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【五章】仙人と魔物
二話
しおりを挟む存在を確かめる様にエダムは何度も口付けを交わす。
その動きに激しさがある訳ではないのに、眼差しの奥に燃えるような情欲を宿しているがわかる。
わかるのに、性急にはならず表に衝動を出さない大人の余裕は他の三人に無くて新鮮だ。
「ふ……ぁ……んっ、ん……ん」
舌を何度も絡め合い、それだけで俺とエダムの性器は硬くなった。無意識に腰が揺れ、互いの性器を布越しに擦り合わせてしまう。はしたないと思う自分と、もっと乱れてしまいたい自分がいる。俺は完全にその気になっているのに、エダムは唇を離して焦らすように何事も無かったかのように会話を続けた。
「ルーシャンが悪魔と契約することに、クワルクはなんと?」
「ん……別に、何も言わなかった……」
エダムの声と表情は平時の様なのに、手だけは俺の衣服をどんどん乱していく。器用だと思う。俺の乳首をさも当然のように弄るエダムは楽しそうだ。
「やっぱり王の選択に口出しはしないよねぇ」
「んっ……は、ぁ……エダムは、口出しする気か……?」
「いいえ。何があっても僕達の王は貴方だけだ」
何があっても、とエダムは言った。どうやらクワルクもエダムも、俺が悪魔を使って何をしようとしているのかがわかっているようだ。
それは捨て身のように見えて、俺にはあまりダメージのないカースへの嫌がらせ。カースが俺の虚像を愛しているのか、本当に俺を愛しているのかを確かめるために必要な事だ。
この決断に、ルービンに戻るという現象はとても重要だった。
「ふふ……どんな俺でも愛してくれる者がいるというのは、本当に心強い」
再び俺とエダムは唇を重ね、これから身体を繋げるぞという時だ。突如バァンと大きな音を立てて出入口の扉が開いた。
「ルーシャン!!!」
「うわっ!? ウルダ!?」
「びっくりしたぁ……なになに、急にどうしたの」
相手がウルダであっても、突然の第三者の乱入にはさすがの俺達も冷静にならざるを得なかった。エロい空気を返して。
何事かと心配になったが、ウルダは元気よく俺に小振りの瓶を差し出した。
「間に合った! 試作薬! 試して!」
目を輝かせて興奮した様子のウルダはグイグイと俺の頬に瓶を押し当ててくる。痛い痛い。間に合った、ということはエダムとセックスする前に飲んで欲しい薬品という事なのだろう。エダムもそう解釈したらしく、瓶をウルダから取り上げて光に当てて観察しだした。
「媚薬とか?」
「ルーシャンには、いらないでしょ?」
「まあ……確かに」
そうですね、そうですね、エロエロボディですが何か!?
二人の認識は事実だが釈然としなくて唇を尖らせてしまう。じゃあなんの薬だよって話だ。まさかこんな早く妊娠薬は完成しないだろう。いや、ウルダならあり得るのか?
待て待て、そもそもそんな薬を俺に使われても困るし、さすがに全員と相談せずに飲めなんて言うはずがない。俺はエダムの手から瓶を取ってウルダに聞いた。
「ウルダ、結局これは何の薬だ……?」
「誰でも乳母になれる薬!」
ウルダは元気にドヤ顔をした。乳母といえば幼少期の面倒を見てくれる存在だが、恐らく言いたいのはそこではないだろう。
「……つ、つまり?」
「男女関係なく母乳が出るようになる薬」
ですよね。
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