11 / 125
【一章】ルーシャン
十一話*
しおりを挟む今度は最上階からデカい男を抱えて往復する事になった訳だ。負荷ありの筋トレとしては最高だな。だがその前に尻の中をどうにかしないとそんな激しい運動は無理だ。
今日二度目の風呂に行くしかない。手早く洗浄を済ませてしまおう。ついでに自分の角がどうなっているのか確認もしたいしな。だが、塔の完成に立ち会った時には確実に設置してあった筈の鏡は全て取り外されていた。風呂場にも洗面所にもない。恐らく、四人は己の魔物化を直接確認したくなかったのだろう。それに気付いて少しだけ胸が痛んだ。変化に喜んでいる俺がおかしいのだ。
結局、俺のために用意された部屋に姿見があったので無事に変化を確認する事ができた。
「おお……これは見事だ」
俺のこめかみ辺りに巻き型の羊角があるのだが、なんと素材が赤い宝石だった。想像以上に綺麗でカッコ良くて嬉しい。どうりでスベスベした感触だったわけだ。黒い髪にもよく映える。何度も何度も角度を変えて美しさを堪能してしまった。
角だけと言っても範囲が大きい変化だ。それでもまだ俺の思考に影響はない、筈だ。ちゃんと俺は目的を覚えている。四人と触れ合い、穢れを吸収して人間に戻す。よし、大丈夫だ。
「さあて、エダムとリヴァロを部屋に運んでやるか」
部屋に運ぶまではなんの問題もなかった。無事に俺は二人を自室へ運ぶことができた。しかし、一人一人の体を濡れタオルで拭いている時に、自らに起きている異変に気付いた。
「……嘘だろ……」
俺はリヴァロの部屋でただ体を拭いてやっただけだ。たったそれだけなのに、後ろが疼き、粘着質な液体が溢れてきたのだ。まるで女性の愛液のように。俺はすぐにリヴァロにシーツを掛けて部屋を出た。男に、臣下の肉体に興奮しただなんて思いたくなかった。
なんでだ。魔物化によって性欲が減るのではないのか。しかも本来は受け入れるべき場所ではない部分が反応するだなんて、意味が分からなかった。
まだエダムも拭いてやらなければならない。さっきの現象は勘違いであってくれと願いながら水桶を抱えてエダムの部屋に入った。何も考えず、ただ拭くだけなのに性器まで勃起し始めた。さっきまでの情交を思い出してしまう。昨日はそんな事なかったのに、何かがおかしかった。
「あ……」
綺麗に拭き終わる頃には、俺の内腿には透明の液体が伝っていた。そういえば何で俺は服も着ずに全裸でウロウロできているんだ?
倉庫なんて遠くもないし、風呂を出た時に昨日ならば当然のように服を着ていたのに。羞恥というものが曖昧になっているのか?
いや、触れ合うのに服は邪魔なんだからこれは効率化だ。セックスでこんなに成果が出ているんだから、この変化は全て俺に都合が良いではないか。何で俺はこんなに焦っているんだ。
少し驚いてしまったが、冷静になればなんて事はなかった。俺は脚に伝う液体をタオルで拭って立ち上がる。いつでもお前達の求めに応じる事ができるようになったのはありがたい。きっと皆も喜んでくれる。
「ウルダのシーツを変えてやらないと」
気分が晴れた俺は鼻歌交じりにシーツを抱えてウルダの部屋へ向かった。ぐっすり眠っているウルダを抱え、ソファに移動させてからベッドメイキングをした。ああ、いつになったらお前達はヤった後に睡魔が襲わなくなるのだろう。回数が増えれば、もっともっと触れ合えるのに。もう疼く下半身の感覚にも慣れていた。どうせ明日になれば満たされるのだ。
綺麗になったベッドにウルダを寝かせ、最後にクワルクの部屋へ向かった。風呂からちゃんとベッドにたどり着けたのか心配だったからだ。
覗いてみれば、クワルクは辛うじて上半身だけベッドにしがみついて膝立ちの状態で寝ていた。ギリギリ間に合わなかったようだな。可哀想なのでクワルクをベッドに引き上げて寝かせてやった。
さすがに俺も眠くなってきた。今日はクワルクのベッドで寝る事にしよう。
◇◆◇◆
「起きてください、ルーシャン」
眠っている俺をクワルクが優しく揺り起こした。声も柔らかく、かなり険が取れている。
「……ん……クワルクがいる……?」
「私の部屋なのですから当然でしょう。何故貴方がここで眠っているのですか」
そうだ、俺が今クワルクの部屋のベッドにいる事を思い出した。
「なぜって……単純に疲れたから?」
「はあ。それより聞くべき事がありますね。この頭は一体……」
クワルクはそっと俺の角に触れた。同じ魔物の要素が生まれた事で親近感でも湧いたのだろうか。
「ふはは、俺は魔王だと言っただろう。塔にいるだけでも力が戻ってきているようだな。やっと本来の姿に近付いたのだ」
四人分の穢れを直接体内に注がれているのだから俺の変化は早いが、四人の外見が変わるのはまだ先だろう。この時間差のお陰で直接穢れを奪われているとは思わない筈だ。
俺の角から頬に手を移動させたクワルクは問いかけた。
「まあ、貴方の話に少し信憑性が出ましたね。しかし、ルーシャンは魔王になって何を望んでいるのですか」
「ん~……世界平和?」
「それって魔王の仕事でしたか?」
怪訝そうな顔をしながらも、クワルクの手付きが妖しくなってきた。俺の首をなぞり、胸にまで下りてくる。性的な意思を隠そうともしないのが可愛い。
「はは。明確な悪者がいると一番簡単に人は協力できる。魔王こそ世界平和に必要な要素だと思うぞ。まあ、今の世界は平和過ぎて全く必要ないがな」
「なら、魔王になんてならず、ずっと私達といたらいいんです」
「んっ……」
クワルクは俺の乳首を甘く噛んだ。もう俺はこの先の快楽を知ってしまっている。クワルクの与えてくれる丁寧で優しい刺激だけでは足りない。いっそ最初の時のように強引にしても良いのに。俺の性器に触れようとしているクワルクの手を掴んで、俺は強引にアナルへ触れされた。もう後ろの疼きは限界だ。ヌルヌルと勝手に濡れている部分に驚いたようにクワルクは目を開いた。
どれだけ驚かれても俺は何も感じなかった。ただ俺はクワルクを求めていた。
「……なぁ、クワルク。お願いだ……早くっ……クワルクが欲しい……めちゃくちゃに犯して……中、精液でいっぱいにして……」
昨日の俺は何故かこう言葉にするのをとても嫌がっていた気がするが、何故あんなに嫌がっていたのかはもう思い出せなかった。
30
お気に入りに追加
1,707
あなたにおすすめの小説



性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる