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わたし、魔法少女になったからにはやるだけやってみようと思います(ちゃんと限度はわきまえてます)
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こんな気持ちになったのはいつ以来だろう。
もしかしたら生れて初めてかもしれない。
心が軽くてどうしよもない。浮足立ってしかたない。ちょっとジャンプしただけで月まで行けそうな気分を止められない。
肌の下を虫が這いずり回るような、ウズウズとした高揚をおさえられない。
首輪を引かれ急き立てられたような、ウキウキとした興奮をせきとめられない。
心臓が時計のついた爆弾に変わったような、ドキドキとした熱狂をさまたげられない。
もう、我慢なんてしてられない。
自分がいったい何なのか、いまの自分がナニになったのか、ようやくわかったんだから。
わたしは、魔法少女になったんだから。
わたしだけの、魔法があったんだから。
そのことを理解して、その実感がわいてきた。
そしてその喜びと悦びが、わたしの貧相な胸がはちきれそうなほど心のなかを満たしてく。
わたしの出来の悪い頭がわれそうなほど、脳のなかを駆け巡る。
年頃の女の子が新しい服や靴にときめいて、おしゃれをして出かけたくなるように。
試してみたくてたまらない。使ってみたくてしょうがない。
わたしにできることをしてみたい。わたしのやるべきことをやってみたい。
できるだけのことをできる限りしてみたい。やれるだけのことやれる限りをやってみたい。
あの気持ちよさを得るために。あの高鳴りを感じるために。そしてあの快感を味わうために。
だから。
殺す。
そのために。
殺す。
わたしの目の前で群がっているバケモノたちを。
何が何でも、殺さなきゃ。
わたしにがっついてきたのは足下で潰れてる一匹だけ。
他は爪をギチギチ、牙をガチガチ鳴らして囃してるだけでこっちにこない。
意外と消極的で照れ屋なのかな。
それともわたしはこの子ほど、魅力的じゃないのかな。
でも大丈夫、安心して。わたしがそっちに行くからね。
目に入っているけど手が届かないなら、自分で向かっていけばいい。
手を伸ばせば届くまで。わたしの気持ちが届くまで。
助けるときには決して動かなかったのに、殺すとなったら平気で進む。
これがいまのわたしの姿。これだけがいまのわたしのやり方。
そういうわけで。
こんな気持ちで何かと戦うのはきっとこれが初めてだ。
この気持ちを忘れないよう、ちゃんと慣れておかなくちゃ。
これからもこの気持ちを持ち続けていくために。
このさきもこんな気持で殺し続けていくために。
そしてわたしは緑の目がまたなにか言い出す前に、バケモノたちに向かって歩き出す。
さっきからわたしの我慢も限界だった。
でも駄目、まだ駄目。耐えろわたし。
一歩一歩はやる心を踏みつけるように、ゆっくりと地面を踏みしめる。
そのたびに高いヒールがカツーンカツーンと鐘のような音を響かせる。
それは時を刻む音。
待ちわびたときが、すぐそこまできていることを告げる福音。
そうしてわたしが前に出ると、やっとバケモノたちが動き出しわたしをぐるりと取り囲む。
いままでの人生で誰かに何かにこんな風に囲まれたのは初めてだ。
初めての相手がこんなバケモノたちなのは、まあこの際どうでもいいや。
女にとって初めては、そんなに大事なものじゃない。
しかしどうしてこんなでも、雄はやっぱり男だね。
上げ膳据え膳目の前に、食いつかつずにはいられない。
でもでも果たして、食べられちゃうのはどっちかな?
そのままわたしたちの間で時間が止まる。
でも静止と静寂は一瞬だけ。
わたしがさっきと同じくステッキを肩に担いで構えるとき。
バケモノたちが涎を垂らしながら後ろ足を弛めるとき。
それがピッタリ同時だった。
そして血のよう昏い夕焼けが澄んだ夜の藍色に変わり始めたとき。
わたしたちの時間もまた、同じく一勢に動き出す。
わたしが耐えに耐えた我慢を解放して思いっきりステッキを振り下ろしたそのときと。
バケモノたちがとうとう欲望に負けてわたしに向かって殺到してきたそのときが。
でも結果はまったく違う。
わたしは左足を一歩前へと踏み込んだ。
そのままわたしの真正面に向かってきたバケモノの頭へと、貯めに貯めた飢えをのせ思い切りステッキを振り下ろす。
こういうのは限界まで我慢して貯めてから発散したほうが気持ちがいいと、何処かで聞いて何かで読んだ。
果たしてそれがどれくらいのものなのか。期待をこめて殺してあげる。
バケモノは咄嗟に腕で頭を庇ったけど、そんなの全然意味ないよ。
わたしは庇った腕から足の先までバケモノの体が押し潰されてひしゃげていく感触を楽しみなが、地面にステッキを打ち付ける。
さっきと同じドッカンと大きな音と一緒に陥没した地面の真ん中に、ベチャリと張り付く肉の残骸。
耐えに耐えた我慢の果てに放った最初の一発は、ゾクゾクと身震いするほど最っ高に気持ちがよかった。
失敗したお菓子みたいに甘いだけの甘すぎる痺れに、脳どころか全身が溶けてとろけて灼けつきそうだ。
わたしはその余韻を存分に堪能しながら動作と稼働を止めはしない。
肉の残骸を引っ掛けたまま地面に突き刺さったステッキを支点にし、振り下ろした勢いのまま、テレビで見た棒高跳びの要領で前に向かって空中で縦回転。
そうしてバケモノたちの包囲網を、力すくで食い破って抜け出して背中の見える位置をとる。
バケモノたちはわたしの動きについてこれず、顔を突き合わせてお見合い状態。
しかもわたしが揺らしてへこませた地面に足をとられて、大きく体勢をくずしてる。
ああ、そんなに殺してほしいなら早く言ってくれればいいのに。
そしてボールが地面から跳ね返るみたいに、着地と同時に次のごはんに飛びかかる。
わたしに快感を味あわせてくれるとっても美味しいごはんへと。
だから、こんな楽しい気持ちになったのはきっとうまれて初めてだ。
もしかしたら生れて初めてかもしれない。
心が軽くてどうしよもない。浮足立ってしかたない。ちょっとジャンプしただけで月まで行けそうな気分を止められない。
肌の下を虫が這いずり回るような、ウズウズとした高揚をおさえられない。
首輪を引かれ急き立てられたような、ウキウキとした興奮をせきとめられない。
心臓が時計のついた爆弾に変わったような、ドキドキとした熱狂をさまたげられない。
もう、我慢なんてしてられない。
自分がいったい何なのか、いまの自分がナニになったのか、ようやくわかったんだから。
わたしは、魔法少女になったんだから。
わたしだけの、魔法があったんだから。
そのことを理解して、その実感がわいてきた。
そしてその喜びと悦びが、わたしの貧相な胸がはちきれそうなほど心のなかを満たしてく。
わたしの出来の悪い頭がわれそうなほど、脳のなかを駆け巡る。
年頃の女の子が新しい服や靴にときめいて、おしゃれをして出かけたくなるように。
試してみたくてたまらない。使ってみたくてしょうがない。
わたしにできることをしてみたい。わたしのやるべきことをやってみたい。
できるだけのことをできる限りしてみたい。やれるだけのことやれる限りをやってみたい。
あの気持ちよさを得るために。あの高鳴りを感じるために。そしてあの快感を味わうために。
だから。
殺す。
そのために。
殺す。
わたしの目の前で群がっているバケモノたちを。
何が何でも、殺さなきゃ。
わたしにがっついてきたのは足下で潰れてる一匹だけ。
他は爪をギチギチ、牙をガチガチ鳴らして囃してるだけでこっちにこない。
意外と消極的で照れ屋なのかな。
それともわたしはこの子ほど、魅力的じゃないのかな。
でも大丈夫、安心して。わたしがそっちに行くからね。
目に入っているけど手が届かないなら、自分で向かっていけばいい。
手を伸ばせば届くまで。わたしの気持ちが届くまで。
助けるときには決して動かなかったのに、殺すとなったら平気で進む。
これがいまのわたしの姿。これだけがいまのわたしのやり方。
そういうわけで。
こんな気持ちで何かと戦うのはきっとこれが初めてだ。
この気持ちを忘れないよう、ちゃんと慣れておかなくちゃ。
これからもこの気持ちを持ち続けていくために。
このさきもこんな気持で殺し続けていくために。
そしてわたしは緑の目がまたなにか言い出す前に、バケモノたちに向かって歩き出す。
さっきからわたしの我慢も限界だった。
でも駄目、まだ駄目。耐えろわたし。
一歩一歩はやる心を踏みつけるように、ゆっくりと地面を踏みしめる。
そのたびに高いヒールがカツーンカツーンと鐘のような音を響かせる。
それは時を刻む音。
待ちわびたときが、すぐそこまできていることを告げる福音。
そうしてわたしが前に出ると、やっとバケモノたちが動き出しわたしをぐるりと取り囲む。
いままでの人生で誰かに何かにこんな風に囲まれたのは初めてだ。
初めての相手がこんなバケモノたちなのは、まあこの際どうでもいいや。
女にとって初めては、そんなに大事なものじゃない。
しかしどうしてこんなでも、雄はやっぱり男だね。
上げ膳据え膳目の前に、食いつかつずにはいられない。
でもでも果たして、食べられちゃうのはどっちかな?
そのままわたしたちの間で時間が止まる。
でも静止と静寂は一瞬だけ。
わたしがさっきと同じくステッキを肩に担いで構えるとき。
バケモノたちが涎を垂らしながら後ろ足を弛めるとき。
それがピッタリ同時だった。
そして血のよう昏い夕焼けが澄んだ夜の藍色に変わり始めたとき。
わたしたちの時間もまた、同じく一勢に動き出す。
わたしが耐えに耐えた我慢を解放して思いっきりステッキを振り下ろしたそのときと。
バケモノたちがとうとう欲望に負けてわたしに向かって殺到してきたそのときが。
でも結果はまったく違う。
わたしは左足を一歩前へと踏み込んだ。
そのままわたしの真正面に向かってきたバケモノの頭へと、貯めに貯めた飢えをのせ思い切りステッキを振り下ろす。
こういうのは限界まで我慢して貯めてから発散したほうが気持ちがいいと、何処かで聞いて何かで読んだ。
果たしてそれがどれくらいのものなのか。期待をこめて殺してあげる。
バケモノは咄嗟に腕で頭を庇ったけど、そんなの全然意味ないよ。
わたしは庇った腕から足の先までバケモノの体が押し潰されてひしゃげていく感触を楽しみなが、地面にステッキを打ち付ける。
さっきと同じドッカンと大きな音と一緒に陥没した地面の真ん中に、ベチャリと張り付く肉の残骸。
耐えに耐えた我慢の果てに放った最初の一発は、ゾクゾクと身震いするほど最っ高に気持ちがよかった。
失敗したお菓子みたいに甘いだけの甘すぎる痺れに、脳どころか全身が溶けてとろけて灼けつきそうだ。
わたしはその余韻を存分に堪能しながら動作と稼働を止めはしない。
肉の残骸を引っ掛けたまま地面に突き刺さったステッキを支点にし、振り下ろした勢いのまま、テレビで見た棒高跳びの要領で前に向かって空中で縦回転。
そうしてバケモノたちの包囲網を、力すくで食い破って抜け出して背中の見える位置をとる。
バケモノたちはわたしの動きについてこれず、顔を突き合わせてお見合い状態。
しかもわたしが揺らしてへこませた地面に足をとられて、大きく体勢をくずしてる。
ああ、そんなに殺してほしいなら早く言ってくれればいいのに。
そしてボールが地面から跳ね返るみたいに、着地と同時に次のごはんに飛びかかる。
わたしに快感を味あわせてくれるとっても美味しいごはんへと。
だから、こんな楽しい気持ちになったのはきっとうまれて初めてだ。
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