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邂逅、そして会敵の朝✗40
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不味い、マズイ、まずい、MAZUI!
やってしまったどうしよう。
どうしてわたしはこうなのか。
どうしてここぞというときに、こんな凡ミスをしてしまうのか。
あそこは私にとっての分水嶺。
絶対に間違ってはいけない局面だったはずなのに。
私は後悔の嵐に苛まれながら、心のなかで頭を抱える。
どうすればこの事態を乗り越えられる?
なにをすればこの状況を切り抜けられる?
アーサの魂よ、いまこそ私の心に宿れ。
アーサならば魂だろうと肉体だろうと、私はいつでもウェルカムだ。
だがいまだけは、ちょっとだけ常と事情が違う。
私は欲しいのだ。
勿論私がアーサ自身の肉体も魂も心も何もかもを欲っしていることは、いまさら言わずもがなである。
しかしいまの私に必要なものは、残念ながらそうではない。
いまの私が求めるべきものは、無念ながら違うのだ。
私にいま必要な、私が求めるべきアーサの素質。
それこそが私の目の前で何度も披露してくれた、アーサ特有の切り替えの速さだ。
心の切り替えが速いということは、同時に頭の回転も速いことを意味している。
故に、私は欲しいのだ。
アーサの脳と同じrpmが。
その回転数がもたらすであろう、この絶体絶命のピンチから脱却するための妙案を。
頼みます! ちらっとでもいいので頭を過ぎってください!
お願いします! ヒントだけでもいいので何かが天から降ってきてきてください!
しかしどれだけ願い、どれだけ望み、幾度も何度も自問自答を重ねても答えなんて一向にでてこない。
どうしてかと自分自身に問うてみれば、その問題の答えならば瞬時に弾きだされたしまった。
この現状は、私がうっかり勢い余ってしまったせいで招いたもの。
それを私自身の手で解決しようなどとは、マッチポンプもいいところだ。
さらになおタチが悪いのは、事の始まりが嘘から始まっているということ。
この状況を打開するには、嘘を嘘で塗り固めなければならないこと。
言い訳に言い訳を重ねなければならないことだ。
そんなもの、一瞬で崩れ去るのは目に見えている。
これこそまさに、火を見るより明らかだ。
中身のない砂の城など、ひとつ波がくれば跡形もなく消え去ってしまう。
そして何より厄介なのは、これは私ひとりだけの問題ではないということ。
自己解決し、自己完結を為し、自己終了させる。
そうやって、自分ひとりで円環の環をとじることが出来ないということだ。
何故ならこの問題に関わるのは、私ひとりではないからだ。
私たちの上官にして、この小隊の部隊長。
みんなから恐れられ怖がられながら、それでも慕われ頼られる。
私も個人的に純粋な尊敬と敬愛の念を抱くひと。
ヴァルレカラッド・イーソス隊長が、この問題にはからんでいるからだ。
そのヴァルカ自身は、感情の読めない無表情のままに私をじっと見詰めている。
その視線に晒されているだけで、私は背中の冷や汗が止まらない。
だらだらと、背中どころか額からすら汗が滲んできた。
まるで鏡の前に置かれたガマガエルだ。
そうしてヴァルカはひとつ頭を振ると、最年長者の貫禄たっぷりにこの問題の首謀者の名を呼んだ。
「キルエリッチャ・ブレイブレド隊員」
「はっ、はい!」
いっそ優しいとさえ言える、ヴァルカの抑揚のない平板な声。
だからこそ、恐ろしすぎて怖すぎる。
その恐怖の声をかけられたとき、私は自分の肩がビクリと震えたことを自覚した。
もう少しこう何というか、手心というか・・・・・・・・・。
返事と一緒に、心臓が口から飛び出るかと思った。
だけどこの先のことを思えば、そうなっていたほうが遥かに楽だったかもしれない。
というよりも、全ては私が早く楽になりたいがために起こしてしまったことなのだが。
「随分と元気が良さそうだが大丈夫か? 何なら私自ら、お前のあらゆる悪いところをあますところなく精密に検査してやってもいいのだぞ?」
だけどこのときの私は、自分が楽になりたいがために自分の首を締めるという、明らかに間違った選択肢を決断していた。
やってしまったどうしよう。
どうしてわたしはこうなのか。
どうしてここぞというときに、こんな凡ミスをしてしまうのか。
あそこは私にとっての分水嶺。
絶対に間違ってはいけない局面だったはずなのに。
私は後悔の嵐に苛まれながら、心のなかで頭を抱える。
どうすればこの事態を乗り越えられる?
なにをすればこの状況を切り抜けられる?
アーサの魂よ、いまこそ私の心に宿れ。
アーサならば魂だろうと肉体だろうと、私はいつでもウェルカムだ。
だがいまだけは、ちょっとだけ常と事情が違う。
私は欲しいのだ。
勿論私がアーサ自身の肉体も魂も心も何もかもを欲っしていることは、いまさら言わずもがなである。
しかしいまの私に必要なものは、残念ながらそうではない。
いまの私が求めるべきものは、無念ながら違うのだ。
私にいま必要な、私が求めるべきアーサの素質。
それこそが私の目の前で何度も披露してくれた、アーサ特有の切り替えの速さだ。
心の切り替えが速いということは、同時に頭の回転も速いことを意味している。
故に、私は欲しいのだ。
アーサの脳と同じrpmが。
その回転数がもたらすであろう、この絶体絶命のピンチから脱却するための妙案を。
頼みます! ちらっとでもいいので頭を過ぎってください!
お願いします! ヒントだけでもいいので何かが天から降ってきてきてください!
しかしどれだけ願い、どれだけ望み、幾度も何度も自問自答を重ねても答えなんて一向にでてこない。
どうしてかと自分自身に問うてみれば、その問題の答えならば瞬時に弾きだされたしまった。
この現状は、私がうっかり勢い余ってしまったせいで招いたもの。
それを私自身の手で解決しようなどとは、マッチポンプもいいところだ。
さらになおタチが悪いのは、事の始まりが嘘から始まっているということ。
この状況を打開するには、嘘を嘘で塗り固めなければならないこと。
言い訳に言い訳を重ねなければならないことだ。
そんなもの、一瞬で崩れ去るのは目に見えている。
これこそまさに、火を見るより明らかだ。
中身のない砂の城など、ひとつ波がくれば跡形もなく消え去ってしまう。
そして何より厄介なのは、これは私ひとりだけの問題ではないということ。
自己解決し、自己完結を為し、自己終了させる。
そうやって、自分ひとりで円環の環をとじることが出来ないということだ。
何故ならこの問題に関わるのは、私ひとりではないからだ。
私たちの上官にして、この小隊の部隊長。
みんなから恐れられ怖がられながら、それでも慕われ頼られる。
私も個人的に純粋な尊敬と敬愛の念を抱くひと。
ヴァルレカラッド・イーソス隊長が、この問題にはからんでいるからだ。
そのヴァルカ自身は、感情の読めない無表情のままに私をじっと見詰めている。
その視線に晒されているだけで、私は背中の冷や汗が止まらない。
だらだらと、背中どころか額からすら汗が滲んできた。
まるで鏡の前に置かれたガマガエルだ。
そうしてヴァルカはひとつ頭を振ると、最年長者の貫禄たっぷりにこの問題の首謀者の名を呼んだ。
「キルエリッチャ・ブレイブレド隊員」
「はっ、はい!」
いっそ優しいとさえ言える、ヴァルカの抑揚のない平板な声。
だからこそ、恐ろしすぎて怖すぎる。
その恐怖の声をかけられたとき、私は自分の肩がビクリと震えたことを自覚した。
もう少しこう何というか、手心というか・・・・・・・・・。
返事と一緒に、心臓が口から飛び出るかと思った。
だけどこの先のことを思えば、そうなっていたほうが遥かに楽だったかもしれない。
というよりも、全ては私が早く楽になりたいがために起こしてしまったことなのだが。
「随分と元気が良さそうだが大丈夫か? 何なら私自ら、お前のあらゆる悪いところをあますところなく精密に検査してやってもいいのだぞ?」
だけどこのときの私は、自分が楽になりたいがために自分の首を締めるという、明らかに間違った選択肢を決断していた。
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