目の娘が一番綺麗ではあるけど、隣のマリアと比べると一段も二段も見劣りしてしまう。
料理スキルもLV2ギリギリで、マリアの方が上だろう。裁縫スキルを持っている娘はいなかった。勿論、魔法のスキルをもっている娘はいなかった。
俺は、1番目と4番目の娘の値段を聞いてみた。
1番目の娘は、年齢は28歳で貴族の家でメイドとして働いていたところ、貴族が没落して奴隷として売られてしまったそうだ。貴族の家で長くメイドとして働いていた分教養や礼儀作法はしっかりしており、たち振る舞いも綺麗だった。この娘だと金貨10枚だそうだ。
4番目の娘は村で口減らしのための売られてきた娘で、金貨5枚だそうだ。
俺はモラノに皆いい娘だけど、もしよければ、他の女性も見せて貰えないだろうかと言ってみた。
俺も妻も(って言ったら、隣でマリアがちょっとだけモジモジしてたけど)迷宮探索をしているので、場合によっては一緒に探索もできるような娘も欲しいし、俺も奴隷を買うのは初めてだから、今後の為にもいろいろ見せてもらって、いろいろ教えて貰えないだろうか。そんな感じのことを言ったら、モラノも大いに納得してくれたようで、
では準備をしてきますのでしばらくお待ちください。そう言って出て行った。
しばらくすると呼びにきたのでついて行った。
長い廊下を何度か折れ曲がった先に、部屋の前で女性たちが一列に並んでいた。
俺とマリアが連れ立っているのをみて、若干落胆したような表情をみせた娘は玉の輿でも狙っていたんだろうか。小奇麗な格好をしていた。
いろんな娘がいた、亜人が圧倒的に多かったけど、人族や、エルフ族やドワーフ族の娘もいた。
その中で俺が一番目をひいたのは、エルフの外見をしていたけど神眼では人族となっていたんでハーフエルフかもしれない娘。魔法も使えるようだし、耳は短い感じだけど、少しとがった金髪、大きな目、すっと鼻筋の通った小さい鼻と薄い唇の美少女だった。お胸の方は残念な感じだけど、マリアと並んでも引けを取らないんじゃないかと思う。身長は俺の胸ぐらいまでしかない。
あと、小学生みたいな幼女って感じの娘がいたので、神眼で確認したら8歳だった。こんな娘、奴隷にしたら犯罪だろうって思ったけど、それが普通なのかもしれない。
奥の方に目当ての娘がいた。確認したら、間違いなく日本人の名前だった。
名前 橘綾
種族 人族 LV1(0/200)
年齢 16
性別 女
職業 奴隷
クラス H
生命値 30/30
魔力値 20/20
筋力値 10
体力値 30
魔力値 20
精神値 50
敏捷値 20
幸運値 60
ユニークスキル 転移
ちなみに、さっきのハーフエルフと思われる娘のステイタスは
名前 ニーナ・シュトラス
種族 人族 LV.2(56/400)
年齢 12
性別 女
職業 奴隷
クラス H
HP 35/35
MP 50/50
筋力値 20
体力値 35
魔力値 50
精神値 30
敏捷値 40
幸運値 15
スキル 水魔法(LV.1(5/10))、風魔法(LV.1(4/10))、料理(LV.1(9/10)、アルスラン語(LV.1(5/10))、エルフ語(LV.2(3/20))
ユニークスキル「転移」だと。申し訳ない、頂きます。
神授受発動、こんな機会二度とないかもしれないから。
それから橘綾の目の前に立ってから、モラノに向かって
「変わった服装だけど、どこの出身だ。」
と聞いてみた。
綾は言葉が解らないのだろうし疲れているのだろう、顔も上げずに俯いてる。
でもその顔だちは間違いなく美少女だ。
日本で読者モデルとか、芸能活動していたんだろうか。
テレビに出てくるような子なら、俺の記憶にも残っているだろうが、少なくともアイドルだと言われても信じてしまうレベルだ。
強いてあげれば、ネットの画像でしか見たことないけど、夏目○子に似ているかもしれない。顔立ちのバランスが本当にドストライクの美少女だ。サラサラしている黒髪は、今はちょっとボサボサしている感じもあるけど綺麗に切りそろえられている前髪とセミロングの髪は綺麗だって思うし、よく似合ってると思う。
あと性格がどうなのか知りたいところだ。
俺の質問に対して、モラノはちょっと困った顔をしたけど、さすがは商人一瞬で覚悟を決めたようで、こう言った。
「実はこちらの娘は、私が他の奴隷を連れて旅をしている途中、街道脇に座り込んでいるのを見つけたのです。
座り込んでいたというより、急に光の中から現れたという感じでして。」
俺が変な顔をしていたのだろう、モラノがそれを勘違いして、
「私どもは正式な方法でのみ、奴隷の売買を行っております。
この度迷宮戦闘奴隷を仕入れに行った帰りでして、決して強制的に連れてきたわけではありません。
私どもが捕らえたときに異国の言葉で話しておりましたが、アルスラン語でも、ノクターン語でも話が通ず、本人からも詳しい話を聞けないのでございます。
美少女とは言えませんしリュウ様と同じように珍しい髪の色ですが、見た目それほど器量は悪くないですし。私どもの商会では、アルスラン語を話せない亜人奴隷でも教育して日常会話ができるようにして売り出すようにしておりますので、この娘にも言葉を教えて売り出そうと思っていたのです。」
モラノが綾が現れた状況を説明してくれた。
何?この綾が美少女とは言えないだと?この世界の美的感覚は、俺のと違うのか?
それより今の話からすると間違いなく、俺と同じように地球からこの世界に異世界トリップしてきたんだろうな。
俺との違いは、この世界に来ていたときに持っていたユニークスキルの差か。
言葉のスキルは俺も最初は持ってなかったんだろう、最初の貪食で言葉のスキルを奪えたのが大きかったか。
そんなことを考えて、モラノに向かって、
「大変興味深い話だな。俺と同じような黒髪だし、一度話をさせて貰えないか。
俺も地方の出身なので、もしかしたら話ができるかもしれん。」
「解りました。では先ほどの部屋でお話を。」
モラノは、綾の肩を叩いてついてくるように促し、先導しながら先ほどの部屋に戻った。
部屋に入ると俺とマリアの正面に綾を座らせてその隣に自分も座った。
俺は取り敢えず、アルスラン語、ノクターン語などで話しかけた。その間綾は俺たちの方を見てはいるが瞳に力がなく、ボーっとした感じだった。
モラノに今思い出したかのように、
「そう言えば、さっきエルフの娘がいただろう。あの娘とも話ができるだろうか?」
そう言ってみた。しかし、モラノは少し困った顔をして、
「リュウ様、申し訳ございませんがあの娘はハーフエルフでして、エルフの様に魔法力が優れているわけでもなく、こちらの方でアルスラーン語を教えておりますが上達が遅く日常的な会話ができる程度ですが。またハーフエルフをメイドとして使うのは、リュウ様にとっていろいろ不都合が出るかもしれませんが。」
このモラノ、なかなか正直な奴隷商人みたいだな。やはりハーフエルフか。
「いや、構わない。俺はエルフ語もできる。もしよければその娘を連れてきてくれ。」
モラノはそれで納得してくれたのか、呼びに出るために部屋を出て行った。
索敵で、近くに人がいないことを確認して、俺は、綾に向かって日本語で語りかけた。
「あなた、日本人ですか?」
綾は一緒ビクッとなって、俺が日本語をしゃべるのを確認して、一気に瞳に力がみなぎってきた。俺は今綾に大騒ぎされるのは拙いと思って、安心させるように、
「あなたが、言いたいことはわかります。まず、この場所を出なくてはなりません。
こんな状況で俺を信じて欲しいと言うのは無理があるでしょうが、悪いようにはしません。今は、黙って俺のやることに従ってもらえませんか。
今、騒ぐと、厄介な状況になって、あなたを救いだすことが困難になるかもしれません、お願いします。
もう少しでさっきの店主がきます、他の娘も連れてきますが慌てないで下さい。」
俺は綾にしばらく黙っていて貰うことをお願いして、モラノが入ってくるのを待った。
連れられて来たニーナは、緊張していた。
俺がエルフ語で話しかけて自己紹介をすると、びっくりした顔をして緊張が取れたようだ。少し話した限りとても素直で真面目な娘のようだ。
俺が話をしている間、綾は俺のことをじっと見つめていた。
言葉は解らないまでも、俺の人となりを確かめようとしているのかもしれない。
話が終わってから、俺はモラノに二人とも購入したい旨を告げた。
モラノも今日俺が購入するとは思っていなかったらしく、しかも当初の条件と明らかに違った二人なので、こちらの意図を測りかねたのかもしれない。
俺としては綾を一人だけ購入すると条件が全く違うしかも言葉もしゃべれない娘を購入する裏の意図を探られないとも限らないけど、こうしてもう一人いわくつきのハーフエルフを購入することで、俺が風変わりな趣向を持った男だと思ってくれるかもしれない。という狙いもあったんだけどね。
いずれにせよ正式な売買契約なので、モラノも気を取り直して値段の交渉に入った。
最初モラノが二人一緒なら金貨5枚でどうかと言ってきたので、俺は即決した。
モラノもそこから値を下げて交渉するつもりだったんだろうけど、俺としては交渉が下手な人間だと思われても嫌なので、条件を付けた。
「この二人で金貨5枚は高いと思うけど、こちらの商会とは今後も付き合っていきたいと思っているので先行投資です。今日の二人を見てわかるように俺は変わり種の娘を好みます。
例えば俺と同じように、黒目黒髪の奴隷なら興味を持てるかもしれない。
そこで今日値下げをしなかった分で、今後黒目黒髪の奴隷など変わり種の奴隷が出たら情報が欲しい。頼めるだろうか?」
「なるほど、そのような意図でしたか。私も、今後とも是非、リュウ様とご縁を深めさせて頂ければと思います。情報の件は承知しました。私も気をつけて情報を探ってみましょう。ただ、こちらが特定の条件の奴隷を探しているのが知れると、価格を釣りあげられることも考えられますので、あまり大っぴらには探ることはできませんが。」
「勿論、俺もその方がありがたい。俺は、しばらくの間は、あの岩崖の縁にある家に住んでいる。何か情報があったら知らせてくれ。」
「承知しました。それでは、二人の契約は、今日なさいますか?」
「ああ、それでお願いする。」
モラノが契約をを作るために退席した後、俺は綾に向かって日本語で、
「うまくいった。今日ここから連れ出すから。ただ、俺の奴隷という立場にならないといけない。そこは、了承してくれ。」
綾は安心したような、不安があるような表情になった。
日本人の感覚で、自分と同じぐらいの男子の奴隷になれなんて言われたら不安にもあるだろう。
でも俺の横に座っているマリアが、言葉は通じないけど大丈夫だとって言ってくれている気持ちが伝わったのだと思う。そんなには動揺してないようだ。
中には数人の亜人と思われる男女がうつろな目をして座っていた。
その中に黒目黒髪の少女がいた。神眼を使う前に他の奴隷にさえぎられて見えなかったけど、一瞬日本人のアイドルかと思えるよな容姿だった。
間違いじゃなければセーラー服みたいな感じだったし。
俺がその荷馬車を目で追ったのをマリアが見て、俺の腕をギュッと掴んだ。
マリアも自分が似たような荷馬車に乗せられてた記憶が蘇ったのかもしれない。
俺はマリアに、
「今の馬車の中に、俺と同郷の娘がいたかもしれない。」
と告げた。
本当はマリアは奴隷商の所に行くのは怖いのかも知れない。少し震えていた。
マリアのことを思えば、このまま家に帰ってのんびりした方がいいはず。
マリアは何かを決心したように俺の正面に回って、
「リュウ、馬車の後を追ってみよう。」
俺の目をしっかりみて、そう言った。
「マリア、大丈夫か?」
「リュウ、ありがとう。でも私を助けてくれたように、もしリュウが気になって助けたいって思う人がいたら助けて欲しい。」
「マリア、ありがとう。」
そう言って、俺たちは馬車が消えた方に向かって走り出した。
通りを一本入った場所にそこはあった。
入り口の前に屈強な男が立っていて、丁度馬車から奴隷たちを店の中に引き入れたところのようで、店の前には奴隷商と思われる商人が護衛の男たちに何か言っていた。
店の構えからすると、割と大きな奴隷商のようだ。
俺はマリアの手を引きながら、店の前で立ち話をしていた商人の方に近づいて行った。
俺が近付くのに気がついた何人かが、俺の方に警戒を向けたようだが、
「奴隷を買いに来たんだが。」
と一声かけると、奴隷商人が初めて俺に気がついてにこやかな顔を向けながら、
「これはこれは、冒険者さまでしょうか。
はじめまして、私はこの店の主、モラノと言います。
どうぞよろしく。さっさ、店の方にどうぞ。」
そう言いながら先に中に入り、店の者に指示をして俺を応接室のような場所に案内した。俺の装備をみてそれなりの冒険者だと思ったのか、そのままモラノが俺の相手をすることにしたようだ。
通されてた場所は20畳ほどの広さの部屋に、ソファーとテーブルだけが置かれていた。
モラノは俺たちの向かいに腰をかけ、
「改めまして、当店の主モラノでございます。
今日は、どのような奴隷をお探しでしょうか?
当店では、迷宮探索用の武力のある奴隷も揃えてございます。
人族の奴隷もおります。元帝国の剣士ですので武力の方も保証できます。」
「はじめまして。俺は、リュウ・ハマダという。よろしく頼む。
今日は迷宮探索用の奴隷ではなく、家事などのできる女の奴隷を探しに来た。」
「承知しました、準備してきますので少々お待ち下さい。」
そう言って、モラノは席を外した。
ここで俺がさっき連れてこれらたばかりの奴隷の内、黒髪の女の子だけをターゲットにしていることを知られると、変に交渉がこじれるか、価格を吹っかけられる場合もある。
まず一般的な奴隷の値段とかも知らないから先にいろいろ見せて貰って、ターゲットに接近する方策を考えるのがいいだろう。
マリアの方をみるとずっと俺の手を握っている。内心では恐怖心もあるのかもしれないけど、表情に変化はない。俺はマリアをそっと抱き寄せて軽くキスをした。
間もなくしてモラノが5人の奴隷をつれて戻ってきた。
皆それなりに整った顔立ちをしているし、栄養状態も悪くないようだ。
こちらを見る瞳の力もしっかりしている。
俺はそれぞれ神眼で状態を確認しているが、一人ひとりの説明を質問を交えながら聞いた。
この中では4番目の娘が一番綺麗ではあるけど、隣のマリアと比べると一段も二段も見劣りしてしまう。
料理スキルもLV2ギリギリで、マリアの方が上だろう。裁縫スキルを持っている娘はいなかった。勿論、魔法のスキルをもっている娘はいなかった。
俺は、1番目と4番目の娘の値段を聞いてみた。
1番目の娘は、年齢は28歳で貴族の家でメイドとして働いていたところ、貴族が没落して奴隷として売られてしまったそうだ。貴族の家で長くメイドとして働いていた分教養や礼儀作法はしっかりしており、たち振る舞いも綺麗だった。この娘だと金貨10枚だそうだ。
4番目の娘は村で口減らしのための売られてきた娘で、金貨5枚だそうだ。
俺はモラノに皆いい娘だけど、もしよければ、他の女性も見せて貰えないだろうかと言ってみた。
俺も妻も(って言ったら、隣でマリアがちょっとだけモジモジしてたけど)迷宮探索をしているので、場合によっては一緒に探索もできるような娘も欲しいし、俺も奴隷を買うのは初めてだから、今後の為にもいろいろ見せてもらって、いろいろ教えて貰えないだろうか。そんな感じのことを言ったら、モラノも大いに納得してくれたようで、
では準備をしてきますのでしばらくお待ちください。そう言って出て行った。
しばらくすると呼びにきたのでついて行った。
長い廊下を何度か折れ曲がった先に、部屋の前で女性たちが一列に並んでいた。
俺とマリアが連れ立っているのをみて、若干落胆したような表情をみせた娘は玉の輿でも狙っていたんだろうか。小奇麗な格好をしていた。
いろんな娘がいた、亜人が圧倒的に多かったけど、人族や、エルフ族やドワーフ族の娘もいた。
その中で俺が一番目をひいたのは、エルフの外見をしていたけど神眼では人族となっていたんでハーフエルフかもしれない娘。魔法も使えるようだし、耳は短い感じだけど、少しとがった金髪、大きな目、すっと鼻筋の通った小さい鼻と薄い唇の美少女だった。お胸の方は残念な感じだけど、マリアと並んでも引けを取らないんじゃないかと思う。身長は俺の胸ぐらいまでしかない。
あと、小学生みたいな幼女って感じの娘がいたので、神眼で確認したら8歳だった。こんな娘、奴隷にしたら犯罪だろうって思ったけど、それが普通なのかもしれない。
奥の方に目当ての娘がいた。確認したら、間違いなく日本人の名前だった。
名前 橘綾
種族 人族 LV1(0/200)
年齢 16
性別 女
職業 奴隷
クラス H
生命値 30/30
魔力値 20/20
筋力値 10
体力値 30
魔力値 20
精神値 50
敏捷値 20
幸運値 60
ユニークスキル 転移
ちなみに、さっきのハーフエルフと思われる娘のステイタスは
名前 ニーナ・シュトラス
種族 人族 LV.2(56/400)
年齢 12
性別 女
職業 奴隷
クラス H
HP 35/35
MP 50/50
筋力値 20
体力値 35
魔力値 50
精神値 30
敏捷値 40
幸運値 15
スキル 水魔法(LV.1(5/10))、風魔法(LV.1(4/10))、料理(LV.1(9/10)、アルスラン語(LV.1(5/10))、エルフ語(LV.2(3/20))
ユニークスキル「転移」だと。申し訳ない、頂きます。
神授受発動、こんな機会二度とないかもしれないから。
それから橘綾の目の前に立ってから、モラノに向かって
「変わった服装だけど、どこの出身だ。」
と聞いてみた。
綾は言葉が解らないのだろうし疲れているのだろう、顔も上げずに俯いてる。
でもその顔だちは間違いなく美少女だ。
日本で読者モデルとか、芸能活動していたんだろうか。
テレビに出てくるような子なら、俺の記憶にも残っているだろうが、少なくともアイドルだと言われても信じてしまうレベルだ。
強いてあげれば、ネットの画像でしか見たことないけど、夏目○子に似ているかもしれない。顔立ちのバランスが本当にドストライクの美少女だ。サラサラしている黒髪は、今はちょっとボサボサしている感じもあるけど綺麗に切りそろえられている前髪とセミロングの髪は綺麗だって思うし、よく似合ってると思う。
あと性格がどうなのか知りたいところだ。
俺の質問に対して、モラノはちょっと困った顔をしたけど、さすがは商人一瞬で覚悟を決めたようで、こう言った。
「実はこちらの娘は、私が他の奴隷を連れて旅をしている途中、街道脇に座り込んでいるのを見つけたのです。
座り込んでいたというより、急に光の中から現れたという感じでして。」
俺が変な顔をしていたのだろう、モラノがそれを勘違いして、
「私どもは正式な方法でのみ、奴隷の売買を行っております。
この度迷宮戦闘奴隷を仕入れに行った帰りでして、決して強制的に連れてきたわけではありません。
私どもが捕らえたときに異国の言葉で話しておりましたが、アルスラン語でも、ノクターン語でも話が通ず、本人からも詳しい話を聞けないのでございます。
美少女とは言えませんしリュウ様と同じように珍しい髪の色ですが、見た目それほど器量は悪くないですし。私どもの商会では、アルスラン語を話せない亜人奴隷でも教育して日常会話ができるようにして売り出すようにしておりますので、この娘にも言葉を教えて売り出そうと思っていたのです。」
モラノが綾が現れた状況を説明してくれた。
何?この綾が美少女とは言えないだと?この世界の美的感覚は、俺のと違うのか?
それより今の話からすると間違いなく、俺と同じように地球からこの世界に異世界トリップしてきたんだろうな。
俺との違いは、この世界に来ていたときに持っていたユニークスキルの差か。
言葉のスキルは俺も最初は持ってなかったんだろう、最初の貪食で言葉のスキルを奪えたのが大きかったか。
そんなことを考えて、モラノに向かって、
「大変興味深い話だな。俺と同じような黒髪だし、一度話をさせて貰えないか。
俺も地方の出身なので、もしかしたら話ができるかもしれん。」
「解りました。では先ほどの部屋でお話を。」
モラノは、綾の肩を叩いてついてくるように促し、先導しながら先ほどの部屋に戻った。
部屋に入ると俺とマリアの正面に綾を座らせてその隣に自分も座った。
俺は取り敢えず、アルスラン語、ノクターン語などで話しかけた。その間綾は俺たちの方を見てはいるが瞳に力がなく、ボーっとした感じだった。
モラノに今思い出したかのように、
「そう言えば、さっきエルフの娘がいただろう。あの娘とも話ができるだろうか?」
そう言ってみた。しかし、モラノは少し困った顔をして、
「リュウ様、申し訳ございませんがあの娘はハーフエルフでして、エルフの様に魔法力が優れているわけでもなく、こちらの方でアルスラーン語を教えておりますが上達が遅く日常的な会話ができる程度ですが。またハーフエルフをメイドとして使うのは、リュウ様にとっていろいろ不都合が出るかもしれませんが。」
このモラノ、なかなか正直な奴隷商人みたいだな。やはりハーフエルフか。
「いや、構わない。俺はエルフ語もできる。もしよければその娘を連れてきてくれ。」
モラノはそれで納得してくれたのか、呼びに出るために部屋を出て行った。
索敵で、近くに人がいないことを確認して、俺は、綾に向かって日本語で語りかけた。
「あなた、日本人ですか?」
綾は一緒ビクッとなって、俺が日本語をしゃべるのを確認して、一気に瞳に力がみなぎってきた。俺は今綾に大騒ぎされるのは拙いと思って、安心させるように、
「あなたが、言いたいことはわかります。まず、この場所を出なくてはなりません。
こんな状況で俺を信じて欲しいと言うのは無理があるでしょうが、悪いようにはしません。今は、黙って俺のやることに従ってもらえませんか。
今、騒ぐと、厄介な状況になって、あなたを救いだすことが困難になるかもしれません、お願いします。
もう少しでさっきの店主がきます、他の娘も連れてきますが慌てないで下さい。」
俺は綾にしばらく黙っていて貰うことをお願いして、モラノが入ってくるのを待った。
連れられて来たニーナは、緊張していた。
俺がエルフ語で話しかけて自己紹介をすると、びっくりした顔をして緊張が取れたようだ。少し話した限りとても素直で真面目な娘のようだ。
俺が話をしている間、綾は俺のことをじっと見つめていた。
言葉は解らないまでも、俺の人となりを確かめようとしているのかもしれない。
話が終わってから、俺はモラノに二人とも購入したい旨を告げた。
モラノも今日俺が購入するとは思っていなかったらしく、しかも当初の条件と明らかに違った二人なので、こちらの意図を測りかねたのかもしれない。
俺としては綾を一人だけ購入すると条件が全く違うしかも言葉もしゃべれない娘を購入する裏の意図を探られないとも限らないけど、こうしてもう一人いわくつきのハーフエルフを購入することで、俺が風変わりな趣向を持った男だと思ってくれるかもしれない。という狙いもあったんだけどね。
いずれにせよ正式な売買契約なので、モラノも気を取り直して値段の交渉に入った。
最初モラノが二人一緒なら金貨5枚でどうかと言ってきたので、俺は即決した。
モラノもそこから値を下げて交渉するつもりだったんだろうけど、俺としては交渉が下手な人間だと思われても嫌なので、条件を付けた。
「この二人で金貨5枚は高いと思うけど、こちらの商会とは今後も付き合っていきたいと思っているので先行投資です。今日の二人を見てわかるように俺は変わり種の娘を好みます。
例えば俺と同じように、黒目黒髪の奴隷なら興味を持てるかもしれない。
そこで今日値下げをしなかった分で、今後黒目黒髪の奴隷など変わり種の奴隷が出たら情報が欲しい。頼めるだろうか?」
「なるほど、そのような意図でしたか。私も、今後とも是非、リュウ様とご縁を深めさせて頂ければと思います。情報の件は承知しました。私も気をつけて情報を探ってみましょう。ただ、こちらが特定の条件の奴隷を探しているのが知れると、価格を釣りあげられることも考えられますので、あまり大っぴらには探ることはできませんが。」
「勿論、俺もその方がありがたい。俺は、しばらくの間は、あの岩崖の縁にある家に住んでいる。何か情報があったら知らせてくれ。」
「承知しました。それでは、二人の契約は、今日なさいますか?」
「ああ、それでお願いする。」
モラノが契約をを作るために退席した後、俺は綾に向かって日本語で、
「うまくいった。今日ここから連れ出すから。ただ、俺の奴隷という立場にならないといけない。そこは、了承してくれ。」
綾は安心したような、不安があるような表情になった。
日本人の感覚で、自分と同じぐらいの男子の奴隷になれなんて言われたら不安にもあるだろう。
でも俺の横に座っているマリアが、言葉は通じないけど大丈夫だとって言ってくれている気持ちが伝わったのだと思う。そんなには動揺してないようだ。
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