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【五章】仙人と魔物
一話
しおりを挟む「そういえばルーシャンは何でルービン様の姿になったの?」
エダムは俺に質問した。
クワルクが全く説明になっていない手紙を出したのだから当然気になるだろう。
「悪魔と契約しようとしたら、悩みを解決してからじゃないと危ないと悪魔から諭され……ルービンにしてくれた」
「あー。ルービン様の姿だったとしても僕達が勃つのかって結構気にしてたよね。だからこそルーシャンの姿ではエッチに理解ある感じで色々と頑張ってくれてたというか……」
「そんなに俺ってわかりやすかったか!?」
ショックを受けている俺に、エダムは申し訳なさそうな顔をしながら頷いた。
こうして言葉にされると滅茶苦茶ショボい悩みで恥ずかしい。しかし、気になるのに確かめられないというのはなかなかに辛いものなんだからな。
どうせ恥ずかしいついでだ、俺は少し視線を外しながらエダムにずっと気になっていた事を聞いた。
「……エダムは、いつ……俺に惚れたんだよ」
「え~? そんな可愛いこと聞いてくれるの?」
俺の言葉にエダムは、だらしなくも嬉しそうな顔をした。
今まで俺は皆に対して臣下として必要な情報しか聞く事が無く、あまり個人を知ろうとはしてこなかった。
それは王として可能な限り公平に接するためだったが、今はもうそんなの必要ないのだ。
好きになればなる程、面倒くさいと思われそうな事も知りたくなる。四人は必ず真摯に向き合ってくれるとわかっているから、俺はこの感情に素直になりたいと思えた。
エダムは少しだけ考えを巡らせてから、しっかりと俺の目を見て口を開いた。
「ヤりたいな~って思ったのは早かったけど、恋愛的に完全に惚れたのはルービン様が塔に入れと僕達に告げて涙を流した時かな。王として非情になりきれなくて、僕達を想って泣く姿が可愛くて……。その瞬間、王にとって僕達は永遠に忘れられない存在になったんだろうなって思うと……凄く満たされたなぁ」
懐かしそうに言ったエダムは、先程までの破顔とは全然違う悪い笑みになった。獲物を狩り終わった獣のような獰猛さがある。
四人を忘れらなかったのはその通りだ。
しかし、心の傷だとしても己の存在を俺の中に残したいという歪んだ感情がエダムにあるとは思わず、ゾクリとした。
「ちょっと怖い」
「愛とか好きってそういうもんじゃない? それにルーシャン、言葉と表情が一致してないよ」
そう言われてしまった俺の顔はとてもニヤけていると思う。
あまり感情を見せずに飄々としたエダムの、暗く激しい想いが嬉しくてたまらない。
胸だけでなく胎の奥までキュンとするのだから本当に救えない身体だ。
俺の表情に色欲が滲んでいたのだろう。エダムは俺の顎を撫でながら煽ってくる。
「昨日クワルクに死ぬほど可愛がられて、それでもまだこんなに物欲しそうな顔をするなんて」
「あれは……クワルク成分が満たされただけで、別にエダム成分が満たされた訳じゃない……」
「ふふ、欲張りな御方だ」
「強欲でなければ王などやっておらんさ」
「それは確かに」
エダムは体を起こして俺の肩を掴み、ゆっくりとソファに押し倒した。
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