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邂逅、そして会敵の朝✗23
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「ではそういう訳だから、そろそろ作業を再開するとしようか。アーサ」
私は怯えて震える小動物に接するように、出来る限り優しい声でアーサを促す。
「なんでぇ・・・・・・・・・、どうしてぇ・・・・・・・・・」
それでもアーサは、まだ若干以上に引いていた。
私は純粋に疑問に思う。
アーサは、何をそんなに恐れているのだろうか。
何がそれほど怖いのだろうか、と。
しかしそんなアーサの様子は、それはそれで私の庇護欲と嗜虐心を大いにそそってくれる。
最早私を誘っている言っても過言ではないほどにとっても可愛らしく、また途轍もなく愛らしい姿なのだ。
まるで、私の我慢の限界値を試しているかのようだ。
見ているだけで、色々と溢れ落ちてしまいそうだ。
見ているだけで、体の中を虫が這い回るようにウズウズしてくる。
故に、見ているだけなんて耐えられない。
いますぐ抱きつき頬ずりしたい。
そのまま口づけの雨を降らせたい。
アーサの体のいたるところを撫でくりまわし、可憐な声を聞いてみたい。
私の両手が、光りを反射し濡れるまで。
そんなことを能面の如き表情で考えていると、何やらアーサが小声で呟いている言葉が耳に届いてきた。
「そういう訳って、どういう訳なの。そこからどんな言い訳がキルッチの脳内で展開されて、こんな成り行きになってそんな言葉がでてくるのぉ。怖いよ恐いよ、あたしにはさっぱり訳分かんないよぉ。目の前にいるのはキルッチだよね? 私の知ってるキルッチだよね? いつの間にか入れ替わった、沼男とかドッペルゲンガー的な謎のおばけとかじゃないんだよね? あれ? でもそっちのほうがコワイのかも。そもそもあたしはキルッチのことを理解していたの? それとも後解していたの? もしかしてキルッチはあたしの知らない間にあたしの理解を超えて、行き着くところまで行き着いてしまったの? もう、何が何だか訳分かんないよぉ」
ああ、これはいけない。
どれだけ可愛らしく愛らしくても、アーサを不安にさせて不安定にすることは私の本意ではない。
この姿のままのアーサを箱に閉じ込め、ずっと眺めて愛でていたいといのは本音だが。
「アーサ」
「はひっ!」
アーサは私の呼びかけに、ビクッと肩をすくめて上ずった声で返事をする。
そんなところが実に私の心にくすぐって堪らないよ、アーサ。
だがいまは、アーサを落ち着けることが先決だ。
「大丈夫だよ、アーサ。いま君の目の前にいる私は、君と寝食を共にし、君と共に戦場を駆け、君と共に笑いあった、君のよく識るキルエリッチャ・ブレイブレドだ。信じてくれとは言わない。だがアーサ、君からの信頼に全力で応えることを私は心から君に誓おう」
そう言って私は両手を広げる。
「ほ、ほんとうぉ?」
「本当だとも。さあ、おいで。アーサ。真実は、君自身で確かめてごらん」
「う、うん・・・・・・・・・」
私の言葉を受けたアーサはおっかなびっくり、しかし一歩ずつ確実に私に向かって近づいてくる。
そして私の胸にそっと顔を埋めたところで、その柔らかな体を優しく抱きとめた。
「ほら、コワイことなんて何もないだろう?」
「うん、本当だ。いつもの、あたしの知ってるキルッチの匂いだ」
いつも通りの戻った声に、少し涙を滲ませて応えるアーサ。
その背と髪を優しく撫でながら、私はアーサの肩に顎を載せる。
計画通り。
という訳ではまったくない。
しかし私は図らずとも自分を疑わせることにより、より深くアーサの信頼を改にすることに成功したのだった。
私は怯えて震える小動物に接するように、出来る限り優しい声でアーサを促す。
「なんでぇ・・・・・・・・・、どうしてぇ・・・・・・・・・」
それでもアーサは、まだ若干以上に引いていた。
私は純粋に疑問に思う。
アーサは、何をそんなに恐れているのだろうか。
何がそれほど怖いのだろうか、と。
しかしそんなアーサの様子は、それはそれで私の庇護欲と嗜虐心を大いにそそってくれる。
最早私を誘っている言っても過言ではないほどにとっても可愛らしく、また途轍もなく愛らしい姿なのだ。
まるで、私の我慢の限界値を試しているかのようだ。
見ているだけで、色々と溢れ落ちてしまいそうだ。
見ているだけで、体の中を虫が這い回るようにウズウズしてくる。
故に、見ているだけなんて耐えられない。
いますぐ抱きつき頬ずりしたい。
そのまま口づけの雨を降らせたい。
アーサの体のいたるところを撫でくりまわし、可憐な声を聞いてみたい。
私の両手が、光りを反射し濡れるまで。
そんなことを能面の如き表情で考えていると、何やらアーサが小声で呟いている言葉が耳に届いてきた。
「そういう訳って、どういう訳なの。そこからどんな言い訳がキルッチの脳内で展開されて、こんな成り行きになってそんな言葉がでてくるのぉ。怖いよ恐いよ、あたしにはさっぱり訳分かんないよぉ。目の前にいるのはキルッチだよね? 私の知ってるキルッチだよね? いつの間にか入れ替わった、沼男とかドッペルゲンガー的な謎のおばけとかじゃないんだよね? あれ? でもそっちのほうがコワイのかも。そもそもあたしはキルッチのことを理解していたの? それとも後解していたの? もしかしてキルッチはあたしの知らない間にあたしの理解を超えて、行き着くところまで行き着いてしまったの? もう、何が何だか訳分かんないよぉ」
ああ、これはいけない。
どれだけ可愛らしく愛らしくても、アーサを不安にさせて不安定にすることは私の本意ではない。
この姿のままのアーサを箱に閉じ込め、ずっと眺めて愛でていたいといのは本音だが。
「アーサ」
「はひっ!」
アーサは私の呼びかけに、ビクッと肩をすくめて上ずった声で返事をする。
そんなところが実に私の心にくすぐって堪らないよ、アーサ。
だがいまは、アーサを落ち着けることが先決だ。
「大丈夫だよ、アーサ。いま君の目の前にいる私は、君と寝食を共にし、君と共に戦場を駆け、君と共に笑いあった、君のよく識るキルエリッチャ・ブレイブレドだ。信じてくれとは言わない。だがアーサ、君からの信頼に全力で応えることを私は心から君に誓おう」
そう言って私は両手を広げる。
「ほ、ほんとうぉ?」
「本当だとも。さあ、おいで。アーサ。真実は、君自身で確かめてごらん」
「う、うん・・・・・・・・・」
私の言葉を受けたアーサはおっかなびっくり、しかし一歩ずつ確実に私に向かって近づいてくる。
そして私の胸にそっと顔を埋めたところで、その柔らかな体を優しく抱きとめた。
「ほら、コワイことなんて何もないだろう?」
「うん、本当だ。いつもの、あたしの知ってるキルッチの匂いだ」
いつも通りの戻った声に、少し涙を滲ませて応えるアーサ。
その背と髪を優しく撫でながら、私はアーサの肩に顎を載せる。
計画通り。
という訳ではまったくない。
しかし私は図らずとも自分を疑わせることにより、より深くアーサの信頼を改にすることに成功したのだった。
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