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【四章】王と魔王
二十話*
しおりを挟む確かに、ルーシャンが人間だった時の初めての行為は四人の精神が完全に魔物だったし、皆の精神がまともに戻ってからは俺の肉体がエロ仕様になっていた。
クワルクにとってルービンの肉体は、突然難易度がハードモードになったようなものか。
俺も逆の立場なら気になるかもしれない。
「……わからなくもないな……」
「ええ、とても重要な事なのですよ」
「ふふ……まあ、俺も快楽を期待していない訳ではないが……」
中を突かれる度に絶頂を迎えるような快感を知ってしまっているのだから、期待するなというのは無理な話だ。
しかし、今の俺がクワルクと抱き合う事に求めているのはそれではない。
俺はクワルクの顔を引き寄せ、両頬にキスをしてから素直な気持ちを伝えた。
「俺はお前と単純に繋がりたいんだよ。クワルクと愛し合っているのだと全身で実感したいんだ。だから、早くクワルクで俺を満たしてくれないか」
「……は、はいっ」
そう素直に求めれば、クワルクは俺の両脚を開き、濡れた中心に性器を当てた。
何度もしている行為のはずなのに、どことなくぎこちなさを感じる。互いの緊張が全身から伝わってくるようだった。
「……はぁ……ルービン様……挿れますね……」
「んっ……く……ッ」
クワルクが何度か息を吐き、ゆっくりと俺の中へ性器を押し込んでくる。
やはり、クワルクのものは大きい。内壁を無理矢理押し広げられる感覚に俺は勝手に腰が引けてしまう。咄嗟に頭にある枕を掴み、破れんばかりに握りしめてしまう。
「ふ……う、んッ……ン」
「逃げないでください……もう、少し……っ」
「あっ……はぁ、ぐ……ッ……」
いくら解したといえど、中にいつもの様な柔軟性を感じない。腰をしっかりと掴まれ、クワルクが奥に進む度に息苦しさで何度も呼吸が乱れてしまう。普段の身体がどれだけセックスに適応しているのかがよくわかる。
しかし過剰な快楽を拾う余裕が無い分、クワルクの存在を普段よりも沢山感じる事ができて嬉しかった。心が満たされ、この肉体に魔核なんてないのにジワリと胎の奥が熱くなるのを感じる。
無意識に俺は自分の下腹を片手でさすっていた。本当に俺達は今、繋がっているのだ。
「ルービン、様……」
「……クワルク……嬉しいな……こうして、愛する者と一つになれるというのは……」
「はい……本当に嬉しいです……愛しています、ずっと、貴方だけを……」
クワルクは幸せそうな微笑みを浮かべているが、その瞳からは次から次へと涙が溢れた。ポタポタと俺の胸元に涙の雨が降り注ぐ。クワルクは泣いていても綺麗だなとしみじみ思った。
この幸福は、この未来でなければ手に入らなかった。長い長い闇を抜けたような気分だ。
「……王としては失格なのかもしれないが……。クワルク、俺は今、本当に幸せなんだ」
多くの民が犠牲になり、山のように積み重なった犠牲の上で俺は幸せになってしまった。ルービンの肉体だと、ルーシャンである時よりも民への申し訳なさを強く感じる。
俺の心境を理解しているクワルクは、涙を拭ってから優しい瞳で俺を見つめた。
「王の幸せは民の幸せです。それほど、ルービン様は慕われていました。誰も王の不幸を望んでなどいません」
「そうか。そうだといいな……」
「王の不幸を望むような民は、穢れなど無くてもいずれ私に粛清されていましたよ」
「冗談に聞こえないのが怖い所だ」
「んふふ、冗談ではないとわかっているのでしょう?」
クワルクは物騒な事を明るく言いながら俺に上体を密着させる。しばらく俺達は正面から抱き合い、互いの体温と心音を感じていた。
こんなにもゆったりとしたセックスは初めてな気がする。快楽を知り尽くした後に求めるものが心だなんて、随分と遠回りしたものだ。
「私も今、とても幸せですよ……爪の先程度の感謝が悪魔に芽生えるくらいには」
それは凄い。流石悪魔。完全にではないにせよ着実にクワルクも懐柔できている。味方に出来れば本当に心強い存在なのだが。
そんな事を考えていると、クワルクが上体を起こし、俺を見下ろした。
「ルービン様、そろそろ動きたいのですが」
「ん……お前の、好きなようにしてくれ」
「痛かったり、辛かったら言ってくださいね」
俺が頷くと、クワルクがゆっくりと腰を引いた。
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