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二話 王様と魔王の出会い
しおりを挟む王子が産まれる前のお話です。
人を脅かす存在として迫害された魔族は随分と昔に絶滅したはずでした。
しかし、魔族を見たという報告が王様のもとに突如舞い込んできたのです。
最後の生き残りである魔族を魔王と呼び、人々は恐れました。
その魔族が何か問題を起こしたわけでもないのに民の不安だけが日々大きくなり、王様は仕方なく一人で報告にあった森へ偵察に向かいました。
王様は誰よりも強い剣技を身に付けていたので、いつの間にか民の間でこの偵察は『魔王討伐』として広まっていました。
×××
深い森を進むと、目撃証言と合致する小さな小屋を見付けました。
「ごめんください」
王様は腐りかけている木の扉を壊さないように恐る恐るノックしました。
素直に出てくるはずがないかと王様は思いましたが、あっさりと扉が開き、住民が出てきたのです。
「はい」
そこに現れたのは背の高い、艶やかな黒髪を揺らすとても美しい男で、王様は瞬時に心を奪われていました。
こんな経験が初めての王様は緊張で表情筋が強張り、目つきが悪くなってしまいます。
意図せず目の前の存在を睨み付ける形になってしまい、魔王は悲し気に下を向いてしまいました。
王様は慌てて魔王に声をかけます。
「そなた、名はなんという」
名前を聞いただけなのに、何故か魔王は更に悲しそうな顔をしました。
「さあ。もうずっと一人だから名前など必要なくて忘れてしまった。ただ生き長らえただけで人間からは魔王と呼ばれてしまうしな。お前だって、その剣で俺を殺しに来たのだろう?」
何もかも諦めたように笑った魔王の顔は、まるで泣いているように見えました。外敵とみなされたことに動揺した王様は、腰にさしていた王家に代々伝わる聖剣を力いっぱい遠くへ投げたのです。
聖剣は彼方まで飛んでいき、完全に見えなくなってしまいました。
「……剣なんか無い。見間違いだ」
「え……えぇ?」
魔王は王様の突然の奇行に呆然としています。王様は気を取り直して自分を知ってもらおうと自己紹介を始めました。
「私はレクス。そなたは……名が無いのであれば……し、シルワ……と、呼んでも良いだろうか」
王様は咄嗟にそう口にしていましたが、すぐに後悔しました。
「いや、忘れてくれ。森という意味だったが、あまりにも安直すぎた」
普段であれば己の発言に不安になることなどない王様は、自分の撤回行動に驚いてしまいます。相手の反応が怖くて意見を変えるなど想像もしていませんでした。
王様の不安をよそに、魔王は何度も小さく頷きました。
「森……森か、いいなそれ」
そう呟いた魔王は、とても嬉しそうに笑ったのです。
「俺はシルワ。この名前があれば、レクスと出会った時の事を忘れないだろう?」
その言葉に、王様は心臓が鷲掴みにされたような衝撃を受けました。
「シルワ。私と結婚しないか」
「……はぁ?」
王様はまるで呪いにでもかかってしまったかのように、勝手に求婚の言葉が溢れていました。王様は魔王に好きになってもらおうと言葉を尽くします。
「共に暮らそう。私はシルワを一生孤独にしない」
「それは無理だ、俺の寿命は長い。恐らくお前の七代先まで生きる。人間であるレクスは俺より先に死ぬのだから……また俺は必ず孤独になる」
「では家族をつくろう。血を絶やさないために、同性でも子を宿すことのできる王族にのみ伝わる秘術がある。私がシルワの子を産もう。七代先まで私とシルワの子孫がそばにいると約束する」
王様のあまりの勢いに、魔王は怯えた顔をしました。
「……今会ったばかりの相手にそこまでする理由がわからない」
「私もわからない。だが愛してしまった。シルワに信じてもらえるためならば、私は全てを投げ捨てる覚悟だ」
「さっきも高価そうな剣を投げ捨てたもんな……」
魔王は苦笑しながら空を見上げました。つられて上を見た王様の両手をそっと魔王は握りました。
温もりに気付いた王様は、ボッと全身に火がついたように熱くなります。
その変化を見て魔王は決心しました。
「わかったよレクス。共に暮らそう。ただし、条件がある」
「な……なんなりと」
「一つ、レクスが悪者にならないこと。人に根付いてしまった魔族への悪感情はすぐにどうにかなるものではないから、可能な限りその印象のまま俺の事を周囲に説明してくれ」
「シルワがそれで構わないのなら」
魔王の願いによって、王様の一目惚れ大暴走は『魔王からの呪い』ということになりました。
「ありがとう。そしてもう一つ」
魔王は王様の手を自分の腹部に当てました。
「俺が、お前の子を宿したい」
その言葉に、王様は苦い顔をしました。
「それは……肉体への負担が大きいからあまりシルワにさせたくない」
できないことを無理矢理可能にするから秘術なのです。負担が少ないはずはありません。
王様は難色を示しましたが、魔王は強気です。
「それなら尚更人間よりも頑丈な俺の方が適している。レクスは王族なんだろう。国を守る仕事を疎かにして欲しくない。俺は魔族で人前に出られないし、そのお陰で常に安静にしていられる」
何度も王様は魔王の身を案じる言葉をかけましたが、魔王が一歩も譲ることはなかったので、とうとう王様が根負けしてしまいました。
「……わかった。よろしく頼む」
「こちらこそ。七代先まで世話になるぞ」
二人はしばらく見つめ合い、それから吸い寄せられるように唇を重ね、激しく互いを求めました。
小屋のベッドへ向かう余裕も、服を全て脱ぐ余裕もありません。
王様は魔王の身体を傷付けないための魔法を施すのが精一杯です。あまりの性急さに嫌われてしまわないか恐ろしくなった王様でしたが、魔王は言いました。
「俺も、すぐしたいから……」
魔王は王様の張り詰めた性器を導きます。その誘いに抗えるはずもなく、魔王の中に身を沈めていきました。
「あっ、はっ……!」
「シルワ……キツい……」
ギチギチに締め付けられた痛みで王様がそう言えば、魔王は恥ずかしそうに視線を逸らしました。
「は……初めてだから、仕方ない……だろ……」
魔王の健気で可愛らしい告白に、王様はたまらず精を吐き出してしまいました。
「ぅッ……!」
「えっ、あ……レクス……?」
動いてすらもないのに射精してしまった王様はうつむいて沈黙しました。少し不安になった魔王でしたが、王様は一旦性器を抜き、魔王に後ろを向かせてから再び挿入したのです。
「んっ……んぁ……あ」
「すまない……顔を見ると、すぐにまた出てしまいそうで……しばらくこうさせて欲しい」
トントンと一定のリズムで出し入れを繰り返しながら、王様は魔王の性器と胸を同時に刺激します。
「アッ、あ、あっ、ダメ、それ……!」
魔王は様々な刺激に翻弄され、あれよあれよと絶頂へ導かれてしまいました。
何度も愛し合い、落ち着いた時には肌も服も体液でベトベトになっていました。
近くの川で水浴びをし、洗濯をしながら二人は静かに話をしました。
「……本当に七代先までみんな、レクスのように俺を愛してくれるだろうか」
「私の血族なら大丈夫だろう」
「ふふ、なんかよくわからんが説得力あるな」
不安が無いわけではないでしょう。それでも笑ってくれる魔王のことを必ず守ると、王様は改めて心に誓ったのでした。
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