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わたし、魔法少女になって何をやったかわかりました(ここまでやる気はなかったんですよ)
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「それで、わたしはどうすればいいの?」
わたしは、足もとに転がるあの子の体を見下ろしながら、緑の目にそう訊いた。
それにしても、こうして改めてじっくり観察すると、ホントにひどいことになっている。
あいつらに、食べらた部分が欠けたままなのは当然だけど、それ以外のところもボロボロだった。
汚れた地面の上を散々転がったせいだろう。
全身ホコリまみれの土まみれ、さらには体のあちこちに、小さな擦り傷や切り傷が数え切れないくらいついている。
まだ体につながって残っている頭や体の部分にも、泥がべったりこびりつき、石やコンクリートの破片が刺さってそこら中に刺さってる。
着ている服も、擦り切れ破れ、もう服を着ている、というより布が絡まってる、と言ったほうがいいようなありさまだった
そのズタズタになって汚れた布切れに、こんな目に遭うまでは、きれいな服だったはずの布切れに、新しくついた傷から流れ出た血が赤い染みをつくっていた。
血がでてるってことは、まだちゃんと生きてるってことなのかな。
死んでてたら、もう血はでてくるわけないし。
こんなふうになってもまだ、生きてるなんて、なんか不思議な気分。
母は、わたしに「おやすみ」と言った格好のまま、朝になったら死んでいたいたのに。
昨日、わたしが最後に見た姿のまま、明日を迎えることができなかったのに。
まあ、いいや。
とりあえず、友だちが生きていてくれさえすれば。
それでいいや。
でも、こんなにボロボロになって汚れちゃったのは、もしかしなくても確実に、全部わたしのせい、だよね。
これって、ホントにちゃんと、もとに戻るんだろうか。
どこかの傷が治らなかったり、脳や体に障害が残ったりしないだろうか。
だけど、そのときはそのときで、別にいっか。
もしそうなったときのための、土下座の準備と覚悟はできている。
だから大丈夫ってわけじゃ、全然ないけど。
そうならないようにするために。
この子がそんなことにならないように。
わたしがそんなことしないですむように。
わたしはこれを、どうすればいいのかな。
「そうだね。まずはどこでもいいから、その子の体に触れてみて」
「うん、わかった」
この緑の目のいいところは、訊かれたことには必ず答えてくれることだよね。
他にいいところがあるかどうかは、まだわからないけど。
わたしは言われたとおり、この子の体に手で触れる。
まともに残ってる部分が頭ぐらいしかなかったから、おでこのところに手を当てる。
なんだか、熱を計ってるみたいな格好で。
「触ったよ、これでいいの?」
「問題ないよ。ありがとう。じゃあ具体的な作業事態はボクがやるから、キミは何があっても絶対に、その手を離しちゃ駄目だよ」
「手を離すと、どうなるの?」
「キミがその手を離さない限り、キミが思ったようなことにはならないから安心して。ただキミがその手を離した場合、キミの思った以上のことをやらなくてはいけなくなるから注意してね。もし不安なら念の為に、そのときの準備と覚悟をしておいてね」
……この緑の目の悪いところは、言ってもいないことを当然のように話すことだよね。
他に悪いところがあるかどうかは、探せばいくらでもあるだろうけど。
「それじゃあ世界を調律するよ。この世界を、本来在るべき姿に戻すために」
え、世界を戻す? その言葉を聞いて、わたしはぐるりと周りを見回す。
最初は、何でそんなことするのかわからなかったけど。
あー世界ね。うん、なるほどよくわかった。
そうしてみると、これ以上ないほど納得できる。
そこにあるのは、わたしが好き勝手にやった世界だもん。
わたしが自由に、やりたいことをやりたいようにやって、壊して殺した、世界だもん。
でも、だったら。
「わたしは世界を戻すために、何もしなくて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。キミが何もしなくても、世界は自分自身を取り戻そうとするからね。そのときに、世界が正しいかたちになるように、自分自身を正しく思い出せるように誘導するのが、ボクの仕事だからね。でも違う世界のものに、〈エゴグラム・クオリア〉に傷つけられた生命あるものは、この世界の生命と繋がっていなと元には戻らない。そのまま放っておくと、やつらの消滅と一緒にこの世から消えてしまうんだ。だからさっきは危なかったね」
「へー、そうなんだ」
何のことだか、何を言われているのか、わからないというふうに。
そんなことに、心当たりは全然ないというように。
わたしには、関係ないみたいな答えを返す。
それはわたしはそのときに、別のことを思っていたから。
あいつらが傷つけた生命が、この世界の生命とつながらないともとには戻らないというのなら。
わたしが殺した生命は、いったいどうなるんだろう。
これだけのことをやらかしたんだから、あいつら以外の、人間以外の生命のひとつやふたつ、間違いなく殺しているはずだ。
もしかしたら、わたしが知らないだけで、わたしが見ていないだけで、この子以外の人間を、巻き込んだかもしれない。
殺してしまった、かもしれない。
その生命は、もとに戻るんだろうか。
そんなことを、思ってた。
そしてそんなこと、どうでもいいと、思ってた。
どっちでもいいと、思ってた。
だから、あんな気のない答えになちゃった。
「そうなんだよ。で、そういうわけだから、キミはその子ことだけに集中しててね」
「任せといて。ひとつのことに集中するのは、わたし、結構得意なんだから」
それは、他のことが目に入らなくなるとも言うけれど。
「それは頼もしいね。じゃあ、世界を元に戻そうか」
「うん。早くこの子をもとに戻してあげなくちゃね」
「素晴らしい心掛けだよ。じゃあ、始めるね。そうそう、世界が元に戻る前に、キミが元に戻らないと、そのままの姿で元の世界に戻ることになるから気をつけてね」
え、いまなんて言ったの?
ていうか、なんでそれをいま言うの?
そのせいでわたしの集中、切れちゃったんだけど。
結構わりとあっさりと。
これでもしなにかあったら、はたしてどっちの責任になるんだろう。
これはどうでもよくないし、どっちでもいいことじゃない。
だってこれは、わたしに関わることだから。
わたしは、足もとに転がるあの子の体を見下ろしながら、緑の目にそう訊いた。
それにしても、こうして改めてじっくり観察すると、ホントにひどいことになっている。
あいつらに、食べらた部分が欠けたままなのは当然だけど、それ以外のところもボロボロだった。
汚れた地面の上を散々転がったせいだろう。
全身ホコリまみれの土まみれ、さらには体のあちこちに、小さな擦り傷や切り傷が数え切れないくらいついている。
まだ体につながって残っている頭や体の部分にも、泥がべったりこびりつき、石やコンクリートの破片が刺さってそこら中に刺さってる。
着ている服も、擦り切れ破れ、もう服を着ている、というより布が絡まってる、と言ったほうがいいようなありさまだった
そのズタズタになって汚れた布切れに、こんな目に遭うまでは、きれいな服だったはずの布切れに、新しくついた傷から流れ出た血が赤い染みをつくっていた。
血がでてるってことは、まだちゃんと生きてるってことなのかな。
死んでてたら、もう血はでてくるわけないし。
こんなふうになってもまだ、生きてるなんて、なんか不思議な気分。
母は、わたしに「おやすみ」と言った格好のまま、朝になったら死んでいたいたのに。
昨日、わたしが最後に見た姿のまま、明日を迎えることができなかったのに。
まあ、いいや。
とりあえず、友だちが生きていてくれさえすれば。
それでいいや。
でも、こんなにボロボロになって汚れちゃったのは、もしかしなくても確実に、全部わたしのせい、だよね。
これって、ホントにちゃんと、もとに戻るんだろうか。
どこかの傷が治らなかったり、脳や体に障害が残ったりしないだろうか。
だけど、そのときはそのときで、別にいっか。
もしそうなったときのための、土下座の準備と覚悟はできている。
だから大丈夫ってわけじゃ、全然ないけど。
そうならないようにするために。
この子がそんなことにならないように。
わたしがそんなことしないですむように。
わたしはこれを、どうすればいいのかな。
「そうだね。まずはどこでもいいから、その子の体に触れてみて」
「うん、わかった」
この緑の目のいいところは、訊かれたことには必ず答えてくれることだよね。
他にいいところがあるかどうかは、まだわからないけど。
わたしは言われたとおり、この子の体に手で触れる。
まともに残ってる部分が頭ぐらいしかなかったから、おでこのところに手を当てる。
なんだか、熱を計ってるみたいな格好で。
「触ったよ、これでいいの?」
「問題ないよ。ありがとう。じゃあ具体的な作業事態はボクがやるから、キミは何があっても絶対に、その手を離しちゃ駄目だよ」
「手を離すと、どうなるの?」
「キミがその手を離さない限り、キミが思ったようなことにはならないから安心して。ただキミがその手を離した場合、キミの思った以上のことをやらなくてはいけなくなるから注意してね。もし不安なら念の為に、そのときの準備と覚悟をしておいてね」
……この緑の目の悪いところは、言ってもいないことを当然のように話すことだよね。
他に悪いところがあるかどうかは、探せばいくらでもあるだろうけど。
「それじゃあ世界を調律するよ。この世界を、本来在るべき姿に戻すために」
え、世界を戻す? その言葉を聞いて、わたしはぐるりと周りを見回す。
最初は、何でそんなことするのかわからなかったけど。
あー世界ね。うん、なるほどよくわかった。
そうしてみると、これ以上ないほど納得できる。
そこにあるのは、わたしが好き勝手にやった世界だもん。
わたしが自由に、やりたいことをやりたいようにやって、壊して殺した、世界だもん。
でも、だったら。
「わたしは世界を戻すために、何もしなくて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。キミが何もしなくても、世界は自分自身を取り戻そうとするからね。そのときに、世界が正しいかたちになるように、自分自身を正しく思い出せるように誘導するのが、ボクの仕事だからね。でも違う世界のものに、〈エゴグラム・クオリア〉に傷つけられた生命あるものは、この世界の生命と繋がっていなと元には戻らない。そのまま放っておくと、やつらの消滅と一緒にこの世から消えてしまうんだ。だからさっきは危なかったね」
「へー、そうなんだ」
何のことだか、何を言われているのか、わからないというふうに。
そんなことに、心当たりは全然ないというように。
わたしには、関係ないみたいな答えを返す。
それはわたしはそのときに、別のことを思っていたから。
あいつらが傷つけた生命が、この世界の生命とつながらないともとには戻らないというのなら。
わたしが殺した生命は、いったいどうなるんだろう。
これだけのことをやらかしたんだから、あいつら以外の、人間以外の生命のひとつやふたつ、間違いなく殺しているはずだ。
もしかしたら、わたしが知らないだけで、わたしが見ていないだけで、この子以外の人間を、巻き込んだかもしれない。
殺してしまった、かもしれない。
その生命は、もとに戻るんだろうか。
そんなことを、思ってた。
そしてそんなこと、どうでもいいと、思ってた。
どっちでもいいと、思ってた。
だから、あんな気のない答えになちゃった。
「そうなんだよ。で、そういうわけだから、キミはその子ことだけに集中しててね」
「任せといて。ひとつのことに集中するのは、わたし、結構得意なんだから」
それは、他のことが目に入らなくなるとも言うけれど。
「それは頼もしいね。じゃあ、世界を元に戻そうか」
「うん。早くこの子をもとに戻してあげなくちゃね」
「素晴らしい心掛けだよ。じゃあ、始めるね。そうそう、世界が元に戻る前に、キミが元に戻らないと、そのままの姿で元の世界に戻ることになるから気をつけてね」
え、いまなんて言ったの?
ていうか、なんでそれをいま言うの?
そのせいでわたしの集中、切れちゃったんだけど。
結構わりとあっさりと。
これでもしなにかあったら、はたしてどっちの責任になるんだろう。
これはどうでもよくないし、どっちでもいいことじゃない。
だってこれは、わたしに関わることだから。
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