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第一章

第五話・共同生活が始まったらしい

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「それは?」
「一応私がマッピングしたものと、この洞窟の計画書!」

 子供が大人に褒めて欲しいなと思いつつ渡すような感じでそれを差し出して
来たのでホコリを払いながら苦笑いしつつ受け取る。

見るとまぁ部屋と同じような感じのぐちゃっとした線が掛かれていて、
唯一正解があるとすれば再度歩いて確認しなければならないと言う点だろうか。

そして所々に恐らくモンスターと思われるものが点在して描かれていた。
ナタリアは触媒ありとは言え巨大蟻ビッグアント動く骸骨スケルトン
それにブタの顔をしたオリジナルのモンスターも召喚していたので
魔術師としての才能はあるのは間違いない。

何だろうなぁ何処も彼処も惜しいという言葉しか出てこない。
ヴァンパイアとしての身体能力も高く魔術も素質素養があり見た目も愛嬌がある。

この壊滅的なセンスとあの汚部屋さえなければ何とでもなっただろうになぁ。

「……何か失礼な言葉を並べてないかしら? 頭の中で」
「いいえ滅相も御座いませんナタリア御嬢様。これは参考にさせて頂きますので悪しからずご了承くださいませ」

 ナタリアは首を傾げた後頷きこれからどうするかを聞いて来た。
何かいつの間にか一緒に居るのを僕が了承した形になっているのが気になるが、
今日はもう御腹も減ったし何かあれば別のところへ行けば良いやと思い
食事を先ずはしようと提案する。

「良いけど今から食材を調達しに行かなくちゃ」
「何処に?」

「この近くに湖があるからそこで魚を捕るかーその辺の唸る森の猪タイガボアを捕まえて解体するかー」
「そう言えばヴァンパイアって人の血を食料とするんじゃないのか?」

 僕の問いにドン引きしたような顔をして後退る。いや可笑しいだろ僕らからすれば
ヴァンパイアってのは人の生き血を啜るイメージしかないのに。

「まさかヴァンパイアが人の血を吸わないとでも?」
「てかさ、そんなのしょっちゅうしてたらアンタたちが滅ぶか私たちが滅んでるかどっちかじゃない? 吸血行為を行うとその人間は眷属になるしそうなると人間に戻せないんだから」

 ナタリアに正論を言われて押し黙る他無い。確かにその通りだ。
食事として人の血を吸うならヴァンパイアが生きてる限り止められないし
ナタリアが言う様な状況になるだろうけど現在そうはなっていない。

「自重してるんだねヴァンパイアも」
「ていうか元々が違うのよ。私たちは生きた人間の血に限定した覚えは無いのよ。新鮮な血なら何でも良いわけ。人間の血を吸うのはあくまでも眷属を増やしたい場合だけよ面倒だもの」

 吸血鬼は確かに能力は高いものの日中は行動出来ない為住処を探すのも大変だし
わざわざ地上で数の多い人間といざこざを起こしても仕方ないと言う。

「じゃあ何が目的で地上に?」
「うーん目的があるようでないのよね実は。私たちほぼ不死だからさ暇なのよね基本」

 それを聞いて唖然としつつも不死って大変だなぁとも思った。
人間ですら人生積み重ねて行くと退屈の方が増えるらしいのに
不死なら終わりが無い訳で。

「ナタリアも暇潰しにここに来たの?」
「えーっと、まぁそうね」

 答え辛そうに言うナタリア。まだあったばかりだから事情を話してはくれないか。

「僕の血を吸ったりしないでくれよな有能だからって」
「あら残念。でもアンタみたいな人を仲間に引き入れるなら別の手段を考えるわ眷属にしたら能力ダウンするだろうし。眷属って一見パワーアップして良いように思う人間も居るみたいだけど所詮は劣化ヴァンパイアだし制約もあるから、私がどうしても戦力を増やしたくて致し方なく消滅の危機になったら他の人間を吸血するけどね」

 僕らは入口へ向かって歩きながらそんな話をする。
とは言えお互い当たり障りのない会話しかしないので会話は途切れ途切れになる。

入り口を塞いでいた石壁の魔法ウォールロックを解いて出た後再度塞ぎ
僕らは森へと移動する。

「これアンタでしょやったの」

 極大波動魔法クロウブラスターで吹き飛ばした後を指さして言うので苦笑いして誤魔化した。
特に調査しに着たりする人間も無いのは近くの村か何かが襲われたからだろうと
ナタリアに告げると

「困ったわねあそこ調達先としては気に入ってたのに」

 首を竦めながら残念そうに言ってから歩き出す。どうやらナタリアはその村か何かから
生活用品を仕入れていたようだ。

物々交換かと尋ねるとあの洞窟の部屋の下に梯子で降りた場所に水晶などがあってそれを売って
お金に換えて購入していたらしい。

他にも小鬼ゴブリン小狼人コボルドとの取引の際は物々交換もあるようだ。

ユミル人ドワーフとの取引をする時が一番大変なのよねあいつら気難しくてさ。私の魅力にも全く反応しなくてオマケもしてくれないし」
ユミル人ドワーフは腕が良いからなぁ」

 ユミル人ドワーフは人間よりも鍛冶や工芸に秀でた才能を持つ
妖精の一族で気難しくて有名だ。

僕も一度仲間の付き添いで会った覚えがあるけどどう機嫌を取ったら良いのか
頭を悩ませたのを覚えている。
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