魔物になった四人の臣下を人間に戻すため王様は抱かれて魔王になる

くろなが

文字の大きさ
上 下
40 / 125
【二章】四人の魔術師

十四話 村人 ウルダ視点

しおりを挟む
 

 村に到着し、村長に人員が欲しいことを伝えてから、わたしとエダムは夕飯も食べずにすぐ眠ってしまった。
 前日あまり眠れなかったのもあるし、人間に戻った肉体が安定していないのもある。
 何故かまだ一日しか経っていないのに、情報収集から戻ってきたクワルクとリヴァロに起こされるまで、周囲の変化など気付く事もなく、とてもよく寝ていた。


「エダム、ウルダ、村で一体何があったのですか」
「ん……あれ……なんでクワルク、いるの?」
「欲しい情報が全て手に入ったからですよ。それより外にいる大勢の人はなんですか」


 何のことだろうか。思い当たることなんて昨日、村長に塔の瓦礫の撤去について話した件くらいだ。
 村長はルーシャンの行方に関係するとわかるやいなや、村の男手を貸してくれる事になり、更にルーシャンに所縁ゆかりのある村や町にも使いを出してくれた。
 しかし昨日の今日で半日も経過していないのだ。そんなに簡単に集まるはずない。わたしは首を傾げるだけだ。


「うわ、50人くらい集まってる!?」


 窓の外を見たエダムが叫んだ。多くて10人いればありがたいと思ったが、そんなにいるのか。わたしも外を覗いてみるが、集まっている者達に強面が多くて悪人っぽい印象が強い。
 わたし達四人を怪しい存在と認識して狩りに来た、という雰囲気の方が合っている。


「これ、味方……?」
「俺らは目の前を通ってきたけど、全員に元気良く挨拶されただけだったぞ」


 リヴァロがそう言ったけど、よくあの集団の前を通ってきたなぁ。
 問題なかったのなら良いんだけど。とりあえず身支度を終え、これから部屋を出ようかという時に扉がノックされた。


「みなさーん、こちらの準備はオッケーですよー! ルーシャン様救出隊です!」


 村長の元気な声に、わたし達よりも張り切っている事が伝わる。やはりこれは昨日の依頼のための人材なのだ。
 しかし、村長のフットワークが軽すぎるし、こんなに簡単に人を動かせるものだろうか。ただの“人が良さそうなおじさん”だと思っていた印象が変わってきた。
 わたしは扉を開いて村長に問いかけた。


「半日も経ってないのに、どうやってこんなに……?」
「独自のネットワークってやつですよ」


 村長は少し言いにくそうに頬を掻いてから話し始めた。


「この村は少し特殊で……私も含めて、今集まっている者達はルーシャン様に壊滅させられた元盗賊なんですよね」


 なるほど。ルーシャンに『子供のお小遣い程度の報酬を支払った』側じゃなく、お小遣い程度の報酬でルーシャンにコテンパンにされた人達だったのか。
 ちょっと笑ってしまいそうになるのを頑張って耐えた。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...