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インテルメッツォ-28 勝敗/小杯
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「お断りさせて頂こう」
男の応えはただ一言、歩んだ道に打ち据えられた強き意志と共にある。
その一呼吸で抜き放たれた言の葉は、何者にも絶てぬ覚悟の刃。
たとえそれが世界最強の剣だろろと断つことは叶わぬ程に、例外などこの世界に一片たりとも存在しない。
この神域の扉を潜るその遥か以前より、別れてしまった二人の心。
決して重ならぬ二つの道、何処までも交わらぬ一つの平行線。
その二つが交わるとき、それが一つに重なるときこそが。
鮮烈なる緋色が眩しく咲き乱れ、何れが淡く儚く散るときなのだと。
男は心に、決めたのだ。
最後まで絶ち切れることが叶わなかった、後悔の縁を引き摺りながらも呑み込んで。
身体の中で、臓腑を灼き焦がす悔恨と悔悟の想い。
その昏く燃える炎の灯りを、少女と同じ黒い瞳の奥に映しながら。
「やはり、そうなるか。そうなってしまうのか。お前の応えは、もう変わることはないのだな。お前がその言に込めた決意と決断を曲げない限り、俺はお前の敷いた道だけを歩むしかないのだろうな」
そう呟く男の声には、多分に諦念と遺憾が滲んでいた。
「それの一体何がご不満なのですか?」
男が何を言っているのか心底から解らぬといった様子で、少女は小首を傾げて問い掛ける。
「あなたはわたしの話の一体何処に、どのような不服がおありだというのですか?」
男の想いになど心の底から理解をしないという風情を見せて、少女は唇を尖らせて問い詰める。
「そんなに難しいことなど何も話していないはずなのですけどねぇ。ただあなたが折れて下されば、それだけで全て済むお話なのですから。何もわたし達の前で腰も膝を折って傅けと言っている訳ではありません。必要ないものはその信念、その信条、その信義。折って頂くのはあなたの心だけで宜しいのですから。ただしそれは必ずあなたの手で為して頂かなければなりませんが。その程度でしたらいくらでも出来ますよね?」
それはまさしく他者のあらゆるものを断ってきた剣の言葉。
「その言葉で、漸く真に解ったよ。お前が何も解っていないということが。ならば問われた全てに対する俺の応えを変えることは、お前には何ひとつ出来はしないよ。などと言ったら流石のお前も怒るのかな?」
男は挑むように、あるいは試すように小さな笑みと共に応えと問いを同時に返す。
「そのようなことでいちいち目くじらを立てたりは致しませんよぉ。ただあなたが解っていないと仰るならば、わたしにも解るようにご説明なされる責任があるのではないかと、そう思うだけですよぉ。ええ、本当にただそれだけ。たったそれだけしか思うことはありませんからぁ」
少女の言葉は相変わらずの巫山戯たもの。
だがとぼけたように絡みつくその口調が、何より少女の真意を現している。
心中では噛み付かんばりに牙を立てているのは明らかだ。
微かに、だが確かに鋭さを増して吊り上がった眦を見れば、その胸の裡を推し量ることは火を見るよりも尚容易い。
この少女以外の人間であったなら、それを察するなど誰にでも可能な他愛のないことでしかない。
これまで泰然として盤石であった少女の心。
その見て取れる程に心揺らいだ瞬間を、男は見逃しはしなかった。
この一手を打てる決定的な好機を、伏して待っていたのだから。
「今更説明しないと解らんと言うのなら、それは最早手遅れだ。今からどれだけ言葉を重ねても、伝わるものは何もないだろう。だがそれ故に、勝敗は既に決している。この勝負、お前の負けだよ。らしくもなく仲間になれなどと、堪えきれずに俺の応えを求めたそのときからな」
男の応えはただ一言、歩んだ道に打ち据えられた強き意志と共にある。
その一呼吸で抜き放たれた言の葉は、何者にも絶てぬ覚悟の刃。
たとえそれが世界最強の剣だろろと断つことは叶わぬ程に、例外などこの世界に一片たりとも存在しない。
この神域の扉を潜るその遥か以前より、別れてしまった二人の心。
決して重ならぬ二つの道、何処までも交わらぬ一つの平行線。
その二つが交わるとき、それが一つに重なるときこそが。
鮮烈なる緋色が眩しく咲き乱れ、何れが淡く儚く散るときなのだと。
男は心に、決めたのだ。
最後まで絶ち切れることが叶わなかった、後悔の縁を引き摺りながらも呑み込んで。
身体の中で、臓腑を灼き焦がす悔恨と悔悟の想い。
その昏く燃える炎の灯りを、少女と同じ黒い瞳の奥に映しながら。
「やはり、そうなるか。そうなってしまうのか。お前の応えは、もう変わることはないのだな。お前がその言に込めた決意と決断を曲げない限り、俺はお前の敷いた道だけを歩むしかないのだろうな」
そう呟く男の声には、多分に諦念と遺憾が滲んでいた。
「それの一体何がご不満なのですか?」
男が何を言っているのか心底から解らぬといった様子で、少女は小首を傾げて問い掛ける。
「あなたはわたしの話の一体何処に、どのような不服がおありだというのですか?」
男の想いになど心の底から理解をしないという風情を見せて、少女は唇を尖らせて問い詰める。
「そんなに難しいことなど何も話していないはずなのですけどねぇ。ただあなたが折れて下されば、それだけで全て済むお話なのですから。何もわたし達の前で腰も膝を折って傅けと言っている訳ではありません。必要ないものはその信念、その信条、その信義。折って頂くのはあなたの心だけで宜しいのですから。ただしそれは必ずあなたの手で為して頂かなければなりませんが。その程度でしたらいくらでも出来ますよね?」
それはまさしく他者のあらゆるものを断ってきた剣の言葉。
「その言葉で、漸く真に解ったよ。お前が何も解っていないということが。ならば問われた全てに対する俺の応えを変えることは、お前には何ひとつ出来はしないよ。などと言ったら流石のお前も怒るのかな?」
男は挑むように、あるいは試すように小さな笑みと共に応えと問いを同時に返す。
「そのようなことでいちいち目くじらを立てたりは致しませんよぉ。ただあなたが解っていないと仰るならば、わたしにも解るようにご説明なされる責任があるのではないかと、そう思うだけですよぉ。ええ、本当にただそれだけ。たったそれだけしか思うことはありませんからぁ」
少女の言葉は相変わらずの巫山戯たもの。
だがとぼけたように絡みつくその口調が、何より少女の真意を現している。
心中では噛み付かんばりに牙を立てているのは明らかだ。
微かに、だが確かに鋭さを増して吊り上がった眦を見れば、その胸の裡を推し量ることは火を見るよりも尚容易い。
この少女以外の人間であったなら、それを察するなど誰にでも可能な他愛のないことでしかない。
これまで泰然として盤石であった少女の心。
その見て取れる程に心揺らいだ瞬間を、男は見逃しはしなかった。
この一手を打てる決定的な好機を、伏して待っていたのだから。
「今更説明しないと解らんと言うのなら、それは最早手遅れだ。今からどれだけ言葉を重ねても、伝わるものは何もないだろう。だがそれ故に、勝敗は既に決している。この勝負、お前の負けだよ。らしくもなく仲間になれなどと、堪えきれずに俺の応えを求めたそのときからな」
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