愛弟日記4

4-106 ドッペルゲンガー

4-106  ドッペルゲンガー

愛弟:   兄さん、電池の用意ができたよ　何聴く？

俺:   じゃあ、
スピッツの
『優しくなりたいな』を頼む

愛弟:   オッケー

再生ボタンを押す愛弟〕

曲が流れ始める〕

俺は窓の外を見た。

俺:   ここは葉を落とした11月初旬の木々が見えないけど、地平線が見えるのがいいな

看板も一つ見える。

あの看板のずっとずっとむこうのこの街のはずれに入院していた病院があって、隣に退院した後通ったデイケア施設があって…

デイケアメンバーは今頃どうしているだろう？

あそこは退院した人が次のステップを目指す前に十分に休息するサンクチュアリみたいな空間だから。労働以外の全てがある。

こころ安らかに過ごしたり、テレビを見たり、トランプやゲームをしたりするところで、食事が来るまでただ机に向かってぼうっーとするだけの人たちもたくさんいたっけ。

いまもその中で俺のドッペルゲンガーは情熱を持って中国語を勉強しているかもしれない。

入退院を繰り返す中、俺はグループホーム〔病院管理下の簡易宿泊所〕でパソコンの所有を許可されていたから、サイバー空間でションたんに出会って、中国語に関心を持ち始めていたんだ。

5年前のことになるなぁ！

2018年の4月にNHKのラジオ中国語講座入門編「まいにち中国語」を始めたんだ。

主治医のドクターはいろいろあったけど、感謝してるんだ。

俺の関東地方行き旅行を許可してくれたからションたんと城下町で初めてのデートができたんだよ

愛弟:   兄さん　笑顔

看板の上の空は曇り空でどんよりしていた。

愛弟:   もうすぐ雪がふりはじめるね

俺:   そうだな…

愛弟:   ピト❤️

ふたり:   笑顔