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第一章

第三話・ヴァンパイアと魔法使い

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突進を避けつつその時間を稼ぐ。さっきまでと違い広い場所で更に石柱もあるので
昔鍛えた逃走術が遺憾無く発揮出来たのも幸いし全く捕まらずに居られた。

魔法を使わないのはあっちは魔術でこっちは魔法だとエネルギーの減り方が違うからだ。
彼女は僕を監視はしていただろうから魔法使いであるのは承知しているだろう。

消耗戦になれば肉体的にヴァンパイアが有利にみえるけどやはり燃費の悪さからすると
人間とは言え魔法使いである僕に分がある。

特にヴァンパイアは種族的に肉体を強化して速攻で間合いを潰す接近戦を好む。
魔法は基本遠距離系なのでどうしても魔術寄りになってしまい
魔法を使用するのは無宗教というか魔界の神や王を信奉していない変わり者が
使う印象がある。

ちなみに魔術は触媒など代償を用いて行使する方法で魔法と言うのは何もない所から
火を出したり通常考えられる常識的な方法をすっ飛ばして行う方法だ。

勿論魔族の王や神は元より神様やそれに列する者たちも魔法を使っている。
ただそれらの方々はこの世界で暗躍はすれど表立って登場したりはしない。

何故ならどちらかが表立って何かをすると対立する側も出て来て直接交戦するようになり、
凄まじい破壊力の魔法を打ち合って星が壊れるので千年前に止めたと魔法を教えて貰った
御爺さんは言っていた。まぁ神様たちの力で全力でやられたらこんな星吹き飛ぶだろうな
と誰しもが思うだろう。

「くっ……流石化け物ね……こんな程度じゃどうにもならないか」
「分かっててそれで仕掛けて来たのは失礼だね君って」

 肉体を強化する魔法ってのもあるにはあるんだけど、見た目がブサイクなのでやりたくない。
なのでこういった場合は別の方法を取っている。

ちなみに人間側で肉体強化に特化しているのは神聖術で神を信仰している人々が使う。
信仰心を触媒として行使するので信徒で無ければ使えない。癒しの術もこのカテゴリー。

石壁の魔法ウォールロック

 僕の周りは石壁に囲まれる。それを彼女は叩いているけど僕の魔力が尽きるのが先か
彼女の魔力が尽きるのが先かの根競べになるだけだ。

魔術師と違い魔法使いなので体力は普通の人間よりも鍛えている。あまりムキムキになるのは
童顔なので好ましくなかったものの魔法を使う為に致し方なく鍛えた。

弱いふりをしつつ蔭で筋肉トレーニングをした日々が懐かしい。

「私を倒さないで良いのかしら?」
「うーん別に倒さなくても良いんだよね出て行ってくれればさ」

「何でアンタみたいな化け物がこんなところを欲しいのよ!」
「話せば長くなるから割愛するけどもう二度と面倒に巻き込まれたくないから死ぬまで引き籠りたい。その為にここは良さそうかなと思って」

 暫く沈黙が訪れる。僕としては今更だけどヴァンパイアを殺すと後が面倒なので
大人しく出て行ってくれればもうそれ以上求めはしないという考えに変わった。

自暴自棄になって面倒だから全て吹き飛ばしても良かったんだけど静かな余生を過ごしたいなら
面倒はなるべく避けた方が良いに決まってる。

そう言う風に考えられるようになったのは死ぬほど歩いて少し寝て精神的にも少し回復したからこそ
頭も回り始めたんだなと自分でも思った。

嫌な気持ちやショック、自暴自棄な面はまだあるけどそれでも何とかなっているんだから人間て凄いや。

「じゃあ分かったわ! アンタにも住処を分けてあげる!」
「却下。僕はもう誰とも関わり合いになりたくないんだよ。特に君みたいなはぐれヴァンパイアなんてどんな事情を隠してるか分かったもんじゃない」

 ナタリアが提案し僕が却下と理由を説明した後再度沈黙が訪れる。
まぁヴァンパイアの方が力あるんだし夜限定で動けば問題無いし城の一つくらい取れるだろう。

こんな洞窟に住んでる自体怪しいんだよなぁこの人。ヴァンパイアって日中が苦手ではあるけど
絶対に無理ではないし、暗がりを好むのかと思えば風通しが良くないとダメだし運動もしないと
動脈硬化になって危険だからとか健康に気を遣い過ぎな生き物だって本で読んだ。

「……私をどうしても追い出すって言うなら考えがあるわ」
「何?」

「外に出てここに魔法使いが居るぞって喚き散らしてやる」
「良いけど? 別に。入口をダイヤモンドで塞いでは入れないようにするから」

「穴掘って侵入するかも」
「なんでそこまでするのさ」

「魔法使いよ!? それも人間の。普通物珍しくて仲間にしたいって奴多いんじゃないの?」

 ……この子急に人の急所を突いて来たな。僕もそう思って魔法使いになったんだよな幼馴染の為に。
最初に適性検査を受けた時もダメで外法と呼ばれる方法を魔法使いの人にお願いして
その結果成功し魔法使いに無理やりなった。

外法と言うのは僕の目を取り出しこの世界に溢れる魔導元素エーテルを無理やり可視化と
吸収出来る様に変えて貰った。

元々の目を細工した後元に戻してからの数週間は地獄だった。激痛だけでなく頭の中に
聞いた覚えも無い声が木霊し僕をずっと罵倒したり蔑んだり憐れんだり笑ったりと言うのが
続き意識を失う以外は寝れなかったのを思い出す。
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