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【二章】四人の魔術師
十四話 村人 ウルダ視点
しおりを挟む村に到着し、村長に人員が欲しいことを伝えてから、わたしとエダムは夕飯も食べずにすぐ眠ってしまった。
前日あまり眠れなかったのもあるし、人間に戻った肉体が安定していないのもある。
何故かまだ一日しか経っていないのに、情報収集から戻ってきたクワルクとリヴァロに起こされるまで、周囲の変化など気付く事もなく、とてもよく寝ていた。
「エダム、ウルダ、村で一体何があったのですか」
「ん……あれ……なんでクワルク、いるの?」
「欲しい情報が全て手に入ったからですよ。それより外にいる大勢の人はなんですか」
何のことだろうか。思い当たることなんて昨日、村長に塔の瓦礫の撤去について話した件くらいだ。
村長はルーシャンの行方に関係するとわかるやいなや、村の男手を貸してくれる事になり、更にルーシャンに所縁のある村や町にも使いを出してくれた。
しかし昨日の今日で半日も経過していないのだ。そんなに簡単に集まるはずない。わたしは首を傾げるだけだ。
「うわ、50人くらい集まってる!?」
窓の外を見たエダムが叫んだ。多くて10人いればありがたいと思ったが、そんなにいるのか。わたしも外を覗いてみるが、集まっている者達に強面が多くて悪人っぽい印象が強い。
わたし達四人を怪しい存在と認識して狩りに来た、という雰囲気の方が合っている。
「これ、味方……?」
「俺らは目の前を通ってきたけど、全員に元気良く挨拶されただけだったぞ」
リヴァロがそう言ったけど、よくあの集団の前を通ってきたなぁ。
問題なかったのなら良いんだけど。とりあえず身支度を終え、これから部屋を出ようかという時に扉がノックされた。
「みなさーん、こちらの準備はオッケーですよー! ルーシャン様救出隊です!」
村長の元気な声に、わたし達よりも張り切っている事が伝わる。やはりこれは昨日の依頼のための人材なのだ。
しかし、村長のフットワークが軽すぎるし、こんなに簡単に人を動かせるものだろうか。ただの“人が良さそうなおじさん”だと思っていた印象が変わってきた。
わたしは扉を開いて村長に問いかけた。
「半日も経ってないのに、どうやってこんなに……?」
「独自のネットワークってやつですよ」
村長は少し言いにくそうに頬を掻いてから話し始めた。
「この村は少し特殊で……私も含めて、今集まっている者達はルーシャン様に壊滅させられた元盗賊なんですよね」
なるほど。ルーシャンに『子供のお小遣い程度の報酬を支払った』側じゃなく、お小遣い程度の報酬でルーシャンにコテンパンにされた人達だったのか。
ちょっと笑ってしまいそうになるのを頑張って耐えた。
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