上 下
26 / 45

わたし、魔法少女になって何をやったかわかりました(ここまでやる気はなかったんですよ)

しおりを挟む
「それで、わたしはどうすればいいの?」
 わたしは、足もとに転がるあの子の体を見下ろしながら、緑の目にそう訊いた。
 それにしても、こうして改めてじっくり観察すると、ホントにひどいことになっている。
 あいつらに、食べらた部分が欠けたままなのは当然だけど、それ以外のところもボロボロだった。
 汚れた地面の上を散々転がったせいだろう。
 全身ホコリまみれの土まみれ、さらには体のあちこちに、小さな擦り傷や切り傷が数え切れないくらいついている。
 まだ体につながって残っている頭や体の部分にも、泥がべったりこびりつき、石やコンクリートの破片が刺さってそこら中に刺さってる。
 着ている服も、擦り切れ破れ、もう服を着ている、というより布が絡まってる、と言ったほうがいいようなありさまだった
 そのズタズタになって汚れた布切れに、、きれいな服だったはずの布切れに、新しくついた傷から流れ出た血が赤い染みをつくっていた。
 血がでてるってことは、まだちゃんと
 死んでてたら、もう血はでてくるわけないし。
 まだ、生きてるなんて、なんか不思議な気分。 
 母は、わたしに「おやすみ」と言った格好のまま、朝になったら死んでいたいたのに。
 昨日、わたしが最後に見た姿のまま、明日を迎えることができなかったのに。
 まあ、いいや。
 とりあえず、友だちが生きていてくれさえすれば。
 それでいいや。
 でも、こんなにボロボロになって汚れちゃったのは、もしかしなくても確実に、全部わたしのせい、だよね。
 これって、ホントにちゃんと、もとに戻るんだろうか。
 どこかの傷が治らなかったり、脳や体に障害が残ったりしないだろうか。
 だけど、そのときはそのときで、別にいっか。
 もしそうなったときのための、土下座の準備と覚悟はできている。
 だから大丈夫ってわけじゃ、全然ないけど。
 そうならないようにするために。
 この子がそんなことにならないように。
 わたしがそんなことしないですむように。
 わたしはを、どうすればいいのかな。
「そうだね。まずはどこでもいいから、その子の体に触れてみて」
「うん、わかった」
 この緑の目のいいところは、訊かれたことには必ず答えてくれることだよね。
 他にいいところがあるかどうかは、まだわからないけど。
 わたしは言われたとおり、この子の体に手で触れる。
 まともに残ってる部分が頭ぐらいしかなかったから、おでこのところに手を当てる。
 なんだか、熱を計ってるみたいな格好で。
「触ったよ、これでいいの?」
「問題ないよ。ありがとう。じゃあ具体的な作業事態はボクがやるから、キミは何があっても絶対に、その手を離しちゃ駄目だよ」
「手を離すと、どうなるの?」
「キミがその手を離さない限り、。ただキミがその手を離した場合、キミの思った以上のことをやらなくてはいけなくなるから注意してね。もし不安なら念の為に、そのときの準備と覚悟をしておいてね」
 ……この緑の目の悪いところは、言ってもいないことを当然のように話すことだよね。
 他に悪いところがあるかどうかは、探せばいくらでもあるだろうけど。
「それじゃあ世界を調。この世界を、本来在るべき姿に戻すために」
 え、世界を戻す? その言葉を聞いて、わたしはぐるりと周りを見回す。
 最初は、
 あー世界ね。うん、なるほどよくわかった。
 そうしてみると、これ以上ないほど納得できる。
 そこにあるのは、わたしが
 わたしが自由に、やりたいことをやりたいようにやって、壊して殺した、世界だもん。
 でも、だったら。
「わたしは世界を戻すために、何もしなくて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。キミが何もしなくても、世界は自分自身を取り戻そうとするからね。そのときに、世界がになるように、誘導するのが、ボクの仕事だからね。でも違う世界のものに、〈エゴグラム・クオリアみている世界が違うもの〉に傷つけられた、この世界の生命と繋がっていなと元には戻らない。そのまま放っておくと、やつらの消滅と一緒にこの世から消えてしまうんだ。だからさっきは
「へー、そうなんだ」
 何のことだか、何を言われているのか、わからないというふうに。
 そんなことに、は全然ないというように。
 わたしには、関係ないみたいな答えを返す。
 それはわたしはそのときに、別のことを思っていたから。
 あいつらが傷つけた生命が、この世界の生命とつながらないともとには戻らないというのなら。
 わたしがは、いったいどうなるんだろう。
 これだけのことをやらかしたんだから、あいつら以外の、人間以外の生命のひとつやふたつ、間違いなく殺しているはずだ。
 もしかしたら、わたしが知らないだけで、わたしが見ていないだけで、この子以外の人間を、巻き込んだかもしれない。
 殺してしまった、かもしれない。
 その生命は、もとに戻るんだろうか。
 そんなことを、思ってた。
 そしてそんなこと、、思ってた。 
 どっちでもいいと、思ってた。
 だから、あんな気のない答えになちゃった。
「そうなんだよ。で、そういうわけだから、キミはその子ことだけに集中しててね」
「任せといて。ひとつのことに集中するのは、わたし、結構得意なんだから」
 それは、他のことが目に入らなくなるとも言うけれど。
「それは頼もしいね。じゃあ、世界を元に戻そうか」
「うん。早くこの子をもとに戻してあげなくちゃね」
「素晴らしい心掛けだよ。じゃあ、始めるね。そうそう、世界が元に戻る前に、姿から気をつけてね」
 え、いまなんて言ったの?
 ていうか、なんでそれをいま言うの?
 そのせいでわたしの集中、切れちゃったんだけど。
 結構わりとあっさりと。
 これでもし、はたしてどっちの責任になるんだろう。
 これはどうでもよくないし、どっちでもいいことじゃない。
 だってこれは、わたしに関わることだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!

ありぽん
ファンタジー
はぁ、一体この能力は何なんだ。 こんな役に立たないんじゃ、そりゃあパーティーから追放されるよな。 ん? 何だお前、自ら寄ってくるなんて、変わった魔獣だな。 って、おいお前! ずいぶん疲れてるじゃないか!? だけど俺の能力じゃ……。 え? 何だ!? まさか!? そうか、俺のこの力はそういうことだったのか。これなら!! ダンジョンでは戦闘の配信ばかり。別に悪いことじゃいけけれど、だけど戦闘後の魔獣達は? 魔獣達だって人同様疲れるんだ。 だから俺は、授かったこの力を使って戦闘後の魔獣達を。いやいや共に暮らしている魔獣達が、まったりゆっくり暮らせるように、魔獣専用もふもふスローライフ配信を始めよう!!

スキル【縫う】で無双します! 〜ハズレスキルと言われたけれど、努力で当たりにしてみます〜

藤花スイ
ファンタジー
コルドバ村のセネカは英雄に憧れるお転婆娘だ。 幼馴染と共に育ち、両親のように強くなることが夢だった。 けれど、十歳の時にセネカが授かったのは【縫う】という非戦闘系の地味なスキルだった。 一方、幼馴染のルキウスは破格のスキル【神聖魔法】を得て、王都の教会へと旅立つことに⋯⋯。 「お前、【縫う】なんていうハズレスキルなのに、まだ冒険者になるつもりなのか?」 失意の中で、心無い言葉が胸に突き刺さる。 だけど、セネカは挫けない。 自分を信じてひたすら努力を重ねる。 布や革はもちろん、いつしか何だって縫えるようになると信じて。 セネカは挫折を乗り越え、挑戦を続けながら仲間を増やしてゆく。 大切なものを守る強さを手に入れるために、ひたむきに走り続ける。 いつか幼馴染と冒険に出る日を心に描きながら⋯⋯。 「私のスキルは【縫う】。  ハズレだと言われたけれど、努力で当たりにしてきた」 これは、逆境を乗り越え、スキルを磨き続けた少女が英雄への道を切り拓く物語!

言ノ花の森

椿灯夏
ファンタジー
幻想的な言葉の集い。 詩物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...