ゆえに赤く染まった星にひとりとなって

久末 一純

文字の大きさ
上 下
28 / 45

邂逅、そして会敵の朝✗25

しおりを挟む
 すっかりとしおらしくなったアーサを目の前にして、私は自分の成した結果と成果を確認する。
 よしよし、どうやら仕込みは上々だ。
 あとは仕上げを御覧じろ、といったところか。
 うん、いいじゃないか。
 どうやら、ここが私の分水嶺のようだ。
 私はこの状況にそう当たりをつけ、次のステップに向けて動きだした。
「それではアーサの様子も落ち着いたようだし、そろそろ作業を再開しようか」
 私は自分の言葉が嫌味や皮肉にならなよう細心の注意を払いながら、優しくアーサの背を押した。
「別にあたしはいつも通りだったけど・・・・・・・・・、でもそうだね。早くしないとみんなに遅れちゃう。あっ、でもキルッチにはひとつ言っておくことがあるからね」
「何だい、アーサ?」
 アーサは目に力を込め、私の顔を真っ直ぐ見ながら高らかに宣言した。
「絶対に服は脱がないからね!」
 ・・・・・・・・・何・・・・・・・・・だと・・・・・・・・・。
 それじゃあ私は・・・・・・・・・、いままで一体・・・・・・・・・何のために・・・・・・・・・。
 私のしてきたことは・・・・・・・・・、全て無駄だったとでも言うのか・・・・・・・・・。
 私は心のなかで滂沱と赤い涙を流しながら、突きつけられた無情な宣告を受け容れるしかなかった。
 そのためには私の持てる全ての精神力を必要とし、なおかつ消費し尽くしたが。
 そうして私は顔で笑って背中で泣いた。
 それでも私はきりっとした姿勢を何とか崩さず保ったまま、アーサからの悲しい宣告にを混じえて応えた。
「ハッハッハ。そんなことは当然じゃないか、アーサ。スーツの確認と点検作業をしているというのに、肝心のスーツを脱いでしまっては元も子もないじゃないか。まったく、アーサはそそっかしい子だなぁ。だが、そうだな。そう例えば、だ。これはまったくの仮の話に過ぎないのだが、もしそんなうれ・・・・・・・・・ごほん、大変な状況になってしまったら私は、。そんな状況は、
 私はしれっとそれとなく、言葉のなかに自分の願望を織り込んだ。
 そしてそれとはなしにさり気なく、さらっと自分の言葉を偽った。
 私は上の口では現実に反発するが、下の口は真実に忠実だ。
 それが私の数少ない美徳のひとつであり、数限りない悪徳のひとつであると認識している。
 しかし例えでも仮でもなく、本当にそうなったならどれだけの幸せが私の心に満たされることか。
 いかんな、想像するだけで心がサタデー・ナイト・フィーバーだ。
 そのときが来たならば、それはもう隅から隅まで念入りに確認し点検しなければなるまい。
 私という一個の存在の全てを懸けて。
 アーサの穴といわず筋といわず、体中を舐め回すようにをするのが私自身にかせられた使命であり義務となる。
 だがこの願望を真実に改変し、現実に転換するには果たしてどうすればいいのだろうか。
 八騎の敵を全て倒して最後まで生き残り、バトルロイヤルに勝利するればいいのか。
 それとも星の入ったボールを七つ集めて、出てきた龍にお願いすればいいのか。
 はたまた、この世の真理の扉を開けばいいのか。
 どれが一番確実性の高い手段なのか、頭のなかで吟味していると。
「キルッチ、それってさっきあたしが言ったことと同じじゃん」
 とアーサに突っ込まれてしまった。
 アーサから突っ込まれる。
 ああ、なんと美しい字面だろうか。
 しかし、逆に私がアーサに突っ込むというのも何とも捨てがたく素晴らしい。
 いつか実現しないかなぁ。
 それこそ実現するならば、私はいかなる手段を取ることも辞さないのは言うまでもない。
「ほら、キルッチ。作業の続きするんでしょ。
 そんな駄目人間の見本のような思考を、アーサが衝撃のひと言で断ち切った。
「あ、ああ。そうだな。早く、そう、
 そうして私はアーサに促さるまま誘惑、その魅惑のくびれへと手を伸ばしていったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...