29 / 125
【二章】四人の魔術師
三話 エダム①
しおりを挟むいやもう、本当。ヤっちゃった。としか言いようがない。
元から僕は性に奔放な方ではあった。それが先天的だったのか、後天的なものなのかは今では知りようがないけど。
僕は弱小魔術師の家系であった。
我が家では“自慰が罪”という価値観で『子作りと洗浄以外で性器に触れるな』という教えだった。何故そんな教えなのか一応理由はある。体液には魔力が多く含まれており、家系が弱小ゆえに“少しの魔力も外に出さない、無駄にしない”という考えだったようだ。
そのため随分抑圧された思春期を過ごした。あまり良い思い出はない。
真面目な僕は大人しく従っていたけど、それに効果を感じる事もなかった。途中でアホらしくなって大きな理由もないのに不満が爆発してしまった。それから僕は性行為に溺れる事になる。変装し、エダムではない別の存在として男女問わず体だけの関係を沢山もった。
教えに反したことで、僕はいつの間にか弱小魔術師家系の中で異例の魔力を保持することになる。どうやら出すもの出して、どんどん循環させていく方が魔力は育つようだ。この方法にも才能や向き不向きもあるかもしれないが、意図せず僕には最適解だったらしい。
当然、優秀な僕は一族の誇りのように扱われた。表向きの僕は絵に描いたような良い息子であったが、全くと言っていいほど家族に恩を感じなかった。
縁談の話は沢山きたけど、絶対に結婚もしないし子供も作らないと決めていた。家のための道具になりたくなかったし、思春期の不自由に対する復讐心も大きかった。
それに僕が優秀な事に血筋は関係ない。ヤりまくったのが良かったと、誰にも言わなかった。教えた所で信じたくはないだろう。
そんな時期に王に引き抜かれ、好待遇で魔術の研究をさせてもらってからの人生は本当に楽しかった。王は全く魔力を持たない珍しい存在なのに、魔術師をとても大切にする。魔力無しに劣等感を感じて魔力持ちを排斥する君主だっているというのに、王は稀有な人だったと思う。
そんな王は国内外の魔術師からとても好かれていた。王自身も、魔力がないのに魔術や魔法に興味津々で、よく研究所を訪れては魔術の勉強をしていく。僕はその案内役をする事が多かった。
僕と王は、おじさん同士そこそこ仲が良かったと思う。異常に魔術師を尊敬する王の夢を壊したくなくて、僕はずっと王の前では真面目で落ち着いた執事のような態度を崩さなかった。
でもやっぱり、王ともヤってみたいな~って思ったりするわけよ。王は強く、気高く、優秀なのに、たまに子供みたいなミスをしたりする。男らしく頼りになる王という共通認識の中、どこか守りたくもなる不思議な魅力を持っていた。
流石に誘うだけでも不敬罪になるだろうから絶対にそんな素振りは見せなかったけどね。
塔へ向かう前の餞別に抱かせろって言えば、王は抱かせてくれただろう。でもそれは王の優しさを踏みにじる行為だ。王を傷付けたくないというのもあるが、僕は最後に幻滅される覚悟もなく、結局、昔と変わらず物分かりの良いフリをするだけだった。
それがまさか、数百年越しにヤっちゃうとはなぁ。しかも調子に乗って調教までしてしまった。ルーシャンに才能があったし、体に教え込むのが楽しかったから後悔はない。
記憶が全て戻った今となっては、我ながら最低だとわかっているけど「ラッキーだったな」とも思ってしまう。塔に入って良かったと思えるくらい、どエロいルーシャンは最高のご褒美だったと言える。
22
お気に入りに追加
1,705
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる