Lovely Eater Deadlock

久末 一純

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一番大事な仕事の基本~その二十一~

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 何故こうなってしまったのだろうか。どうしていればこうはならなかったのだろうか。
 、何時も何時でも何度でもどうしよもなく否が応にも頭に浮かんできてしまう女々しい疑問と無為な憧憬。
 以前から姉に始まりその他さまざまな相手から言われ指摘されてきたことだが、どうやら俺は後悔だけをするばかりで反省も学習もしないらしい。
 自分ではそんな認識は全くなく、あらゆる経験を全て活かして次に繋げているだった。
 だがそこに一度でも結果が伴ったことがあったのかと訊かれれば、首を横に振るしかなく相手の指摘には縦にしか振らざるをえない。
 何より誰より姉からそう言われ、今でも変わることなく指摘されているのだ。きっと今でも直ることなくそのままなのだろう。
 ならば事が済んだあとにそして終わってしまったあとに、何を考えようと何を思おうと、そんなことは無意味でしかないことは分かりきっているとだというのに。
 たとえ正しい手順を踏襲し、適切な工程を経て、的確に行動に移そうとも、それはどこかでなにかが間違っているということである。
 ならば答えは簡単で、そんなものは探すまでもなければ見直すまでもなく、
 今回も、今まさに、今までがそうだったことを思い出すには十分な状況だった。
 この膠着した状態を打開するため、そしてとにかく言葉を交わし、会話を成立させ、意志の疎通を図るという困難極まる難易度の指示を達成するため最善の選択をしただった。
 人間関係の構築における初期段階において最も重要な要素な一つである挨拶と自己紹介という自己紹介手段を採ったなのに、返ってきたのはより一層の警戒と怪訝な視線、そして不審と困惑の沈黙だった。
 もとよりこの無駄に破棄されていくだけの時間をなんとか有意義なものへと変異させ事態を進展させるべく打った会心の一手。
 と思ったのだが結果はご覧の有様。
 元の木阿弥というならまだいい。
 しかし困難を乗り越えるためにこちらから仕掛けた結果、難易度が上がるどころかさらに深まった。
 まるで蟻地獄のよう、というよりは自分の足下に自分で穴を掘っているというほうが近い。
 ああ、これが世に云う墓穴を掘るというものか。真逆こんなところで学ぶことになるとは。
 それならこのまま埋めてくれれば楽なんだがなと思った矢先、微かに耳に届く音があった。
 それは沈黙と膠着を破る鋭く細い小さな針のようだった。
 しかしそのために元は丸く滑らかで柔らかなものを不自然さを持っていた。
 それは高く澄んでいながらも、長く風雨に晒された拭えぬ錆の浮いた声だった。
「こ……こんばんは。私はヴュセル。ヴュセル・フェプレイヒャー……です」
 警戒も怪訝も不審も困惑も変わることなく未だその全身に纏ったままだ。
 しかしその控えめな芯の通ったが彼女の被るに罅が入り、素顔を覗かせた初めての瞬間だった。
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