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【二章】四人の魔術師
二十二話 口付けの行方 クワルク視点
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しかし、ぽっと出の若造にルーシャンを渡す事はできない。
シャウルスがどんなルーシャンに惚れたのかは知らないが、筋骨隆々なルービン様の頃から、ド淫乱な魔物化ルーシャンまで全てを愛している私達に勝てると思わない事だな!!
などと心の中でマウントを取っていたら、シャウルスの顔がルーシャンの顔にどんどん近付いていく。
理解するより先に私の体が動いていた。王族の体に直接触れたりすれば護衛に殺されても文句は言えない。瞬時に魔法を発動し、床に伸びているシャウルスの影を踏んだ。
ピタリとシャウルスの動きが止まり、すんでのところで口付けを阻止できた。
「い、いきなり何をなさるのですか!?」
私がそう叫ぶと、シャウルスは悪びれもなく目線をこちらに向けて言った。
「眠りからの目覚めには王子様のキスがセオリーだから試してみようと」
「貴方は王なので王子ではありませんが!!!!」
油断も隙もない奴だ。さっきまでのしおらしい姿に騙されてはいけない。若くても王である事に変わりないのだ。しかもルーシャンが認めている相手という事を忘れてはいけなかった。
「本当に王子である必要はない。想い人はいつだって相手の王子様になれるものだ」
「ええ、ええ。ロマンチックな正論だとは思いますが、勝手な行動は慎んでください」
そう言って術を解き、シャウルスの動きを自由にする。シャウルスもこちらの警戒を理解して、無理にルーシャンに触れようとはしなかった。
「ふっ……余に触れる事なく止めるとはさすがだなぁ。対応を間違えてくれればルーシャンを奪えたのに」
「ご期待に沿えずに申し訳ございません。王の臣下でしたから、王の扱いには慣れていますので」
「ははは。余を王だと認めている顔ではないがな。まあ……奪う、なんて言っている時点で、余もまだルーシャンに相応しい男ではないと理解している。だから、そなたらも含めた五人まとめて迎え入れられる存在になった時に再び結婚を申し込もう」
「……はぁ?」
私だけでなく他の三人の口からも同時に間抜けな声が漏れていた。とんでもない台詞を聞いた気がする。完全にその場で固まって動けない私達を見てシャウルスは満足気な笑みを浮かべた。
「ルーシャンが愛するものを愛してこその伴侶だ。エダム、リヴァロ、ウルダ、クワルク。そなたらも余に愛される覚悟をしておくといい。では、これで失礼するよ。またね、ルーシャン」
ルーシャンの髪を一房持ち上げ、軽く口付けてからシャウルスは私の横を通り過ぎて出口へ向かった。私達はなんの反応もできず、部屋を出て行くシャウルスの背中をただ呆然と眺めるしかできないでいた。
え、怖い。あれは大人に騙されている子供なんかじゃない。
シャウルスが伊達に若くして王に即位している訳ではないと実感した。シャウルスは将来大物になりそうだし、私達まとめて、というのはルーシャンへの口説き文句としても最高だと思うが、さすがに全員で輿入れは勘弁願いたい。
「……ルーシャン、起きていますよね。シャウルスも気付いていたようですよ」
私がため息交じりにそう言ってベッドに視線を移せば、気まずそうにこちらを向いたルーシャンと目が合った。
シャウルスがどんなルーシャンに惚れたのかは知らないが、筋骨隆々なルービン様の頃から、ド淫乱な魔物化ルーシャンまで全てを愛している私達に勝てると思わない事だな!!
などと心の中でマウントを取っていたら、シャウルスの顔がルーシャンの顔にどんどん近付いていく。
理解するより先に私の体が動いていた。王族の体に直接触れたりすれば護衛に殺されても文句は言えない。瞬時に魔法を発動し、床に伸びているシャウルスの影を踏んだ。
ピタリとシャウルスの動きが止まり、すんでのところで口付けを阻止できた。
「い、いきなり何をなさるのですか!?」
私がそう叫ぶと、シャウルスは悪びれもなく目線をこちらに向けて言った。
「眠りからの目覚めには王子様のキスがセオリーだから試してみようと」
「貴方は王なので王子ではありませんが!!!!」
油断も隙もない奴だ。さっきまでのしおらしい姿に騙されてはいけない。若くても王である事に変わりないのだ。しかもルーシャンが認めている相手という事を忘れてはいけなかった。
「本当に王子である必要はない。想い人はいつだって相手の王子様になれるものだ」
「ええ、ええ。ロマンチックな正論だとは思いますが、勝手な行動は慎んでください」
そう言って術を解き、シャウルスの動きを自由にする。シャウルスもこちらの警戒を理解して、無理にルーシャンに触れようとはしなかった。
「ふっ……余に触れる事なく止めるとはさすがだなぁ。対応を間違えてくれればルーシャンを奪えたのに」
「ご期待に沿えずに申し訳ございません。王の臣下でしたから、王の扱いには慣れていますので」
「ははは。余を王だと認めている顔ではないがな。まあ……奪う、なんて言っている時点で、余もまだルーシャンに相応しい男ではないと理解している。だから、そなたらも含めた五人まとめて迎え入れられる存在になった時に再び結婚を申し込もう」
「……はぁ?」
私だけでなく他の三人の口からも同時に間抜けな声が漏れていた。とんでもない台詞を聞いた気がする。完全にその場で固まって動けない私達を見てシャウルスは満足気な笑みを浮かべた。
「ルーシャンが愛するものを愛してこその伴侶だ。エダム、リヴァロ、ウルダ、クワルク。そなたらも余に愛される覚悟をしておくといい。では、これで失礼するよ。またね、ルーシャン」
ルーシャンの髪を一房持ち上げ、軽く口付けてからシャウルスは私の横を通り過ぎて出口へ向かった。私達はなんの反応もできず、部屋を出て行くシャウルスの背中をただ呆然と眺めるしかできないでいた。
え、怖い。あれは大人に騙されている子供なんかじゃない。
シャウルスが伊達に若くして王に即位している訳ではないと実感した。シャウルスは将来大物になりそうだし、私達まとめて、というのはルーシャンへの口説き文句としても最高だと思うが、さすがに全員で輿入れは勘弁願いたい。
「……ルーシャン、起きていますよね。シャウルスも気付いていたようですよ」
私がため息交じりにそう言ってベッドに視線を移せば、気まずそうにこちらを向いたルーシャンと目が合った。
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