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【三章】人魔の王
二十一話* フィオーレ×ルーシャン(未遂)
しおりを挟むどうやら体を自由に動かせないのは四人もカンタルも同じらしい。この状況で助けが入らないなんて通常ではあり得ない。
俺の胸に触れたフィオーレの手が、腹筋をなぞり、へそを伝い、その下で止まった。
「こぉんな美味しそうなモノがあるなら……誰だって食べてみたいと思うだろ?」
「はっ……ヒゥッ!?」
「ルーシャン!!」
四人の悲痛とも言える声が空気を震わせた。
フィオーレの手がヌプリと、俺を傷付ける事なく体内に潜り込んで来る。痛みなんかないのに、直接体内に触れられているのがわかった。こんな意味のわからない芸当を見せられると、コイツが人ならざるものであると実感するしかない。
フィオーレは体内に侵入させた手で、直接俺の魔核に触れ、指の腹で形を確認するように撫でまわした。
「や……! あ……ッ!? ひ……アッ……だめ……ッ!!」
まるで中だけでイかされている時のような刺激が、何倍にもなって襲ってくる。
その強烈な快感を受けて俺は立っていられない。フィオーレが片腕で俺を支え、更に俺の中をまさぐった。
「結晶化したコレ、ラグリマって言うんだよ」
「んア゛あァっ──!?」
トントンと指先で魔核を叩かれただけで、俺は激しい絶頂感に襲われ全身が大きく跳ねた。
強過ぎる快感にポロポロと涙が零れ、呼吸もろくに出来ずにだらしなく口を開けるしかできなかった。
「ひ……ぅ……あ……ぁ……」
「ラグリマはぁ、涙って意味。ンフフ、今のルーシャンの瞳からも溢れてるけど……下の方がいっぱい濡れちゃってるねぇ」
「あぁ、ヒァッ……んっ……さわら……ぃで……ッ」
フィオーレは俺の下穿きに手を入れ、いつ射精したのかもわからない精液で濡れた性器を弄ぶ。
グチャとかニチャとか粘着質な音をわざと聞かせるような動きだ。尻にも手が伸び、濡れる部分もグチャグチャと掻き回すように触れられて、視界に火花が何度も飛ぶ。
「は、ぅ……いや……も……はなし……んんッ……!」
「アハッ、蕩けた表情かーわいい」
「やめ……ッん、あう……ぃヤダ……見ないで……ッ」
四人はもう今更だが、カンタルのいる場でこんなあられもない姿を晒すなんて、恥ずかしい感情よりも情けなさが襲う。
無様に喘ぎ、刺激される度に脚をガクガクと震わせるしかできていなかった時だ。
突如フィオーレの頬に何かが掠った。
フィオーレを襲った物体に視線をやると、それは細く伸びた木の枝だった。
四人の魔術がフィオーレの支配が届かない距離で発動しているようだ。木々の枝を触手のように操り、次々とフィオーレに襲い掛かっている。
殺傷能力は無いが、断続的に襲ってこられてはさすがにフィオーレもこれ以上の行動は難しいと判断したらしい。俺の体が自由になった。
すぐに俺は地面に転がるようにフィオーレの腕の中から逃げ出した。あっという間に四人が俺を囲み、フィオーレを睨み付ける。
フィオーレは深追いするでもなく笑った。
「フフ……これくらいにしておこう。四人の顔が怖すぎるねぇ。さすがに四人で徹底的に悪魔の研究でもされたら消滅させられそうだし」
「私……悪魔祓いに転職しても構わないくらい、悪魔が本気で嫌いになりました」
そう言ったクワルクの目が完全に据わっていた。凍えるような冷たさを孕んだ静かな声は俺ですらも怖い。
「ごめんごめん~ボクも出直すから」
「二度とルーシャンの前に現れないで欲しいのですが?」
「アッハッハ、それは約束できないなぁ」
その言葉を残してフィオーレの姿は闇に沈んで消えていた。
完全にフィオーレの気配が消たのを確認した事で、カンタルも俺の側に大きな体で駆け寄ってきた。
「パパ! 大丈夫!?」
「……多分、大丈夫……」
肉体的には全然問題ない。精神的には凹んでいる。どう答えたら良いかわからなくて曖昧な返事になってしまった。それを聞いたカンタルが有無を言わさぬスピードで俺の上体を押し倒し、蜘蛛みたいな足で触診を始めた。
「魔核、異常無し。魔力の流れ、異常無し。異物無し……外部魔力残留無し。魔力は枯渇状態だけど、健康には問題ないね。投薬の必要もないよ」
「カ、カンタル先生……」
お医者様がここにいる。沈んだ気持ちがすぐに浮き上がった。カンタルの格好良さに落ち込んでいる暇がない。
「あはは、パパにそう言われると照れくさいね」
はにかみながらカンタルが俺の頭に触れた。息子からのナデナデきました。
「医者みたいな事もしてるけど、これでも歓楽街の主人でもあるから……ああいう事にもオレは慣れてるしパパは気にしちゃ駄目だよ。パパが思ってるよりオレは色んな事例を見てきているし、対処もしてるんだ。オレを子供扱いできるのはパパだけだけど、生きてる年数で言えばオレの方が圧倒的に上なんだから、パパはもっと頼ってもいいんだよ」
「……うん」
俺は一回死んでいるから、こうして転生するまでの間は意識が無い。
四人も数百年生き続けてはいたものの、塔で出来る事は限られているし外部の情報を得られなかった。
だがカンタルはその間、全力で学び、圧倒的な経験と知識を保持している。きっとカンタルにとっては俺なんか赤子同然だろう。それでも親として慕ってくれるのはとても嬉しい。
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